1: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/11/23(金) 00:09:10.70 ID:8pOj/Qi6O
――Pの部屋・ベランダ
――00:06
貴音「あなた様、見てください」クイクイ
P「うん?どうした?」
貴音「今宵の月は、きいろくて、まんまるで…ふふっ」クスクス
P「どうした?いきなり笑いだして」
貴音「ふふっ。今宵の月を見ていたら、先ほど食したぐれーぷふるーつを思い出しました」クスクス
P「貴音は食いしんぼだなぁ」ナデナデ
2: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/11/23(金) 00:12:48.65 ID:8pOj/Qi6O
貴音「むっ。では、あの月は何色ですか?」
P「きいろ、だな」
貴音「では、形は?」
P「…まんまる」
貴音「…ねっ?」クスッ
P「なんか、悔しい」
貴音「ふふっ。あなた様?」
P「ん?」
貴音「ぶいっ」
P「かわいい」ナデナデ
貴音「///」
5: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/11/23(金) 00:16:20.84 ID:8pOj/Qi6O
貴音「そういえば…」
P「うん?」
貴音「時折、月がぴんく色になる時もありますよね」
P「空気が乾燥してる時、たまーにな」
貴音「美味しそうですよね…」
P「ピンクグレープフルーツ?」
貴音「ふふっ。あなた様も、風情が分かるようになってきましたね」
P「風情か?」
貴音「えぇ。風情ですとも」
貴音「少なくとも、わたくしにとっては」クスクス
P「あっ、月が雲に隠れた」
7: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/11/23(金) 00:20:26.95 ID:8pOj/Qi6O
貴音「そうです。月と言えば」
P「今度はなんだ?」
貴音「ふふっ。あなた様?」
P「な、なんだ?」
貴音「三日月が、お椀の様になっている時があるのをご存知ですか?」
P「あぁ、たまーにあるなぁ」
貴音「それ、何と言うかご存知ですか?」
P「名前とか、あるんだ?」
貴音「ふふっ。受け月、というのです」
P「受け月?」
貴音「月が、受け月の時に願掛けをすると、月のお椀が受け入れてくれるそうですよ?」
貴音「あなた様なら、何を願いますか?」
9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/11/23(金) 00:24:08.82 ID:8pOj/Qi6O
P「俺か?そうだなぁ…俺なら、皆のアイドル活動がいつまでも続いていきますように、って感じかな?」
貴音「ふふっ。そういうところは、あなた様らしいですね」クスッ
P「じゃあ貴音なら、どんな願掛けをする?」
貴音「わたくしですか?」
P「そう。お前の大好きな月に、何を願う?」
貴音「…」
貴音「ふふっ。願いとは、口に出してしまっては、いけないそうですよ?」クスクス
P「あっ、ずるい」
貴音「ふふっ。残念でした」クスクス
10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/11/23(金) 00:27:03.04 ID:8pOj/Qi6O
貴音「はぁ…息が、白いですね」
P「寒い?」
貴音「少々…」
P「て、繋ごうか」ギュッ
貴音「はい」ギュッ
貴音「ふふっ。温かいですね、あなた様のては」
P「貴音のてもな」
貴音「あっ」
P「どうした?」
貴音「月が、また顔を出しましたよ?」
P「そういえば、貴音?」
貴音「なんでしょう?」
11: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/11/23(金) 00:30:58.24 ID:8pOj/Qi6O
P「こんな昔話、知ってるか?」
貴音「?」
P「むかしむかし、ある国に、魔女とお姫様がおりました」
P「お姫様は、その魔女に言いました」
P「『空を飛んでみたい』」
貴音「空、ですか」
P「魔女は、お姫様の願いを叶えてあげました」
貴音「ふふっ。良い魔女、なのですね」
P「その魔女が掛けた魔法」
P「それは」
13: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/11/23(金) 00:34:31.88 ID:8pOj/Qi6O
貴音「それは?」
P「…忘れた」
貴音「なんですか…」
P「けれど」
貴音「けれど?」
P「今でも、そのお姫様は空を飛んでいるそうだ」
P「ふわふわ、ふわふわ」
貴音「ふふっ。さぞかし、気持ちが良い事でしょうね」クスクス
P「そうだなぁ…俺も、なんにも考えないでふわふわふわふわ飛んでいたいよ」
貴音「なりませんよ?あなた様」コツン
P「いてっ」
貴音「あなた様は、わたくしと共に歩いていくのですから」ギュッ
P「ははっ。分かってるさ」
15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/11/23(金) 00:37:30.50 ID:8pOj/Qi6O
貴音「さて、あなた様。ここでひとつ、魔法を」
P「魔法?」
貴音「実はわたくしは、魔法使いだったのです」クスッ
P「はっ?」
貴音「お覚悟は、良いですか?」
P「お、おぅ!」
貴音「では、まいりますよ?」
貴音「…」
17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/11/23(金) 00:42:03.32 ID:8pOj/Qi6O
貴音「眼を、瞑っていてくださいまし」
P「…わかった」
貴音「ふふっ。そう…そのまま…」
貴音「んむっ…」チュッ
P「…」
貴音「ふふっ。どうですか?わたくしにしか使えない、魔法」クスクス
P「はぁ…」ハァ…
貴音「むっ。なんですか?そのため息は」ムスッ
P「いいか?貴音」
貴音「…なんでしょう」ムスッ
P「そんな魔法」ギュッ
貴音「んむっ…」チュッ
P「俺も、使えるんだよ」
貴音「…あなた様は、いけずです」プイッ
19: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/11/23(金) 00:45:12.69 ID:8pOj/Qi6O
P「でも、掛かったろ?」
貴音「…ふふっ。元から、ですが」クスクス
P「お互い様だな」
貴音「ですね」
P・貴音「「…」」ギュッ
貴音「月が、本当に綺麗です…」
P「そうだなぁ…」
貴音「明日も」
P「うん?」
貴音「明日も、見えるでしょうか」
P「月?」
貴音「はい」
P「どうだろうなぁ…雨、降るみたいだからな」
貴音「雨、ですか…」
P「雨は、嫌い?」
23: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/11/23(金) 00:48:30.91 ID:8pOj/Qi6O
貴音「時折、なら」
P「そりゃ、毎日が雨なら嫌だよな」
貴音「時折、雨の音で眠くなってしまう時があります」
貴音「しとしと、しとしと、」
P「俺は、貴音の声で眠くなるよ」
貴音「それは、褒めてくださっているのでしょうか」
P「もちろん」ナデナデ
貴音「ならば」
P「ならば?」
貴音「わたくしと共に歩むあなた様に、心地よい夢を見せましょう」
24: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/11/23(金) 00:53:23.49 ID:8pOj/Qi6O
P「貴音となら、いい夢が見れそうだ」
貴音「見せますとも」
P「今夜の貴音は、強気だな」
貴音「そうですか?」
P「それも、あの月のせい?」
貴音「ふふっ。そうかもしれませんね」クスッ
貴音「なんせわたくしは」
P「ん?」
貴音「月の女王、ですから」クスクス
P「お前が言うと、それもアリかなって思うよ」
27: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/11/23(金) 00:58:56.54 ID:8pOj/Qi6O
貴音「ふふっ。月は人を惑わすと云いますが、今宵はわたくしがあなた様を惑わしましょう」
貴音「千夜を語る、一夜の話」
P「あ、それ知ってる。千夜一夜物語」
貴音「ふふっ。わたくしがしぇへらざーどなら、あなた様は」
P「シャフリヤール、って?」
貴音「ご明察」クスクス
P「よせやい」
貴音「ふふっ」
29: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/11/23(金) 01:03:28.20 ID:8pOj/Qi6O
P「俺は、そんな男じゃないと思うんだけどなぁ」
貴音「ふふっ。わたくしは、あなた様に囚われてしまいましたから」クスクス
P「人聞きの悪い…」
貴音「ふふっ。ですが、事実ですから」クスクス
P「そうですか…」
貴音「なんなら、それもいつか語りましょうか」
P「やめてください」
貴音「ふふっ。今宵は、楽しいですね」
P「今夜の貴音は意地悪だ」
貴音「いつもの、仕返しです」クスクス
30: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/11/23(金) 01:08:55.22 ID:8pOj/Qi6O
貴音「さて、もう一時間もいるのですね」
P「中、入ろうか」
貴音「そうですね。明日は…いえ、もう今日ですか。今日はお互いにお休み」
P「ゆっくり、過ごそうな」ナデナデ
貴音「はい。ですが、」
P「ですが、何?」
貴音「お布団の中でも、まだまだお話は出来ますよね?」クスクス
P「…」ハァ…
P「こうなったら、今夜はとことん付き合うよ」スタスタスタ
貴音「えぇ。今夜は、語り合いたい気分なのです」トテトテトテ
――カラララッ、ピシャッ
おわり
32: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/11/23(金) 01:10:14.38 ID:8pOj/Qi6O
はい。ここまでありがとうございました