1: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/07/22(日) 15:23:49.83 ID:oOCMgWVD0
P「応募していない一般の女性に、アイドルとしてデビューして貰うんです」
楓「主旨は聞いてましたけど……そういう名前だったんですね」
楓「シンデレラ……少女の年齢じゃないですけど」
P「そういう自覚のない人を応援するのが今回の企画ですよ」
P「楓さんは間違いなく、アイドルの卵です。俺が保証します」
楓「プロデューサーの保証……そう言われると反論出来ませんね」
P「必要ありませんよ。今後の予定も詰まってますし、しばらくは考える余裕もないと思います」
P「落ち着いたら、自然と自覚できるようになるはずですしね」
楓「今後……何があるんですか?」
P「CDデビューとTV番組への出演、ライブで他の事務所との対バンも予定されています」
楓「……大変そうですね。でも、楽しそう……」
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1342938229
2: 忘れてた 2012/07/22(日) 15:27:30.01 ID:oOCMgWVD0
(前作:P「シンデレラガールズですか?」 高木「うむ」)
3: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/07/22(日) 15:29:24.85 ID:oOCMgWVD0
P「でも、デビューはもう少し先ですね。CDを出すためには、レッスンと他の仕事をこなさないといけません」
楓「……出し惜しみですか?」
P「いえ、そうじゃなくて……下積みがないと、デビューしてもそこで終わっちゃいますから」
P「俺たちの役目はアイドルをデビューさせる事じゃなくて、輝く手伝いをする事なんですよ」
P「これから先も、アイドルとして、なりたい自分を目指し続けるために……最初は苦労しますが、一緒に頑張りましょう」
楓「……ありがとうございます、プロデューサー」
楓「ふふ……私、大切にされてますね」
P「勿論ですよ。楓さんは大事な人ですから」
楓(即答……アイドルとしてだろうけど、それでも……)
楓「ありがとうございます、プロデューサー」
4: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/07/22(日) 15:32:09.26 ID:oOCMgWVD0
P「さて、先の事も大事ですが、まずは今日の事から――スケジュールの確認をしておきましょうか」
楓「よろしくお願いします」
P「今日の仕事は2つですね。まずは昼前、11時からイベントの手伝いで、ストラップの配布をします」
P「13時には確実に終わるので、休憩を挟んで、昼からはドラマのエキストラに参加ですね。15時に現場入りです」
楓「テレビ……緊張しますね」
P「そのためにやるんですからね。まずは人前に立つ事に慣れましょう」
P「撮影も台詞はありませんし、喫茶店でゆっくりしているだけですから。リラックスして行きましょう」
楓「……頑張ります」
P(それに、配った物を受け取って貰える喜びも……ですけど)
P(アイドルが接するのは、売り上げの数字やファンの数じゃなくて、人そのものなんですからね)
5: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/07/22(日) 15:38:36.26 ID:oOCMgWVD0
<現場>
楓「よろしくお願いします。どうぞ、よろしくお願いします」
楓(思ったより人が多い……普段は見てる側だったけど、見られるのは……緊張する)
楓(プロデューサーから言われたとおり、控えめでも笑顔を意識して……)
楓「よろしくお願いしま~す」
P(うんうん、最初はぎこちなかったけど、だんだん慣れてきてるな)
楓「これ、よかったらどうぞ」
?「あ……どうも……可愛い」
楓「ふふ、ありがとうございます」
6: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/07/22(日) 15:39:04.37 ID:oOCMgWVD0
楓(今の子、制服だったなあ……なんだか懐かしいかも)
楓(アイドルだったら……着る機会あるのかしら?)
P(楓さん、制服見てたけど…………制服より、大人っぽい服の方が似合いそうだと伝えるべきか)
P(宣材の写真もジャケットの撮影もあるから……和服とか? 後で相談してみるか)
7: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/07/22(日) 15:41:40.40 ID:oOCMgWVD0
?「……犬のストラップ」
?(帰ったらお散歩いこうかな……)
8: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/07/22(日) 15:48:17.65 ID:oOCMgWVD0
P「お疲れ様でした。イベント大成功でしたね」
楓「お疲れ様です。私だけの力じゃありませんが……」チラチラ
P「楓さん? 何か気になることでもありました?」
楓「……プロデューサー、有名だったんですね。あの765のプロデューサーって言われてましたよ」
P「あー……それこそ俺の力じゃありませんよ。有名なのは俺じゃなくて、アイドルのみんなですから」
P「そこに付き添って、イベントもいくつか参加してただけですから」
P「今回だって、みんなが仕事をこなしたから、話が通じやすかったんですし」
楓「それなら……私が頑張ると、プロデューサーが有名に……?」
P「そうですけど、それを目標にしなくても良いですからね? 俺の知名度なんて、あくまでもおまけですから」
9: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/07/22(日) 15:54:09.84 ID:oOCMgWVD0
P「俺が有名になることより、楓さんやみんなが、アイドルとして輝いている姿を見ることの方が嬉しいですから」
楓「それだと……今はまだ嬉しくない?」
P「一緒に頑張れるのは楽しいですよ。楓さんが生き生きしてますから」
楓「何だか、いつも褒めてばっかりな気がします」
P「仕方ないですよ、本心ですから。それとも、楓さんは楽しくありませんか?」
楓「……楽しいです。新鮮という感じかも知れませんが……まだアイドルの自覚がないからかも」
P「ステージに立てばまた変わるかも知れませんね。もう少し先になりますが……」
楓「そのためには……ですね。早く立てるように努力します」
楓(急がば真っ直ぐ進んじゃおう……だったはず。春香さんの曲だけど、地道に積み重ねていくのが一番よね)
11: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/07/22(日) 15:54:56.22 ID:oOCMgWVD0
<公園>
P「次の仕事まで少し時間がありますから、ここで休憩していきましょうか」
楓「分かりました……ところで、プロデューサーは事務所に戻らなくて良いんですか?」
P「戻るよりここにいた方がゆっくり出来ますしね。店に入って休んでも構いませんが、どっちがいいですか?」
楓「そうじゃなくて……私につきっきりでいいんですか?」
P「ええ、平気ですよ。むしろ楓さんと一緒に回ることが一番大切です」
楓「……理由は?」
P「楓さんは今が大事な時期ですからね。最初は仕事を覚える意味もありますし」
楓(……やっぱり。いえ、いたいからと言われても……嬉しいけど困るわ)
12: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/07/22(日) 15:55:44.75 ID:oOCMgWVD0
P「もちろん、みんなに着いていなくて良いってわけじゃありませんが……」
P「裏方の人数が少ないのも問題なんですよね……すみません」
楓「いえ、むしろ私こそ、迷惑ばかりで……今日も手間取ってしまいましたし」
P「最初から完璧に出来る人間なんていませんよ。いたとしても、そう見えるだけです」
P「少しずつ経験していきましょう」
楓「……はい。でも次はもっと上手くやって見せます」
P「ええ、期待してます」
13: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/07/22(日) 15:58:18.81 ID:oOCMgWVD0
楓「でも私だけじゃなくて、みんなの事も見ていてあげてくださいね? みんなプロデューサーと仕事をしたいと思っていますから」
楓「それに、今から新しい人が入ってきても……プロデューサーの代わりにはなれませんから」
P「そう……でしょうか?」
楓「はい……だから私も、最初は迷ったんです。みんな、仲が良さそうですから」
楓「新しいプロデューサーが来て、仕事は上手く行くかも知れませんが、でも……」
P「……でも?」
楓「……何でもありません」
楓「午後の仕事も頑張ります。台詞のないエキストラですけど、成功させてきます」
P「ええ、ちゃんと見てますから。何かあってもフォローしますし、リラックスして行きましょう」
14: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/07/22(日) 15:59:17.84 ID:oOCMgWVD0
P「そろそろ移動しましょうか。早めに入って挨拶を――」ワンワン!
P「!?」ビクッ
楓「あら、犬の鳴き声……近くにいるんでしょうか?」
P「」
楓「……プロデューサー?」
P「ぐっ……な、何でもありませんよ? あ、あはは、次の仕事へ行きましょうか」
楓「……凄い顔してますよ?」
P「う、生まれつきです」
楓「そんな事は…………あ」
P「っ!?」
楓「もしかして、お腹が空いたとか……?」
P「へ? あ……え、ええ、そんな感じです。あはは……」
P(びっくりした……背後に犬がいるかと思った……)フゥ
楓「そうだったんですか。てっきり犬が苦手かと……」
P「は、はは……」
P(言えない……楓さんなら笑わないだろうけど……流石に恥ずかしい)
楓(鳴き声はするのに……犬がいぬ)
15: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/07/22(日) 16:01:28.57 ID:oOCMgWVD0
<765プロ・夜>
P「お疲れ様です」ガチャ
律子「お疲れ様です。楓さんは……直帰でしたっけ?」
P「ああ、今日は二件あったからな」
P「撮影も延びて、挨拶回りもしたから遅くなってな――律子はロケで動物園だっけ?」
律子「ええ……伊織とやよい、亜美と真美で……4人ともああ見えて体力ありますからね、流石に疲れました」
P「ははは、そっか。でもあの4人だと楽しそうだよなあ」
律子「それは……まあそうですけど。みんな子供らしくはしゃいでましたし」
律子「仕事を忘れてたわけじゃないですけど、無邪気で年相応でしたよ。良い息抜きにもなったと思います」
P「保護者みたいな台詞だけど、律子もまだはしゃいでいい年齢だからな?」
P「こういう仕事してると分からなくなってくるけどさ」
16: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/07/22(日) 16:06:19.19 ID:oOCMgWVD0
律子「流石にもう子供じゃありませんよ――なんて、前なら否定してましたけど……まだ大人にはなり切れてないですね」
律子「今まで年上のアイドルはあずささんだけでしたから、必然的にお姉さんになってましたけど……」
P「楓さんが入ってから、考えが変わったのか?」
律子「そうですね。みんなから見れば確かに年上ですけど……」
律子「小鳥さんや楓さん、あずささんみたいに大人の女性がいると、まだまだ子供なんだと実感させられます」
P「楓さんは、律子がしっかりしてる大人の女性ってしきりに褒めてるぞ?」
律子「それはまた別で……なんて言うか、仕事だけじゃないですし」
律子「みんなみたいに、大人の女性としての魅力が……年下でも、貴音や美希みたいな子がいしますから」
律子「照れますし、恥ずかしいですよね……あとは戸惑ったり」」
P「律子も十分、大人の女性って気がするけどな」
律子「ありがとうございます、プロデューサー。フフ、嬉しいですよ」
P「いやあ……はは」
P(お世辞じゃないんだけどなあ……)
17: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/07/22(日) 16:13:23.65 ID:oOCMgWVD0
律子「でも実際、楓さんは魅力的だと思いますよ。アイドルとしてレッスンを積んでいない今でも十分に」
律子「あの雰囲気は貴音にも通じますけど、ミステリアスな気品だったり、女性としての魅力だったり……本当に原石ですよ」
P「そうだな……でも内面とのギャップもあるんだぞ? そこがまた楓さんの魅力なんだけど」
律子「それは……私も時々感じますね。あんなにお酒を飲まれる方だとは……しかも日本酒」
P「一番飲んでたもんな。しかも酔ってなかったし――じゃなくて」
律子「そこじゃないんですか?」
P「それもだけど……実はダジャレが好きなんだ」
律子「……ダジャレですか」
P「ふとした拍子にぼそっと言うから聞き逃しそうになるんだけど、会話にひとつは挟んでくるぞ」
律子「それはまた……千早と気が合いそうですね」フフ
P「合いすぎて、この前悶絶してたぞ」
律子「ああ……そうだったんですか」
18: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/07/22(日) 16:16:01.00 ID:oOCMgWVD0
律子「そういうギャップは良いですね。作ってない楓さんの魅力だと思います」
P「それを自覚してないところがまたな」
律子「説明しても、首を傾げそうですよね……そういう方向でプロデュースを?」
P「それも相談しようと思ってたんだけど……誰かと組ませるより、ソロで行った方が良いよな?」
律子「……私もその方が良いと思います。竜宮の時とは状況が違いますし……」
律子「他のアイドルとのユニットだと、どうしても『相方の楓さん』になっちゃいますからね」
律子「楓さんの魅力を消すことになるのは、かなり勿体ないですよね」
P「律子もそう思うか……じっくりゆっくり、地道に経験を重ねていくべきだよな」
律子「それがいいと思います。楓さんが焦ってないですしね」
律子「……以前のみんなは、レッスンの先にある物が見えてなかったのもありますし」
律子「でも今は違います。みんなが道を切り開いてくれましたから、この環境に感謝しながら頑張るべきです」
P「……ありがとな、律子」
律子「どういたしまして」
19: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/07/22(日) 16:17:44.15 ID:oOCMgWVD0
律子「でもプロデューサー、他にスカウトしたい子が見つかった時は、ユニットでデビューもありだと思いますよ?」
P「それは……うーん、見つかるのは嬉しいけど、困ったような……喜ばしいんだけどなあ」
P「そこまで手が回るかどうか……出来なかったら、みんなを不幸にすることになるんだよな」
律子「事務作業は出来る限り私が代わりますから、そこは気にしなくて良いですよ?」
P「律子が……?」
律子「竜宮の時は私が手伝って貰いましたからね。今回は私が手伝います」
P「いや、あれぐらい当然で――」
律子「そういう事です。同じプロデューサー同士、協力するのも当然です」
P「……それじゃ、遠慮無く。まだ見つかってないから、どうなるか分からないけどな」
律子「見つかった時は……ですね。私も負けてられないわ」グッ
P「いやいや、俺の方が律子に追いつかなきゃいけないんだけどな」
律子「それもですよね。特に事務作業とか」
P「うっ……それは律子の計算が速い方じゃ……」
20: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/07/22(日) 16:19:14.20 ID:oOCMgWVD0
律子「でもその代わり、プロデューサーはアイドルみんなの事を分かってますからね」
P「律子が分かってないとは思わないけどな……同性じゃないと分から気持ちもあるだろうし」
律子「……それはまあ。付き合いもそれなりに長いですし」
律子(プロデューサーへの気持ちだったりね……美希は分かりやすいけど)
P「ただ俺としては、シンデレラガールズは大事だけど、律子の再デビューの事も同じぐらい興味があるんだよな」
律子「もう……何バカなこと言ってるんですか。今は目の前の事に集中してくださいよ?」
P「いや、冗談じゃなくて……今の忙しさだとライブのゲストが精一杯だろうけど、いつか……な?」
律子「まったく……約束は出来ませんからね?」
P「それで良いよ――さてと、それじゃあ今日の仕事を終わらせるかな」
律子「デビューさせたいんでしたら、仕事を早く済ませないと駄目ですね」
P「……よし、気合い入れてやるか」
律子「いつも通りですけどね」
21: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/07/22(日) 16:29:38.21 ID:oOCMgWVD0
<翌日:レッスンスタジオ>
楓「はぁ、はぁ……」
雪歩「お疲れ様です、楓さん。どうぞ、タオルとドリンクです」
楓「あ、ありがとうございます……ふう」
春香「楓さんって声綺麗ですね! 私びっくりしちゃいました」
楓「そうでしょうか……大きな声を出すのは苦手で。お二人の方が……」
春香「それは……えへへ、レッスンしてますから」
春香「でも楓さんだって、声量はまだ小さいですけど、すぐに上達すると思いますよ?」
雪歩「わ、私もそう思います。声質も綺麗ですし、苦手でもレッスンすればきっと……」
雪歩「自分を変えようと努力したら、きっと……」
楓「雪歩さん……以前は、男性と話すのが苦手だったって……」
雪歩「あぅ……そ、そのぅ……い、今も得意では。緊張しちゃいますから」
22: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/07/22(日) 16:36:45.41 ID:oOCMgWVD0
楓「でも、ラジオの……パーソナリティ? 上手でしたよね」
雪歩「あぅ……そう言えば聞かれて……何だか照れちゃいますぅ」
春香「うんうん、雪歩と真ののラジオ、楽しいよね。聞いてると元気出てくるもん」
春香「私も歌はあんまり……デビューしたときだったら、楓さんの方が絶対に上手ですよ」
楓「そうは見えませんが……さっきも上手でしたが……」
楓「……それもレッスンの成果、ですね」
春香「えへへ、そうかもしれませんね」
春香「楓さん、一緒に頑張りましょうね。目指せトップアイドルですよっ」
楓「トップアイドル……」
雪歩「まだまだ遠いですけど、諦めなかったら……きっと叶います」
楓「…………はい。頑張りましょう」
23: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/07/22(日) 16:48:23.26 ID:oOCMgWVD0
楓(春香さんも、雪歩さんも……私から見ればトップなのに、まだまだなんだ……)
楓(歌……千早さんみたいに、気持ちを乗せるなんてまだまだ……焦らず、高望みせず、今は歌を歌えるようにならないと)
楓(まずは最低限……こうやって頑張った気持ちも、全部重ねて、歌に乗せて……)
春香「そういえば、今日プロデューサーさんは一緒じゃないんですか?」
楓「今日は打ち合わせで外に……別行動です」
春香「そうなんですか。忙しそうですね……」
楓「春香さんと雪歩さんがしっかりしてるからと、安心していました」
春香「しっかりなんて……えへへ、楓さんのほうがしっかりしてるのに」
雪歩「プロデューサーが……期待に応えないと」
楓(……かわいい。こういうところは普通の女の子なんだ……)
24: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/07/22(日) 16:56:01.50 ID:oOCMgWVD0
<駅前>
P(今日の打ち合わせはこれで終了っと……事務所に戻ったら、みんなのレッスンを見て、その後楓さんも……)
P(千早に刺激を受けてるみたいだけど、春香や雪歩にも見習う所があるんだよな……技術の前に、精神的に)
P「今の楓さんならデビューも近いだろうし……今のうちに衣装も考えておくか」
P「イメージとしては和服なんだけど……ドレスも似合いそうなんだよな……贅沢な悩みだ」
P(花も似合いそうだし……セットに入れるか、衣装に入れるか……とりあえずいくつか買っていくか)
P(あわせてみた後は事務所に飾ればいいし――)
25: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/07/22(日) 17:18:38.34 ID:oOCMgWVD0
\アリガトウゴザイマシター/
P(上手く乗せられて買っちゃったけど……バラはなあ。綺麗だけど……楓さんは派手なのより大人しめの方が……)
P(ドレスならともかく……椿とかユリとか。バラはあずささんか……伊織のイメージが強いな)
P(そっちの提案も――)
?「あ……」
P(やばっ、ぶつかる――っ)
P「いっ……たたた……」ドスン
?「ゴメン……大丈夫?」
P「ええ、なんとか……すみません、余所見を――」ワン!
P「…………」
?「こらハナコ、大人しくしてて」ワンワン
P(い、犬だ……)
26: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/07/22(日) 17:21:05.57 ID:oOCMgWVD0
?「……どっか痛めた?」
P「いいいいや、なんでも――あ」
P(ティン!)
?「……何?」
P「え、あ、いや……」ティン
P(ティン来ちゃったよ……くっ、これは固まってる場合じゃない!)
?「……立てる?」
P「ああ……ちょっと驚いただけだよ――っと」
27: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/07/22(日) 17:36:30.61 ID:oOCMgWVD0
P(見た目は今時の女の子……格好良い女の子って雰囲気だけど、クラスにいそうなイメージ)ティン
P(でも……目に輝きがある。内に秘めた意志が……この子は――)ティン
?「……何か?」
P「あ……アイドルに興味はありませんか?」
?「……は?」
P(しまった……つい反射的に……今は楓さんのプロデュースをしてるのに……)
P(でもこの子は、トップアイドルになれる素質があるかもしれない……見逃すのはプロデューサーとして失格……なのか?)
28: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/07/22(日) 17:46:52.39 ID:oOCMgWVD0
?「……ナンパとか、そういうのは間に合ってるから。花渡されても困るし」
P「あ……ちっ、違う違う! これは事務所に持って行く花で、今もナンパじゃなくて……ほ、ほら!」
?「名刺…………765?」
P「そうなんです……こほん、765プロっていう芸能事務所で、アイドルのプロデュースをしている者です」
?「…………お兄さん、怪しすぎるよ」ジトー
P「本当だって。名刺も本物で……今は新人アイドルのスカウトをする企画があるんだよ」
?「そんな話、聞いたこと無いんだけど」
P「それは当然だよ。まだ水面下の話だから」
P「期限はあるけど、いろんな事務所でそれぞれ新人をデビューさせてからのイベントだから」
?「……その台詞、予習してきたの?」
P「違う違う」
29: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/07/22(日) 17:48:16.42 ID:oOCMgWVD0
P「本当なんだけどなあ……どうしたら信じてくれるんだ?」
?「いきなり言われて信じるほど、私は簡単じゃないから」
P「ああ、それもそうか……それじゃあその名刺、渡しておくから。気が向いたら連絡を」
?「はあ……」
P「あ……それと、名前……聞いても良いかな?」
?「…………」
P「変な意味じゃないから! 連絡取るときに分からないと困るし」
?「……渋谷凜」
P「渋谷さんね……よし、覚えた。それじゃあ何かあったら連絡お願いします。質問も受け付けるから」
凜「……そ」
P「出来ればゆっくり話したいけど――」
凜「今日はこれから、用事あるから」
P「だよな。俺も実は……と言うわけで、また時間のあるときに」
凜「また会うとは限らないけどね」
P「その時はその時で。でも俺はまた話したいな」
P「君はきっとアイドルとして、ステージの上で輝ける人だと思うんだ」
凜「……そっか、ありがと。それじゃあ」ワンワン!
P「あ……ああ、また」
31: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/07/22(日) 17:51:30.09 ID:oOCMgWVD0
凜「……変な人」
凜(ぶつかりそうなのを避けてくれたのはいいけど、ちょっと腰が引けてた……私怖いかな?)
凜(頼りなさそうな人だけど……真剣だったよね)
凜(はぁ……何だかモヤモヤする。花、渡されたいわけじゃないけど……贈り物に選ぶセンスは、まあ)
凜(ナンパじゃないのは分かったけど、まだ気になる……勘違いしたのが恥ずかしいから?)
凜(この名刺、どうしよう――)ワン!
凜「ん……行こうか、ハナコ」
凜(アイドルね……私には関係ないかな)
32: 1と2を見間違えてたけどこのまま突き進む 2012/07/22(日) 17:52:51.69 ID:oOCMgWVD0
<765プロ・レッスンスタジオ>
P「みんな、お疲れ」ガチャ
春香「お疲れ様です、プロデューサーさん」
美希「ハニーなの!」パァ
律子「こら美希、抱きつくんじゃないわよ?」
美希「む~、まだ抱きついてないの」
律子「放っておいたら抱きついたでしょう……ほら、汗拭きなさい」
33: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/07/22(日) 17:55:17.35 ID:oOCMgWVD0
雪歩「お疲れ様です、プロデューサー。その荷物は……」
P「差し入れだよ。みんなにと思って――」
真美「さっすが兄(C)、気が利くね→。中はなんなんの?」
P「飲み物だよ。あとは事務所の冷蔵庫にケーキを入れてあるから」
真美「ナイスだよ→♪ 丁度亜美と食べたいって話してたんだよね→」
P「そりゃ良いタイミングだったな。出来れば起き上がって話して欲しかったけど」
真美「それは無理な相談だYO……」
響「プロデューサー、自分たちがみんなに配ってくるぞ」
真「結構ハードでしたからね。みんなぐったりするのも仕方ないですよ」
P「2人は流石だな……それじゃあ頼んだ」
34: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/07/22(日) 17:57:32.46 ID:oOCMgWVD0
真「ほら、亜美。汗はしっかり拭かないと」
真美「ううぅ……ありがとね、まこちん」
やよい「あぅ……2人とも元気ですね」
響「やよいも前よりダンス上手くなってるぞ? ターンもビシッと決まってたしな」
やよい「そうかな? えへへ……あそこは伊織ちゃんと練習してたから、それでかも」
響「伊織も頑張るなあ。竜宮の方もあるのに」
やよい「私が困ってたら、教えてあげるわよーって」
真「あはは、伊織らしいね」
35: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/07/22(日) 17:59:30.70 ID:oOCMgWVD0
雪歩「それと……」
P「どうした?」
雪歩「プロデューサー……ここ、汚れてるので」
P「げっ……こりゃクリーニングだな……」
雪歩「大丈夫ですか? これ、転んだんじゃ……」
P「人とぶつかりそうになってな……怪我はないから」
P「ただ……犬がな……」
雪歩「い、犬ですか……」
P「ああ……」
雪歩「……大変でしたね」
P「……苦手、克服しないとな」
雪歩「そう、ですね……うぅ」
36: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/07/22(日) 18:02:03.16 ID:oOCMgWVD0
千早「あ……プロデューサ。お疲れ様です」ガチャ
楓「お疲れ様です」ペコリ
P「お疲れ様。2人はダンスじゃなかったのか?」
千早「それもですけど、合間に少し発声の練習を」
楓「……教えて貰っていました」
P「休憩中もか……熱心ですね」
千早「楓さんは飲み込みが早いですから、一緒に練習しているとモチベーションが上がりますね」
楓「いえ……まだまだです。皆さんの練習を見ていると……」
P「それでも、楓さんも上手くなってると思いますよ?」
P「千早は歌のことで嘘をついたり、お世辞を言ったりしませんから」
千早「言えないだけですけどね。フフ」
楓「……そのおかげで助かってます」
37: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/07/22(日) 18:02:52.89 ID:oOCMgWVD0
楓「でも、私の事より今は千早さん自身の事を……ライブ、ですよね?」
千早「ええ、定例の。楓さんは、その……」
楓「まだ立てるほどではないので、レッスンに集中です」
P「そうですね。今回はちょっと時間が足りないので」
P「でも次回はきっと大丈夫ですから、それまでに仕上げていきましょう」
楓「……はい、頑張りましょう」
楓(歌もダンスも、今よりもっと上手く……)
38: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/07/22(日) 18:03:43.32 ID:oOCMgWVD0
伊織「…………」
あずさ「…………」
美希「あずさ、デコちゃん。大丈夫?」
あずさ「えぇ……うふふ……」
伊織「……デコちゃん言うな」
美希「汗で光ってるの」
伊織「……うるさいわね」
美希「デコちゃん、きらきらしてるの」
伊織「…………覚えてなさいよ、美希」
亜美「いおりん、元気だね……」
伊織「……どこがよ」
P(あの3人は……竜宮のパートもあるからか。全体練習もあるのに……律子もハードだな)ハハハ
39: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/07/22(日) 18:05:38.82 ID:oOCMgWVD0
P「お疲れ。調子はどうだ?」
美希「ミキは絶好調だよ。ハニーに見てて貰いたかったの」
P「ごめんな、見ていてやれなくて。代わりにステージでしっかり見させて貰うよ」
美希「任せるの。キラキラしてるミキを見せてあげるね」
P「ああ、楽しみにしてるよ」ポンポン
美希「えへへ~♪」
伊織「…………」
美希「? デコちゃんも撫で撫でしてほしいの?」ナデナデ
伊織「あたしのチャーミングなおでこを撫でるんじゃないわよ……」
美希「手に力が入ってないの」フキフキ
伊織「……汗ぐらい自分で拭けるわよ」
40: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/07/22(日) 18:07:55.36 ID:oOCMgWVD0
P「伊織……大丈夫か?」
伊織「アンタにはこれが大丈夫に見えるの……?」
亜美「今日のりっちゃんはいつも以上に本気だったよ……」
P「亜美も……凄い顔してるぞ」
伊織「仕方ないわよ……今日の律子は鬼軍曹だったもの」
あずさ「ハードでしたね~」
亜美「眼鏡が光ってたよ……あれは鬼だったね」
美希「細かいところまで注意するお姑さんみたいだったの」
P「!? い、いや、それは……」
亜美「うんうん、ミキミキの言うとおりだよ……足が1センチ低いとか言うんだよ→?」
伊織「あれはストレスを発散してるのよ……指を伸ばす角度が5度違うって、そこまで見えてないでしょ……」
美希(……危険なの)コソコソ
亜美「これはまた、ステージに立たせるしかないっしょ」ヒソヒソ
伊織「にひひ、レッスンにも付き合わせてあげるわ」ヒソヒソ
あずさ(あら~……)
亜美「涙目のりっちゃんを激写だYO」ヒソヒソ
伊織「集中的にいじめ抜いてやるわ」ヒソヒソ
律子「アンタたち、聞こえてるわよ?」
伊・亜「「うひやぁっ!?」」
41: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/07/22(日) 18:33:13.96 ID:oOCMgWVD0
律子「今日はまた全体練習に戻るけど、明日も竜宮のレッスンはあるんだから……忘れないようにね」ニヤリ
伊織「……鬼だわ」
律子「鬼で結構。今日の課題は明日までに改善するわよ」
亜美「ううぅ、助けてミキミ……いつの間にかいないし」ガク
あずさ「が、頑張りましょう、亜美ちゃん」
伊織「……明日は律子も参加しなさいよね」
律子「私はみんなのチェックをしないといけないのよ」
律子「でも……そうね。3人が完璧になったら、私もレッスンをする余裕が出来るかもね」
あずさ「あ、あらあら~……大変ですね」
亜美「兄(C)……助けて」
P「えっと……あ、そうそう! 律子に相談が――」
42: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/07/22(日) 18:40:06.38 ID:oOCMgWVD0
楓(仲良いなあ……)
春香「仲良いですよね、律子さんたち」
楓「あ……ええ。律子さんもキリッとしていて、格好良いです」
春香「ですよね」クスクス
春香「でもあんなに怖い律子さんも、ステージに立つと可愛いんですよ? 勿論、普段も可愛いんですけど」
楓「……見てみたいです」
春香「みんなもそう思ってますよ。律子さんも竜宮小町のメンバーですし」
43: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/07/22(日) 18:41:56.96 ID:oOCMgWVD0
春香「今回は楓さんも……ですけど。次は――」
楓「大丈夫です。まだ足りないのは、私も分かってますから」
楓「歌も、ダンスもまだ……なので次回は一緒に」
春香「はいっ、楽しみにしてます。次は一緒に……楓さんも765プロの仲間ですからね」
楓(仲間……なんだか、新鮮な響き……)
楓「……頑張りましょう、春香さん」グッ
春香「頑張りましょう、楓さん」グッ
44: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/07/22(日) 18:46:46.77 ID:oOCMgWVD0
律子「――2人目ですか」
P「迷ったんだけどな……気が付いたらって感じで」
P「ただ、反応が鈍かったから、どうなるか……」
律子「プロデューサーがいと思ったのなら、声をかけて正解だと思いますよ?」
P「社長も同じように言ってくれたんだけどなあ……」
美希「ねえ、何の話?」
律子「仕事の話よ。美希はまだ気にしなくていいから」
美希「……怪しいの」ジィ
律子「怪しいって、何がよ」
美希「ハニーと内緒の話してるの」ブー
律子「はぁ……確かに内密の話だけど、美希が考えるような事じゃないわよ。本当に仕事の話」
45: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/07/22(日) 18:47:19.94 ID:oOCMgWVD0
律子「それと美希、抱きつくのは止めなさい」
美希「ハニーはこうされるの嫌?」
P「嫌って言うか……ほら、俺が汗かいてるし」
美希「美希は平気だよ。頑張った汗だもん、汚くないよ?」
律子「遠回りに離れろって言ってるのよ。ほら」グイ
美希「む~……それじゃあシャワー浴びた後だったらいいよね?」
P「はぁっ!? えっ……あ、ああ、そういう……いや駄目だから」
律子「はぁ……」
46: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/07/22(日) 18:49:38.58 ID:oOCMgWVD0
春香「あはは、美希は相変わらずだなあ……」
楓「……仲、いいんですね」
春香「う、うん。美希はね……」
楓「大胆ですね……抱きつくなんて……」
楓(抱きつくなときつく言う……)フフ
春香「楓さん?」キョトン
楓「……春香さんも抱きつきますか?」
春香「……へ?」
春香「え……ええぇっ!? しししないしない! そんなことしませんよっ」
楓「そうなんですか……」
楓(私の勘違い……? プロデューサーへの視線が……他の人もだけど)
47: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/07/22(日) 18:55:28.44 ID:oOCMgWVD0
<駅前・夜>
P「お疲れ様でした。明日はOFFですから、ゆっくりしてくださいね」
楓「ありがとうございます。でも……いいんでしょうか?」
P「時には休むことも必要ですよ。ここ1週間は休む暇がありませんでしたからね」
P「生活リズムが変わって疲れもあるでしょうし、ゆっくりしてください」
楓「……はい」
P「私生活も大切に、ですよ。アイドルとしての時間だけじゃ、いつか無理が来ちゃいますから」
楓「ええと……」
楓(そうじゃなくて……プロデューサーは明日も仕事よね。いつ休んでるんだろう)
楓(想像できない……前に休みでも、仕事のことを考えるって言ってたけど)
楓(プロデューサーって休みの日何してるんだろう……暇にしてるんだったら、どこかへ誘っても……)
P「楓さん? 何か忘れ物でもありましたか?」
楓「いえ…………何でも。お疲れ様でした」
P「はい、お疲れ様でした」
P(今誰かに呼ばれた気がしたけど…………気のせいかな?)
48: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/07/22(日) 18:57:44.23 ID:oOCMgWVD0
楓「休み……何しよう……」
楓(アイドル……見習いだけど、芸能界の人と仕事をするようになってから、なんだか密度が濃い……)
楓(ぼんやり生きてた今までより、よっぽど充実してる気がする……仕事が楽しい)
楓(でも……そのせいで他にしたいことが見つからない。プロデューサーとの仕事が中心だったから……それが楽しくて)
楓(なのに私、プロデューサーのこと、ほとんど知らないのよね……)
楓「そういえば……小鳥さんがビデオ、持ってたような……」
楓(私が入る前の765プロ……見てみようかな)
49: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/07/22(日) 18:58:43.83 ID:oOCMgWVD0
凜「あ……あの人……昼に会った……」
凜(765プロの……スカウトの人、だよね。声かけるべきかな……)
凜(けど、会っても話すことないし、返事も……決まってないから……)
凜(ううん、断ろうとは思ってるけど……断り切れない)
凜「アイドルに興味はありませんか……か」
凜(あの時の言葉がリフレインする……迷う度に思い出して……気になってきてる)
凜(アイドルなんて、意識したこともなかったのに、何が出来るかって考えてる)
凜「ステージの上で、輝ける人……」
凜(綺麗とか可愛いとか、そんな薄い告白の台詞とは違う……自分を信じてみたくなる言葉……)
凜「…………」
凜(初対面で名前を呼ぶような、軽薄な人じゃなさそうだし……)
凜(もう少し、話を聞いてみるのも良いかな……)
凜「あの――!?」
50: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/07/22(日) 18:59:15.27 ID:oOCMgWVD0
凜(どうして隠れたんだろう……気付いたら逃げてたけど……)
凜(……ああ、女の人と一緒だったからか。うん、いい判断だったかな)
凜「…………ま、そうだよね。あたしはアイドルとしてスカウトされただけだから」
凜(仕事じゃなかったら声かけてないだろうし、そこまでの関わりがあるわけじゃないしね)
凜(よく見えなかったけど、何となく綺麗な人って感じ……あの時の花は、あの人に渡したのかな)
凜(やっぱり、隠れて正解だったかな……彼女に勘違いさせたら悪いし。あっちは大人で私は15……そんなんじゃないけど)
凜「……帰ろ」
凜(今度あったら断ろう……名刺渡されたけど、電話かけるのも悪いよね)
51: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/07/22(日) 19:00:10.49 ID:oOCMgWVD0
<繁華街・昼>
凜(歌うのは好き。人から褒められるのも、悪い気はしない)
凜(でも、私にはカラオケで歌う方があってると思う。少なくとも、アイドルになるよりは)
凜(カラオケに行くからって、如月千早みたいに歌えるわけじゃなし……)
凜(765プロダクション……ケータイで調べれば、すぐに名前が出てくる)
凜(天海春香、星井美希、竜宮小町に……有名な人ばっかり)
凜(こんな人たちに混じってなんて無理……それに、こういう可愛い衣装は似合わないだろうし)
凜「だからって、格好良いのも……星井美希みたいにスタイル良くないとね」
?「ねえキミ――」
凜「ん……?」
52: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/07/22(日) 19:01:32.42 ID:oOCMgWVD0
男「ねえキミ、今ヒマ~?」
凜(……誰?)
凜(…………ああ、ナンパか)
男A「~~~~~」
男B「~~~~~」
凜(男2人で……カッコ悪。なんか話してるけど、よく聞き取れない。聞くつもりもないけど)
凜「ゴメン、興味ないから」
凜(こんなのにも掴まるし……今日はもう帰った方がいいかな)
凜(あの人の方がよっぽど……それは関係ないか)
53: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/07/22(日) 19:09:58.82 ID:oOCMgWVD0
男A「ねえねえ――」
男B「もうちょっと――」
凜(まだ何か言ってる……軽薄。そんなのに引っかかるように……見えるのかな?)
凜(ナンパは無視した方が楽と思ったけど、変にプライド刺激しちゃったのかな……大して無いくせに)
男A「~~~~~」
男B「~~~~~」
凜「……もう帰るんで」
男A「だったら俺が送っていくよ~?」
凜「……遠慮しておく」
凜(はあ……どっか行ってくれないかな)
凜(何言ってるのか耳に入ってこないけど、うっとうしいのは変わらない……)
凜(あの人なりの熱意があったら、足ぐらい止めてもいいけど――)
?「――ちょっといいですか?」
凜(はぁ、また増えた…………あ)
54: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/07/22(日) 19:14:27.00 ID:oOCMgWVD0
P「この子、これから用事があるので。離して貰っていいですか?」
凜(あれ、この人……)
男A「あぁ? 誰だおっさん」
P「俺はこの子の保護者ですよ。それとプロデューサーです」
凜「え……?」
凜(いつそんな……保護者でも――ああ、方便か)
凜(へえ、私のこと守ろうとしてくれてるんだ……1人で何とか出来るけど)
男B「邪魔すんなよおっさん」
P「おいおい、おっさんって……君らとそう変わらないぞ?」
P「それより、嫌がってる女の子を2人がかりでなんて、格好悪いぞ?」
凜(同感)
男B「うっせーよ!」
凜「!?」
P「…………」
凜(殴られ……)
P「……気は済んだか? この子は連れて帰るぞ?」
男B「ケッ、好きにしろよ」
男A「行こうぜ」
P「……ふぅ」
凜(はぁ……よかった)
55: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/07/22(日) 19:15:09.17 ID:oOCMgWVD0
P「いてて……」
凜「……大丈夫?」
P「ま、まあな、平気だ……眼鏡も曲がってないし」
凜「……お節介だね、アンタ。もしかして、助けたらいい返事して貰えると思った?」
P「いやあ……遠目からじゃ渋谷さんって気付かなかったし」
凜「……眼鏡してるのに、目悪いんだ。あってないんじゃないの?」
P「そういう意味じゃなくて……職業柄、渋谷さんみたいな年の子は守らないとって無意識にな」
凜「ふーん……誰でもいいんだ」
P「そういうわけじゃ……庇うのは当たり前だけど、知り合いだったらなおさらだよ」
凜「必要なかったけどね。1人でなんとか出来たし」
P「あはは、かもな」
凜「……そこは守ってやったって、自慢してもいいんじゃないの?」
P「どうだろうな。結局殴られ損だったかもしれないよ」
凜「……ま、いいや」
56: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/07/22(日) 19:16:02.36 ID:oOCMgWVD0
凜「それより、さっきの……プロデューサーって」
P「あー……咄嗟に出たのがそれだったんだよ。保護者よりはしっくりくるかなって」
P「そうやって言えば、こっちに注意が向くだろ?」
凜「それで殴られて怪我したら意味無いよ」
P「女の子が怪我するよりはいいだろ?」
凜「……ふーん。アイドルにスカウトしたいからじゃないの?」
P「それは関係ない……と思うぞ。動いたのは気付く前だったからな」
P「助けた後に、そういう気持ちがないとは言い切れないけど」
凜「……損な性格だね。隠せばいいのに」
P「いやあ……よく言われるよ」
57: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/07/22(日) 19:18:34.84 ID:oOCMgWVD0
凜「……殴られたとこ、痛くないの?」
P「少しだけだよ。こういうのは慣れてるからな」
凜「え……」
P「そこで退くなよ。我慢強いって意味だよ」
凜「……痛いのは変わらないでしょ?」
P「今回は気絶しなかったし、無事解決だから気にするなよ」
凜「……前回は?」
P「……無事解決したな」
凜「そっか……ふふっ」
凜「ちょっと待ってて。ハンカチ濡らしてくるから」
P「そんなに気を使わなくてもいいぞ?」
凜「私がそうしたいだけだよ。助けて貰ったお礼もしないとね」
58: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/07/22(日) 19:20:33.12 ID:oOCMgWVD0
凜「おまたせ。はい、冷やして」
P「ありがとな……ハンカチなら俺も持ってたんだけど」
凜「意外……男子ってそういうの持ってないと思ってた」
P「学生の時ならともかく、今は社会人だからな」
凜「……そっか。大人だもんね」
P「まあな。ところで渋谷さん、ジュースとコーヒー、どっちがいい?」
凜「……いつの間に買ってきたの?」
P「ハンカチ濡らしに行ってるとき」
凜「……それで冷やした方がいいんじゃない?」
P「こっちをありがたく使わせて貰うよ。ハンカチの方が柔らかいから痛くないからな」
凜「……そ」
59: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/07/22(日) 19:22:36.40 ID:oOCMgWVD0
P「それで、どっちがいい? ハンカチのお礼だから、好きな方選んでくれていいよ」
凜「……ジュース」
P「はい……でも意外だな、コーヒーだと思ったのに」
凜「高校生がそんなの飲まないよ」
P「大人っぽいから、飲むんじゃないかと思って」
凜「まだ15だよ?」
P「へえ……その割りには落ち着いてるな。もう少し上かと思った」
凜「アンタも……なんだか話し慣れてるよね。女子高生と話せる大人ってあんまりいないよ? 変な人以外だと」
P「アイドルには渋谷さんぐらいの年頃が多いからな――ちなみにその言い方だと、俺は変な人扱いされてないんだよな?」
凜「まあね……でもそっか、ギョーカイジンだもんね」
P「一応な。まだまだ新人だけど」
凜「そうなんだ……」
60: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/07/22(日) 19:28:40.08 ID:oOCMgWVD0
凜「アンタは……あんなとこで何してたの? 周り、ゲーセンとかばっかりなのに……サボり?」
P「違う違う。仕事の打ち合わせだよ。今度あの辺りのアミューズメント施設でイベントがあるから。その営業だ」
凜「イベント……地味だね。765のアイドルが出るの?」
P「ああ、まだ新人の子だけどな」
凜「へえ……新人……」
凜(他の子が見つかったんだ……)
61: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/07/22(日) 19:29:19.75 ID:oOCMgWVD0
凜「……いいの? こんな所で話してて」
P「今はちょっと休憩だよ。1本飲むぐらいはいいだろ?」
凜「そこはたばこじゃないの?」
P「たばこはなあ……苦手だし、アイドルにも悪いからな」
凜「そっか。気使ってるんだね」
P「俺の子供の頃は吸うのが格好いいって風潮だったけど、今は変わったよな」
凜「……その言い方、なんだかおじさんっぽい」
P「うっ……」
凜「普通にしてれば、人のいいお兄さんって感じだけど」
P「口を開くとってことか……はぁ」
凜「冗談だよ。そこまで気にしないでよ」
P「……でも気が付くとアラサーだからなあ……」
凜「…………」
62: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/07/22(日) 19:37:25.13 ID:oOCMgWVD0
凜「……ねえ、こうやって私と話してて、勘違いされないの?」
P「勘違いって……サボりと?」
凜「じゃなくてさ……彼女、かどうかは分からないけど……」
P「彼女? いないけど……んん?」
凜「昨日……綺麗な女の人と歩いてたでしょ? 背の高い……隠さなくてもいいよ」
P「隠すも何も……あ。もしかして、毛先が柔らかくウェーブしてる?」
凜「多分ね。夜だったから、よく分からなかったけど」
P「なるほど……楓さんね……」
凜「……いいの?」
P「いいも何も、彼女じゃないよ。あの人はアイドルだよ。ほら、さっき話題に出た新人の」
凜「…………ふーん」
63: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/07/22(日) 19:42:44.19 ID:oOCMgWVD0
凜「別の子がいるんだったら、私はもう要らないよね?」
P「要らないって……どうしてだ?」
凜「スカウトって、そんな何人もするものなの?」
凜「それとも、たくさん誘って1人売れればいいってこと?」
P「そうじゃないよ。声をかけたのは、アイドルとして輝けると思った人にだけだ」
P「だから渋谷さんで2人目だよ」
凜「その前の人が新人……?」
P「まだデビュー前だけどな」
凜「そっか」
64: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/07/22(日) 19:43:52.89 ID:oOCMgWVD0
凜「でもさ、その人がいるのに私も誘うの? 忙しいんじゃないの?」
P「それは……少しだけ。ただそれ以上に惹かれるものがあったからさ」
P「俺の苦労なんて、些細な問題だよ」
凜「……どこに惹かれたの?」
P「そうだな……雰囲気とか素質とか、オーラってよく言われるけど」
P「具体的にって言われると、その目かな」
凜「……目つき悪いって言われるよ」
P「そうかな? 冷めてそうに見えるけど、その奥に熱い気持ちがあるような……本気になったらとことん頑張りそうで」
P「そういう意志を感じたんだけど……違うかな」
凜「……胡散臭い」
P「ははは……上手く説明できなくて悪い」
P「でも、嘘じゃないよ」
凜「……そっか」
65: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/07/22(日) 19:46:38.71 ID:oOCMgWVD0
P「うちには他にもアイドルはいるけどさ、みんなそれぞれ違った魅力があるんだよ」
凜「知ってるよ、有名だから。みんなアイドルって感じだよね」
P「渋谷さんもそのアイドルになれると思うよ」
凜「……凜でいいよ」
凜「名字で、しかもさん付けって……年上の人からそう呼ばれるのは先生だけで間に合ってる」
P「……分かった。それじゃあ――」
P「凜、俺たちと一緒に、トップアイドルを目指さないか?」
凜「……アイドル、似合うと思う?」
P「思うよ」
凜「可愛いのは苦手だよ? ピンクの衣装来て、笑顔でいるなんて無理」
P「それも似合うと思うけど……それだけがアイドルじゃないよ。格好いいアイドルだっているんだから」
66: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/07/22(日) 19:47:15.39 ID:oOCMgWVD0
P「うちで言えば、そうだな――」
凜「如月千早……さんとか、四条貴音さん?」
P「そうなるな。もちろん、千早や貴音の通りにの真似をするわけじゃない」
P「凜には凜の魅力があるんだから。その部分をみんなにアピールしていけばいい」
P「アイドルは何か……なんて、人それぞれ、アイドルによって違ってるんだから」
凜「……考えたこともなかった」
P「だったら、これから考えていけばいいよ。そうやって考えて、悩みながら成長していくもんだから」
P「なんて、分かったようなこと言ってるけど、俺だってよく分からないんだよな。アイドルが何か……なんて」
P「でもな、いつだって、どんなアイドルにだって、共通してるものはあるんだよ」
凜「…………教えて」
P「応援してくれるファンに夢を与えることだよ」
凜「…………」
凜「……うん、それは分かる気がする」
凜(私がなりたいって思うのも、夢を与えて貰ってるのかな?)
67: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/07/22(日) 19:48:36.72 ID:oOCMgWVD0
凜「……なんとなくで、アイドルってなれるものなの?」
P「どうだろうな……俺がアイドルにするわけじゃなくて、舞台を整えるだけだからな」
凜「なれないのは私の責任?」
P「俺たちの……かな」
凜「一連託生、だっけ?」
P「凜がアイドルを目指すつもりなら、俺たちは765プロの仲間だからな。諦めない限り、全力でサポートするよ」
P「俺の夢は、みんな揃ってトップアイドルになってる所を見ることだからな」
凜「仲間か……好きだよ、そういうの」
凜「目指すからにはトップじゃないとね……手抜いたりとか、そういうの苦手だし」
凜「本気になってる人って格好いいと思う」
68: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/07/22(日) 20:07:27.96 ID:oOCMgWVD0
P「凜も格好いいアイドルを目指さないか? 俺たちと一緒に」
凜「……アイドルって、何をすればいいのかな?」
P「何でも。歌って、踊って、テレビに出て。凜がやりたいと思ってることは、出来るだけ叶えようと思ってるよ」
凜「それなら……歌がいいかな。ライブとか格好いいし」
P「それはもちろん。CDだって出せるさ。そのためには他のこともやらないといけないけど」
凜「……そっか。それじゃあ、よろしくね」
P「ああ、よろしく」
凜「……こういうときは、握手かな」
P「そうだな。頑張ろうな、凜」
凜「……うん、期待に応えてみせるよ」
凜(ここまで私を信じてくれるこの人に……)
69: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/07/22(日) 20:08:58.75 ID:oOCMgWVD0
<後日・765プロ>
凜「これで私も765プロのアイドル?」
P「もう少し手続きがいるけどな。あとは親御さんと社長の話がもう少し」
P「俺もまた話をするけど……ここで待ってるか?」
凜「……他に行く場所ってあるの?」
P「後でレッスンスタジオに行くつもりだよ。外に出てないアイドルはそっちにいるからな」
P「正式な挨拶は明日になるけど……どうする?」
凜「案内って……アンタがしてくれるの?」
P「俺はちょっと……それと、アンタはそろそろ変えて欲しいかな」
凜「……なんて呼べばいいの?」
P「そうだなあ……みんなはプロデューサーって呼んでくれるかな」
凜「……プロデューサだったの?」
P「おいおい、会ったときに言わなかったか?」
凜「スカウトだと思った」
P「兼任なんだよ……ちゃんと名刺にも書いてあったと思うんだけど」
凜「しっかり見てなかった……。有名だし、もっと大きい事務所だと思ったよ」
P「それは……まあ、スタッフの人数が……」
凜「ふーん、アンタが私のプロデューサーなんだ……」
70: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/07/22(日) 20:10:18.31 ID:oOCMgWVD0
P「不満だったら別のプロデューサーに代わるぞ?」
凜「ううん、代わらなくていい。私をスカウトしたのはプロデューサーなんだから」
凜「ちゃんと最後まで……私がトップになるまで面倒見てよね」
P「おう、任せろ」
P「あ……でも案内は別の人に――」
楓「プロデューサー……あら?」ガチャ
凜「あれ……」
凜(この人……前にストラップ配ってた人? 目が綺麗で印象に残ってたけど……)
凜(……私以外の新人アイドル)
楓「お疲れ様です……この方が、昨日話していた?」
P「ええ、渋谷凜です」
凜「……どうも」
楓「高垣楓です。これからよろしくお願いします」ペコリ
凜「あ……よ、よろしくお願いします」ペコ
71: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/07/22(日) 20:12:42.44 ID:oOCMgWVD0
P「楓さん、レッスンを見学してたんじゃ?」
楓「だったんですけど……プロデューサーは今忙しいですか?」
P「そうですね。社長と凜の親御さんが話しているので、それを待って……」
P「その後凜を案内しようと思ってるんですけど」
楓「……案内、私がしましょうか?」
楓「私も最近覚えましたし、プロデューサーが忙しいのなら、このままレッスンスタジオに戻りますから」
P「俺は嬉しいですけど……凜はどうだ?」
凜「……いいよ。お願いします」
楓「それではこちらへ……」
P(2人とも会話が弾む性格じゃないけど、気は合いそうかな)
72: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/07/22(日) 20:16:58.42 ID:oOCMgWVD0
<スタジオ前>
凜「あの、楓さん……でいいですか?」
楓「はい……私は凜さんとお呼びしても?」
凜「……さんはなくていいよ――いいですよ」
楓「それなら私も……同期ですから。話しやすいように」
凜「……よろしく、楓さん」
楓「はい、よろしく……」
楓(同期が入ってどっきどうき)
凜(綺麗な人だな……何考えてるんだろう)
73: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/07/22(日) 20:18:06.39 ID:oOCMgWVD0
凜「楓さん、ここは?」
楓「ダンススタジオですね。中で竜宮小町のみんながレッスン中です」
凜「竜宮……」
楓「他のみんなは外で仕事中なので……行きましょうか」
凜「……うん」
凜(竜宮小町……水瀬伊織、三浦あずさ、双海亜美)
凜(さんとか付けた方が……変かな? 芸能人って、テレビに出てないところだと性格変わるとか聞くけど……」
楓「……行きましょうか」ガチャ
74: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/07/22(日) 20:19:44.09 ID:oOCMgWVD0
律子「楓さん。プロデューサーは――あら、その子が渋谷凜さん?」
凜「ど……どうも。挨拶はまた改めてします。今日は……」
律子「聞いてるわよ。私は竜宮小町のプロデューサーをしてる秋月律子よ。律子って呼んでくれていいから」
律子「他のアイドルの事も見てるから、一緒に仕事をすることもあると思うわ」
律子「年齢でで先輩後輩っていうのはあんまり気にしないでいいわ。これからよろしくね、凜」
凜「よろしく……律子」
律子「ええ。それで楓さん、プロデューサーは?」
楓「もう少しかかるみたいです。なので私が案内することになりました」
律子「そう、お願いしますね。案内が終わったらまたここで――」
75: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/07/22(日) 20:20:31.68 ID:oOCMgWVD0
伊織「なに、アンタがプロデューサーの言ってた新人?」
亜美「やったねいおりん。これで亜美たちも先輩だよ」
律子「それを言ったら楓さんも後輩だけどね。年は15だから、亜美よりは年上よ」
あずさ「うふふ、可愛い子ですね~。私も先輩らしくしないと」
凜「あ……よろしくお願いします」
伊織「ええ、よろしく。私は水瀬伊織よ。凜って呼ばせて貰うわ」
亜美「亜美だよ→! よろしくね、しぶりん」
あずさ「三浦あずさです。これから一緒に頑張りましょうね、凜ちゃん」
凜「しぶり……よろしく」
凜(伊織に、亜美に、あずさ……さん。それに律子か)
律子(これは……そうね)キラン
76: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/07/22(日) 20:35:56.98 ID:oOCMgWVD0
律子「ねえ凜、よかったらレッスン見ていかない? 時間があったらだけど」
律子「普段レッスンなんて見る機会無いでしょうし、今後の参考になると思うわよ?」
凜「邪魔じゃないなら……楓さんもいい?」
楓「ええ、私もさっきまで見学してたから、続きを見たいです」
律子「OK、それじゃあ適当なところに座ってて」
律子「伊織、亜美、あずささん。後輩にいいところ見せるわよ」
伊織「ふん、言われなくても分かってるわよ。この伊織ちゃんの完璧なダンスを見習うといいわ」
亜美「んっふっふ、いおりんって見てる人いると、急に元気になるよね→」
あずさ「その内プロデューサーも覗きに来るかも知れないわよね~」
伊織「アイツは関係ないでしょ! いつだって全力でやるのよ!」
律子「そうよ。2人がいてもいなくても、本番のつもりでやりなさい」
律子(いい空気ね……今日は最後までこの調子で行きましょう)
77: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/07/22(日) 20:36:25.77 ID:oOCMgWVD0
楓(凄い……休憩に入る前はあんなに疲れてたのに、曲が始まったらあんなに……)
凜(七彩ボタン……本物だ……当たり前だけど)
凜(初めて生で見たけど……すごい……笑顔で、あんなに綺麗に踊るなんて)
凜(これがアイドルなんだ……私が目指す、トップアイドル)
律子「ほら亜美、足が遅れてるわよ。もっとテンポよく」
律子「あずささんも。もう少し膝あげて」
律子「伊織は指先ね。人差し指が離れてたわよ。ほらもう1回」
凜(あれで駄目なんて……みんなも満足してなさそう……)
凜(伊織も真美も、テレビで見せるのとは違う……)
凜(あずささんだって、おっとりした人かと思ったけど、あんなに真剣に……)
凜「…………」
78: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/07/22(日) 20:38:17.78 ID:oOCMgWVD0
<屋上>
楓「3人とも凄かったですね。あんな風に身体を動かせるものなんて……楽しそう」
凜「……自分に出来るのか、不安になるよね。ダンスなんて、中学の時に授業でやっただけだし……」
楓「……今って、授業でやるんですね」
凜「え……うん、まあ……」
楓「私は最近レッスンを始めたんですけど、難しいですね……」
凜「……でも、こなさないと、ステージには立てないよね。みんな、こうやって舞台裏で努力してるんだし」
楓「そうしないと、夢も叶いませんよね……苦手でも諦めずに……」
楓「みんなを見ていると、自分に出来るのか不安になりますけど……自分もと、そんな風にも思うんです」
凜「夢……」
79: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/07/22(日) 20:39:03.60 ID:oOCMgWVD0
凜「楓さんは……どうしてアイドルになろうと思ったの?」
楓「私は……自分の気持ちを、表現するのが苦手なので。そういう部分を変えたくて……」
楓「それと、感謝の気持ちを……歌に乗せて届けたいと思ったんです」
凜「歌で……それも楽しそう」
楓「凜はどうして?」
凜「私は……格好いいアイドルになりたくて、かな?」
凜「それと、やりたいことを見つけるため」
凜「将来の夢とか、まだ全然で……やってみたいことはあるけど、働いてる自分とかイメージ出来なかったから」
80: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/07/22(日) 20:39:30.14 ID:oOCMgWVD0
楓「凜の年ぐらいだと、それが普通だと思います」
凜「でも、それじゃつまんないから……本気になれることがしたかった」
楓「……アイドルは、本気になれる?」
凜「多分……中途半端は嫌だから。本気でトップを目指すよ」
楓「私もです。トップアイドルに……」
楓「これからよろしくお願いしますね。お互い、夢を叶えられるように」
凜「うん……みんなに負けないように頑張らないとね。他の事務所も、765の先輩たちにも」
楓「負けないように……テレビに出て、CD出して?」
凜「その先も……プロデューサーが言ってたよ? 夢はみんなまとめてって」
楓「私も聞きました……それじゃあ、お互いの夢を叶えたら、その先のは……」
楓・凜「「目指せ、トップアイドル」」
凜「ふふっ、協力して頑張ろうね、楓」
楓「夢が叶うまで……叶ってた後も。よろしく、凜」
END