1: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/24(日) 20:43:33.18 ID:FA0EC00h0
P「お疲れ様です、はいこれで最後ですね」
小鳥「はいお疲れ様でした。今日はもうアガリですか?」
P「ええ、ボウリングの優待券もらったのでちょっと遊んでこようかな、と」
小鳥「いいなぁ……」
P「あはは、また貰うと思うんでその時は一緒に行きましょう」
小鳥「ありがとうございます。楽しみにしてますね」
P「そう言って貰えると嬉しいですね」
アハハハ……
?「………………」
?「響……わかっていますね?」
響「あぁ……貴音も行くんだろ?」
貴音「もちろんですとも。この機を逃しては私のぼうりんぐの腕前を見せる時などありえませんから……」
2: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/24(日) 20:47:14.06 ID:FA0EC00h0
パコーン ゴロゴロ……
やや郊外にあるボーリング店は、19時を回ったと言うのに盛況だ。
独特の音と匂いが学生時代を思い起こさせる。
P「ボーリングなんか久しぶりだな……。小鳥さんと来る時までに少しは上達しないとな」
上着を片手にカウンターへ向かった。
絨毯の敷き詰められたフロアは、微妙にフカフカしてて心まで浮つきそうだ。
受付で記入用紙を貰い、必要事項を記入していく。
P「こういうのは全部タカシに任せてたけどめんどくさいな……」
?「私がやりましょうか?」
P「そりゃ助かります。…………え?」
貴音「2ゲームでよろしいでしょうか?」
P「貴音!?なにしてんの君!?」
響「靴借りてきたぞー」
P「響まで!?」
7: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/24(日) 20:51:16.63 ID:FA0EC00h0
貴音「あなた様……ぼうりんぐに行かれると言うのに私どもを誘っていただけないとは、
なんといけずなお方なのでしょう……」
P「え、ごめん。……え?そういう話?」
貴音「いいのです、経緯はともあれこうして肩を並べて玉を転がせる……。
それだけで私は無上の喜びを感じております」
響「じ、自分も!自分も同じ!同じだからな!」
P「……同時には投げないからな」
貴音「えぇ、分かっております。ほんの些細な冗句というものです」
P「左様でございますか」
8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/24(日) 20:52:43.53 ID:FA0EC00h0
貴音の冗句はわかりにくかった。
イマイチ腑に落ちないままボールを選ぶ。
学生時代は15ポンドを使っていたが、最近の運動不足を考慮して14ポンドにした。
P「あれ?二人ともどこいった?」
10~12ポンドのコーナーを目線で追うが二人ともいない。
子供用から選んでいるのだろうか?
P「指入るのかな……」
響「おーい、持って来たぞー!」
声に釣られてくるりと振り返ると
P「それでやるの……?」
20ポンドのボールを抱えて響が満面の笑みを浮かべていた。
響「うん?そうだけどなんか変か?」
P「重すぎるだろ!怪我すると危ないからもっと軽いのにしなさい!」
響「心配性だなー。大丈夫!いつもこのくらいだからなんくるないさー!」
P「いつも……?というか20ポンドのボールが置いてあるとかどうなってんだここ……」
12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/24(日) 20:55:32.81 ID:FA0EC00h0
貴音「あなた様、私もぼうるを選んでまいりますた」
P「ますた?」
貴音「はい、まるで誂えたかのような仕上がり。実に美麗でございます」
噛んだ事を無かったかのように流していたが、ちょっとだけ照れていた。
P「ますた?」
貴音「さぁ参りましょう!」
P「ますた」
貴音「12番れえんですね!」
響「貴音ー、顔がチョット赤いぞ?」
満足した。
14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/24(日) 20:59:17.00 ID:FA0EC00h0
響「でもただ投げるだけじゃ張り合いがないんじゃないか?」
貴音「そうですね……、勝負にはやはり、りすくがあったほうが映えると言うものです」
P「そんなもんかな」
学生時代にゲーム代やジュースを賭けて馬鹿騒ぎしたっけ。
P「いいよ、じゃあなににする?」
ギラッ
素人の俺でも感じられるほどの殺気が、漫画的なオノマトペと共に走った。
P「え?え?なに?なに今の?」
響「じゃあ……、一位がドベに何でも命令できる……とかどうだ?」
貴音「いいでしょう、異論はありません」
P「えー……凄くいやな予感がするんだけど……」
響「賛成の人!」
2:1 賛成が過半数なので本案は可決されました。
P「民主主義って怖いなぁ……」
マイノリティの意見は黙殺されてしまうのだ。
15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/24(日) 21:02:16.93 ID:FA0EC00h0
早々と我慢の限界が来た響が叫びだした。
響「もう投げていいのか!?」
P「ダメ。まだ入力してないじゃないか」
貴音「この機械は……?」
P「順番とか点数を管理する機械だよ、名前を入れて……と」
あ、そうか。
P「本名はさすがにまずいかな?」
変装も何もしてないから今更だと思うけど。
二人に意見を求めようと顔を上げると
響「うぉー!なんかテンション上がってきたー!」
貴音「手書きではないのですね……。技術の進歩とは時に空恐ろしくもあります……」
ダメそうなので適当に入れた。
16: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/24(日) 21:07:10.32 ID:FA0EC00h0
P「ガナッハ出番だぞ」
響「え?」
P「響からだよ、ガナッハはお前のコードネーム」
響「安直過ぎだぞ……」
適当すぎてひねりが足りなかった。
P「今度千早に頼んでもっと良い名前考えてもらうからさ、な?」
響「いや!ガナッハ良い名前だなー!自分気に入ったぞ!」
P「そうかそうか」
喜んでもらえて何よりだ。
響はアプローチの最後端で構えると、力強く踏み出した。
ドン!
ボールが最短距離を突っ走ってジャストポケットに吸い込まれる。
フォロースルーも綺麗なものだった。
パカーン!
小気味良い音を立ててストライク。飛び跳ねながら響は喜んでいた。
19: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/24(日) 21:11:40.68 ID:FA0EC00h0
響「見たか!?やったぞー!」
P「おお、やるじゃないか」
ネタで20ポンドを選んだわけじゃないのか。
響「へへっ!よくにぃにとやってたからな!」
P「ほー」
沖縄にもボーリング場があるとは知らなかった。
貴音「では次は私の…………番なのでしょうか?」
P「あぁ、ラーメンウーメンの番だ」
響「本気でセンスないな……」
貴音「面妖な……」
P「うっさいわ!」
軽く毒づいて貴音を後ろから見た。
プリン
P「素晴らしい……」
賞賛の声が漏れた。
21: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/24(日) 21:16:23.71 ID:FA0EC00h0
P「実に素晴らしい……」
良いものは何度褒めてもいいのだ。
響「プロデューサー……顔が職質されるレベルだぞ……」
P「よっ!はっ!たっ!」
頬を叩いていつもの顔に戻した。
P「これでいつもの俺だろ。輝いてる?」
響「真っ赤になってアンパンマンみたいだ」
P「お前は本当に正直だな」
褒美にゆるいヘッドロックを仕掛けた。
響「痛い痛い、ギブギブ」
抱えた頭は小さく髪から良い香りがした。
貴音「………………」
貴音に通報される前に解放した。
警察より貴音が怖かった。
23: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/24(日) 21:20:31.86 ID:FA0EC00h0
貴音のフォームは脇を大きく開いて独特だった。
P「ん?あのボールは……」
チラッと見えたボールに書かれた数字は3。
P「3ポンド!?そんなのあるの!?」
普通のボーリング場に常備してある中で、一番軽いのが6ポンドだ。
P「あんなに軽かったらピンが倒れないんじゃないか?」
響「自分も最初そう言ったんだけどな」
貴音は大きく腕を振り上げるとアンダースローでボールを投げた。
放たれたボールはレーン上数センチを激しく横回転しながら飛んでいく。
ピンの手前で音も無く着地すると
パカパカパカーン!
ボールを中心とした竜巻がピンをすべてなぎ倒した。
P「面妖な……」
響「面妖だろー」
貴音「故郷ではごく普通の投げ方でございます」
月にもボーリング場があるのでせうか。
25: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/24(日) 21:24:32.03 ID:FA0EC00h0
P「久しぶりだから自信ないなぁ……」
卑怯な俺は保険をかけておいた。
久しぶりなのはホントだけど、口に出すと言い訳臭くて恥ずかしい。
響と貴音を見ると
響「やっぱりフィンガーグリップは……」
貴音「このれえんは油の伸びが……」
やたらとマニアックな会話で盛り上がっていた。
P「負けないもん!」
小児的な決意表明の後にステップを調整する。
これでも学生時代にやりこんだのだ。
4歩の助走からファールラインギリギリまで前進して、投擲した。
ややつんのめりながらボールの旅路を見送ると
ポコン
3本倒れた。
26: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/24(日) 21:28:55.84 ID:FA0EC00h0
P「ぐぐ……」
パチ……パチ……
おざなりな拍手がまばらに飛んでくる。
P「そんな優しい目でおれを見るな!」
逆ギレしてしまった。
リカバリーも失敗した俺のスコアは7点。
ボーリングの計算方法は特殊で、すでにかなりのビハインドだ。
P(妨害するか?)
ビリヤードの時よりはマシだが、やはり負けたくなかった。
デビルP「やっちまえ!負け犬より卑怯者だ!」
あずささんの姿を模した天使が飛んできた。
エンジェルあずささん「だめですよ~、正々堂々と男らしくしましょう~」
あずささんの言葉には不思議な魔力がある。
俺はたちまち言いなりになってしまった。
28: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/24(日) 21:33:04.52 ID:FA0EC00h0
P「響!」
アプローチに立っている人に話しかけるのはマナー違反だが見逃してくれ。
P「かなさんどー!」
男らしく親指を立てて笑った。
意味は知らない。
響「うあぁぁぁぁぁぁ!」
力の入りすぎた響は隣のレーンに放り投げてしまった。
無人でよかった。
響「よくないぞ!」
店員さんに二人で頭を下げた後に怒られた。
31: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/24(日) 21:38:20.38 ID:FA0EC00h0
結局響は調子を崩してスペアで終わった。
響「あの……さっきのはホントか?」
P「かなさんどーってやつ?」
響「う、うん……」
P「俺はいつでも本気だ」
無駄にキメ顔で言ってみた。ちょっとドヤ顔が入っていたかもしれない。
響「そ、そうなのか……、うん……えへへ……はじかさんな……」
ジャレついてくる響を片手であしらいながら貴音を見た。
片方だけ応援するのはフェアじゃないからな。
真剣な表情をしている貴音を見ながらエールを考える。
P「貴音!」
貴音「………………」
耳がピクリと動いた。
P「…………………………………………………」
特に何も思いつかなかった。
32: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/24(日) 21:42:47.11 ID:FA0EC00h0
響「貴音?どうした?」
構えたまま動こうとしない貴音に恐る恐る話しかけている。
貴音「いえ……なんでもありません」
フォームに入った瞬間に閃いた。
何事も遅すぎるということはあるまい。
P「ヤサイマシマシカラメマシアブラマシニンニク!!」
【Pは じゅもんを となえた !】
ピロリロリ
電子的な効果音が聞こえた気がする。
貴音「ふぉおおおおおおお!」
貴音の投げたボールは天高く舞い上がり、何処とも無く消えていった。
P「oh……イリュージョン……」
全員が呆然としていた。
34: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/24(日) 21:47:25.69 ID:FA0EC00h0
貴音は何も言わなかったが、逆にそれが怖かった。
P「悪かったよ……反省してるから、ね?」
貴音「…………」
P「そ、そうだ!今度次郎に行こう!好きだろ!?」
貴音「……10杯で手を打ちましょう」
P「こ……な……んっんっ、わかった。それで手を打とう」
貴音「約束でございますよ?」
P「うん、必ず守るよ」
顔中が油まみれになる光景が目に浮かんだ。
ボーリングはメンタルな要素が強い。
俺と、調子を崩した響と貴音でいい勝負だ。
その後俺達は一進一退の攻防を繰り広げた。
P「ドローとかあるんだな」
奇跡的に3者とも同じスコアだ。
響「勝負は次のゲームだな……」
貴音「わかりやすくていいではないですか」
P「今のうちに飲み物でも買ってくるよ」
36: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/24(日) 21:51:45.78 ID:FA0EC00h0
響「貴音……自分は負けるつもりは無いぞ……」
貴音「それは勿論こちらとて同じことです」
響「プロデューサーには悪いけど……あの腕前なら敵は貴音だけだぞ……」
貴音「ふふふ……久しぶりに本気で投球しましょう」
響「琉球十柱戯の真髄を見せてやるさー……」
貴音「故郷の皆よ……今こそ封印されし技を使います……」
P「買ってきたぞー」
ガラナとライフガードを振り回しながら告げた。
響・貴音「クックックック…………」
バブシャボフウブシャァァァァァ!
二人とも悪い笑いのまま顔射を食らった。
39: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/24(日) 21:56:35.76 ID:FA0EC00h0
P「うん、だいぶ取り戻してきたな」
第1フレームはスペアだった。
満足しながら戻ると、響が殺気すらこもった瞳でピンを睨みつけていた。
P「ガナッハさん……?」
響「いくぞ……!」
バックスイングが頭の上まで達している。
P「レーンが壊れる!」
ドカァ!
激しい勢いで転がりだしたボールはヘッドピンに真正面からぶつかった。
P「あれじゃあストライクには……」
響「いけぇっ!ハム蔵!」
ハム蔵「ヂュッ!」
P「なにいいいいいいい!!?」
いつの間にかボールにしがみ付いていたハム蔵が、ピンに飛び移ってストライク。
P「えぇぇぇぇぇ……」
そんなのありですか。飛び出せばいいんですか。青い弾丸。
42: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/24(日) 22:00:41.41 ID:FA0EC00h0
貴音「ふふふ……さすがは響ですね……」
お咎め無しだった。
器でけえ。
胃袋と同じで穴が開いてるだけかもしれないけど。
貴音「むん!」
P「ボ、ボールを持ってないだと!?」
響「もう使うのか!?」
貴音「月!球!尻!」
助走をつけた貴音は体ごとレーンに飛び込んだ。
P「」
尻からピンにぶつかりストライク。
そのままピンと一緒に回収されていった。
P「え?ちょ……おい!貴音!」
ウィーン
貴音「ただいま戻りました」
P「尻が喋った!」
貴音は律儀にボールリターンから帰ってきた。
46: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/24(日) 22:06:24.58 ID:FA0EC00h0
その後も俺達は持てるすべての力を使って戦った。
響「いけ!へび香!君に決めた!」
P「穴から出入りしてなんか卑猥!」
貴音「お代わり神拳奥義!わんこ球!」
P「ボールが何個もあるように見える!」
響「4個投げてるぞ」
P「スネークアイだ!」
響「ただのスプリットだぞ」
貴音「雪!月!麺!跳!!」
響「止めろ!ハム蔵!」
ハム蔵「ヂュッ!?ヂュウウウウウウウ!!」
P・響「ハムぞおおおおおおお!!」
不純なものなど一切無く、白熱した実にいい勝負だった。
47: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/24(日) 22:08:58.43 ID:FA0EC00h0
その結果……
店員「もう二度と来ないでくださいね」
三人「ゴメンナサイ」
青筋を浮かべながらも笑顔の店員に謝罪した。
出禁だった。
当然だった。
49: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/24(日) 22:10:32.39 ID:FA0EC00h0
勝負はうやむやになってしまったが、俺は満たされたものを感じていた。
気分がいいので聞いてみた。
P「なぁ、もし勝ってたらお前らなにを言うつもりだったんだ?」
響「自分は……その、ずっと一緒にいてくれたらそれで……」
貴音「私も似たようなものでございます。あえて言うなら月明かりの散歩などもあれば……」
幸い今日は満月だ。
P「そんなので良ければいつでもいいぞ」
響「ホントか!?」
貴音「真でございますか!?」
P「うん、楽しかったしな」
響「やったー!」
貴音「ふふ……うれしゅうございます……あなた様」
なんだか照れくさいけどいい気分だった。
予想通り次の日は全身筋肉痛だった。
おしまい
50: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/24(日) 22:11:09.15 ID:FA0EC00h0
ありがとうございました
懲りずに書いてしまいました。嘲笑してやってください
ボーリングを最後にしたのは去年の春です スイマセン
58: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/06/24(日) 22:32:35.17 ID:FA0EC00h0
それは違う人です ゴメンナサイ