【四条貴音SS】貴音「私は、響と共に生きていく事を選びます」

1: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/08/11(土) 00:56:45.45 ID:u8eIO1Jo0
「あっ……んんっ…!…ちょっと……そこ、だめぇ……」

目の前の少女から発せられる嬌声。それは私の理性を狂わせるには十分過ぎる代物で

「なるほど、ここですか。響は感度がよろしいのですね」

「たか、ねぇっ……!そんな……いじわる言わないでよぉ……」

この小柄な少女──我那覇響と私は、途端に深い快楽へと堕ちて行きました
女同士でありながら情事を行い、身体を交わす。世間的に見れば奇異である事この上なく、嫌悪感すら抱かれるでしょう

しかし私と響は、深い愛情で結ばれておりました

「貴音ぇ…好き……好きぃ……かなさんどー……」

「ええ。私も響を、愛しております」

3: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/08/11(土) 00:59:49.46 ID:u8eIO1Jo0
この関係に事の発端など存在するのでしょうか
友人同士が垣根を越え、禁忌の領域へと踏み込んでしまったまでのこと
ごく自然に友情を深め、ごく自然に愛情へと変貌してしまったようです

「ねぇ貴音ー、今度一緒に買い物行かない?」

「ええ、そうですね。ふふっ……今度の休日に楽しみが出来ました」

同姓に対する憧れや嫉妬に似た恋心のような感情──
思春期の女子であれば、少なからず経験のある方はいるでしょう

「昨日美希と二人でどこに行ってたのさ?自分は仲間はずれ?」

「落ち着いてください、響。ただ先約があっただけのことです」

4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/08/11(土) 01:01:57.15 ID:u8eIO1Jo0
友人同士で抱擁を交わし、冗談のような口付けを交わす──
私と響も友人同士であるうちに、次第にそのような関係になっておりました

「たーかーねーっ♪」

「おやおや、響は甘えん坊さんですね。あまりくっつき過ぎると唇を奪ってしまいますよ?」

「ん~……いいよ、貴音なら。自分、貴音のこと好きだし!」

「……そうですか。それでは遠慮なく……」

お互いに友人同士のすきんしっぷ。そう思っていたはずでした
そう、あの日までは──

───────────────────

5: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/08/11(土) 01:04:23.06 ID:u8eIO1Jo0
響がおーでぃしょんを受けたあの日。休日であった私は、アイドル活動の勉強のためと称して響に付き添いました
合格者は一枠の狭き門。しかし、完璧を自称する私の友人は見事に合格
着替えや帰りの支度などを考慮し、少し時を置いてから受験者の待合室に訪問すると──

「失礼します。響、おめでとうございます。帰りの支度は……響…?どうしたのですか響!!」

「た……貴音……あはは……今は会いたくなかったぞ……」

屋外は晴れでありながらも、何故かびしょ濡れになった響の姿がそこにありました
それも他の受験者の姿は無く、たった一人で──

「何故そのような姿に?誰の仕業ですか!?」

「なんでもない…自分が悪いだけだよ。ちょっと水をこぼしちゃっただけで……」

「響っ!!」

「っ!?」

「……訳を話しなさい。それとも、私では頼りないのでしょうか?」

8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/08/11(土) 01:07:24.76 ID:u8eIO1Jo0
「そんなことない!貴音は…貴音は頼りになる自分の親友だよ!」

「ならば話してください。お願いです…いつも元気な響がそのように落ち込むなど、よほどのことがあったのでしょう?」

「……わかった…話すね?」

そう言うと響は、唇を噛み締めながらぽつりぽつりと言葉を発し始めました

「ほら…自分さっきオーディションに勝ったでしょ?それで他の受験者の子たちが良く思ってなくて……」

「妬み……ということでしょうか?」

「そうなんだろうね。それでおもいっきり突き飛ばされて……転ばされた後に水を掛けられて……」

堪忍袋の緒が切れるとはこのことでしょうか
気が付けば私は、手が真っ赤になるほどに拳を握り締めていたのです

9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/08/11(土) 01:10:16.38 ID:u8eIO1Jo0
「皆の憧れであるはずのアイドルが八つ当たりなど………響、その痴れ者はどこに行ったのですか!?」

「もういいって!もう遅いし…終わったことだし……」

「ならば受験者の事務所を教えてください。必ずや裁いてみせましょう!」

「やめてっ!!」

「何故です!?」

「知られたくないんだ……自分の弱いところとか…そういうの……。自分はカンペキでいなくちゃ……」

響の姿が私と重なっているように思えました
私も弱い部分を決して見せようとは致しませんが、本当は弱い精神の持ち主なのですから
同じ──だったのですね──

11: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/08/11(土) 01:13:06.57 ID:u8eIO1Jo0
「…っ!ですが、このまま響のために何も出来ないのは…響の親友としての立場がありません……」

「じゃあ……このままそばにいて。どこにも行かないで」

「……それだけのことでよろしいのですか?」

「うん……お願い。自分、もう溜まったものが爆発しちゃいそう……」

響のこれほどまでに弱々しい姿、初めて見たやもしれません
今この場を離れてはどこかに行ってしまいそうで──
抱き締めてしまえば脆く崩れ去ってしまいそうで──

ですが、今は──

「私が全てを受け入れます。響、全てを吐き出してしまいなさい」

「う……うわああああぁぁぁぁああん!!たかねぇぇぇぇええぇぇぇっ!!」

今はただ──こうすることで響が楽になるのなら──

12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/08/11(土) 01:15:58.74 ID:u8eIO1Jo0
「……落ち着きましたか?」

「うん…ごめんね貴音。自分の心が弱いから……」

「自分、今までいじめられたことなんてなかったんだ。沖縄では友達いっぱいいたし……」

「全部はじめてのことだったから……つらくて…怖くて……」

「……私、やはりあの者達は許せそうにありません」

「自分だってそうだけど、もういいんだ。こうして貴音が来てくれて、情けない自分を全部受け入れてくれたから……」

そう言って微笑む姿は、やはりどこか力が無く辛そうで──
いつもの響に戻ってもらうべく、少し茶化してみることにしましょう

「……ふむ…」

「え?なに?」

「いえ、落ち込んでいる響も大変可愛らしいのですが、やはり私はいつもの笑顔の響が好きなのです」

14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/08/11(土) 01:19:41.99 ID:u8eIO1Jo0
「なっ…!い、いきなりかわいいって……」

「…出来ませんか?」

「……ええっと…あれ?どうすればいいんだろ……」

混乱してしまったようですね。ならば少しばかりの刺激を──

「響」

「ん?な…んむっ……」

「…ふぅ。落ち着きましたか?」

「えへへ……こうやってするの、なんか久しぶりだね」

「はい。無論、ただのすきんしっぷの一つですが」

「……そうだね…うん、スキンシップだ」

何故かまた力なく微笑む響
私にも経験はありませんが、ここは少し刺激的に参りましょうか

17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/08/11(土) 01:22:38.35 ID:u8eIO1Jo0
「ならば響…もう一度しましょうか?」

「えっ?いいよそんな…っ!…んっ……!?んーっ!んんーっ!!」

いつもより深く口付けをし、響の口内を私の舌で蹂躙する。ただ、それだけのこと
それだけのことなのに──どうしてこうも背徳的な行為なのでしょう

「あ…ふっ…ぅぅんっ……」

響から漏れる吐息はとても扇情的で

「はむっ……んっ…あぁっ……」

私は胸の奥から溢れる劣情を抑えることが出来ず

「───────っ!!」

声にならない声は、劣情の彼方へとかき消され──

19: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/08/11(土) 01:25:27.91 ID:u8eIO1Jo0
ほんの少しの悪戯心。よもやそれがこのような結果に繋がろうとは
私と響はこの日を境に互いを求めることが多くなり、今では少しでも離れるのが辛い──

あの日失ったものは、去勢と過剰な自信と──おそらくは、常識──

そう、私と響は互いを求め合ううちに、愛しあってしまうのでした
身体を重ねあい、心を重ねあい、共に激しく依存する関係

世俗からすれば同性愛など認められるはずはありません
このようなことが世間に知られてしまえば、皆様方は幻滅されるでしょう

しかしそれも詮無き事。それが当たり前であり、普通なのです

そして、二人だけの『とっぷしーくれっと』が始まりました

──────────────────────

20: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/08/11(土) 01:28:17.11 ID:u8eIO1Jo0
「濡れていますよ、響。まるで洪水のようです」

「んんっ!だ、だって貴音が……」

「口答えは許しません」

「だ…ダメだってぇ…ぅっ……!!」

溢れ出る蜜を舐め取ると、響は身を捩らせてますます官能的な姿になってしまいました
このような小柄な少女のあられもない姿は、私を滾らせるには十分過ぎて──

「響……よろしいですか?」

「…………うん」

花弁は濡れたまま開く──
欲しがる私は餓えたまま──

23: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/08/11(土) 01:32:33.31 ID:u8eIO1Jo0
響の自宅で愛を確かめ合った次の日、私達は休日を楽しんでいました
二人で休日を楽しむには、時間がいくらあれど足りません

「ねぇ、次はどこに行く?」

「ふむ、そうですね……おや?」

ぽつ ぽつ ぽつ、と降り出す雨
雨は次第に勢いを増し、私と響を困らせるのに時間は掛かりませんでした

「うげぇ……洗濯物直したかなあ……」

「問題ありません。外出前に取り入れたではありませんか」

「あ、そうだっけ?それよりどうしよう……傘持ってないぞ……」

「……おや?あの建物で雨を凌げそうです。有料ですが休憩も出来るようですし」

「ふーん……なんかヘンな建物だね。大丈夫かな…?」

不安そうな響を余所に、私は手続きを済ませました

25: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/08/11(土) 01:35:30.62 ID:u8eIO1Jo0
「…面妖な……ここは情宿であったのですね……」

「……自分たち…大丈夫かな……それに自分、18歳にもなってないのに……」

「これも雨が止むまでの我慢。止み次第すぐに発ちましょう」

「そうだね……」

とは言うものの、部屋には何やら面妖な玩具などが目立ち、その形状が私の目を引いてしまいます
本能的に用途を察したものの、ちょっとした悪戯心を試してみたくなり──

「響、これは何でしょうか?」

「なんだろ?なんかスイッチあるけど……うわぁっ!?なにこれキモいぞ!」

などと言いながら頬を赤らめる響。おそらくわかってしまったのでしょう
やはり大変愛らしいものです。そこで私のすいっちも入ってしまいました

28: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/08/11(土) 01:38:34.59 ID:u8eIO1Jo0
「うぅ……雨が止むまでって言ったのに……」

「雨は止んだでしょう?私は間違ったことは言っておりません」

「だからってあんな……!」

「……響、大声を出しては周りに聞こえてしまいますよ」

「……貴音のばか…」

「ふふっ……響は良い子です」

今が幸せ──おそらく二人共がそう思っていたでしょう。この瞬間までは
そう、幸せは長くは続きませんでした

カシャッ

その微かな音を、私が聞き漏らしていなければ──

29: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/08/11(土) 01:42:22.60 ID:u8eIO1Jo0
数日後、事務所を訪れた私の耳に入ってきた言葉は、プロデューサーの悲鳴のような怒号のような──如何ともしがたい声色でした

「ああっ…くそっ!どうなってるんだ!?何で…何で貴音と響がこんな所に!!」

続いて、どこか焦っているような律子嬢の声──

「落ち着いてくださいプロデューサー!まずは二人に話を聞かないと!」

何やら不可思議な事態に陥ってるようです。私と響と関係があるのでしょうか
意を決して事務所内に入ることに──

「おはようございます」

「貴音!?ちょうど良かったわ。響はどこにいるかわかる?」

「響ならもう少しで来ると思いますが……響に何用でしょうか?」

「貴音」

「はい。どうなさいましたか、プロデューサー」

「話がある。付いて来てくれ。律子、響が来たらこっちに顔を出すように頼む」

「わかりました。…本当に、何も無いといいのだけど……」

31: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/08/11(土) 01:45:41.85 ID:u8eIO1Jo0
「…………」

言葉が出ないとはまさにこのことでしょうか
まさか、あの日の様子が写真に収められていたとは──

「いくつか聞きたい事がある。この写真は事実か?」

「……はい」

「……そうか。次の質問。何故こんな場所に入った?」

「突然の雨に襲われ、雨宿りのつもりだったのです。情宿とは露知らず、気付いたのは部屋に通されてからでした」

「……事実関係はあったのか、無かったのか」

「…………」

「頼む。答えてくれ」

「…………ありました」

「………っ…そうか……」

32: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/08/11(土) 01:50:04.11 ID:u8eIO1Jo0
「と、言うことは……響とは付き合っていると?」

「…ええ。秘密裏にしてしまい申し訳ありませんでした」

その時、部屋の扉が開く音がしました

「失礼しまーす……プロデューサー、話ってなに?」

「響、まずはこれを見てくれ。話は貴音から大体聞いた」

「うん………!!これって……!?」

「貴音、響」

「はい」

「お前達はアイドルなんだ。プロ意識の高い二人なら、それは普段から自覚しているだろうし、気をつけてると思う」

「うん……」

「でもな、アイドルが一気に駄目になってしまう瞬間がある。それはスキャンダル発覚。つまり交際発覚とかだな」

34: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/08/11(土) 01:53:54.02 ID:u8eIO1Jo0
「……存じております……」

「同性のアイドルユニットの場合、仲の良さをアピールするためにブログにメンバーとのキスやスキンシップをしてる写真をアップしたりすることもある」

「…………」

「でもな、お前達の場合は度を越えてしまっている。ましてやアイドルの同性同士の恋愛発覚なんて前代未聞だ!」

「ごめん……なさい……」

「……この写真は明日発売の週刊誌に載る。相手方はスキャンダルをスキャンダルを世に出すのが目的らしく、いくら詰まれても無駄だと言われた」

「ならば…私達には何も出来ることは無いと言うのですか?」

「二人でこれからのことを考えてくれ。マスコミが押し寄せるのは間違いないからな……」

「これからのことって…じゃあ自分たち、765プロをやめなきゃいけないの……?」

35: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/08/11(土) 01:58:19.63 ID:u8eIO1Jo0
「そんなことは無い!俺達は全員合わせて765プロなんだ、みんなが悲しんでしまう。だが、現状では全てを知るお前達が公式に発表をするしかないんだよ……!」

そう言うと、プロデューサーは私達に向かって頭を垂れました

「すまない……俺が無力なばかりに……」

「…謝らないでください。全ては私達の軽率な行為が招いた事態なのですから……」

「うん…プロデューサーは自分たちのために精一杯頑張ってくれたんだもん。謝るのは自分たちの方だよ」

「…もう一度だけ言わせてくれ。本当に…すまなかった。」

「…………」

数秒の沈黙の後、プロデューサーは頭を上げてこう告げました

「……明日は問い合わせ電話が殺到するだろう。二人も何らかの対応を考えていてほしい。それじゃあ二人とも、仕事に戻ってくれ」

37: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/08/11(土) 02:00:40.36 ID:u8eIO1Jo0
二人取り残された部屋。不安そうな顔をした響が私に尋ねてきます

「貴音…どうする?やっぱり隠そうとしたのがいけなかったのかな……」

「私達は世間から見れば同性愛者。発表したところで受け入れられないでしょう」

「じゃあどうするって言うんだよ!自分、もう気が気じゃなくて……!」

「落ち着きなさい、響。やはりここは私と響、二人で記者会見を開くのが一番かと」

「大丈夫かな……ひどいこと言われないかな……」

小刻みに肩を震わせる響。そんな響を私は抱き寄せ──

「あ……」

「ふふ……私もこれほどまでに震えているのです。しかし逃げていては始まりません。私達はアイドル。ならばせめて、気分だけでも華々しく参りましょう」

「……うん、そうだね」

震える肩を抱き寄せ合い、静かに決意を秘めたのでした

そして、その翌日──

40: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/08/11(土) 02:04:14.18 ID:u8eIO1Jo0
「はい、こちら765プロ……申し訳ありません。その件につきましてはお答えしかねます」

朝方から事務所に響くプロデューサー、律子嬢、小鳥嬢の声
しかし、その返答はどれも事務的なものでした
私はと言えば、今はある人物からの連絡を待つのみでした

「貴音……」

先程電話を受けた響が別室から戻ってきました。昨日からずっと表情は浮かないままです

「ご家族から、ですね」

「うん。みんなおかしくなるぐらい普通でさ……響の好きにすればいい、だって。それと一度貴音の顔を見せに帰って来いって」

「良き家族に恵まれたのですね。私も響の生まれ故郷を訪れたいものです」

携帯電話に着信が入りました。この番号は─

「失礼、少し話して参ります」

私は響を部屋に残し、別室へと向かいました

43: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/08/11(土) 02:07:32.51 ID:u8eIO1Jo0
「久しいですね、じいや。それで用件とは……やはり、あのことですね」

お世話になった者の声を懐古することもままならず、話は本題へ

「……はい。それが四条の家の決断なのですね?わかりました。…いえ、じいやは悪くなどありませんよ」

覚悟していたとはいえ、唐突に突きつけられる現実に戸惑いを隠せず、少しばかり声が震えてしまいます

「……はい、後は妹が……わかりました。それでは私はこれで。ヤーネフェルトの名において、一族の再興と繁栄を祈っております」

これではまるで決別の言葉のようですね。そのようなつもりは無かったのですが

「…いえ、今生の別れというわけではありませんね。次は主従の繋がりではなく、別の形で……。それでは、またいつか……」

知らぬ間に頬を伝う涙の温度が心地よくて──
私は涙を拭うことも忘れ、戻れぬ道をただ進むのでした

47: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/08/11(土) 02:10:33.95 ID:u8eIO1Jo0
「あ、帰って来た…ってどうしたの!?なにか言われた!?」

「……響、私は今より四条貴音ではありません。ただの貴音です」

「えっ…それってつまり……」

「ふふ……勘当、されてしまいました」

「そんな!そんなのひど過ぎるよ!!なんで!?」

「元より四条家は非常に厳しき家柄。今回私のしでかしたことが怒りに触れたようです。芸名としての四条の名は使ってよいとの話ですが」

「おかしい…絶対おかしいよ……」

「ですが私はこうも思うのです。私をしがらみから自由にしてくれたのではないか、と……」

「貴音……貴音はそれでいいの?今からなら間に合うし、自分だって協力するぞ!」

「もう良いのです。もう、戻れぬ道に足を踏み入れてしまったのですから」

48: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/08/11(土) 02:14:21.38 ID:u8eIO1Jo0
「……わかった。貴音がそれでいいのなら……自分が貴音を引き取って幸せにする!!」

「響!?」

「だって帰る家が無いなんてあんまりでしょ?貴音、今日から我那覇貴音として生きよう!」

あまりに突然の申し出に、私は言葉を失ってしまいました
嬉しい申し出ではあるのですが、そこまでお世話になってしまって良いのでしょうか

「……それじゃイヤ…かな……?」

「い、いえ、そのようなことはありません。ただ迷惑になってしまうのではないかと……」

「なんで?一緒に一緒に住んで、ご飯食べて、一緒に寝て起きたりするだけだぞ?」

「…はて?今現在の私の家は引き払う必要はあるのでしょうか?」

「あ……と、とにかく!貴音、一緒に住もう!自分と一緒に!!おいしい料理もいっぱい作ってあげるから!自分が貴音の帰る場所になってあげる!!

50: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/08/11(土) 02:19:42.98 ID:u8eIO1Jo0
「ふふっ…それはぷろぽおず、というものでしょうか?」

「えっ!?そ、そんなつもりじゃ…いやでも……そうなるのかな……?」

「……人は一人では生きていけません。響、これからは友や恋人ではなく、家族としてよろしくお願いします」

「……うんっ!!」

そういって手を差し出してくる響と、誓いの握手を交わしました
抱き締めてしまいたい衝動に駆られましたが、それでは記者会見への決意が揺らいでしまいます

「…響、記者会見はこのあと準備が整い次第すぐでかまいませんか?」

「!!…うん。自分はいつでもいける。貴音、大丈夫?」

「言いたいことが多過ぎて困ってしまうほどです。少し不服かもしれませんが、ここは年長者である私にお任せください」

「……自分も時々はしゃべっていい?」

「ええ、もちろん。それでは記者会見に臨みましょう」

55: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/08/11(土) 02:23:29.56 ID:u8eIO1Jo0
「皆様、本日はお忙しい中ありがとうございます。ただ今より弊社所属タレント、四条貴音、我那覇響両名による記者会見を始めます」

プロデューサーにより会見の開始が伝えられ、私と響はすぐに質問責めに遭いました

『ラブホテルに入ったのは事実ですか?』

「…はい。二人で買い物をしている最中、突然の雨に降られた際に入った建物が偶然情宿でした」

『お二人は恋愛関係なのですか?』

「……はい。じぶ…私と貴音は恋人同士で付き合ってます」

「それについては後ほど詳しくお話します」

『事実関係はあったのですか?』

「そのことは……」

「プロデューサー、良いのです。…私と響は契りを交わしました。この日も雨宿りの最中……」

「……ファンのみんな…ごめんなさい……」

56: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/08/11(土) 02:26:55.30 ID:u8eIO1Jo0
『お二人は同性愛者なのですか?』

「結論から言えばそうではありません。私とて一人の女、殿方を見て一時の憧れのようなものを感じることもあります」

「じ、私もそうです。にーに…兄に似てる人に多分…恋をしてました。今じゃもうわからないけど、多分そうだったと思います」

やはり響は、プロデューサーのことを──
このまま問答を続けては終わりが見えません。私は話したいことを全て話してしまうことにしました

「皆様方、少しお時間をよろしいでしょうか?このような関係になった経緯をお話ししたいのです」

響が不安そうな目で語りかけます
私は微笑みを響に向け、語り始めました

「それでは聞いていただきましょう。四条貴音の『恋バナ』を──」

57: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/08/11(土) 02:29:17.83 ID:u8eIO1Jo0
私と響は共にアイドル候補生として出会い、助け合い、時には競い合って友情を深めてまいりました
共に過ごしていくうちに、互いにすきんしっぷを交わすようになりましたが、この段階では思春期女子のそれと変わりありません

その関係が進んでしまったのは、とある事件により響がひどく落ち込んでしまった時の事です
響を慰めるためによかれと思ってしたことが、友情という関係の垣根を越える結果となってしまいました

それから私達の関係は日々深まり、心も身体も幾度となく重ね合わせました
今回の事例は、その矢先の出来事だったのです

61: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/08/11(土) 02:32:48.39 ID:u8eIO1Jo0
『…………』

「……本当にごく普通の恋愛なのです。ただ一つ、同性同士であることを除いては」

「た、貴音!その言い方じゃ自分じゃなくて貴音が全部悪いみたいに──」

異論を唱える響の口に、私はそっと人差し指を添えました

「このような事態はアイドル業界始まって以来の出来事だと聞きました。熱愛発覚のうえに同性同士の恋愛では、奇異の目で見られてしまうのも仕方のない事なのかもしれません」

「ですが、私達は真剣なのです。許しを請うわけでも、認めろというわけではありません。ただ、真剣である事を理解して欲しいと……」

「自分も…自分も貴音と同じ気持ちです!!」

「響……?」

「ファンのみんなには先に言っておくね。ごめんなさい!!でも自分、貴音と一緒に生きたいから…これが自分の正直な気持ちです!」

「響……ふふっ、先に言われしまうとは……。私も響と共に生きていく事を選びます。皆様にはご迷惑をお掛けして申し訳ありませんでした」

63: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/08/11(土) 02:37:01.26 ID:u8eIO1Jo0
『…ありがとうございました。お二人はこれからどうするおつもりですか?』

「…響、もう構いませんか?」

「…うん」

「ではプロデューサー、私達の処遇を」

「…四条貴音、我那覇響の両名を無期限の謹慎処分と致します。現段階では復帰のメドは立っておりませんが、進展があり次第ご報告させていただきます」

『引退というわけでは?』

「ありません。考えた結果、ファンの皆様を裏切った上での引退は身勝手な行為に当たると判断し、謹慎処分という判断を下す事と相成りました。引き続き質問はございませんか?」

66: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/08/11(土) 02:41:45.29 ID:u8eIO1Jo0
「……プロデューサー」

「ん?どうした響?」

「自分たち、ホントにただの謹慎だけでよかったの?その……事務所を辞めさせられるとか……」

「なんだ、辞めたいのか?それならそうしても良かったけど」

「そんなわけないでしょ!ただ自分たち、続けてもいいのかなって……」

「そうだな…まあそこは会見で言ったとおりだな。お前達はアイドルの身の上で恋愛をしていたんだ、ファンの人達を裏切ったままでいられないだろう?」

「確かに──」

「確かにそうですね。アイドルはふぁんの方あってのものですから。復帰後に受け入れられるかはわかりませんが、全力を尽くして恩返しをしたいと思います」

「あーっ!自分が今言おうとしたのにーーーっ!!」

「ははは、何はともあれ貴音も響もしばらく暇になっちゃうな。どこか旅行にでも行ってくるか?」

67: しまった…>>63にこれが抜けてた 投稿日:2012/08/11(土) 02:42:48.24 ID:u8eIO1Jo0
『…………』

「それでは、これにて会見を終了させていただきます。お集まりの皆様、まことにありがとうございました」

こうして、私と響の記者会見は終わりを告げたのでした

71: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/08/11(土) 02:47:28.71 ID:u8eIO1Jo0
「…うん。ちょっと行きたいところがあってさ。ね、貴音?」

「はい。響と共にとある場所へと」

「そうか…って響、学校はどうするんだ?」

「んー…今行っても騒がせちゃうだけだし、しばらく休学しようかなって」

「そうだな、その方が学校の関係者にも迷惑が掛からないと思う。…で、どこに行くのか聞いちゃダメか」

「それは……」

「…ええ、そうですね」

『とっぷしーくれっとです(だぞ!)』

73: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/08/11(土) 02:50:56.55 ID:u8eIO1Jo0
───数日後───

「貴音!沖縄はいいところでしょ?」

「はい…本当に素晴らしいところです。響が天使のような女性に育った理由もわかるような気がします」

あれから私と響は沖縄の離島に赴きました
私と、響のご家族を会わせるために、響が考えたものだったのです
新しい家族となる私に対して、響の家族の皆様方は大変暖かい笑顔で出迎えてくれました
「も~…そういうのやめてよ……照れちゃうってば……」

「私は心の底からそう思っておりますよ。ご家族の皆様方も南国の太陽のような方ばかりで……」

我那覇家の皆様は、私と響の関係を奇異の目で見るようなことなどせず、ありのままに受け入れてくれました
もっとも、お似合いだと茶化されたりはしたのですが

78: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/08/11(土) 02:55:30.31 ID:u8eIO1Jo0
「うちは民宿だからね!お客様をもてなす心と笑顔は絶対に忘れないんだぞ!」

「なるほど。私と響を相部屋にしたのももてなす心なのですね」

「そ、それは…ちょっと違うけど……」

「ふふっ…昨夜も大変可愛らしかったですよ」

「うぅ……実家で襲われるなんて思ってもみなかったぞ……」

「襲う?何を言っているのですか。甘い声を抑えながら共に過ごした蜜月を──」

「うぎゃーっ!!もうやめて!声を抑えるのも大変なんだよ!次したら絶交だからね!?」

「はて…皆様にはもうばれてしまっているのですが」

「ウソッ!?」

このような他愛のない会話であれど、響と過ごす時間は何事にも変えがたい大切な時間なのです

79: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/08/11(土) 02:58:23.27 ID:u8eIO1Jo0
「そういえばさー、同性結婚ってのが出来る国もあるんだって!日本人カップルも式を挙げたらしいってにーにーが言ってた!」

「わざわざ調べてくださったのですね。入籍ですか……しかしその場合、向こうに住まなくてはならないのではないでしょうか?」

「あ……その辺は聞いてなかった…。うーん…日本でアイドルを続けるならそれは難しいなあ……」

「響。私は法や形式などにこだわりません。私はただ、響と共に在る事が出来ればそれでいいのです」

「貴音……うん!自分も!」

眩しいまでの笑顔。この笑顔を隣で見ることの出きる私は本当に幸せ者ですね

「響……構いませんか?」

「貴音……いいよ……」

美ら海の波打ち際、軽い口付けを交わす私と響
照り付けるような日差しの中、私は何とも言えぬ幸福感に包まれていました

82: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/08/11(土) 03:02:45.11 ID:u8eIO1Jo0
しかし、その幸福感の余韻に長くは浸れませんでした

「あ…プロデューサーからメールだ」

「おや?私にも来ているようですね」

「きっと同時送信だね!一緒に開いてみよっか?」

「そうですね。では……」

『せーの!!』

「謹慎明けの新プロジェクト……自分と貴音のデュオだって!!」

「あの方も粋な計らいを……。こんせぷとは女同士の恋愛…ですか」

「あははは…さすがプロデューサー!転んでもただじゃ起きないってやつだね!そうやって売りにするのはちょっと恥ずかしいけど……」

「私も少し抵抗がありますが、何事も全力で取り組めば遊びでないことは伝わるでしょう。響、改めてこれからもよろしくお願いします」

「自分こそよろしくね!それからえっと……ユニットの名前は──」

83: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/08/11(土) 03:05:02.60 ID:u8eIO1Jo0
暖かな日差し。頬を撫でる潮風
真夏の沖縄の空気を吸い込みながら、新たな活動の始まりへと想いを馳せてみます

恐らく、これからの活動は今までのようにはいかないでしょう
一度失った信頼を元に戻すのは至難の業なのですから

しかしながら私の胸に不安はありませんでした
響にも問うと、お決まりの言葉が耳に入ります

「自分と貴音ならなんくるないさー!!」

事実、響と居れば何とかなってしまいそうな気がするのです
我ながら楽観的だと思いつつ、ふと響の方を見てみると──

おや、目が合ってしまいました

愛する人と共に、どこまでも

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