【鷺沢文香SS】鷺沢文香「…ほんの、お礼です………しおりだけに…」

1: ◆r4vICyDKLo 2013/06/13(木) 21:19:48.27 ID:HCfsJsNI0

鷺沢文香「…初めての、ライブ…」

P「緊張してるのか?文香」

文香「……人前は、苦手で…」

P「今日は顔見せみたいなモンだ。勝ち負けは気にせず気楽にやろう」

文香「…ですが……」

「大丈夫よ、文香ちゃん」

文香「あ……」

高垣楓「私もいっしょだから、安心してね」

文香「…楓さん……」

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2: ◆r4vICyDKLo 2013/06/13(木) 21:24:08.63 ID:HCfsJsNI0
P「ま、楓さんがついてれば心強いだろ。
 楓さんも、文香のフォローよろしくお願いします」

楓「はい、任せてください。先輩らしく、1000パーィセントの実力でがんばります」フフフッ

文香「………」

楓「さあ、いきましょうか。ファンの皆が待ってるわ」

文香「……ええと、はい…」

楓「もう、そんな不安そうな顔は、めっ」

文香「あっ……」

楓「初ライブは一度きりなんだから、楽しい思い出にしましょう、ね?」ニコッ

文香「………はい……」

3: ◆r4vICyDKLo 2013/06/13(木) 21:24:59.38 ID:HCfsJsNI0

………

……………

…………………

――――事務所

姫川友紀「プレゼント?楓さんに?」

文香「…はい……
   楓さんには……ずっとお世話になっているので……」

友紀「確かに楓さん、随分ふみちゃんのこと気に入ってるからねー。
   ふみちゃんの歓迎会の仕切りも楓さんだったし」

文香「……きのうのライブも、楓さんのおかげで、上手く行きましたし……
   …日ごろの感謝も、こめて……」

友紀「いいじゃんいいじゃん!楓さんきっとよろこぶよー」

文香「……ですが、問題が……」

友紀「どったの?」

4: ◆r4vICyDKLo 2013/06/13(木) 21:33:18.80 ID:HCfsJsNI0

文香「……こういうとき、どんなものを贈ればいいのか、わからなくて……
   …他人に贈り物なんて、経験がないので…」

友紀「あーなるほど。よっし!そういうことならこのユッキにまかせなさい!」

文香「…ありがとう、ございます……」

友紀「楓さんのよろこびそうなモノねぇー……あ、やっぱりお酒でしょ!」

文香「…お酒……買えません……」

友紀「あ゛……そっか、ふみちゃんまだ未成年だっけ」

文香「…はい……」

5: ◆r4vICyDKLo 2013/06/13(木) 21:38:46.10 ID:HCfsJsNI0

友紀「あ、じゃああたしが代わりに買ってきて……ってそれじゃあ意味ないか。
   あと楓さんの好きなものって言ったら温泉かなぁ」

文香「温泉……」

友紀「まー温泉そのままもってくるのは無理だから、入浴剤とか?」

文香「……それは、ちょっと……」

友紀「そうかな?こういうのは気持ちの問題だよ!」

文香「…気持ち……」

友紀「そうそう!自分のことを考えて選んでくれたんだなって分かれば、
   どんなものだって嬉しいはずだよ」

文香「…そう、ですか…」

6: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/13(木) 21:48:58.42 ID:HCfsJsNI0

………

……………

…………………

荒木比奈「気持ちが伝わる贈り物っスか?」

文香「……ええ……」

比奈「そっスねー。ベタな所で手作りのお菓子とかっスかね」

文香「……手作り……」

比奈「そうそう。クッキーとか」

文香「……あまり、手先が器用な方ではないので…
   …作ったことも、ないですし……」

比奈「あーいや、ものの喩えッス。
   あっ、形にのこるものでもいいかもしれないッスね」

7: ◆r4vICyDKLo 2013/06/13(木) 21:55:59.27 ID:HCfsJsNI0
文香「…形に、残るもの………?」

比奈「楓さんって結構カワイイところがあって、前にアタシ似顔絵を描いてあげたことがあるんスよ。
   何のきっかけだったかはちょっと憶えてないッスけど」

文香「…はあ……」

比奈「スケブにサラサラッと描いただけだったんスけど、すごい喜んでくれたんス。
   それで、この間ちょっと用があって寮の楓さんの部屋に行ったら、その絵が飾ってあって」

比奈「正直照れくさかったっすけど、あんなに喜んでくれたら絵描き冥利に尽きるってものッス」

文香「…………」

比奈「だから、気持ちの問題ってのも間違いじゃないと思うッスよ。
   楓さんなら、どんなものでも大切にしてくれるッス」

文香「………そう、ですね……」

8: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/13(木) 22:38:29.43 ID:HCfsJsNI0

………

……………

…………………

――――女子寮

楓(―――ふぅ。遅くなっちゃった)

楓(夕飯食べ損ねちゃったし食堂でお夜食でも……あら?灯りが…)

文香「…おかえりなさい、楓さん……」

楓「文香ちゃん、まだ起きてたの?」

文香「…楓さんに、渡したいものがあって…待ってました……」

9: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/13(木) 22:51:32.06 ID:HCfsJsNI0

楓「渡したいもの?私に?」

文香「……これを…」スッ

楓「これは……栞?」

文香「……私、こんなものしか作れなくて…」

楓「文香ちゃんが作ったの?」

文香「…感謝を示すなら、手作りのものがいいと、比奈さんが……」

楓「感謝……」

文香「……ハルシャギク、という花なんです、それ…」

楓「ハルシャギク?」

10: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/13(木) 23:24:46.07 ID:HCfsJsNI0

文香「……花言葉は“上機嫌”というらしいです…」

文香「…楓さんは、いつも明るくて、楽しそうで……」

文香「……こんな私のことも、気にかけてくれて…」

文香「…アイドルを目指すことになって、不安なことだらけで…
   ……それはいまも変わらないんですが……」

文香「…それでも、ここまで私がやってこれたのは……
   ……楓さんの、おかげだと思うんです……」

文香「………だから、その…」

文香「…ほんの、お礼です………しおりだけに…」

11: ◆r4vICyDKLo 2013/06/13(木) 23:33:08.89 ID:HCfsJsNI0
楓「―――ふふっ」クスッ

文香「………すみません、変なことを言って……」

楓「ううん、違うわ。とっても嬉しいの」

文香「…楓さん………?」

ギュッ

楓「ありがとう、文香ちゃん。大切にするわね」ギュゥ

文香「!…………
   ……あの、楓さん……」

13: ◆r4vICyDKLo 2013/06/13(木) 23:49:19.89 ID:HCfsJsNI0
楓「私もね、昔は自分の意見をはっきり言うのが苦手だったの」

楓「だからかしら。文香ちゃんのことは放っておけなかったの。
  ―――なんとなく、昔の私みたいだったから」

文香「…楓さんが……?
   ……信じられません……」

楓「そう?でも……ううん、だから、文香ちゃんがこうしてくれたことがとても嬉しい。
  私に、気持ちを伝えてくれたことがとても嬉しいの」

文香「…………」

楓「ありがとう、文香ちゃん」ギュゥ

………

……………

…………………

14: ◆r4vICyDKLo 2013/06/13(木) 23:59:55.88 ID:HCfsJsNI0
――――翌日

ブロロロロロ…

P「……へえー、文香がそんなことを」

楓「はい。私、とっても嬉しくて」

P「その栞は、今どこに?」

楓「ここに。手帳に挟んで、みんなに自慢してるんです」ホラッ

P「………あんまり大ごとにしたら文香がかわいそうですよ」

楓「むぅ、プロデューサーもちゃんと見てください」ホラホラ

P「今運転中ですから!わかりました、着いたらちゃんと見ますから!」

15: ◆r4vICyDKLo 2013/06/14(金) 00:08:17.69 ID:ZxZFByPO0
楓「でも、意外なこともあったんです」

P「意外?」

楓「あの文香ちゃんが、『しおりだけに、ほんのお礼』だなんて……、
  ふふっ、どこで覚えてきたんでしょうね?」

P(どうかんがえても楓さんの影響だろ…………)

おしまい

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