1 :◆5F5enKB7wjS6 :2016/02/03(水) 22:26:51.13 :V/rpheDsO
―――事務所
李衣菜「美味しいね、福豆」ポリポリ
泰葉「ん」ポリポリ
加蓮「んむ」ポリポリ
李衣菜「食べだすと止まらないや」ポリポリ
加蓮「こう……夢中になるよね」ポリポリ
泰葉「……蟹鍋、みたいな?」ポリポリ
加蓮「それだ」ポリポリ
李衣菜「いいね。今度作ろっか」ポリポリ
ぽりぽり
ぽりぽり……
P(もう30分くらいぽりぽりしてる)カタカタ…
2 :◆5F5enKB7wjS6 :2016/02/03(水) 22:29:02.05 :V/rpheDsO
※以下ずっとポリポリ
加蓮「節分てさ」
李衣菜「うん?」
加蓮「なんで節分って言うのかな」
李衣菜「さぁ……たしかに豆っぽくないよね、名前」
泰葉「……豆っぽさってなに?」
李衣菜「……なんだろう?」
加蓮「あれでしょ、几帳面な感じ」
李衣菜「なるほど、マメね」
泰葉「……高垣楓さんリスペクト?」
加蓮「ごめん忘れて」
3 :◆5F5enKB7wjS6 :2016/02/03(水) 22:31:09.69 :V/rpheDsO
李衣菜「綺麗だよねぇ、高垣さん」
泰葉「うん。素敵な女性だと思う……」
加蓮「…………あのふわふわな髪の毛……」
李衣菜「ん?」
泰葉「?」
加蓮「豆投げたら、絡まって取るのめんどくさそう」
李衣菜「…………」
泰葉「…………」
加蓮「…………」
李衣菜「ディスってるよね」
泰葉「高垣さんの事務所に潰されそう」
加蓮「ひぃぃ」
4 :◆5F5enKB7wjS6 :2016/02/03(水) 22:33:18.57 :V/rpheDsO
李衣菜「豆ぶつけるなんて、天下の歌姫を鬼扱いとか……まずいでしょ」
泰葉「ああ……私たちのアイドル生命もここで……」
加蓮「えっ、えっ。そんなひどいこと言っちゃった?」
泰葉「週刊誌にすっぱ抜かれ……」
李衣菜「連日抗議の電話が鳴り止まず……」
加蓮「いやああああ」
李衣菜「ま、直接本人に言っても笑ってくれるだろーけど」
泰葉「むしろ喜ぶんじゃないかな。ふふ」
加蓮「だよねー」
5 :◆5F5enKB7wjS6 :2016/02/03(水) 22:35:57.03 :V/rpheDsO
泰葉「鬼のお面、ノリノリで付けそうよね」
加蓮「鬼なのに豆投げてきそう。酔っぱらいながら」
李衣菜「自由すぎる」
泰葉「また一緒にお仕事したいね」
李衣菜「へへ、うん。……ということで、Pさん?」
加蓮「ふふっ、よろしくねっ」
P「ん? ああ、任せとけ。……ただし、絶対失礼なことするなよ?」
「「「はーい」」」
6 :◆5F5enKB7wjS6 :2016/02/03(水) 22:37:47.72 :V/rpheDsO
P「あちら側にも連絡取らないとなー……さてさて、どんな企画を――」カタカタ ブツブツ
加蓮「で」
李衣菜「で?」
加蓮「節分。名前は置いといて、どうして鬼は豆ぶつけられただけで降参しちゃうわけ?」
泰葉「……たしかに」
李衣菜「貧弱だね、鬼」
7 :◆5F5enKB7wjS6 :2016/02/03(水) 22:40:07.97 :V/rpheDsO
加蓮「でしょ? そんなだったらもう、豆じゃなくてもいいと思わない?」
李衣菜「んじゃ、代わりになにぶつける?」
泰葉「なにがいいかな……。あ、そういえば」
加蓮「はい、岡崎さん」
泰葉「はい。……えっと、北海道では福豆じゃなくて落花生を撒くって聞いたことあるの」
李衣菜「へぇ、落花生? って、豆とほとんど変わらないじゃん」
8 :◆5F5enKB7wjS6 :2016/02/03(水) 22:42:39.14 :V/rpheDsO
加蓮「ふふ、ピーナッツだもんね。誰から聞いたの?」
泰葉「うん、この間一緒にお仕事した双葉杏さんに。落花生なら殻のまま拾いやすい、って理由で広まったって」
李衣菜「……それは双葉さんだからじゃない?」
加蓮「そう聞くといまいち信用が……」
泰葉「う、うーん……こういうことででたらめを言う人じゃないと思うんだけど」
9 :◆5F5enKB7wjS6 :2016/02/03(水) 22:45:08.63 :V/rpheDsO
李衣菜「まぁ出身地だしね」
泰葉「北国の妖精……なんて、かわいいあだ名もあるものね」
加蓮「あのスタンス、本気なのかな?」
李衣菜「じゃない? やるときはやる、ってかっこいいよね。ロックだよ」
泰葉「李衣菜もあのTシャツ着る? ふふふ」
加蓮「あは、意外と似合うんじゃない?」
李衣菜「そうかな? へへ、なら許可取らないと」
10 :◆5F5enKB7wjS6 :2016/02/03(水) 22:47:06.23 :V/rpheDsO
泰葉「ということでPさん」
李衣菜「双葉さんとのお仕事もお願いしますっ」
P「来ると思った。うん、いい機会だし、歳も近いんだから親睦深めるのもいいんじゃないか?」
加蓮「そだね。広げようアイドルの友情の輪♪」
李衣菜「あれ、歳近いって双葉さん……杏ちゃんっていくつだっけ?」
泰葉「17歳だって言ってたけど」
李衣菜「…………マジで?」
泰葉「うん」
加蓮「ほんとに妖精なんじゃないの……」
11 :◆5F5enKB7wjS6 :2016/02/03(水) 22:49:26.81 :V/rpheDsO
P「そういやあのプロダクションに知り合いいたな……名刺どこやったか」ゴソゴソ…
李衣菜「さぁ、歌姫とも妖精とも友だちになろう!」
加蓮「うーん、芸能界ってファンタジー……」
泰葉「ふふっ、不思議な世界よね。私も長いこといるけど、まだまだ知らないことあるもの」
李衣菜「そういえば、泰葉っていつから芸能界にいるの?」
加蓮「あ、それ気になってた。私、昔からテレビで見たことあったし」
泰葉「ああ、うん……どのくらいかな? 5歳のときからだったかな……」
「「え゛」」
15 :◆5F5enKB7wjS6 :2016/02/03(水) 22:52:39.14 :V/rpheDsO
泰葉「だから10年……11年か。そのくらい?」
李衣菜「じゅ、10年以上とか……凄まじいね」
加蓮「想像もつかないなぁ……」
泰葉「ふふ、いろんな大人のいろんな思惑を見て育ちました」
加蓮「わ、笑って話すこと?」
泰葉「笑って話せるのも、今が楽しいから。11年、芸能界にいたから……こうして2人に出会えたんだって思うの」
李衣菜「泰葉……!」
泰葉「もちろん、Pさんにも感謝してます。ふふふ♪」
P「ん? ああ……ふふ、いいさ」
李衣菜「泣ける」
加蓮「泣いた」
16 :◆5F5enKB7wjS6 :2016/02/03(水) 22:54:28.23 :V/rpheDsO
李衣菜「さぁさぁ泰葉、もっと福豆食べて」
加蓮「ほらほら食べて」
泰葉「た、食べてるけど。待って、そんなにいらないよ……」
李衣菜「泰葉を鬼から守れっ」ポイポイ
加蓮「泣いた赤鬼っ」ポイポイ
泰葉「それ絵本……くすっ、ありがと2人とも……♪」
李衣菜「おにはそとー!」
加蓮「やすはうちー!」
P「あー、袋から出すなよー。掃除大変だからなー?」
17 :◆5F5enKB7wjS6 :2016/02/03(水) 22:56:32.65 :V/rpheDsO
李衣菜「大丈夫です、直接撒いたら食べられませんし。もったいないじゃないですか」
加蓮「床も汚れないしねー」
P「ならいいけど。……というか食いすぎだろ。いくつ食べたんだよ……歳の分の10倍は行ってないか?」
泰葉「あ。……違うんです、福豆の方から口に入ってくるんです」
P「んなバカな」
加蓮「ふふっ。歳の分食べたら健康に過ごせるんだから、その10倍食べたらもっと健康になれるよ」
P「どんな理屈だよ……」
李衣菜「よし、加蓮はあと100倍食べなきゃ」
泰葉「毎日3食福豆にしなきゃ」
加蓮「言わなきゃ良かった」
18 :◆5F5enKB7wjS6 :2016/02/03(水) 22:58:53.40 :V/rpheDsO
李衣菜「風邪は外、だよ」
泰葉「ほら、『邪』って字、入ってるじゃない。鬼みたいなものでしょう?」
加蓮「はいはい……んもー、バカなんだから」
李衣菜「一緒にバカになろう、バカは風邪ひかないって言うしね!」
泰葉「李衣菜、うまい」
李衣菜「えへへへ」
加蓮「そんなうまくないし……ふふっ♪」
19 :◆5F5enKB7wjS6 :2016/02/03(水) 23:01:09.38 :V/rpheDsO
李衣菜「福豆もうまい。ぽりぽり」
加蓮「んむ。ぽりぽり」
泰葉「うん。ぽりぽり」
P(俺の分も残しといて)カタカタ…
加蓮「……なんの話してたんだっけ?」
泰葉「『なんで節分?』『鬼弱すぎじゃない?』って話?」
李衣菜「それそれ」
加蓮「『節』で『分』とは」
泰葉「んー……」
李衣菜「一小節で分ける。楽譜のことなんだよ!」
泰葉「……うん。そう」
加蓮「座布団全部持ってってー」
李衣菜「うーんきびしー」
20 :◆5F5enKB7wjS6 :2016/02/03(水) 23:03:09.04 :V/rpheDsO
P「……『季節を分ける』日だから、だってさ。たしかに立春の前日だな、節分は」カチカチ
加蓮「りっしゅん」
李衣菜「ヘイ、リッスン!」
泰葉「妖精がここにも」
李衣菜「ロックの妖精と呼んでくれ、べいべー」
加蓮「ぷっ」
泰葉「……ふっ」
李衣菜「だから厳しくない?」
P「立春は春の始めって意味で……聞いてる?」
21 :◆5F5enKB7wjS6 :2016/02/03(水) 23:05:08.66 :V/rpheDsO
李衣菜「あ、聞いてます聞いてます」
加蓮「まだ寒いのに春の始めって、変なの」
泰葉「でも、九州だとそろそろ梅が咲き始めるところもあるよ?」
加蓮「はやっ! そんな早いんだ?」
李衣菜「お、長崎県民の本領発揮?」
泰葉「ほ、本領ってわけでも……」
P「…………へぇ、長崎だと節分にクジラ料理食べるのか」カチカチ…
泰葉「あっ、小さな頃食べたことあります! 懐かしいなぁ……」
李衣菜「クジラ」
加蓮「クジラ?」
「「……クジラ!?」」
22 :◆5F5enKB7wjS6 :2016/02/03(水) 23:08:08.14 :V/rpheDsO
加蓮「クジラってあのクジラ? 海にいる?」
泰葉「ええ、あのクジラ。……海以外に知らないけど私」
李衣菜「クジラって……スーパーに売ってたかな」
泰葉「こっちじゃ見たことないかも。九州じゃ珍しくないの、クジラ料理は」
李衣菜「ほへー……」
加蓮「っていうかなんで節分にクジラ食べるの?」
P「大きなものを食べると縁起がいいから、だってさ。でかいにも程があるよな」
加蓮「動物の中で一番大きいよね、クジラって……豪快なんだね、九州人」
23 :◆5F5enKB7wjS6 :2016/02/03(水) 23:09:57.07 :V/rpheDsO
李衣菜「泰葉も豪快?」
泰葉「え、どうかな……自分じゃ分からないけど」
加蓮「がっはっは、って笑いながら手づかみでクジラを食べる泰葉」
李衣菜「ぶっふぉ」
泰葉「北条さん」
加蓮「あっはいごめんなさい」
李衣菜「んっふぐ、ぐ、くふふっふふ……!!」
泰葉「……李衣菜?」ジトッ
李衣菜「は、はい――んふっ、あははあは♪」
泰葉「もうっ!」
24 :◆5F5enKB7wjS6 :2016/02/03(水) 23:12:50.85 :V/rpheDsO
P「で、なんで鬼に豆が効くのかって話な」
加蓮「うんうん、それね。……んふふっ、ダメ、豪快な泰葉想像しちゃって……♪」
泰葉「…………」ペチ
加蓮「あいたっ」
P「……いいか?」
泰葉「はぁ……すみません、Pさん」
P「ふふ。……簡単に言うと、鬼の目を潰すために豆をぶつけるらしい」
李衣菜「え、えぐいですね」
泰葉「それは……退散もしますよね」
加蓮「鬼がなにしたっていうの! ……ああ悪さするんだっけ」
泰葉「セルフツッコミ……」
25 :◆5F5enKB7wjS6 :2016/02/03(水) 23:14:56.38 :V/rpheDsO
李衣菜「袋のまま投げてあげたら目に入らないよね」
加蓮「散らばらないし合理的……そっか、そういうことだったんだ」
泰葉「違うと思うけど……ふふ、優しいね2人とも」
李衣菜「鬼も笑顔にしてこそアイドルでしょ!」
加蓮「そうそう! みんなみんな楽しんでもらわないとねっ」
泰葉「うん、いい心がけだと思う。私も、どんな人も笑顔にしたいな……!」
加蓮「それじゃあ、ふくはーうちー♪」ポイポイ
泰葉「おにもーうちー。ふふふっ♪」ポイポイ
李衣菜「ちょ、いたいいたい!? なんで私にぶつけ、ちょっとぉ!」
P「……あはは。みんなが今年も健康でいられますように」ポリポリ…
27 :◆5F5enKB7wjS6 :2016/02/03(水) 23:17:37.53 :V/rpheDsO
がちゃ……
ちひろ「……だ、大丈夫ですか? 私、豆ぶつけられませんか?」ヒョコ
P「あ、ちひろさん。どこ行ってたんですか……って、なに怯えてるんです?」
ちひろ「あ、い、いえその……誰も彼も私のこと鬼だ悪魔だって、う、うぅぅ……!」グスッ
P「は? 誰ですかそんなひどいこと言う奴は。とっちめてやりますよ」
ちひろ「ぷ、ぷろでゅーさーさぁん……!」ウルウル
李衣菜「あっ、ちひろさんおかえりなさい!」
泰葉「ちひろさんもどうですか、福豆。美味しいですよ♪」
加蓮「ちひろさんの分、まだ残ってるよー。ふふっ」
ちひろ「…………み゛ん゛な゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!゛!゛!゛」ブワッ
P「きたない」
おわり
28 :◆5F5enKB7wjS6 :2016/02/03(水) 23:19:34.94 :V/rpheDsO
というお話だったのさ
脱線に脱線を重ねてもしっかりオチてくれるちひろさんは女神
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【SS速報VIP】李衣菜「ぽりぽり」泰葉「ぽりぽり」加蓮「ぽりぽり」
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