2: ◆5LP4sJiv/Q 2014/09/28(日) 16:17:26.27 ID:vYdRXLo90
輝子「今日は十五夜だな…」
美玲「そうだな」
輝子「ここからも月が見えるぞ…おっきくてまん丸で綺麗…」
美玲「そっか…」
輝子「雲もかかってないし…」
美玲「…」
輝子「美玲、さっきからフード被ってうつむいてるけど…どうした?」
美玲「べ、別になにも…」
美玲「なあ、早く帰らないか…ウチ、レッスンで疲れたんだ」
3: ◆5LP4sJiv/Q 2014/09/28(日) 16:18:31.66 ID:vYdRXLo90
輝子「フヒ、帰る前に…コレ見せたくて」
美玲「き、キノコ?なんか光ってるけど…」
輝子「ツキヨダケっていうキノコ…だいぶ育ってきた…」
輝子「レッスン長引いて、暗くなったから…」
輝子「わ、私のツキヨダケと月…どっちがキレイ?」
美玲「どっちでもいいだろッ!」
美玲「それより早く…早く帰ろうよ、輝子」
輝子「丹精こめて育てたキノコ…美玲にも見てほしい…」
美玲「明日でいいだろッ、明日じっくり見るからさ」
美玲「それより、ウチは早く帰りたいんだッ!」
4: ◆5LP4sJiv/Q 2014/09/28(日) 16:19:53.38 ID:vYdRXLo90
輝子「わ、私の育てたキノコ…そんなに見たくないのか…」
美玲「だ、だからそういう訳じゃなくて…」
輝子「フヒ」スッ
パサッ
美玲「あっ!」
輝子「フード、隙ありだぜぇ…」
輝子「美玲、ちょっと元気ない…な、何かあったか?」
美玲「だ、だめ…」
輝子「だめ?」
美玲「後ろ…」
輝子「後ろ…?うん、言っただろ…月が綺麗だって」
5: ◆5LP4sJiv/Q 2014/09/28(日) 16:20:38.41 ID:vYdRXLo90
美玲「ッ!」ドンッ
輝子「わっ!?」ドテッ
輝子「み、美玲?」
美玲「ううっ、だ、ダメだ!今は…!」
輝子「だ、大丈夫か美玲!?」
美玲「やだ…!うあっ、ああっ!?」
ピョコンピョコンピョコン
輝子「…」
美玲「…」
6: ◆5LP4sJiv/Q 2014/09/28(日) 16:21:29.29 ID:vYdRXLo90
輝子「美玲…その…耳と尻尾?」
美玲「あ…」
輝子「あ、その…ごめん、変なこと言って…」
輝子「で、でも…急に生えてきた…ような…?」
美玲「…」
輝子「飾り…だよね?フヒ、生えてくるなんてそんなわけ…」
7: ◆5LP4sJiv/Q 2014/09/28(日) 16:22:36.91 ID:vYdRXLo90
美玲「輝子…あのね…」
美玲「これ、本物なんだ…」
輝子「ほ、本物…」
輝子「さ、さっきの…見間違いじゃ…」
美玲「うん、ホントに生えてきたんだ」
美玲「隠してたけどウチ…実は狼なんだ」
輝子「お、おおかみ…動物の、だよね?」
美玲「…うん」
輝子「え、えと…じゃあ…」
輝子「狩りをしたり、すごく速く走ったり…?」
美玲「まぁ、一応な…」
9: ◆5LP4sJiv/Q 2014/09/28(日) 16:23:35.73 ID:vYdRXLo90
輝子「そ、それじゃあ…」
輝子「ウルフェンに乗ってフォックスとドッグファイトしたり」
輝子「サンを乗せて森を侵す人間と戦ったり」
輝子「卒業試験にヤゴロボと組んでドラえもんズと学校を目指したり」
輝子「SBホークスでピッチャーしたり」
輝子「…するのか?美玲も…」
美玲「…」
美玲「そうだ」
10: ◆5LP4sJiv/Q 2014/09/28(日) 16:25:50.16 ID:vYdRXLo90
輝子「す、すごいじゃないか…」
美玲「ウチは嫌だッ!こんな…狼なんて!」
輝子「み、美玲…?」
美玲「恰好は同じだけど…でもやっぱり、本当の人間じゃないんだ」
美玲「ウチじゃどうしようもなくて、それがすごく寂しいんだ…」
美玲「輝子だって嫌だろ?ウチはみんなと違うんだから…」
輝子「わ、私は別に…」
輝子「それに、耳と尻尾が出ただけで…いつもの美玲と変わらないんだけど…」
美玲「うぅ、そんな慰めの言葉なんて要らないッ!」
11: ◆5LP4sJiv/Q 2014/09/28(日) 16:27:00.14 ID:vYdRXLo90
輝子「美玲も苦労してるんだな…」
美玲「ち、近寄るなッ!」
輝子「だ、大丈夫だ…怖くないぞ」スッ
ナデナデ
美玲「あう…」
輝子「確かに本物だな…」
美玲「輝子、このことは…」
輝子「わかってる…誰にも言わない」
13: ◆5LP4sJiv/Q 2014/09/28(日) 16:27:34.10 ID:vYdRXLo90
輝子「でも、狼だって隠すの…結構大変なんじゃないか?」
美玲「多少はな…この姿でいた方がやっぱり楽だし」
輝子「わ、私の前ではこの姿でいいから…」
輝子「それに…美玲のために、出来ることは何でもするから…」
美玲「輝子…」
輝子「フヒ、友達だからな…」
美玲「あ、ありがと…へへッ、気持ちだけでもすごく嬉しいぞッ!」
――――
――
14: ◆5LP4sJiv/Q 2014/09/28(日) 16:28:34.29 ID:vYdRXLo90
輝子「美玲、ツメ伸びてないか…?」
美玲「ツメ?別に普通だけど」
輝子「伸びてきたら、私が切ってあげる…」
美玲「なんだそれ、それくらい自分でやるよ」
輝子「や、やっぱり足先は触られるの苦手なんだな…」
美玲「何の話だ?」
~~~~
15: ◆5LP4sJiv/Q 2014/09/28(日) 16:29:17.11 ID:vYdRXLo90
輝子「は、ハミガキの時間だぞ…」
美玲「なんだよ、急に子ども扱いして」
輝子「上あごの門歯が歯周病になりやすいらしい…」
輝子「い、嫌なら指サック型の歯ブラシもあるぞ…」
美玲「自分で出来るってば!」
~~~~
16: ◆5LP4sJiv/Q 2014/09/28(日) 16:30:09.41 ID:vYdRXLo90
輝子「フヒ、本読んであげる…」
美玲「だから子ども扱いするなって!」
輝子「よ、読み聞かせは、動物学的にも情緒安定にいいらしいんだ…」
美玲「お前がイライラさせてるんだろうがッ!」
輝子「”二ひきは、 あらしの よるに まっくらな こやで であい
あいてが だれだか わからないまま かたりあった。”」
美玲「あ、それウチの好きなヤツだ…」
~~~~
18: ◆5LP4sJiv/Q 2014/09/28(日) 16:30:54.00 ID:vYdRXLo90
輝子「美玲、逃げちゃダメだ…」
美玲「に、逃げるに決まってるだろッ!何なんださっきからペタペタ触って!」
輝子「マッサージだ…ちゃんと効果があるらしいぞ…」
輝子「えーと…背筋、耳、首、口周り、お腹…」
美玲「ひゃあ!?や、やだぁ…!」
~~~~
19: ◆5LP4sJiv/Q 2014/09/28(日) 16:31:35.15 ID:vYdRXLo90
輝子「シャンプーするぞ…お湯、熱くないか?」
美玲「ん、ちょうどいいぞッ」
美玲「へへッ、誰かに髪洗ってもらうのも気持ちいいな♪」
輝子「うん、ノミは付いてなさそうだ…」
美玲「…」
~~~~
21: ◆5LP4sJiv/Q 2014/09/28(日) 16:32:14.63 ID:vYdRXLo90
輝子「さ、散歩に行かないか…?」
美玲「散歩?」
輝子「川原のそばに、いい散歩コースがあるんだ…」
美玲「へぇ、よさそうじゃん!」
輝子「飲み物も持ったし…念のためにビニールぶくr」
美玲「シッ!」ガリッ
輝子「フヒィィィぃぃ!!?!」
美玲「フンッ!」
――――
――
22: ◆5LP4sJiv/Q 2014/09/28(日) 16:33:37.32 ID:vYdRXLo90
後日
輝子「美玲、ブラッシングしてあげる…」
美玲「いいよそんなの!ウチに近づくなッ!」
美玲「大体お前がやってるの、全部あの本に書いてあることだろッ!」
輝子「うん…い、犬の気持ち…」
美玲「それだよ!お前ウチをペット扱いしてるだろ!」
輝子「そ、そんなつもりは…犬科だから、同じなのかなって…」
美玲「この姿で暮らしてるんだから、犬のケアはいらないんだよッ!」
輝子「あっ、ご、ごめん…」
24: ◆5LP4sJiv/Q 2014/09/28(日) 16:36:27.84 ID:vYdRXLo90
輝子「美玲の役に立とうと思って…迷惑だよね…」
美玲「あ、いや…そんなに落ち込まなくてもいいだろッ」
美玲「気持ちは嬉しいけど、やり過ぎってだけで…そういうのはたまにでいいから」
輝子「そ、そうか…分かった」
輝子「とりあえず、今日はあごの下を撫でるだけで…」
美玲「分かったって言っただろさっき!」ガリッ
輝子「ヒイィィ!?」
美玲「ウチ帰るッ!」バタン
25: ◆5LP4sJiv/Q 2014/09/28(日) 16:37:21.70 ID:vYdRXLo90
輝子「い、痛い…」
乃々「最近どうしたんですか、仲が良いような悪いような…」
輝子「な、なんでもない…」
乃々「それならいいですけど…平和に過ごしたいので」
輝子「あ、そうだ…乃々、コレあげる」
乃々「え、なんですか?」
27: ◆5LP4sJiv/Q 2014/09/28(日) 16:38:27.93 ID:vYdRXLo90
輝子「ドングリだ…ほら」
乃々「ど、ドングリ!!?」
輝子「しいたけの原木を買ったら、一緒に混ざってたんだ…」
輝子「原木はドングリ木をよく使うから…コナラとかクヌギとか」
輝子「乃々、この前リスの格好してたし…フヒ、なんとなく持ってきt」
乃々「だ、だめです!ドングリは…!」
輝子「へ?の、乃々…?」
28: ◆5LP4sJiv/Q 2014/09/28(日) 16:39:28.83 ID:vYdRXLo90
乃々「い、嫌!輝子さん見ないで!」
輝子「ど、どうしたんだ乃々…!」
乃々「ひぅ!?んんっ!だ、ダメ!」
ピョコンピョコンピョコン
輝子「…」
乃々「…」
輝子「乃々…その…耳と尻尾?」
乃々「あぅ…」
輝子「も、もしかして…乃々も?」
乃々「輝子さん、このことは誰にも…」
――――
――
29: ◆5LP4sJiv/Q 2014/09/28(日) 16:40:40.15 ID:vYdRXLo90
輝子「乃々、尻尾の感じはどうだ…?」
乃々「尻尾ですか?…いつもと変わりはないみたいです」
輝子「見てあげるから、こっち来て…」
乃々「そんなに気にしなくても大丈夫ですけど」
輝子「トレードマークなんだから、大事にしなきゃだめだぞ…」
30: ◆5LP4sJiv/Q 2014/09/28(日) 16:41:46.73 ID:vYdRXLo90
輝子「かゆいところ、ないか…?」モフモフ
乃々「はい、特に…」
輝子「自分で噛んじゃったりしてないか…?」モフモフ
乃々「そ、そんなことしませんから…」
輝子「いっぱい毛が抜けたりとか、してないか?」モフモフ
乃々「そ、そういうことも特に…んぅ」
乃々「…あの、輝子さん…尻尾はあんまり触られると、その…」
輝子「だ、大丈夫だ…尾抜けしないように優しく触ってるから…」
乃々「そういうことじゃ…ひゃっ、んんっ…!」
31: ◆5LP4sJiv/Q 2014/09/28(日) 16:42:58.89 ID:vYdRXLo90
美玲「…」ジトッ
輝子「どうした、美玲…?」
美玲「…別に」プイッ
乃々「私ばっかり悪いですから、今度は美玲さんのお手入れも…」
輝子「美玲は…たまにぐらいが好きらしいんだ…」
美玲「あぅ…」
おわり