【我那覇響SS】響「カウント・ワン」

2: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/07/15(日) 20:43:53.60 ID:ZChvK6s50

なんで都会の夏はこんなにムシムシ暑いんだ。

自分が居た沖縄の夏は日差しが強くてもカラっとしてて気持ちがいいのに。

なんていうか、凄く不快な暑さだぞこれ。

例えるならそう、暑苦しい毛皮にでも包まれているような……。

……ん?

包まれてた。もっふもふの毛皮。

いや、包まれているというのは間違っている。

これは自分の毛皮だ。

3: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/07/15(日) 20:45:14.26 ID:ZChvK6s50
いやいやいや。ありえないぞ。そもそも人間にこんなごっつい毛皮がついてる訳……。

自分の手を見る。ふさふさの毛に包まれた肉球。
自分の後ろを見る。これまたふさふさした長い尻尾。
鏡で顔を見る。大きな顔に優しそうな目。大きく開いた口……って

完全にいぬ美だこれー!?
ちょ、ちょっと待ってくれ何これ、なんだこれ!
思い出せ、思い出すんだ自分。カンペキな自分はハッキリと覚えてるはずだ。
昨日は事務所へ行ってみんなと駄弁ってレッスン行って、そのまま直帰して寝た。
うん、おかしなところは何にも無い。何にも無いはずなのに……。

チラッと鏡を見る。少し遠慮がちにこっちをみるいぬ美と目が合った。

5: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/07/15(日) 20:46:39.75 ID:ZChvK6s50
右手(右前足って言うのか?)を上げる。
鏡の中のいぬ美も上げる。

ウインクしてみる。
鏡の中のいぬ美もウインクする。

間違いない……自分いま完全にいぬ美だ……。

なんで? どうして? どうしよう? どうしろと?

うぎゃー! もう考えてても仕方ない。こんなのわかるわけ無い。
ならば行動あるのみ! とりあえず事務所に行ってみんなに相談してみよう。
自分には心強い仲間がいっぱい居るんだ。大丈夫。

こんな時はあの魔法の言葉。聞くだけできっとなんとかなる気がする言葉。
声に出して、さぁ事務所へ行くぞ!

「バウッ!」

頭に思い描いた なんくるないさー! という言葉はいぬ美の鳴き声にかき消された。

だ……大丈夫だよね、きっと。うん。なんくるないさー……。

6: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/07/15(日) 20:48:42.24 ID:ZChvK6s50
なんとか家を出て事務所へ向かう。

視点がいつもと違って凄く新鮮だ。
それに四本足で歩くって言うのも中々楽しい。
折角だしこういう体験も楽しんでいこう。

「うおっデケェ犬だなおい」

どこかで見た顔とすれ違う。
誰だったっけえーっと……。ここまでは出てるんだけどな。ら……らせなんとかみたいな……。

「お前一人か? ご主人様は?」

頭をわしゃわしゃされながらそう聞かれる。
い、意外と気持ちいいんだなこれ。戻ったらいっぱいいぬ美にしてあげよう。

じ、自分がご主人様だぞ。今は訳あってこんな姿だけど……。

相手にそう伝えた。つもりだった。

7: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/07/15(日) 20:50:07.93 ID:ZChvK6s50
「バウッ!」

「ま、お前に聞いてもわかる訳ねぇよな。ハハッ」

「バ、バウッ!バウバウッ!」

「わぁーったわぁーった。ちょっとここで待ってろ。な?」

そう言うとその男はコンビニへ走ってった。なんなんだろ……?

というかこれは非常にマズい。さすがに喋れないと今の状況を伝えのも難しいぞ……。

頭を抱えようとして、いつもより短い手が頭に届かずパタパタさせているとさっきの男が戻ってきた。

「ホラ、これが欲しかったんだろ? ホラホラ」

そう言うとコンビニで買ったであろう犬用ジャーキーを目の前でヒラヒラさせる。
いや、いぬ美ならともかくさすがに自分そんなもの食べないぞ……。

「ん? なんだ、お気に召さないのか? ったく贅沢なヤツだなお前」

駄目だ。この男、完全に自分を犬だと思ってる。いや、どう見ても犬なんだけど。
うーん……事務所のみんなに伝えられるかちょっと不安になってきたぞ……。

8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/07/15(日) 20:52:45.47 ID:ZChvK6s50
「どうしたんだよショボくれて。そんな悲しそうな顔すんなよ……。ちょうど今日はオフだったんだ。
一緒にご主人様探してやるから、な?」

犬の姿になった自分を必死に励ましてくれる男。
なんだかちょっとおもしろくて笑えてくるぞ。いや、今の状況は全然笑えないけど。

「お前、首輪してるな。大体こういうのはこの辺に……お、あったあった」

あ、そうだ。ペット用の首輪には大体自分の名前書く欄がある。
自分はちゃんとそこにいぬ美の名前書いてるんだ。へへん、偉いだろ!

「えーっと……。我那覇いぬ美……。なんかすげぇ名前だなおい。いぬ美ってお前……」

なんだ、いぬ美の名前バカにするのか!? すっごくかわいくていい名前じゃないか!
失礼するさー、まったく!

10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/07/15(日) 20:54:56.30 ID:ZChvK6s50
「ん? 我那覇…って……。まさか、なぁ。いやでも、そうよくある苗字でもねぇし……。」

ん? こいつ、自分の事知ってるような口ぶりだなぁ。
自分もどっかで見たことあるような気はするんだけど、えぇっと、うぅんと……。

「犬には俺達のいざこざは関係ねぇもんな。仕方ねぇ。あんま気乗りはしねぇけど、あっこの事務所行くか……」

ほら、ついてこいと言わんばかりにこっちを見た後歩き出す男。
どっちにしろ事務所には行く予定だったんだし、ついていくさー!

12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/07/15(日) 20:56:43.28 ID:ZChvK6s50
「失礼すんぞー。」

「失礼するなら帰って→」

「おう、じゃあな……ってアホか! 何のために来たんだよ俺は!」

「おうおう、中々ノリツッコミが様になってますなぁ。今後は芸人に転身ですかな? んっふっふ~」

「あれ、君は……」

「よう、久しぶりだなプロデューサーさん。いきなりでなんだが、この犬に心当たりはねぇか?」

「んん……? もしかしなくてもいぬ美、だよなぁ……。このデカさは間違いない」

「あれぇ、いぬ美だけ? ひびきんは→?」

「やっぱあいつんとこの犬だったのかよ……。ったく。こいつな、一人でウロついてたんだ。
 我那覇が来たら主人はしっかり自分のペットぐらい管理しとけって伝えてくれ」

「あ、あぁ。わざわざここまで連れてきてくれたのか。響に代わって礼を言うよ、ありがとう」

「別に礼言われたくてやったんじゃねぇ。……そんじゃ飼い主も見つかったことだし、もう用はねぇよ。邪魔したな」

「いぬ美をここまで連れてきてくれたんだ。茶ぐらいなら出すから少しゆっくりしていったらどうかな、冬馬」

15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/07/15(日) 20:58:15.59 ID:ZChvK6s50
「だからそんなんじゃねぇって。それに俺が765プロに居たらあんまいい顔しないやつもいんだろ。
 俺だって折角のオフに嫌な顔されたら堪ったもんじゃねぇし。」

「亜美達は別にいいけどね→?」

「全然気にしないよ→?」

「うるせぇ、俺は気にすんだよ。あ、そうだあとこれ」

「ん? ジャーキー?」

さっき買ってくれたジャーキーだな。自分はさすがに食べる気はしないけど……。

「あぁ、あんまり好みじゃないみたいだが腹が減ってそうならやってくれ」

「わかった。重ね重ねありがとうな。今度響にも礼を言わせるよ」

「あまとうやさし→」

「さっすがトップアイドル→」

「う、うるせぇ! じゃあな、今度こそ帰るぞ!」

貰ったジャーキーを胸ポケットに入れて冬馬を見送るプロデューサー。
どっかで見たことある顔だと思ったらジュピターの天ヶ瀬冬馬だったんだな……。
自分すっかり忘れてたぞ。

18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/07/15(日) 21:00:57.06 ID:ZChvK6s50
「冬馬には感謝しないとな。……にしても、いぬ美一人でどうしたんだろう」

「ひびきんが嫌になって脱走したとか→?」

「ありえますな→」

「バウッ!」

失礼な! 自分が居ないと思って好き勝手言って……。
自分と我が家のペット達はもはや家族と同じ硬い絆で繋がってるんだ、そのいぬ美が脱走なんて……。
そもそもいまここに居るいぬ美は自分なんだから……。

うん? ちょっと待てよ。
今日の朝起きたらいぬ美になってた。
って事は、いぬ美はどうなったんだろう……。

「おはようございまーす!」

「お、まこちんおはよ→!」

「あ、ひびきんもおはよ→!」

ん? 響? 自分はここに……って、あー!!

19: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/07/15(日) 21:03:15.56 ID:ZChvK6s50
真の隣に居るのは間違いなく自分だった。
な、なんか自分を自分で見るって変な感じだな……。

「さっきそこのコンビニで見かけて……。なんかジャーキーとか売ってるあたりウロウロしてたけど」

「んっふっふ→いぬ美がひびきんに愛想尽かしたからご機嫌取り用ですかな?」

「物で釣ろうだなんて、ひびきんもワルよのう→」

だから違うって! こいつらの中じゃ、自分どんだけ駄目な飼い主なんだ!
って、そんな事よりも。 いま自分がいぬ美になってるってことは、この自分はきっと……。

「あ、響ちょうどよかった。さっき冬馬が来てな。外でうろついてるいぬ美を……」

いぬ美を連れてきてくれたんだ、と最後までプロデューサーの言葉は続かなかった。
突然プロデューサーに抱きつく自分。いや、これは自分じゃなくていぬ美っていうか……えっと……。

うぎゃー! いぬ美のやつ、人の身体で何やってるさー!

20: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/07/15(日) 21:06:23.74 ID:ZChvK6s50
「うわっちょっなんだ、響!?」

「うわーひびきん大胆→」

「朝から元気ですな→」

「ちょ、ちょっと響!?」

驚くプロデューサーと真。ニヤニヤして眺めてる亜美真美。プロデューサーの胸に顔を埋めてる自分。いや、いぬ美。
一体なんなんさこれ……自分だってまだプロデューサーに抱きついた事なんて……って違う! 止めさせないと! いぬ美ぃぃ!

「な、なんだどうした、美希じゃあるまいし……お、おい響!」

ちーがーう! 自分じゃ無いんだってばー! 

「いやー兄ちゃんモテモテですなぁ」

「モテる男は辛いですなぁ」

「響ずるいよ……。ボ、ボクだって……」

だ、駄目だ! こいつらみんな止めようとしない! じ、自分がなんとかしないと……。
そもそもなんでいぬ美はプロデューサーに抱きついたりなんか……あっ!

24: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/07/15(日) 21:10:43.65 ID:ZChvK6s50
自分(いぬ美)が胸に顔を埋めてるのは、冬馬から貰ったジャーキーが胸ポケットに入ってるからその匂いを感じとったんだ!
プロデューサーぁぁぁ! そのジャーキーをこっちに渡すさー!

「えっ、ちょっいぬ美……うわっ!」

飛び掛る自分と勢いに負けて尻餅をつくプロデューサー。
仰向けに転んだプロデューサーに馬乗りになるいぬ美。

胸の辺りの匂いとクンクンと嗅いだ後、プロデューサーの顔を見てニコっと笑って……。

ペロッ

うぎゃーーーー!!!

25: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/07/15(日) 21:13:37.23 ID:ZChvK6s50
「んっ、ちょ、ひび……」

「うわ、ひびきん……すご……」

「……これには亜美もびっくりだよ→」

「うわ……うわ……」

口の辺りを舐められ、馬乗りになられながらもがくプロデューサーと呆然とする亜美真美。
両手で目を隠しながら、しっかりその隙間から見てる真。
完全に固まる自分。

ど、どうすれば……!?

ガチャッ

はっ、誰かが事務所に来た! これはきっと天の助け!

「おはようございまーす。……あ、お取り込み中でしたか。失礼しました」

バタン

うおおおおい! そりゃ無いさピヨ子ー!!

26: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/07/15(日) 21:17:25.49 ID:ZChvK6s50
「音無さん! たすけ……おい響、いい加減に……わぷっ」

「な、なんか……なんだろ」

「今日のひびきんはなんか、色んな意味で凄いね……」

「……ハッ。響、プロデューサーが困ってるだろ!? と、とにかく一回離れなよ!」

マウントポジションを取ってるいぬ美を引き剥がす真。
出来れば、もう少し早くなんとかして欲しかったさ……。
自分の、は、はじめてが……。で、でもプロデューサーなら嫌じゃないかも……。
って違う! そもそもあれはいぬ美であって自分じゃないし!
そう、違う! ノーカン! ノーカン!!

「あ、ありがとう真。それにしても響……どうしたんだよ一体!」

「?」

キョトンとした顔でプロデューサーを見るいぬ美。
そもそもなんで怒られてるか理解してないんだろうな……。
自分とじゃれる時も顔舐めることなんてよくあるし。

30: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/07/15(日) 21:21:53.66 ID:ZChvK6s50
「いや、そんなきょとんとした顔されても……」

「日頃の鬱憤を晴らしたって感じじゃな→い?」

「兄ちゃんの事好きすぎて、もう我慢出来なくなったっぽいよー?」

「え、響ってそうだったんだ……。またライバルが……。困るなぁ」

もうこの際、真は無視するとして、亜美も真美も何を勝手な事言ってるんだ!
自分はプロデューサーの事なんて……き、嫌いじゃないけど……。
そんな、す、好きだなんて、そんな……。

あ、いぬ美が凄い笑顔でプロデューサーを見てる。
確かにこの子、プロデューサーと出会った時からよく懐いてたもんなぁ。

「ほら、ひびきんすっごい笑顔だよ? 兄ちゃん答えてあげなきゃ!」

「いや、あの……。もし本当にそうなら気持ちは嬉しいぞ響? でも、俺はプロデューサーなんだ。
 だからアイドルと、なんてそんなのは駄目だ。お前達のためにもならない。だから、その……」

「えっ、そうなんだプロデューサー……。ぼ、僕もアイドル辞めたら振り向いてくれるのかな……。
 でも辞めちゃうともうプロデューサーとこんな毎日逢えなくなるし……うぅ、どうしたら……」

31: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/07/15(日) 21:24:34.14 ID:ZChvK6s50
「まこちん何ブツブツ言ってんの→?」

「えっ、あっ。な、なんでもないよ、うん!」

「ご、ごめん響! で、でもお前達のことはみんな好きだぞ!? みんな、俺の大事なアイドルだ! 家族のように思っ……響!?」

「あ、ひびきんどこ行くの→!?」

「今は一人にしてあげなさい亜美隊員。乙女には傷を一人で埋める時間というものも必要なのだよ……」
 
「真美隊長……。さすがは、自分より人生の先輩であります! 数秒だけ!」

「ぼ、僕探してくるよ! 1人にするのは心配だし……。それに、響の気持ちも少しだけどわかるから!」

「あ、ちょっと! 真美の話聞いてた!? まこちーん!」

一瞬悲しそうな顔をして事務所から出て行ったいぬ美と、それを追いかけてく真。
プロデューサーに拒絶されたと思ったのかな……。
あの子、身体はあんなに大きいのに結構繊細なところあるし。
でも、そういう意味で言ったんじゃないから心配しないでいいよいぬ美。
元に戻ったらちゃんと伝えてあげるからね。

でも、そっか。プロデューサー……そっか。
なーんか……なんだろ。この気持ち。よくわかんないぞ。

33: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/07/15(日) 21:28:02.20 ID:ZChvK6s50
「兄ちゃんがひびきん泣かした→」

「やーいやーい、いじめっ子→」

「泣いては無いだろ! で、でも響大丈夫かな……。まさかあんなにショックな顔するなんてな。
 いつも元気な顔してるせいか余計になんていうか、心が痛いな」

自分の前に座って不安そうに頭を撫でる。
んん……。自分は大丈夫だからそんな顔しないで。大丈夫、だから。

「……あ、電話だ。真か。はい、もしもし。……うん、そうか。……よかった。うん、うん。響?
 確か今日は……えぇっと。今日と明日はオフだな。うん。……そうか、わかった。あぁ、頼むよ。それじゃあ」

「まこちんなんて?」

「響見つけたけど、すっごく落ち込んでるから今日は自分の家に泊めて色々話してみるってさ。すぐ見つかってよかった……。」

「兄ちゃん心配しすぎだよ→。まこちん付いてるならきっと大丈夫だって!」

「それでも、響だって年頃の女の子なんだ。当然真だってな。俺にはその年頃の女の子の気持ちってのはあんまりわからないけど
 多感な時期なんだし、やっぱり心配だよ。うーん、もうちょっと何か言い方とかあったよなぁ……色々衝撃的すぎてそのまま言葉にしちまった」

「そうですなぁ、やっぱり亜美達もいわゆる思春期? ってやつですからな→」

「そうそう、多感な時期なんだから丁重に扱ってよね→!」

34: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/07/15(日) 21:30:30.71 ID:ZChvK6s50
「はいはい、わかりましたよお嬢様方……お前も、響が帰ってきたら慰めてやってくれよな。
 1人の女の子としては今は見れないけど、それでも響の事は好きだぞーって」

頭を撫でながらちゃんと顔の高さを自分に合わせながら目を見てこんな事を伝えてくる。
まったくもう。ずるいさ、プロデューサー。嬉しくなっちゃうじゃんか。

「おぉ!? 兄ちゃん大胆発言来ました!」

「響だけじゃない。この765プロのみんな大好きだ。お前だって例外じゃないぞ真美」

「え、あ……うん。急になんだよ→て、照れるじゃんか→」

「うわ、顔真っ赤だよ真美」

「う、うるさいな→……と、ところで兄ちゃん。ひびきんがまこちんの家に泊まるのはいいんだけど、いぬ美はどうするの?」

「あ……やばい、考えてなかった。真の家は……駄目だよな、多分」

「どうだろうね→。まこちんに聞いてみれば?」

「うーん、響を泊めるわけだし真の家にそんなに負担もかけれんだろ。明日までは俺が面倒見るよ。」

「兄ちゃんは大丈夫なの?」

「一応、ペット可だしなうち。それに、なんていうか……自己満足かもしれんが響を落ち込ませちゃったし
 なんか出来ればと思って」

35: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/07/15(日) 21:34:27.58 ID:ZChvK6s50
「そっかそっか。兄ちゃんも責任感じてるって訳ね→」

「まぁ、そんなようなもんかな。というわけで、明日までよろしくな、いぬ美」

「バウッ!?」

え? えぇぇぇ!? なんか知らないうちに、自分がプロデューサーの家に泊まる事になってるさー!?
た、確かにこの姿で1人ってのは不安だけど……何もプロデューサーの家じゃなくてもいいんじゃないか!?
なんかさっきの事とかで、色々と意識しちゃうじゃんか!

「ま、そういう訳だ。亜美と真美は午後から収録だろ? タクシー手配してるからそろそろ現場に向かってくれ」

「ほいほ→い!」

「よっし、今日も一発かましてやりますかぁ→!」

「向こうに律子が居て詳しく収録内容とか教えてくれるはずだから頼んだぞ。律子によろしくな」

「おうおう、頑張ってくるよ→!」

「いってきま→す!」

「気をつけてなー」

37: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/07/15(日) 21:38:24.23 ID:ZChvK6s50
「さってと。俺は仕事するからお前は適当にゴロゴロしててくれな」

そう言って自分の机に向かうプロデューサー。
ゴロゴロって言われても……。そもそも、自分がプロデューサーの家に泊まるって……。
うぎゃー! もうどうしたらいいさー! 展開が急すぎて頭がついていかないぞ!
でも、プロデューサーの家、かぁ……。そっか。へへっ。

落ち着かない時間を過ごし、もう日も暮れる時間。
文字通りゴロゴロして過ごした。なんかもう、朝から色んなことがありすぎて疲れたさ……。

「よっし、こんなもんかな。そろそろいい時間だし帰るか……おーい、いぬ美」

ガタッ

き、来たか……! 心の準備は出来ているさ! さぁ、どこにでも連れてってくれ!

「さすがにいぬ美連れて電車には乗れないな。まぁ、徒歩で行けない事も無い距離だし散歩がてら歩いて帰ろう。ほら、行くぞいぬ美」

「バウッ」

元気よく返事して一緒に事務所を出る。
これから2人でプロデューサーの家に行くんだな……。うー、ドキドキするぞ……。

38: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/07/15(日) 21:41:00.15 ID:ZChvK6s50
近いとは言えない距離だったけど、プロデューサーの話を聞きながらのんびり歩いた。
話ってのはほとんど自分の事。プロデューサー、自分の事よく見ててくれてるんだなぁ。
ちょっぴり嬉しいぞ。

「ふぅ、やっと着いた。徒歩だとやっぱりちょっと疲れるな。さ、どうぞいぬ美」

「バウッ」

お邪魔しまーす、と心の中で言って入る。1人暮らしの男の人の家なんか初めてだなぁ。
思ったよりも片付いてる。……というより、なんか全体的に物が少ない。

「いっぱい歩いたし、なんつーか、色々あったし今日は疲れたな……。もう風呂入って寝るか」

色々、って言葉を聞いて事務所での出来事が頭に浮かぶ。
プロデューサーの口周りをペロペロと舐める自分の姿(をしたいぬ美)
う、うわー……。今更ながらすっごく恥ずかしくなってきたさ……。

「じゃあ俺は風呂入ってくるから、適当にくつろいでくれ」

そう言ってお風呂場に向かうプロデューサー。今日は色々ありすぎて自分も疲れたさ……。
適当なところで横になろう。元に戻る方法とかは……明日でいいや。
なんか一気に眠気が……。おやすみ……。

40: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/07/15(日) 21:44:26.00 ID:ZChvK6s50
「にしても、響のやついきなりあんな……」

風呂に浸かりながら自分の唇をそっと触る。まだ朝、響にキスされた感触が残ってる。
キス……っつーか口を舐められたって感じなのか? 
でも、抱きつかれた時いい匂いだったな響……。

「い、いかんいかん! プロデューサーになった日から、アイドルとは絶対そういう関係にならないって決めたろ俺!」

あの娘達はもっともっと輝ける、もっともっと上へいけるんだ。
俺みたいなのと付き合ってすっぱ抜かれたら、なんて考えたくも無い。

「明日、響とまともな顔で会えるかなぁ……」

今は考えてても仕方が無い。きっと大丈夫だ。俺はプロデューサーなんだから。
さっさと風呂から上がって寝よう。大丈夫、大丈夫だ。動揺なんてしてない。

「いぬ美……気持ちよさそうに寝てるな。俺の家でもリラックス出来てるんならよかった。俺も、もう寝よう」

おやすみ、いぬ美と言いながら起こさないように頭を軽く撫でて布団に入る。
真と響、どんな話してるんだろうな。響、元気出してくれたらいいけど……。

やっぱり響にはあの太陽みたいな眩しい笑顔がよく似合う。
明日はまたあの笑顔の響に会えたらいいな……おやすみ。

42: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/07/15(日) 21:47:03.25 ID:ZChvK6s50
ムクリ

むにゃ……なんで自分こんな床で寝てるんさ?
しかも冷房強いから寒い……。布団布団、と……。
うん、暖かい。これならゆっくり寝れそう。おやすみさー……。

ジリリリリリ

「んん……」

もう朝か……。なんかあんまり寝た気がしないな……。
とりあえず目覚まし止めないと……。

「あーもう、ウルサイさー!」

ガチャン!

「えっ……?」

43: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/07/15(日) 21:49:52.86 ID:ZChvK6s50
「まだ6時じゃないか。なんでこんな早くに目覚まし……が……?」

「ひび……き……?」

「プ、プロデューサー……えっ……えぇぇぇぇ!?」

OK,とにかく落ち着け俺。
何故響が俺の家で一緒に寝てるのか、まずはそれを考えるんだ。

①まだこれは夢の中。
②今は忘れているが、響は俺の恋人。一緒に寝るのは当然である。
③夜中に響が我が家に侵入。そのまま布団で寝た。
④昨日うちに連れてきたいぬ美が実は響である。寝てるうちに変身が解けた。

①だな。うん。①だ。間違いない。おやすみ。

「ってコラ! なんで何事も無かった様に寝ようとしてるさー!」

「響が俺と一緒に寝てる訳無いだろ……。夢なんだよ夢。もっかい寝たら目が覚めるんだ……おやすみ……」

「うぎゃー! いいから起きるさー! 自分だって混乱してるんだから、このまま寝ないでー!」

47: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/07/15(日) 21:53:13.67 ID:ZChvK6s50
なんでなんでなんで。なんでプロデューサーが自分の隣で。
い、いや、確かに昨日は自分プロデューサーの家に泊まったぞ。
でも一緒の布団でなんか寝てないし、そもそも自分はいぬ美で……。

「あぁぁ! 戻ってる! 戻ってるさ、プロデューサー! やったぁぁぁぁ!

「うわっ……お、おい、いきなり抱きつくな響! お、お前昨日からおかしいぞ!?」

「だって……だって……やっと戻れて……凄い不安で……昨日はいぬ美があんな事しちゃうし……」

「な、泣くなおい! わかったから、とりあえず離れろ、ほら!」

二人で正座してぽつぽつ話し始める。

朝起きたらいぬ美になっていた事。冬馬に事務所に連れて行って貰った事。
自分(中身はいぬ美)がプロデューサーにあんな事してどうしていいかわからなくなった事。
プロデューサーの家に泊まってドキドキした事。
何故か一緒の布団で寝ていて凄くビックリした事。
……ちょっと嬉しかった事は言わないでおこう。

50: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/07/15(日) 21:56:34.47 ID:ZChvK6s50
「うーん、にわかに信じられんが……。とりあえずの流れはわかった。つまり昨日は響がいぬ美でいぬ美が響だった訳だな?」

「うん、そういう事。自分だって信じられないけど……実際そうだったもん」

「それじゃあ昨日のアレとかも全部いぬ美の仕業だったって事か。確かにそれなら納得出来るな」

またあの光景が頭に浮かんできて顔が真っ赤になる。
そ、そう。あれはいぬ美の仕業なんだ! 決して自分じゃないからな! 勘違いしないでよねっ!

「いやーそっかぁ。それじゃあアレはノーカンだな。よかった……アイドルとキ、キスするなんてプロデューサー失格だからな」

「そ、そーだよ! あれはいぬ美だったんだし、ノーカンノーカン!」

……なんだろ。ちょっとだけ、寂しい気分になる。
ノーカン……かぁ。なんかもやもやする。
昨日、自分じゃなかったとは言え、この身体でプ、プロデューサーと……!

「しかしいぬ美と中身が入れ替わるだなんて……不思議な事もあるもんだな。
とりあえず事務所に行ったらあの場にいた みんなには事情を説明しないと」

51: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/07/15(日) 21:59:38.49 ID:ZChvK6s50
「……いいよ、別に」

「な、なんでだよ響。ちゃんと説明しないと、みんなに勘違いされたままに……」

「自分は……勘違いされたままでも別にいいよ? プロデューサーはそんなに嫌なのか?」

「俺だって別に嫌じゃな……って! そういう問題じゃなくてだな! そもそも、あれは響じゃないんだろ? 
 俺なんかと勘違いされたままだと響だって嫌だろうに……。」

嫌じゃないよ。って言っても、この鈍感プロデューサーはきっと気付かないさ……。
全くもう、バカなんだから本当に!

「だ、だったら……そ、その……勘違いじゃなくなればいいんだろ!?」

「えっ、響、それどういう……っ!?」

チュッ

52: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/07/15(日) 22:02:52.62 ID:ZChvK6s50
恥ずかしいから、ほっぺたに。
こ、これでノーカンじゃないもんね! 

「お、おい響……!?」

「知ーらない! プロデューサーのバーカ!」

このままの勢いでプロデューサーの家を飛び出す。
ちょっと早いけどこのまま事務所に行っちゃおう。
着くまでにこの顔の赤みが取れればいいな。きっと亜美真美達にからかわれちゃう。
……無理だろうな。きっと。

「これでカウント・ワン、だなっ!」

唇を指で弾いて、事務所へ全速力で走っていく。

終わり

54: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/07/15(日) 22:04:10.94 ID:ZChvK6s50
~その頃~

「響、余程ショックだったのか昨日は何も喋ってくれなかったなぁ……。大丈夫だろうか。
 あぁ、おはよう響気分はどう……!?」

「バウッ!」

「えぇっ!? ひび……いぬ美!? ど、どうして……うわっ!」

ガバッ

ベロベロベロベロ

「うぷっ。ちょ……い、いぬ美……うわ、うわぁぁぁぁ!」

今度こそ終わり

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