9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/06 06:14:11 ID:h919noyr0
響「ふー、今日も一日頑張ったなー。早く帰ってゆっくり休もう」
???「……」
響「あれ、電灯壊れてるのかな。うう、この道、暗いとすごく不気味だな……」
???「フシュー……フシュー……」
響「うぎゃー!? い、今なんか、動いた!?」
???「……」
響「……なんだ、壊れた傘が風で揺れてただけか。こんな道端に捨てて行くなんて、マナー悪いよ」
???「フシュー……フシュー……グジュ、ブブブ」
響「うう、さっさと帰ろ! 怖くない怖くない!」
???「ゴアァッ!!」
響「きゃあ!?」
10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/06 06:19:04 ID:h919noyr0
響「うっ……あれ、自分……」
響「帰り道で、えーと……痛っ」
響「なんだこれ、腕に刺さって……プラスチック、いや」
響「……骨、かな。牙、みたいな」
響「せーの……えいっ! ててて……」
響「と、とにかく帰ろう。消毒しないと」
響「多分転んで頭ぶつけたとかそんなのだよねっ」
13: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/06 06:27:39 ID:h919noyr0
響「ただいまー! すぐご飯にするからもうちょっとだけ我慢だぞ!」
いぬ美「ばオカうっ、エわうリ!」
響「? いぬ美、なんか鳴き声変じゃないか? 風邪でもひいたのか?」
いぬ美「?」
響「……気のせいかな? 」
いぬ美「くゴぅハン~ん」
響「あ、そうだったね。ご飯ご飯ーっとその前に消毒しなきゃ! ……あれ? いぬ美今、人間の言葉喋ってなかった?」
いぬ美「?」
響「その首傾げるポーズ可愛いなあ。ってそうじゃなくて」
いぬ美「はっ、はっ、はっ」
響「疲れてるだけだよね、多分」
14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/06 06:31:23 ID:h919noyr0
響「すっかり怪我のこと忘れてお風呂入っちゃったけど良かったのかな、別にいいか」
響「絆創膏も貼ったしこれで大丈夫だよね。もう電気消すぞー」
いぬ美「わイイふっヨ」
響「ん、おやすみー」
響「……」
響「……んぅ」
響「あづい……」
響「……」
響「くぅ、くぅ……」
15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/06 06:37:25 ID:h919noyr0
響「ふあぁ……あふ。おはよういぬ美」
いぬ美「おはよう!」
ブタ太「おっす」
響「うん、ブタ太もおはよー……ん?」
オウ助「グッモーニーン、ご主人それ冬毛?」
響「あ、おはようオウ助。気のせいかな、なんかみんな人間の言葉喋ってないか?」
ねこ吉「別にいつも通りだよ。おはよう、響」
響「おはよねこ吉、いつもならまだ寝てる時間なのに今日は早起きだな」
モモ次郎「お姉ちゃん、早くご飯にしようよ」
響「あ、うん。ちょっと待っててね、モモ次郎」
16: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/06 06:46:44 ID:h919noyr0
響「顔洗って目覚、まそ、う……うぎゃー!?」
ワニ子「なによ、朝から騒がしい」
響「ワニ子ー! 自分、自分無駄毛がいっぱい!」
うさ江「無駄じゃないでしょ、あたしらも生えてるよ? ほら、昨日いぬ美姉ちゃんに毛繕いしてもらったの」
響「でもうさ江、自分人間だぞ!?」
うさ江「人も猿の仲間みたいなもんでしょ」
響「っていうかなんだこの手! 爪が! に、肉球が!」
シマ男「助けてー! 響助けてー!」
響「あ、こらヘビ香! 家族を食べようとしちゃ駄目でしょ!」
ヘビ香「ヘビ香はこっちだよ、響姉。その子誰? 新入り? ヘビ香も妹欲しいって思ってたんだー」
響「あ、あれ? なんでそんなとこにヘビ香がいるの? この子誰?」
蛇「自分、我那覇へびきだぞ!」
響「うぎゃー!? 自分の体から生えてるぞー!?」
17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/06 06:55:27 ID:h919noyr0
響「なんか、もう……疲れた……」
いぬ美「元気出して、響。ほら、骨貸してあげるから」
響「ありがと、いぬ美……気持ちだけ受け取っておくぞ……」
ねこ吉「響のその手足、あれみたいだな。この前テレビで見た」
ブタ太「虎ってやつか。姉貴は人間だと思ってたが違ったんだな」
響「人間だし! っていうか虎も尻尾は蛇じゃないし!」
ハム蔵「鵺だな」
響「知っているのか、ハム蔵!?」
ハム蔵「古くは源平の時代の妖怪で、頭は猿、胴は狸、手足は虎で尾は蛇。その鳴き声はトラツグミに似て、夜な夜な鳴いては時の天皇を苦しめたという……」
響「音痴ってこと?」
シマ男「アイドル続けられないね」
響「うぎゃー!? それは困るぞー!!」
19: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/06 07:06:03 ID:h919noyr0
響「ハム蔵、自分元に戻れないのか?」
ハム蔵「さすがの私も人間が鵺に変わるなんて話は聞いたことがないな。その逆もまた然りだ」
響「ハム蔵が知らないなら多分誰も知らないよね……どうしよう」
モモ次郎「お姉ちゃん、アイドルやめるの?」
ワニ子「あんたは何も心配しなくていいわ。響、とにかく一回歌ってみなさいな」
響「わ、分かった。もしかしたら音痴になってないかも知れないよね! すぅ……君まーでとーどきたーいはーだーしーのまーまーでー♪」
いぬ美「……だ、大丈夫だと思う、わ?」
ヘビ香「ちょっと独特な雰囲気かも」
オウ助「ニューウェーブ」
ねこ吉「ヘタ○ソ」
響「Oh……」
22: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/06 07:14:29 ID:h919noyr0
響「で、でも練習すればすぐに元通り歌えるよね!」
モモ次郎「お姉ちゃん、お腹空いたー」
響「あ、ごめん! すぐ朝ごはんにするからあっと、と、お、うわあ!」
ねこ吉「派手にすっ転んだな、生きてるか?」
響「あたた……なんかさっきから歩きにくい気がしてたけど足も虎になってるんだった」
うさ江「その感じだと得意のダンスも無理じゃない? それより私の華麗なダンスを見て! ららんららんららんらうっさぎっのダッンス♪」
響「歌は音痴、ダンスも踊れない、見た目はなんかよく分からないごちゃ混ぜ……い、生き残れない! 自分、アイドル界を生き残れないぞ!?」
23: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/06 07:18:27 ID:h919noyr0
高木「イメチェンという奴だね、いいじゃないか。どんどんやってくれたまえ!」
響「えっ」
高木「歌もダンスも練習すれば大丈夫、心配はいらないよ。見た目も……少々街は歩き辛いがそれは我那覇君の個性だ。大事にしなさい」
響「えっ」
高木「妖怪系アイドル……うん、ティンとくるものがあるよ。トップアイドルも夢ではない、これからも頑張ってくれたまえ!」
響「えっ」
へびき「任せてほしいぞ! なんたって自分、完璧だからな!」
響「ちょっと黙って」
へびき「はい」
24: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/06 07:26:54 ID:h919noyr0
P「そうか、大変だったっていうか、大変だな」
響「うん。ねえ、自分、本当にこんな体でアイドル続けられるのかな」
P「響……」
響「ぐす、うう……もう、島に帰ろうかな……」
P「……響!」
響「え? ぷ、プロデューサー?」
P「俺が必ず、お前をトップアイドルにしてみせる! だから泣くな!」
響「無理だぞ、こんな、こんな体でなんて」
P「俺はやると言ったらやる! 絶対だ!」
響「な、何の根拠があってそんな自信満々なんだよ」
P「根拠なんかない! でも絶対トップアイドルにしてみせる! 響、お前はどうなんだ! アイドル続けたいか? トップアイドルになりたいか!?」
響「それは、だって、こんなことになってなかったら……なり、たい……」
P「聞こえない!」
響「……っ、なりたい! 自分、自分……トップアイドルに、なりたい!」
27: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/06 07:37:54 ID:h919noyr0
それからの自分は誰よりも努力したぞ、でも中々結果は出なくて……
そんな時、支えてくれたのはファンのみんな、家族のみんな、事務所のみんなだったんだ
頑張れって、負けるなって、絶対出来るって
そんなありふれた言葉だけど、すごく力をもらったんだ
何度もくじけそうになった、その度に立ち上がれた、前を向けた
奇異の目を向けられることも沢山あったし、変な噂もいっぱい流された
それでも自分を好きでいてくれる人の為に頑張れた
そうして、トップアイドル
自分は、登り詰めたんだ
キラキラ輝く世界……その頂点まで!
ここに居続けるのは、これまでよりもっと難しいかもしれない
でも大丈夫
自分には頼りになるプロデューサーがいるし、それに……
へびき「なんてったって自分、完璧だからな!」
響「君じゃないでしょ!」
28: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/06 07:51:34 ID:h919noyr0
P「響、今度のアリーナでのライブだけど」
響「あ、詳細決まったのか?」
P「うん、会議にハム蔵の意見も出してもらっただろ? 設備も揃ってるし、あれやることになったぞ」
響「黒雲に見たてたゴンドラに乗って、頼政の鵺退治の小芝居からクッションへダイブ、着替えてNext Lifeへ、かー」
P「ライブの度にハム蔵にアドバイスもらってるけど、今回のは特に妙案だったよなあ」
響「ハム蔵も絶対観客沸かせられるって自信満々だったぞ」
P「うんうん、今から楽しみだなあ」
響「楽しそうにするのはいいけど安全確認はしっかりやってよね」
P「おう、大船に乗ったつもりでいろ!」
31: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/06 08:03:24 ID:h919noyr0
響「今日はまだまだら行っちゃうぞー!」
観客「わああああああああ!!」
響(みんな楽しんでるみたいだな。よし、ゴンドラに乗って……)
観客「おおおおおおおおおおお!!」
響「わっはっはっはっは、今宵も人間どもにこの鵺様の歌声を聞かせてやろうぞ!」
響(ここで頼政の格好したスタッフさんが来る、と……)
頼政「待てーい!」
響「む、その出で立ちは源氏の小僧! その背中の弓で射るつもりか? 人間の矢が当たると思っているとは、片腹痛いわ!」
頼政「ならば試してみよ!」
響「わっはっはっはっはっ、いつでも矢を放て! その間がお前の喉笛を噛み切ってくれるわ!」
響(あれ? 台本じゃ矢はつがえないで弦の音だけ鳴らすって書いてたのに、矢が……)
頼政「おのれ鵺! 人々に仇なす物の怪よ、観念しろ! えいやっ!」
響「うぐっ!?」
響(あ……ダメ、だ……)
32: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/06 08:11:35 ID:h919noyr0
響「ん。ここ、は?」
P「響! 目が覚めたか! 良かった……本当に、良かった……!」
響「プロデューサー? あれ、なんで泣いて……あ、ライブは!?」
P「小芝居の後、クッションに落ちた響は意識を失ってたんだ。すぐに中止を伝えて、この病院に……今の今までずっと寝てたんだ」
響「今まで、って……そんなに時間が経ってるのか?」
P「三日間、目を覚まさなかった。俺、俺はこのまま、ぐす、響が目覚めないんじゃないかって……!」
響「ああもう、泣かないでよ」
P「すん、うう、ありがとう響。それでな、響の体なんだけど」
響「体? あれ? そういえばこの手……」
33: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/06 08:17:59 ID:h919noyr0
P「ああ、戻った。響の体は、普通の人間の体に戻ったんだ」
響「なんで……」
P「分からない。ただ、小芝居が終わってクッションに落ちた時にはもう」
響「……はは、戻れたんだ」
P「うん、響は人間の体に戻った」
響「はは、あはははは! あはははははは!」
P「はっはっはっはっは」
響「あははは、ぐす、ははは、うう……! すん、はは、戻った、戻ったんだ、ひっく、えへ、えへへ……」
P「響……良かったなあ、響」
響「うん、うん……!」
35: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/06 08:33:37 ID:h919noyr0
響「ハム蔵の言葉もあの時みたいにハッキリとは分からなくなっちゃったなあ」
ハム蔵「ヂュヂュイヂュイヂュイ!」
響「うーん、つまり真似であっても頼政が退治したことには変わらないってこと?」
ハム蔵「ヂュイ!」
響「なんか分かったような分からないような話だなあ。でもハム蔵がそう言うならそうなんだろうな。ただいまー」
いぬ美「ばう!」
ねこ吉「にゃー」
ブタ太「ぶひぶひ」
モモ次郎「キキッ」
シマ男「チチッ」
ヘビ香「シャー」
オウ助「オカエリ! オカエリ!」
うさ江「うさー」
ワニ子「ワニー」
響「うん、ただいま。すぐにご飯にするからね」
42: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/06 08:50:29 ID:h919noyr0
;” class=”anchor”>>>35の前に入れ忘れた
響「離れてーいく螺旋の記ー憶が時を超ーえてまた二人巡り合わせるまでー♪」
審査員「あの子いいんじゃないか?」
審査員「あら、虎のような力強さがあるわね」
審査員「鳥を思わせる歌声ですね」
審査員「蛇のようなしなやかさがヘヴィな振り付けを可能にしてるんだなヨーチェケヨー!」
響「ふぅ……ありがとうございましたー!」
審査員「ええと君、君の為に特別に枠作るから本番もよろしくね」
響「は、はい! ありがとうございます! 自分、精一杯頑張るぞ!」
P「こ、こら! 敬語敬語!」
審査員「はっはっは、それじゃ頑張ってね」
響「やったぞプロデューサー!」
P「ああ、すごいぞ響!」
響(あの時の経験は今も活きてるんだ……自分、もっともっと完璧になれるぞ!)
38: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/06 08:37:52 ID:h919noyr0
亜美「あれ、お姫ちん何その箱?」
貴音「先日我が家から逃げ出した者を、故郷の民が偶然捕らえたと報せがあったのです。その者を連れ帰る為の箱です」
亜美「へー、お姫ちんもペット飼ってたんだー」
貴音「報せによると牙が一本抜け落ちているとのことで、大変心配なのです」
亜美「牙? わんこなの?」
貴音「あの子は翼も傷つきやすいので、怪我などしていなければよいのですが」
亜美「つ、翼?」
貴音「尾鰭周りの鱗などは一度亜美にも見て頂きたい程美しいのですよ」
亜美「ちょ、お姫ちん一体何を逃がしちゃったの!?」
貴音「気になるなら明日にでも事務所に連れて」
亜美「いい、やっぱいい! 亜美別に知りたくないっていうか死にたくない!」
貴音「そうですか、残念です。とても可愛らしいのですが」
亜美「デンジャラス過ぎっしょー……あ、そうだお姫ちん。ひびきんならきっと喜ぶと思うよ!」
貴音「そういえば響も動物を飼っていましたね。最近は本人も動物のようになっていたことですし、きっとあの子とも仲良く出来るでしょう」
終わり