【藤原肇SS】肇「最初で最後の出来事」

1: ◆h.MDySkgWA:2015/11/30(月) 16:48:31.07 ID:AdU9VQfG0
モバマスSS

空想がちな肇ちゃんとプロデューサーとの純愛話です

書き溜めた文を分けて投稿しますので、よろしくお願いします

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1448869710

2: ◆h.MDySkgWA:2015/11/30(月) 16:53:20.74 ID:AdU9VQfG0
縁側で一人ぼんやりいる静かな夜

「起きてこないかな…?」

ぽつりと呟いても響かないなんて久しぶり。

縁側横の畳の部屋で寝ているプロデューサー

今は、大切な人。

──さんと実家で過ごす夜も何度目かな?

オフだからって──さんと一緒に実家へ来て、
当たり前のように上がって。

両親もおじいちゃんも──さんのこと、すっかり気に入ってた

たまに一人でお仕事へ行くこともあるけど、気付いたら──さんが見ている

真剣な表情で見守ってくれて安心するし、何より嬉しい。

終わって声掛けたら褒めてくれて。

たまに『ぼーっとしてた』『見とれてた』
なんて言って困る事もあったけど…。

──さんと会わないオフもあるけど、瑛梨華ちゃん悠貴ちゃんと買い物行ったりするし。

作務衣着て陶工する時はおじいちゃんがいて、釣りに行くのも一人じゃないし…

私が一人でいるのって本当に久しぶり………。

3: ◆h.MDySkgWA:2015/11/30(月) 16:57:46.48 ID:AdU9VQfG0
腕を枕にして寝転ぶけど、慣れない姿勢だからちょっと痛い

もう夜だし寝ればいいと思う

でも何だかもやもやとしてて………

このまま寝ちゃうのは惜しく思える…………

…すぅ………

暖かい………

毛布…? 枕…?

寝ちゃってたのかな?

ゆっくり目を開けて

毛布が掛かっていて、枕代わりの太もも

この温もりは、──さんだ…。

4: ◆h.MDySkgWA:2015/11/30(月) 17:01:52.55 ID:AdU9VQfG0
「いつから、居ましたか?」

「! 起きたのか

ほんの数分前だな。

目が覚めたら隣に肇いなくて、
目の前の縁側で横になってる肇がいたから急いで毛布をと…」

「やっぱり寝かけてたんだ。

ありがとうございます…♪」

優しくてきゅんとする…

「…一人で考え事?」

「そうですね。いつも誰かといるから、一人で思い更けてました」

「そっか…。肇はずっと誰かといるもんな」

髪に沿ってゆっくり頭を撫でてくれるのは嬉しいけど…
まだ慣れなくて恥ずかしい

「もう少しいるか…?」

「………。」コクリ

「………。」

一人で思い更けている時には無い暖かみ

私の気分を察してくれて、静かに寄り添ってくれる

この空気が、会話のない二人きりの時間が好き…。

5: ◆h.MDySkgWA:2015/11/30(月) 17:06:52.01 ID:AdU9VQfG0
さっきは気付かなかったけど、

実家の縁側で寝転ぶと、夜空はこんなに綺麗に見れるんだ

暗い夜空を眺めてると、星々に照らされてたあの日を思い出す…

大舞台に憧れ、そんなイメージを重ねるように歌い、踊り…。

いつかの夢では綺麗な空に華やかな衣装を纏い、夢でないような

いつか照らされた中でも一番輝きたい!そんな思いも抱き…。

撮影で桜に思い馳せていた時も

月光と夜桜の風情に負けないくらい美しく輝く…

強い決心を持つと自然と不安や緊張が無くなり

初めて立った大舞台
自分のイメージした姿に辿り着けたと思うと心が踊って…!

一方で新しいイメージや未知のときめきを感じて。

まだこの先にある、私にしか分からない色を と思い…。

再び夜空の下に舞い、あの星々に照らされた頃を思うと景色が違って見える

夜風に委ね、舞い躍る…不思議な感覚

色んなことを知ったからこそ見える、出来るんだと。

新たな大舞台

自分を磨いてばかりで気付かなかった大切さを、ファンの歓声で気付かされ

“肇”って大きな声援を聞いた時には、涙が出そうだった…

長い日々でも本当にあっという間

色々と充実して、アイドルを頑張って本当に良かった…。

6: ◆h.MDySkgWA:2015/11/30(月) 17:13:42.74 ID:AdU9VQfG0
だからかな?

──さんへの…

想いや気持ちがずっとあるのも…。

はぐれたくないから、でも手を繋いでと言う時には気持ちを隠して言い

両親にも──さんをちゃんと紹介したくて実家に招き

また来年も、再来年も…一緒に夜桜を見たい
初めて想いをぶつけ

おじいちゃんが──さんを認めてくれてすごく安堵して

ほんの少しの時間でも、二人きりになれたエレベーターの中

かわいい だなんて言われて、言葉に詰まったり

ペアカップ作ろうと気合い入れたら、形作り失敗しちゃって

ちょっと強引に誘って一緒に泥にまみれ

お仕事を忘れるくらい、温泉街を──さんと歩き回りはしゃいで…

このまま、本当の気持ちを仕舞っているのも良いかなって思ってた

7: ◆h.MDySkgWA:2015/11/30(月) 17:17:05.85 ID:AdU9VQfG0
けど、

もう迷いたくない。

私をずっと支えてくれた大切な…

ぎゅっ

「いててっ!」

「あっ…!ごめんなさい…」

──さんの太もも握りつねっちゃった…

「急にどしたんよ…

今のは痛いって……」

「思い更けてたら…その……」

「よっぽどの事なんか…。
別に思い詰めなくてもいいよ。

腫れたり皮剥けた訳じゃないし」

けろっとした顔で笑ってくれて。

やっぱり口に出さなきゃ…考えても進めない…!

8: ◆h.MDySkgWA:2015/11/30(月) 17:20:56.54 ID:AdU9VQfG0
「はぁ……ふーっ…」

「………?」

私の小さな深呼吸に反応して、──さんも一呼吸

「あの、一つ気付いたことがあるんです。

大切なことを。

話してもいいですか?」

「ああ。そのことで思い更けてたなら…

聞かせてほしいな。」

真剣な眼差し、でも少し微笑んで

私の話を聞いてくれるときは、いつもこの表情

今夜は、今までで一番素敵な表情をしてる

「ふふっ………。

9: ◆h.MDySkgWA:2015/11/30(月) 17:24:27.47 ID:AdU9VQfG0
『ひとつのものに集中すると、どうしても視野が狭くなります。

この視界の広さが、アイドルには必要なんですね、──さん』

都会の夜風に身を委ねたあの日…

私が言った言葉です。
覚えていますか?」

「んー……言ってた気がする…」

「ほ、ほら…!
二人で乗ったエレベーターでの事です!」

「…ああ確かに、

そんな感じの言ってたな…」

「………」ぷく

「ごめん…。」

「…ふふっ。

あの日の私も、ふくれた顔してましたね」

お互いくすりと笑っちゃった

「ええと、話を戻しますね…」

「よし、改めてな」

さっきと変わらず真剣な眼差しで見てくれて、
やっぱり──さんに委ねて良かったって思う…。

10: ◆h.MDySkgWA:2015/11/30(月) 17:29:39.01 ID:AdU9VQfG0
「それを知ったのは”あなたの”言葉からでした。

じゃあ、アイドル以外はどうなのでしょう?

陶芸においても、
釣りを嗜む時も、
通ずるものがありました。

備前焼だけでなく、色んな陶器を実際に見て触って…。

色んなところに行けたからこそ出会えた陶器も沢山あって

作り手の感覚や気持ちが直に伝わり、陶芸家として心に来るものがありました…!

初めて、”あなたと”釣りに行ったことも…

一人かおじいちゃんとしか行ったことなかったから、何だか新鮮で嬉しくて。

昔の自分では夢物語だった事が、気付けば手の届くところにある…

アイドルを通じて『ひとつのもの』を少しずつ、視野を広げることが出来ました。

11: ◆h.MDySkgWA:2015/11/30(月) 17:31:55.50 ID:AdU9VQfG0
でも。

そのアイドルも

『ひとつのもの』

かなって思うようにもなりました。

そう思うようになったきっかけ…」

両手で──さんの手を包むように…

ぎゅっ

と…

「”あなたを”…!

──さんを好きになったから…!」

少し驚いた顔だったけど、目を瞑り迷わず

唇を交わして

12: ◆h.MDySkgWA:2015/11/30(月) 17:36:22.77 ID:AdU9VQfG0
────

「ん…………はぁ…。」

大胆…すぎたかな?

押し倒しちゃった

──さんが床に手を付いて肘から顔と、ゆっくり倒れてる感覚はあった

…私を守ってくれるように。

目を開けると動揺し硬直してる──さん

こんなに息荒くするんだ…

ダッダッタッ

「何か落ちたんか?」

「!?」

あっ、実家だからおじいちゃんいるの忘れてた

13: ◆h.MDySkgWA:2015/11/30(月) 17:41:57.77 ID:AdU9VQfG0
「──さっ…!んっ」

咄嗟に──さんが私を抱きしめ唇を奪って隣の畳部屋に転がって…

ボフッ

布団に戻ったけど急な出来事で…!?

とっ、とにかく落ち着かないと…!

スタスタ

「………起きとるんか?」

「スゥ………」

「………。」ドキドキ

「………んんー…

玄関か…?」

スタスタ…

おじいちゃんが去っても、──さんに背を向けたまま

さっきのことで振り向けない。

寝ちゃった のかな………?

14: ◆h.MDySkgWA:2015/11/30(月) 17:46:26.25 ID:AdU9VQfG0
「…お互い様か。」

「! …ごめんなさい。」

反射的に言っちゃった…

「謝る必要ないよ…

肇からするなんて思いもしなかったから、その…な。」

「──さんも急なことで気構えられなかったし、お互い様ですよね…」

「それもあるけど…

さっき、肇が息ぴったり転がってくれて助かった

毛布と一緒にしがみ付いてくれて、畳の方に体重かけてな」

「床に当たったら響いちゃうと咄嗟にしただけですし。

畳へ体重かけた後は──さんに委ねてましたから…」

あんなことは初めてだったし、委ねた後は頭真っ白

「肇は…キスしたの怒ってる…?」

「そんなことありません。

でも…情に浸れなかったのが残念です」

「思い付きで動いたからな…

舌噛んだりしたら困るしああするしか」

「…ありがとうございます。」

「あ、あぁ……」

15: ◆h.MDySkgWA:2015/11/30(月) 17:50:50.00 ID:AdU9VQfG0
もう振り向いても大丈夫

──さんと改めて話してたら緊張しなくなったし

ゴロン

「ねぇ…。

さっきの続きですけど…」

「ああ、そうだったな

…続きを聞かせてほしい。」

「その続きは、まだ夢なんです。」

「夢?」

「はい…。

今までは、交互に手を引いて進んできた道なんです

でも、これからはお互いに手を取り合って進んでいきたい。

“あなたと”夢を見たい、叶えたいから…

これからも、一緒にいてもらえませんか?」

私がどんな笑顔に見えたのかは”あなたに”しか分からないけど、

一番の笑顔が出来たかな。

16: ◆h.MDySkgWA:2015/11/30(月) 17:54:13.91 ID:AdU9VQfG0
「肇がそうしたいなら…添い遂げるよ」

「ありがとう…ふふっ………」

面と向かって言えて、言われ

委ねるようにゆっくり目を瞑り

心は温かくなり、体は徐々に熱くなってきて

体が何か暖かいものに包まれる感覚

これは、

最初で最後の出来事

だから忘れないでいよう…

『私の夢は、あなたと夢をかなえること!

きっと、そうなんだって』

想いを重ねることが出来た今、

“あなたを”私の夢へ誘いましょう…………

17: ◆h.MDySkgWA:2015/11/30(月) 18:04:56.16 ID:AdU9VQfG0
以上です

長々とお付き合いありがとうございました
これからも、藤原肇をよろしくお願いいたします

19: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/11/30(月) 18:10:08.23 ID:9aknkKmP0
超乙です

20: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/11/30(月) 18:52:20.47 ID:EkmJB7Hw0
乙 いい雰囲気だった

21: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015/11/30(月) 20:10:34.07 ID:zfczCBcOo
乙です
凄く良かった

最近肇ちゃんの良SS連発で嬉しい

SS速報VIPに投稿されたスレッドの紹介です。
元スレ:http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1448869710/

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