1: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/07/30(月) 23:26:19.38 ID:uBU2RbreO
――貴音の部屋
――22:40
あの方は、やはり覚えてはおられなかった。
ですが、それは仕方無き事。幾百、幾千の時間の流れ。それを、覚えている事の方が、特異なのですから。
貴音「…あなた様。今度こそ、わたくしは…」チラッ、
窓から見える月だけは、あの頃と、変わらぬ姿・耀きを放っています。
貴音「ふふっ。生とは、人の想いとは、まこと深いものですね」クスッ
あなた様。今度こそ…わたくしは、あなた様と…。
4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/07/30(月) 23:32:35.00 ID:uBU2RbreO
――765プロ事務所
――10:00
――ガチャッ、
P「おはようございまーす」
貴音「おはようございます。あなた様」チラッ、
P「おっ?貴音だけか?小鳥さんは?」
貴音「小鳥嬢でしたら、社長と共に先ほど出ていかれましたよ?」
P「…あ~、契約がどうこう言ってたなぁ…。小鳥さんも一緒だったのか」
貴音「ふふっ。あなた様?そのようなところで立っておられず、座られたらどうです?」
P「そうだな。…よいしょっ」ストン
貴音「…ふふっ」クスクス
P「貴音?」
貴音「…ふふっ。あなた様は、まこと変わられませんね」クスクス
6: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/07/30(月) 23:37:07.35 ID:uBU2RbreO
P「うん?」
貴音「いえ、何でもございませんよ?何でも」
P「そうか?」
貴音「はい」トテトテトテ、ストン
P「あぁ、そうだ。貴音、これ」ゴソゴソ、ゴソゴソ、スッ、
貴音「何でしょうか」チラッ、
貴音「…」
貴音「…京都…?」
P「そうだ。今度、写真集出すだろ?それの場所が決まってな。場所は、京都だ」
貴音「京都、ですか」
P「嫌か?」
貴音「…ふふっ。あなた様から頂いたお仕事、わたくしが断る筈ありません」
8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/07/30(月) 23:40:16.62 ID:uBU2RbreO
P「それでな?素のお前を撮りたいから、撮影スタッフは俺だけだ」
貴音「…はっ?」
P「大丈夫。昔、少しカメラをいじってた時期があるから」
貴音「…そういう問題なのでしょうか…」
P「大丈夫だって。俺が、一番お前を近くで見てるんだ。綺麗に撮ってやるさ」
貴音「…ふふっ。期待、しておりますよ?」クスクス
―――
――
―
11: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/07/30(月) 23:45:08.35 ID:uBU2RbreO
――京都駅
――11:30
P「ん~、京都だ!いやぁ、この時期の京都は暑いって聞いていたけど、そうでもないな。なぁ、貴音?」
貴音「そうですね。ここは、今も昔も変わりません」
P「ん?」
貴音「さぁ、あなた様?まずは、ホテルでチェックインを済ますのでしょう?早く、行きませんか?」
P「そうだな。さすがにこの荷物の量で歩き回るのは無理だし」
貴音「…ふふっ。無理をなさらずとも、わたくしの分はわたくしで持ちますよ?」クスクス
P「いいって。いいって。じゃあ、行こうか」
貴音「ふふっ。はい」クスッ
―――
――
―
14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/07/30(月) 23:49:20.57 ID:uBU2RbreO
――ホテル
――12:15
P「あ~、チェックインだなんだしてたら、もう昼過ぎかぁ…」グター
貴音「ふふっ。テーブルにへたったあなた様は、可愛いものがありますね」クスクス
P「ははっ。貴音にそう言われると、何だか恥ずかしいな」
貴音「…ところであなた様」スッ、
P「ん~?」グター
貴音「…おなか…空いてしまいました」グゥゥゥ
P「…ぷっ!あははっ!」
貴音「…むっ。そこまで笑わずとも…」プイッ
P「いや、悪い。悪い。じゃあ、昼メシにしようか」
貴音「…ぜひ」
―――
――
―
15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/07/30(月) 23:53:42.99 ID:uBU2RbreO
――京都市内
――14:00
P「やっぱり、旅先で食うメシは美味いな!」スタスタスタ
貴音「えぇ。まこと、美味でございました」トテトテトテ
P「じゃあ、貴音?」チラッ、
貴音「なんでございましょう?」チラッ、
P「そろそろ撮ろうと思うんだけど、どうかな?」
貴音「…ふふっ。よろしくお願いしますね?あなた様」ニコッ
P「っ!(やっぱり、貴音は綺麗だよな…)」パシャッ
貴音「…」
―――
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18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/07/30(月) 23:57:57.41 ID:uBU2RbreO
――寺社
――16:30
貴音「…ふぅ」フゥ…
P「あっ、ちょっとハイペース過ぎたか?」
貴音「いえ、大丈夫です」
P「うん。じゃあ少し休憩しようか。ちょうど、茶屋がそこにあるし」チラッ、
貴音「だから、大丈夫です…と」
P「ははっ。俺が疲れたんだよ。悪い、貴音。少し休憩な?」
貴音「…もぅっ。ふふっ」
少々強引なところも、あの頃とちっとも変わっておりませんね?あなた様。
―――
――
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21: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/07/31(火) 00:04:12.17 ID:NnZJaL/4O
――茶屋
P「うん。こういう軒先で飲むお茶も風情があっていいな」
貴音「えぇ。彼女の淹れるお茶も美味ですが、それとはまた違った美味です」コクッ
P「彼女…雪歩か?」ズズズ
貴音「えぇ。彼女の淹れるお茶は、飽きません」
P「アイツのお茶、美味いもんな」ニッ
貴音「…」ポー
貴音「…」ズズッ
貴音「…あつっ」ビクン
P「大丈夫か?」スッ、
貴音「ふふっ。笑ったあなた様に、見とれてしまいました」クスクス
P「おいおい…。で、大丈夫か?火傷とかしてないか?」
貴音「…ふふっ。ありがとうございます。大丈夫ですよ?あなた様」
時折見せるあなた様の心配そうな顔。わたくしは、そこも…。ふふっ。
22: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/07/31(火) 00:07:56.34 ID:NnZJaL/4O
――寺社
――18:00
P「少し暗くなってきたな。貴音、今日はここまでにしようか」
貴音「…」ジッ
P「ん?何を見てるんだ?」チラッ、
P「…凄いな。都会で見るのとは、また違った凄さだ」
貴音「…あなた様は」ボソッ
P「うん?」
貴音「…あなた様は、月はお好きですか?」
P「月?」
貴音「…はい」
P「そうだなぁ。どっちかっていうと、好き…かな?」
貴音「…ふふっ。そうですか」クスッ
P「…貴音?」
23: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/07/31(火) 00:09:49.02 ID:NnZJaL/4O
貴音「…昔話を、しましょうか」
―――
――
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むかしむかし、あるところに、ひとりのおんなのひとがいました。
26: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/07/31(火) 00:14:58.60 ID:NnZJaL/4O
おんなのひとは、それはそれはうつくしく、みやこでしらないひとはいないほどでした。
ですが、おんなのひとはからだがよわく、おやしきから、いちどもそとにでることがゆるされませんでした。
そんなあるよるのこと。
おんなのひとは、ものおとでめをさましました。
28: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/07/31(火) 00:18:37.97 ID:NnZJaL/4O
そこにいたのは、おんなのひとのおせわがかりのおとこのひとでした。
はなしをきくと、おとこのひとは、おんなのひとのことがすきで、まいばんねがおをみていたそうです。
そこから、ふたりはまいばんつきがみえるころ、ふたりでないしょのおはなしをするようになったのです。
ふたりは、あっというまになかよくなり、あいしあうようになりました。
…ですが。
31: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/07/31(火) 00:21:42.00 ID:NnZJaL/4O
おんなのひとは、びょうきでしんでしまいました。ひとつの、やくそくをのこして。
―――
――
―
貴音「…おしまい」
P「で、その約束って?」
貴音「…ふふっ。知りたいですか?」
P「…いや、後味悪いだろ。中途半端で終わられたら…」
貴音「…ふふっ。あなた様?」スッ、
P「ん?」
貴音「…今夜も、月が綺麗ですね」クスクス
33: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/07/31(火) 00:26:45.19 ID:NnZJaL/4O
貴音「おんなのひとと、おとこのひとがかわしたやくそく」
貴音「それは」
貴音「うまれかわっても、また、つきをみながらおはなしをしよう」
貴音「…だったそうです」
P「ははっ。昔話にありきたりなラストだな」
貴音「…ふふっ。そうですか?」クスクス
P「貴音はどう思う?」
貴音「…わたくし、ですか?」
P「そう。自分がその女の人だったとして、生まれ変わっても会えるって信じられるか?」
貴音「…ふふっ。そうですねぇ…信じたい、です」
P「なんで?」
貴音「…だって」
37: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/07/31(火) 00:31:40.68 ID:NnZJaL/4O
貴音「素敵なことではありませんか。生死を越えての約束」
P「…ははっ。貴音は見かけによらず、乙女チックだからな」
貴音「…ふふっ。あなた様?」
P「…うん?」
貴音「月を見ながら、帰りましょうか」
P「…そうだな。こんな綺麗なんだし」
貴音「…くすっ。おしゃべりも、ですよ?」
P「ははっ。分かった。分かった」
貴音「まこと…人の想いは、生は、深いものです。いくら越えても、変わりません」ボソッ
P「たかねー?おいてくぞー?」スタスタスタ
貴音「あっ!お待ちになってください、あなた様!」トテトテトテ
おわり
39: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/07/31(火) 00:33:28.60 ID:NnZJaL/4O
はい。ここまでありがとうございました
44: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/07/31(火) 00:37:49.88 ID:NnZJaL/4O
>>34アイマスだったら二日に一回ぐらいのペースで書いてる