1 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします :2016/01/17(日) 19:15:49.04 :DWNRaCgWo
P「どうした、急に?」
肇「いえ、ただの雑談ですよ。事務所まではもうしばらく掛かりますし」
P「道路の空き具合からすると……後2時間くらいか」
肇「風景を楽しむのも悪くはありませんが、どうでしょうか」
P「断る理由も無いさ」
肇「ふふ、ありがとうございます」
2 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします :2016/01/17(日) 19:18:46.35 :DWNRaCgWo
P「それで、好きな物だったか」
肇「ものでも、ことでも」
P「…………」
肇「……ふ、ふふっ! 難しく考え過ぎですよ、Pさん」
P「そうだな……甘い物は、好きだな」
肇「ケーキ、お好きですよね」
P「ツラとナリに似合わず、な」
肇「いいじゃないですか。私は可愛いと思いますよ?」
P「男に可愛さは要らない」
肇「私も、好きです。ケーキ」
P「可愛いと思うぞ」
肇「ありがとうございます……なんて」
3 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします :2016/01/17(日) 19:59:40.83 :DWNRaCgWo
P「楓さんはケーキ……っと」
楓「すぅ、くすぅ……」
肇「お休み中、ですね」
P「中々にタイトなスケジュールだったからな、無理も無い」
肇「タオルケット、掛けておきますね」
P「頼む。……それと」
肇「はい」
P「…………スカートの裾も直してあげてくれ。目によろしくない」
肇「…………はい」
P「……」
肇「……」
P「悪いな」
肇「いえ」
P「……」
肇「……」
4 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします :2016/01/17(日) 20:04:47.73 :DWNRaCgWo
肇「Pさんは」
P「ん」
肇「綺麗な女性は、お好きですか?」
P「そりゃあ、嫌いな男なんてそうは居ないだろう」
肇「楓さんは、綺麗だと思いますか?」
P「そりゃあ……そりゃあ、もう、誰が見てもとびきりの美人だろう」
肇「私は、どうでしょうか」
P「……」
肇「……」
P「肇は、とても綺麗な…………アイドル、だと。俺は思う」
肇「…………そう、ですか」
P「ああ」
肇「……」
P「……」
楓「その調子」
P「…………ん?」
楓「……くぅ」
P「……」
5 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします :2016/01/17(日) 20:34:44.57 :DWNRaCgWo
肇「……確か、登山もお好きなんですよね」
P「ああ」
肇「山頂というのは、やはり静謐な場所なんでしょうか」
P「そうだな。静かで澄んでいて、誰の邪魔も無い」
肇「素敵ですね」
P「ひょっとしたら、一人きりになれる場所を求めて登ってるのかもな」
肇「……」
P「肇?」
肇「今も、登りたいですか?」
P「今か? そうだな」
肇「……」
P「今は、いいさ。どうしても目の離せない奴が一人居てな」
肇「私も登山、始めてみようかな」
P「……」
肇「良い考えでしょう」
P「……悪くないかもな」
肇「一人きりではなく、二人きりかもしれませんが」
P「……悪くないかも、な」
6 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします :2016/01/17(日) 20:55:23.62 :DWNRaCgWo
肇「Pさん」
P「ん?」
肇「他には、ありませんか?」
P「他? そう言われてもな。多趣味な訳でもない…………あ」
肇「……」
P「……すまない、肇。大事なのを一つ、忘れていた」
肇「…………教えてください」
P「この仕事が、プロデュースが大好きだ」
7 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします :2016/01/17(日) 21:03:20.97 :DWNRaCgWo
肇「……」
P「夢に憧れる人をこの手で助けて、舞台に載せる手伝いが出来る」
肇「……」
P「ウチのアイドル達はみんな一生懸命で、やり甲斐は際限無しだ」
肇「……」
P「碌でもない事しかしてこなかった俺にでさえ……夢を、見せてくれる」
肇「……」
P「俺は、この仕事が大好きだよ」
肇「…………Pさん」
P「ああ」
8 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします :2016/01/17(日) 21:12:41.05 :DWNRaCgWo
肇「他には、ありませんか?」
P「…………え?」
9 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします :2016/01/17(日) 21:27:04.44 :DWNRaCgWo
肇「……」
P「……いや、今のは恥ずかしながら中々に良い台詞を吐けたと思うんだが」
肇「そうですね」
P「肇、何だか怒ってないか?」
肇「怒ってません」
P「怒ってるよな」
肇「……」
P「……あー、すまない。何かお気に召さないような」
肇「身近な」
P「ん?」
肇「とても、とても身近な。つい、忘れてしまいそうになるくらいに身近で」
P「……?」
肇「そんな、好きな何かは、ありますか?」
P「どういう意味だ、はじ……め…………」
肇「……」
P「…………あー……」
肇「……」
P「……」
10 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします :2016/01/17(日) 21:37:30.72 :DWNRaCgWo
肇「……」
P「…………肇」
肇「はい」
P「……」
肇「……」
P「…………肇は、何が好きなんだ?」
肇「……」
P「……」
楓「……」
肇「…………釣りが、好きです」
P「…………そうか。そうだったな」
11 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします :2016/01/17(日) 21:53:39.60 :DWNRaCgWo
P「どんな所が良いんだ?」
肇「そうですね、登山に通じるものがあるかもしれません」
P「そうなのか?」
肇「せせらぎに耳を澄ませて、静謐な空気を楽しんで、誰の邪魔も無くて」
P「なるほどな」
肇「……あ、でも」
P「どうした?」
肇「好ましい人と共に釣り竿を並べるのも、とても楽しかったです」
P「……そうか」
肇「はい」
12 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします :2016/01/17(日) 22:07:16.48 :DWNRaCgWo
肇「それからもちろん、陶芸も」
P「だろうな」
肇「土を捏ねていると、自然と集中出来て心が落ち着くんです」
P「ああ。出来上がった器を見れば分かる。肇らしいと、そう自信を持って言えるよ」
肇「まだまだお恥ずかしいばかりの出来映えで」
P「そんな事は無い。どれも大切に使わせてもらってるさ」
肇「ありがとうございます。器も、きっと喜ぶと思います」
P「いつもありがとうな、肇」
肇「いえ、好きでやっている事ですから」
P「それにしては見事な出来映えだと思うが」
肇「まだまだこれからです。陶芸の道も、アイドルの道も」
P「そうだな……ところで肇、前から気になっていたんだが」
肇「はい」
P「どうしていつも同じ物を二つくれるんだ?」
肇「好きでやっている事、ですから」
楓「ふふっ」
P「……」
肇「……」
楓「……」
P「…………そうか」
肇「はい」
14 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします :2016/01/17(日) 22:34:34.02 :DWNRaCgWo
P「他には――」
肇「アイドルが、大好きです」
P「……肇」
肇「私、アイドルになれて良かったです」
P「……」
肇「応援してくれる皆さん。アイドルのお友達。個性であふれそうな人たち」
P「ああ」
肇「そして、こんな私を一生懸命にプロデュースしてくれる人」
P「……」
肇「こんなに素晴らしい経験が出来る私は、きっと世界一の幸せ者ですね」
P「…………肇」
肇「はい」
P「勘弁……してくれ。運転の、途中なのに、危ない」
肇「……ふふっ。ごめんなさい、Pさん」
16 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします :2016/01/17(日) 22:46:43.56 :DWNRaCgWo
肇「――そろそろ都内に入りますね」
P「……」
肇「……」
P「…………肇」
肇「はい」
P「他には、あるか?」
肇「…………他、とは?」
P「好きな…………何か、だ」
肇「はい。とびっきり、大好きなのが」
P「……」
肇「何度も何度もアピールしないと伝わらないくらい鈍くて、心配になるくらい一生懸命で」
P「……」
肇「私の欲しい言葉をなかなか贈ってくれなくて、それでも、大好きなのが」
P「……」
肇「Pさん」
P「ああ」
肇「他には、ありますか?」
P「他、ってのは?」
17 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします :2016/01/17(日) 22:47:20.93 :DWNRaCgWo
肇「好きなものでも、好きなことでも――好きなひとでも」
18 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします :2016/01/17(日) 22:59:23.74 :DWNRaCgWo
P「……」
肇「……」
P「少し、待ってくれ」
肇「はい。幾らでも、待ちます」
P「……」
肇「……」
P「……」
肇「……」
20 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします :2016/01/17(日) 23:14:42.54 :DWNRaCgWo
P「肇――」 楓「――いえっ! もう一献! ドンと来いです!!」
21 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします :2016/01/17(日) 23:15:17.87 :DWNRaCgWo
P「……」
肇「……」
楓「――あら? ここにあったバランタイン17年は…………あっ」
P「……」
肇「……」
楓「……」
23 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします :2016/01/17(日) 23:22:03.80 :DWNRaCgWo
肇「……」
P「……」
楓「肇ちゃん」
肇「はい」
楓「ひょっとして、謝った方がいいかしら」
肇「恐らくは」
楓「ごめんなさい」
肇「…………もうっ。もう少しだったのに」
P「……ふぅ…………」
24 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします :2016/01/17(日) 23:38:06.58 :DWNRaCgWo
楓「次こそ成功させましょうね」
肇「はい」
P「……」
楓「どうかしましたか?」
P「……いえ」
楓「ところでこれから飲みに行きませんか?」
P「もう少しで事務所着きますから大人しくしててください」
楓「はーい」
肇「……」
P「……」
楓「~♪」
25 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします :2016/01/17(日) 23:50:12.18 :DWNRaCgWo
P「肇」
肇「…………え、あ、はい」
P「もう一つあった」
肇「へっ?」
P「最近、陶器が好きになったんだ」
肇「……は、はぁ」
P「だから、その……好きだから。二つ……」
肇「……?」
P「……」
肇「……」
26 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします :2016/01/17(日) 23:50:57.22 :DWNRaCgWo
P「…………いつか。二つだけじゃなくて……もっと、欲しくなるかもしれない」
27 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします :2016/01/17(日) 23:56:21.80 :DWNRaCgWo
肇「……」
P「……」
肇「…………ぁ、ぇ? えっ…………?」
P「……」
肇「…………っ!? うわ、わぁっ……!!」
P「……」
楓「プロデューサーさん」
P「……何ですか、楓さん」
楓「飲酒運転はダメですよ?」
P「飲んでませんよ」
楓「あら? でも不思議ですね。お顔が真っ赤」
P「楓さん」
楓「肇ちゃんも、未成年飲酒なんてダメよ?」
肇「……の、飲んで…………ない、です……」
楓「あら? でも不思議ですね。お顔が真っ赤」
肇「う、うぅぅ~……っ!!」
28 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします :2016/01/18(月) 00:05:51.44 :9zxWdQKWo
P「……」
楓「ふふふー。プロデューサーさん?」
P「…………何ですか」
楓「そのまま伝えてあげた方が、よっぽどラクだったと思いますよ?」
P「……」
楓「全くもう。プロデューサーさんもスキですねぇ♪」
P「……」
肇「……」
29 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします :2016/01/18(月) 00:06:53.46 :9zxWdQKWo
P「ええ。大好きです」
肇「…………ぎゃふん」
30 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします :2016/01/18(月) 00:09:42.91 :9zxWdQKWo
おしまい。