1: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/07/09(火) 01:09:39.53 ID:XR0QQ6kh0
,。、_,。、
.く/!j´⌒ヾゝ
ん’ィハハハj’〉 エヘヘ……
. ゝノ´ヮ`ノノ
6: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/07/09(火) 01:15:49.80 ID:XR0QQ6kh0
伊織「小鳥は?」
貴音「急病につき本日は休みとの連絡が」
伊織「ふーん、あんたいつも響と一緒に出勤してるみたいだけど、そっちは?」
貴音「地方遠征で春香、やよい、真と共に」
伊織「へ、へえー。それじゃあんたは、今日の午後まで暇なのね」
貴音「? そうなりますが、わたくしの予定を?」
伊織「えと、さっきスケジュールボード確認した時にチラッと見えたのよ!」
貴音「はあ、そうですか」
伊織「そう、そうなのよ」
貴音「……お茶」
伊織「へぁい!? なな何!?」
貴音「伊織も、飲みますか? お茶を淹れようと思うのですが」
伊織「そ、そうね、お願い、しようかしらね」
7: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/07/09(火) 01:19:39.39 ID:XR0QQ6kh0
貴音「どうぞ」
伊織「ありがと。良い香りだわ」
貴音「ふふ、ありがとうございます。ずず……」
伊織「ずず……」
貴音「……ふぅ」
伊織「……ずず、ごく」
貴音「ずず……」
伊織「……」
貴音「何か、わたくしの顔に付いていますか?」
伊織「ごほっ……! けほっ、こほ……何でも、ない、から! 気にしないでちょうだい!」
貴音「そうですか。ずず……」
伊織「けほっ、えふん! えほん!」
貴音「ずず……ふぅ」
8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/07/09(火) 01:28:09.64 ID:XR0QQ6kh0
伊織「そう、お茶菓子よ。お茶菓子でも食べる?」
貴音「頂いてもよろしいのですか? ふふ、お心遣い、痛み入ります」
伊織「……羊羹とどら焼き、それと水まんじゅうを持って来たんだけど」
貴音「なんと、三種類も頂けるとは」
伊織「……」
貴音「……?」
伊織「いえ、何でもないわ。遠慮なく味わってちょうだい」
貴音「それでは早速、水まんじゅうから……見た目の涼やかさもさることながら、味わいもしつこさのない甘味で絶品ですね」
伊織「そう、喜んでもらえたみたいで嬉しいわ」
貴音「伊織は食べないのですか? 職人の技が光る、見事な逸品ですよ」
伊織「……」
貴音「伊織、伊織?」
伊織「ん!? あ、水まんじゅう!? 食べる、食べるわよ? うん」
貴音「大変に良い物を頂いてしまいましたね、いずれこのお礼は」
伊織「気にする必要はないわ、よ? あんたも765プロの一員になったわけ、だし」
12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/07/09(火) 01:38:46.68 ID:XR0QQ6kh0
貴音「もぐもぐ、ずず……」
伊織「もぐ……」
貴音「はぐはぐ……ずずず」
伊織「ずず……」
貴音「この羊羹、中に忍ばせた栗がなんとも心憎いですね。どら焼きも粗目の粒あんが心地良く」
伊織「そう、良かったわね。結構、あんたって食べる方なの?」
貴音「人並程度には、でしょうか。よく食べよく働きよく眠る、これを信条としています」
伊織「ふーん……」
貴音「伊織の信条はどのようなものですか? あるいは心掛けていることでも」
伊織「そう、ね。自分に正直に生きる、かしら。嘘って疲れると思わない?」
貴音「嘘はいけませんね。わたくしも度々、じいやから嘘つきは盗人の始まりと聞かされて育ちました」
伊織「ええ、嘘をつくなんて最低よね」
貴音「ええ、正直に生きて行きたいものです」
伊織「……」
貴音「……?」
19: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/07/09(火) 01:48:44.49 ID:XR0QQ6kh0
伊織「気を悪くしたら謝らせて。言葉尻捕まえるみたいだけど、その『生きて行きたい』っていうのは、今は出来てないってこと?」
貴音「そうですね、理想とは手の届きにくいもののようです。常日頃から正直に、と思っていても中々」
伊織「へ、へえー。それじゃあ今も、嘘とか隠し事とかあるわけ?」
貴音「ずず……それもまた人並に、といった所でしょうか。あまり嘘も隠し事も得意な方ではありませんが」
伊織「そうなの、ふうん。パッと見た感じだと、人を煙に巻いたりは得意そうな雰囲気だけれど」
貴音「はて、伊織の目にはそのように映りますか? やはり、この髪色のせいもあるのでしょうか……」
伊織「ああ、いや! 言い方がまずかったわ、悪い意味じゃなくて、ミステリアスっていうか!」
貴音「みすてりあす……な、なるほど」
伊織「つ、伝わった?」
貴音「多分、恐らく、きっと伝わりましたっ」
伊織「……嘘、下手ね」
貴音「……ふふ、ばれてしまいましたか」
伊織「そういう所よ! そこでしれっと澄まし顔に戻ったりするとこが煙に巻くのが上手そうって言ってんのよ!」
貴音「なんと」
21: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/07/09(火) 01:58:38.10 ID:XR0QQ6kh0
伊織「興奮して悪かったわ……お茶のお代わり、淹れて来るわね」
貴音「いえいえ、あれ程美味な茶菓子を頂きました。せめて茶坊主はわたくしが」
伊織「そ、そう? じゃあお願いするわね」
貴音「お任せ下さい……~♪」
伊織「っ……あんた、その歌」
貴音「む。失礼しました、あちらでは何度となく歌っていましたから。癖のようなものです、どうかお気になさらず」
伊織「そう、癖、なら仕方ない、わね」
貴音「甘いものの後です、少々濃い目に淹れましょうか?」
伊織「……お願いするわ」
貴音「お茶の時間はまこと、良いものですね。心が落ち着きます」
伊織「ええ、ほっとする感じは私も好きよ。心に余裕が出来るものね」
貴音「はい、ことに日本茶はそのように思います。紅茶、中国茶にもまた独特の安らぎがあって……お茶とは実に深き物ですね」
伊織「深い……そうね、底が見えないわ」
22: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/07/09(火) 02:09:39.40 ID:XR0QQ6kh0
伊織「765プロには、もう慣れた?」
貴音「誰もが皆よくしてくれています、最早我が家も同然、と言った心持ちですね」
伊織「そう、それは……良かったわ。ウチの連中、一癖も二癖もあるから」
貴音「ふふ、失礼ながらその通りですね。個性豊かな面々で飽きません」
伊織「いや、あんたも相当、ううん、なんでもないわ」
貴音「各々に得手不得手があり、それを互いに補い合うかのような」
伊織「!! ふえ、不得手っ、不得手って例えば、どんな?」
貴音「どうしたのですか? そのように身を乗り出しては危ないですよ?」
伊織「ああ、いや、なんでもないわ……ごほん、続けて?」
貴音「そうですね、例えば春香は少々おっちょこちょいな所が玉に瑕だとか」
伊織「……そ。確かにその辺りは不得手ね」
貴音「千早で言えば、何か気負い過ぎて今にも倒れてしまいそうな心中が見て取れる、だとか」
伊織「ふぅ、ん? 随分と、よく見てるのね?」
貴音「同じ事務所の仲間ですから」
伊織「……そう」
23: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/07/09(火) 02:20:08.45 ID:XR0QQ6kh0
貴音「雪歩などは少々心配ですね。男性が苦手というのは、その」
伊織「他の事務所が嫌がらせとか妨害とかしやすい、ってこと?」
貴音「いえ、そこまでは言いませんが。克服にも時間のかかりそうな類ですし、少々心配ではあります」
伊織「心配、ね。私も同意見だわ」
貴音「真もあれでいて繊細な一面がよく表れていますから、心無い言葉に傷付くこともあるのではと気掛かりです」
伊織「……本当に、よく見てるのね」
貴音「不思議ですか?」
伊織「ふし!? ぜ、全然不自然とか思ってないけど、なんで?」
貴音「あの、不自然ではなく不思議かと訊ねたのですが……?」
伊織「不思議、不思議ね! そう、別に不思議とは思ってないわ、そういうこともあるだろうしっ」
貴音「……お茶、もう一杯淹れましょうか? 何やら落ち着きを欠いているよう見受けられます」
伊織「そう、うん。喉も乾き気味だから、悪いけどまたお願いするわ」
24: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/07/09(火) 02:29:39.84 ID:XR0QQ6kh0
伊織「ずず……お茶淹れるの、上手いわよね。家でも?」
貴音「ええ、休みの日などはよく楽しんでいます。どちらかと言われれば紅茶党ではありますが」
伊織「へえ、そこは趣味が合いそうね。私も家では紅茶をよく飲むわ。メイドに一人、上手に淹れるのがいてね」
貴音「想像するだに優雅な光景ですね。わたくしも一人暮らしを始めるまでは、じいやに淹れてもらっていました」
伊織「あら、言葉遣いからそんな気はしてたけど、やっぱりどこかのお嬢様なの?」
貴音「ふふ、とっぷしぃくれっとです」
伊織「あ、そう……ふぅん」
貴音「邪魔でなければ、いずれ伊織の家で共にお茶の時間を楽しみたいものですね」
伊織「そうね、機会があれば、ずず……ええ、考えておくわ」
貴音「ふふ、ありがたいことです。友人の家に遊びに行くなど何年ぶりでしょうか」
伊織「厳しい家なのね?」
貴音「厳しかったわけではないのですが、幼少の頃は習い事が多かったものですから」
伊織「へえー……ふうん、そうなの」
25: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/07/09(火) 02:33:33.31 ID:XR0QQ6kh0
伊織「ずず……」
貴音「ずず……」
伊織「……」
貴音「……ふぅ」
伊織「……」
貴音「忙中閑あり、ですね」
伊織「……ええ、そうね」
貴音「ずず……」
伊織「……」
貴音「ずず……」
伊織「……ずずず」
貴音「……ふぅ」
伊織「……」
26: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/07/09(火) 02:46:24.08 ID:XR0QQ6kh0
伊織「……もう耐え切れない、失礼な話だって分かってるけど聞かせてもらうわ!」
貴音「はて、急に立ち上がってどうしました? それに、わたくしに聞きたいこととは」
伊織「あんたが本当にあの事務所と、961プロと縁を切ったのかってこと! 正直に言えばあんたがスパイじゃないかって疑ってるわ!」
貴音「すぱ……知っていますよ、それは麺類ですね?」
伊織「すっとぼけも大概にしなさいよ! スパイよ、ス、パ、イ! 間諜? 密偵って言えば伝わるの!?」
貴音「……ふむ」
伊織「要はあんたがうちの事務所の情報を集めて、961プロに持ち帰る気なんじゃないか心配なのよ! 分かる!?」
貴音「水瀬伊織、貴女の言うことも最もな考えです。しかし、わたくしはただ信じてもらう他にないことと分かって頂きたいです」
伊織「そんなことは百も承知、私も信じようと努力したわ! けどあんたは……何かと言うとトップシークレットだとか何とか!」
貴音「……」
伊織「もう少し、信じさせてよ! このバカー!!」
30: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/07/09(火) 03:06:46.53 ID:XR0QQ6kh0
伊織「……悪かったわ、私がおかしいってのは私だって分かってるわよ。もう忘れてちょうだい」
貴音「伊織のことを少々誤解していたようですね。粗野ながらも優しさと気品を隠し持っている人間だと思っていました」
伊織「はあ? それ、どういう意味よ……」
貴音「貴女は粗野かつ気品が溢れ出ており、頭が良く、そしてどうしようもない程優しくお人好しなのです」
伊織「っ……バッカじゃないの!? 私は女神様みたいに優しくても、お人好しなんかじゃないわ!」
貴音「お人好しでなければ、嫌がらせの一つでもしていたはずです。有無を言わせず追い出す方法は他にいくらもあったでしょう」
伊織「そ、そんなこと……」
貴音「自尊心からも優しさからもそんなことは出来ない。が故に、先の評価となるわけです」
伊織「……知った風な口、効かないでよ」
貴音「頭の良さ故にもしもを考えてしまう、貴女はそういう人ですよ。そしてお人好しの貴女にはこう言いましょう、信じなさい」
伊織「……」
貴音「わたくしも、貴女同様に嘘が苦手なのです。言いたくないことは秘密である、と逃げる位が関の山」
伊織「そんな、そんな一言で、あは、信じられるわけが……」
貴音「信じてしまうのでしょう? 馬鹿正直同士、よく分かります。信じたから、安心したから、貴女は今笑っている」
伊織「ぷっ……は、あはは! あんた、本当に意味分かんない! その口の上手さが怪しいのよ、将来は詐欺師だわ! あはははは!」
33: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/07/09(火) 03:21:48.57 ID:XR0QQ6kh0
貴音「ふふ、初めて心からの笑顔を見せてくれましたね。これまでは何か警戒するようなものが含まれていました」
伊織「あったり前よ、あんたみたいなのが一番信用ならないんだから。どこから何を嗅ぎつけるか分かったもんじゃないわ」
貴音「ふふ、ひどい言われようです。あまりそのような事を言われては泣いてしまいますよ?」
伊織「あんた女優志望だったっけ? いい線行くと思うわ、伊織ちゃんが保証してあげる」
貴音「ふふふ、ありがとうございます。貴女も中々の逸材ですよ、伊織」
伊織「千年に一人なのはとっくに知ってるわよ。はー、散々喋ったからお腹空いたわね……貴音、どう? お昼食べに行かない?」
貴音「是非ご一緒させて下さい、どこに行くのですか?」
伊織「ちょっと遠いけどタクシー捕まえて私行き着けのレストランかしらね。貴音は?」
貴音「そうですね、餃子の気分ですので餃子の王将でがっつりと行きたいところです」
伊織「あんたね……」
貴音「駄目ですか?」
それからしばらく、妙に高級感のある美少女二人組が餃子の王将にて度々目撃されたとかなんとか……。
おわり
41: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/07/09(火) 03:55:13.20 ID:16j4xDWf0
いおたかって無いよな。何でだろ。
乙