【天海春香SS】P「春香が可愛すぎて仕事に集中できないんだ」

1: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2013/04/12(金) 08:33:28.36 ID:jcr0BPge0
律子「は?」

P「可愛いんだ……」

律子「……何が可愛いって?」

P「天海春香。俺の担当アイドルだよ」

律子「……それは知ってますけど」

律子(急に何言い出すのこの人)

6: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2013/04/12(金) 08:41:58.40 ID:jcr0BPge0
律子「あー……ま、まぁ、確かに可愛いですよね。リボンも似合ってる」

P「えー、なんだよ、その『言われてみればそういえば』みたいな反応。
 春香は言うまでもなく可愛いだろ?」

律子「急に変なこと言うからこんな反応になってるんですけど……」

P「春香が可愛いのがそんなに変だって言うのか!?」ガタッ

律子「ちがっ、もう、落ち着いてくだ……落ち着け! こら!」

……

律子「あなたが急にらしくないこと言うから驚いたんですよ。
   何かあったの? 春香になんか言われた?」

P「いや、何もないよ。まぁ、あえて何か変わったと言えば──」

律子「……?」

P「俺の心──……かな。へへっ……」

律子(うわぁ、うざっ」

8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2013/04/12(金) 08:52:29.20 ID:jcr0BPge0
P「律子、今うざいって……」

律子「ゴホンゴホン!」

律子「……担当アイドルを可愛いと思うのは良いことですけど、
   仕事に集中できないっていうのは感心しませんね」

P「だよなぁ……はぁ」

律子「本気で落ち込まないでくださいよ……まるで恋する中学生みたいね」

P「ここ、恋!?」ドキッ

律子「……」

P「そ、そうだったのか……これが恋……」

律子「面倒くさい人……」

ガチャッ

春香「おっはようございまーす!」

P「どきっ! お、おお、おはよう春香っ!」

律子「ちょっと、プロデューサー……あなたはあくまで、
   プロデューサーなんですからね。変に態度に出さないでくださいよ」

P「わ、わかってるよ……」

9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2013/04/12(金) 09:02:07.15 ID:jcr0BPge0
春香「あ! 律子さん、プロデューサーさんっ、おはようございます♪」

律子「おはよう。随分ご機嫌みたいねぇ」

春香「はいっ! 私最近、アイドル生活がすーっごく楽しくて!
   今日はどんなお仕事が私を待ってるのかなって思うと、今からワクワクしちゃいますっ!」

律子(うぁ、まぶしい……後光が差してるみたいね)

春香「えへへ……これも、私のプロデューサーさんのおかげかなぁ……」チラッ

P「!」ドキッ

春香「なーんて♪」

P「お、俺のおかげなんかじゃないさ。春香が毎日、
 レッスンを誰よりも一生懸命頑張ってるから……だからその……」

春香「そ、そんなぁ、言いすぎですよぅ……えへへ、
   でもプロデューサーさんにそう言ってもらえたら、私、すっごく嬉しいですっ!」

P「へ、へへ……今日も頑張ろうな、春香!」

春香「はーいっ!」

律子(何この甘ったるい空気)

11: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2013/04/12(金) 09:14:28.07 ID:jcr0BPge0
 
……

<ハイオッケー。十五分休憩でーす

ピピピ

律子「……あら?」

伊織「律子、どうしたの?」

律子「あぁ伊織、お疲れ様。今プロデューサーからメールが来てね……
   仕事中に連絡してくるなんて珍しいから、ちょっと気になっただけよ」

ピッ

………………………………
From:P
Sub:無し

水着を恥ずかしがる春香
かわいい

添付ファイルあり
………………………………

律子「……はぁ」

律子「仕事しろ、っと……」ピ、ピ

14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2013/04/12(金) 09:24:33.20 ID:jcr0BPge0
一方その頃、撮影スタジオ

ピピピ

P「お、律子から返信きた……どれど

春香「プロデューサーさぁ~ん……」

P「どぉうした春香ぁっ!」ポイッ

春香「やっぱり、私……、こんなに露出の激しい水着、恥ずかしいですよぉ……」

P「恥ずかしがることないぞ! すっごく似合ってるし! うん!」

春香「そ、そうは言っても……他の水着って、ないんですか?
   そもそもこれ、予定の水着と違いますよね……?」

P「あぁ、それは急遽、俺の好みで……ごほんごほん!」

春香「え、好み?」

P「い、いやいや、違うぞ春香、誤解しないでくれ!」

春香「……もしかしてプロデューサーさんって、こういうのが、好きなんですか?」

P「うん! あ、いや……」

春香「へ~、そうなんだ……えへへ」

15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2013/04/12(金) 09:39:00.50 ID:jcr0BPge0
春香「……それなら私、ちょっと頑張れそうかもしれません」

P「ほ、本当か? それじゃあ、撮影再開しても大丈夫かな?」

春香「はい! でも……」

P「でも?」

春香「……この写真集が発売されたら、色んな人が、私の写真を見ることになるんですよね?」

P「ああ、そうだな。……もしかして春香、そういうの嫌だったか?」

春香「いえ、これもアイドルのお仕事だって思うし、
   嫌だってわけじゃないんですけど……」

春香「……でも、プロデューサーさんの好きな水着だったら、
   プロデューサーさんだけに見てもらいたい、かなぁ……」チラッ

P「!」

春香「なーんて……えへへ、ダメですよね、こんなこと言ったら。
   うん、私、もう大丈夫です! 行ってきま……」

P「春香」

春香「え?」

P「水着は予定のものを使おう。うん、それがいい。ごめんな、急に無理を言っちゃって」

春香「本当ですか! わぁ……ありがとうございますっ!」パァァ

17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2013/04/12(金) 09:51:29.25 ID:jcr0BPge0
765プロ事務所

ガチャッ

律子「ただいま戻りましたー……って」

P「うん、美味い!」モグモグ

春香「ホントですか! 良かったぁ……」

P「春香の作ってくれたお菓子は世界一美味いよ。
 店が開けるんじゃないかな」

春香「そ、そんなぁ……褒めすぎですよぅ。えへへ……」

P「まぁ、本当にパティシエ目指したら、アイドルじゃなくなっちゃうし……
 そうしたら俺、さみしいけどな……」

春香「……プロデューサーさん」

P「え? な、なんだ?」

春香「私は、これからもずっと……、プロデューサーさんがプロデュースしてくれる限り……
   プロデューサーさんの担当アイドル、ですよ」

P「春香……!」

律子(帰ってくるなりお腹いっぱいだわ……何これ)

18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2013/04/12(金) 10:03:01.92 ID:jcr0BPge0
春香「あ、律子さん! お帰りなさい!」

P「おーう、お疲れーい」

律子「私と春香で随分態度が違うこと……」ボソッ

P「律子、今なんて……?」

律子「いーえ。お疲れ様です」

……

春香「えへへ、律子さんもおひとつ、いかがですか?
   私特製チョコレートですっ♪」

律子「あら、いいわね。それじゃあ遠慮なくー、っと」ヒョイ

P「ピターチョコなんだよな。甘すぎるのは俺、ちょっと苦手だけど、
 こういうのだったらいくらでもいけるよ」

春香「……プロデューサーさんの好みに合わせたって言ったら、どうします?」

P「え……!? そ、そりゃあ……う、嬉し」

律子「……甘い」

春香・P「えっ?」

律子「甘すぎるのよぉぉぉっ!!」

20: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2013/04/12(金) 10:12:20.40 ID:jcr0BPge0
P「そのチョコ、そんなに甘かったか?」

春香「おっかしいなぁ……砂糖控えめで、上手に出来たと思ったんだけど」

律子「違うわよ! チョコレートは美味しいわ、ありがと春香!」

律子「──じゃなくて、あんた達の空気が甘すぎるって言ってんの!」

春香・P「空気?」

律子「ったく……ここ、事務所よ? 仕事をする場所なんです」

小鳥「」ビクッ

真美「ピヨちゃん、どったの?」カチカチ

亜美「はやく次のクエスト行こうよー」ピコピコ

律子「それなのにさっきから、イチャイチャしちゃって……」

P「い、イチャイチャって……!? な、なに言ってるんだよ!」

春香「そそ、そんな……ま、まるで私とプロデューサーさんが……その……」

春香・P「……えへへ」

律子「腹立つぅぅ……!」プルプル

23: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2013/04/12(金) 10:20:59.85 ID:jcr0BPge0
律子「……ちょっと春香、来なさい」クイクイ

春香「は、はい……」

P「おい、律子……?」

律子「説教するわけありませんから、安心してください。ほら、行くわよ」

……

律子「……それで?」

春香「え?」

律子「春香、あなた……プロデューサーのこと、好きなの?」

春香「!?」

律子「どーなの」

春香「す、すす、す……!?」カァァ

春香「……り、律子さんっ、何言ってるんですか!
   もしプロデューサーさんに聞かれたら……! はぅぅ……!」

律子(わかりやすい子ね……)

25: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2013/04/12(金) 10:35:13.84 ID:jcr0BPge0
春香「……やっぱり、ダメ、ですよね」

律子「あら、そんなことはないんじゃない?」

春香「え」

律子「……説教するわけじゃないって言ったでしょ。
   私は別に、あなたの気持ちを否定するつもりはないのよ」

律子「ただ、場所をわきまえて欲しいってことが言いたいだけ。
   プロデューサーも言ってたわ、最近仕事に集中できないって」

春香「プロデューサーさんが集中できない? そ、それってどういう……」

律子「あー、あんまりそれは気にしないで」

……

律子「私の立場を考えたら、あまりこういうことは言ってはいけないかもしれないけど……
   仕事のモチベーションに繋がるなら、たとえ恋をしてたって、それでもいい。
   でも、春香の本分を忘れないで」

春香「本分?」

律子「あなたはアイドルでしょ? テレビに出て、歌を歌って……
   みんなを笑顔にするのが仕事。だから、オンとオフの区別は、しっかり分けてちょうだい」

春香「……はい。わかりました……」

律子「よろしくね」

29: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2013/04/12(金) 10:44:29.68 ID:jcr0BPge0
ガチャッ

律子(うーん、結局お説教っぽくなっちゃったかしら……)

P「は、春香」

春香「! プロデューサーさん……」

P「……」

春香「……あの、それじゃあ私……もうそろそろ、帰りますね」

P「送っていく。駅まで車出すよ」

春香「だ、ダメですっ! オンとオフ、つけなきゃ……」

P「どういうこと?」

春香「……お疲れ様でしたっ!」タッ

P「あっ……」

タッタッタ……

春香「……」チラッ

P「春香……」

律子「……はぁ。これじゃあ私、悪者ね……」

30: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2013/04/12(金) 10:50:25.03 ID:jcr0BPge0
律子「……もう仕事も終わってるし、事務所じゃないならいいわよ」

春香「! 律子さん……!」

律子「プロデューサー、春香を送ってあげてください」

P「あ、ああ……でも、今のやり取り、一体なんだったんだ?」

春香「えへへ……よろしくお願いしますね、プロデューサーさん♪」

P「命に代えても無事に駅まで届けてやる。さぁ行こう!」

……

カァ……
       カァ……

律子「……」ギシッ

律子「あーあ」

律子「……馬鹿みたいね、私」

32: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2013/04/12(金) 11:00:58.62 ID:jcr0BPge0
律子(ほーんと……あれで付き合ってないって言うんだから驚きだわ)

律子(春香もプロデューサーも、お互いにお互いのことを想っていて、
   あれだけ仲が良いのに……)

律子(少し勇気を出して踏み出せば、すぐ関係は変わりそうなものなのに……)

律子(……勇気を出せない、か。でもそれは、あの人達だけじゃなくて──)

ガチャッ

P「ただいま戻りましたー」

律子「……お帰りなさい。無事だったみたいね」

P「無事?」

律子「ふふっ、命に代えても、なんて言ってたから」

33: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2013/04/12(金) 11:04:38.47 ID:jcr0BPge0
 
律子「プロデューサー」

P「ん?」

律子「……やっぱり、春香のこと、好きなんですか?」

P「……」

P「ああ」

律子「……そう」
 

37: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2013/04/12(金) 11:19:42.90 ID:jcr0BPge0
P「でもわかってる。担当アイドルにこんな気持ちを持ってはいけないって」

律子「……」

律子(さっきは春香にああ言ったのに、なんで今の私は、否定も肯定もしないのかしら)

P「……車の中でさ、春香に言われたんだ」

律子「え? なんて言われたの?」

『私達はアイドルとプロデューサー、ですよね』

P「ってさ。それで、それに対して俺は……何も言えなかった。
 でも春香はきっと、俺の気持ちに気付いてたんじゃないかと思う。だからあんなことを……」

律子(見当違いもいいところだわ。春香は、確認したかっただけに決まってるじゃない)

P「……だから、もうちゃんとするよ。悪かった、今日は仕事中にあんなメールして。
 これからは律子がメールで言ってた通り、真面目に仕事するから」

律子「……あら、読んでたのね。返信がないから無視されたのかと思ってました」

P「あ、返してなかったか……ごめん、
 あのあとすぐ撮影が再開したから、すっかり忘れてた」

律子「いーえ、お気になさらずに」

38: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2013/04/12(金) 11:31:08.76 ID:jcr0BPge0
律子「……それじゃ、プロデューサーも戻ってきたことだし、
   私もそろそろ、帰りますね」

P「ああ、お疲れ」

律子「はい、お疲れ様でした」

テクテク……

ガチャ

律子「……」チラッ

P「ほらほら、亜美と真美も、いつまでもゲームやってないで家に帰るんだ。
 音無さんにも、仕事があるんだからな」

亜美・真美「はーい」

小鳥「う……は、はい、仕事します……」

律子「……ホントに」

律子(馬鹿みたいね、私)

……バタン

40: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2013/04/12(金) 11:44:57.50 ID:jcr0BPge0
数週間後

ブロロロ……

──……♪

律子「……あら? この歌は……」

『いつもありがとう……頑張って……♪』

『胸が──……詰まって言えない……♪』

伊織「春香の新曲ね。最近春香ったら、頑張ってるみたいじゃない」

律子「……そうね」

伊織「にひひっ♪ まぁ、このちょーウルトラスーパーデラックス
   天才美少女アイドル水瀬伊織ちゃんには、まだ及ばないけどねっ!」

律子「……」

『……お送りしたのは、今週発売の天海春香さんの新曲、
「さよならをありがとう」でした』

『この番組では、リスナーの皆様からのリクエストを募集しています。
あて先は──……』

41: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2013/04/12(金) 11:54:07.66 ID:jcr0BPge0
765プロ事務所

ガチャッ

律子「ただいま戻り──……春香?」

春香「あ……律子さん。お帰りなさい」

律子「どうしたのよ、そんな隅っこで丸まっちゃって」

春香「……えへへ。なんとなく、こうしてると落ち着くんです」

……

律子「……はい、ココア」コトッ

春香「あ、ありがとうございます」

ずずっ……

春香「……美味しい」

律子「……」

43: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2013/04/12(金) 12:00:32.09 ID:jcr0BPge0
春香「律子さん、お仕事終わったんですか?」

律子「ええ。今、伊織を家まで送っていったとこ」

春香「……最近は、伊織の家の人じゃなくて、
   律子さんが伊織を送っているんですよね」

律子「まぁね。それがどうしたの?」

春香「なんか、いいなぁって思っちゃって。
   私、ちょっと羨ましくなっちゃいます」

律子「羨ましい?」

春香「……仲、良さそうで……いいなぁって……」

律子「……、……プロデューサーは、どうしたの?」

春香「プロデューサーさんなら、さっきまた、お仕事に行っちゃいました。
   今度のライブの為の打ち合わせらしくて……」

律子「こんな時間から? 春香の仕事も、さっき終わったばかりでしょ?
   まだ働くのね、あの人……」

春香「えへへ……ほーんと、そうですよね」

春香「私なんかの為に、毎日、毎日……遅くまで……」

45: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2013/04/12(金) 12:17:00.06 ID:jcr0BPge0
律子(この間見たまぶしい笑顔は、どこに行ったのやら)

律子(本当に、二人とも……不器用すぎるんだから)

律子「……ねぇ、春香」

春香「……?」

律子「あなたは最近、本当によく頑張ってると思うわ。
   新曲の出来も良いし、仕事もどんどん入ってくるようになった」

律子「……それは、なんで?」

春香「なんで、って……そ、そんなの、
   プロデューサーさんが頑張って、お仕事取ってきてくれるから……」

律子「ちがう。春香の原動力を知りたいの」

春香「原動力……」

律子「歌が好きだから、歌でみんなを笑顔にしたいから、
   春香はアイドルになったって言ってたわよね」

律子「でも、今……あなたをそこまでつき動かしているものは、なに?」

春香「……っ」

46: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2013/04/12(金) 12:28:29.85 ID:jcr0BPge0
春香「それ、は……」

春香「……わからない、です」

律子「……春香、前に言ってたわよね」

『私最近、アイドル生活がすーっごく楽しくて!
今日はどんなお仕事が私を待ってるのかなって思うと、今からワクワクしちゃいますっ!』

『これも、私のプロデューサーさんのおかげかなぁ……』

律子「今は、違うの?」

春香「……、」

律子「……」

春香「……いま、は」

春香「プロデューサーさんのおかげ、じゃなくて……」

春香「プロデューサーさんの期待に、応えたいから……、
   仕事を頑張れば、プロデューサーさんに、褒めてもらえるから……」

春香「そうじゃきゃ……こっちを、向いてもらえないから……! だから……っ!」

ポロポロ……

47: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2013/04/12(金) 12:41:21.28 ID:jcr0BPge0
律子(プロデューサーのおかげで送れていた、楽しいアイドル生活……)

律子(今ではそれが、プロデューサーに振り向いてもらうための手段になっている)

律子(……あれからプロデューサーは、本当に別人になったみたいに、
   毎日毎日、必死に、真剣に、寝る間も惜しんで働くようになった)

『私達はアイドルとプロデューサー、ですよね』

律子(きっとそれが、春香の質問に対する、プロデューサーなりの答えだったんでしょう)

律子(その結果として、二人の距離は少しだけ遠くなってしまったけど……、
   でもそれはなにより、『アイドルの天海春香』の為で)

律子(春香もきっと、それはわかっているのに……)

春香「う、うぅ……律子さぁん……! 私、私……!」

律子(どうして今、春香は泣いているのかしら)

律子(……本当に、面倒くさいものね。恋心っていうものは)

50: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2013/04/12(金) 12:55:06.40 ID:jcr0BPge0
律子(でも、ここまで面倒くさくさせたのは……他でもない、私なのよね)

律子(私があのとき、春香にああ言わなければ……
   春香がこんな気持ちになることもなかった)

律子(……どうして私はあのとき、余計な口を出してしまったのかしら)

律子「春香」

春香「え……?」

律子「……プロデューサーに、今の気持ちを伝えなさい」

春香「今の、気持ち?」

律子「プロデューサーにどう思われたいのか、
   そしてプロデューサーをどう思っているのか……」

律子「思ってること、全部、告白するのよ」

春香「こ、告白……!? で、でも、そんなことしたら──っ!」

律子「大丈夫、私が保証する。きっとうまくいくから」

春香「……律子さん……」

51: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2013/04/12(金) 13:09:22.18 ID:jcr0BPge0
春香「……どうして、そう言ってくれるんですか?
   前は、オンとオフの区別をつけなさいって言ったのに……」

春香「それに、もし、もしも……律子さんの言う通り、
   うまくいっちゃったら、そしたら……!」

律子「私は、プロデューサーだから」

春香「え?」

律子「そりゃあ、あなたの担当プロデューサーではないけど、
   私は確かに、765プロのプロデューサーだから。
   だから、アイドルが──仲間が泣いているのに、放っておくことなんてできない」

律子「もちろん今でも、あの言葉を撤回するつもりはないわ。
   でも今の春香が、今の気持ちのままアイドルを続けたら……、いつかあなたは、壊れてしまう」

春香「……」

律子「……そっちのほうが、私は嫌なのよ」

春香「う……う、うぅ……!」

ポロポロ……

律子「あーもう、泣かないの」

律子「私は、あなたを応援してるから……だから、頑張りなさい、春香っ!」ポンッ

春香「……はい……!」

54: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2013/04/12(金) 13:25:00.43 ID:jcr0BPge0
 
───
──

春香「ふぅ……」

律子「春香、リハお疲れ様」

春香「あ、律子さん! 来てくれたんですねっ」

……

律子「はい、ジュース」

春香「ありがとうございますっ!」

プシュッ……

春香「こく、こく……あぁ、生き返るぅ~」

律子「ふふっ、オジサンっぽいわよ~?」

春香「うわぁっ、いけないいけない……私はアイドル、私はアイドル、っと」

56: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2013/04/12(金) 13:34:24.06 ID:jcr0BPge0
律子「とうとう明日、か……。ソロライブで、
   こんなに大きな会場取れるなんて、春香、大きくなったね」

春香「えへへ……プロデューサーさんのおかげですよ」

……

春香「……律子さん。私、明日のライブが終わったら、
   プロデューサーさんに全部、伝えようって思います」

律子「……そう」

春香「でも、うまくいくかなぁ……」

律子「大丈夫よ、今のあなた、すっごく良い顔してるから」

春香「……本当ですか?」

律子「もちろん。アイドルを楽しんでる、そんな顔してる。
   それはきっと……、あの人が一番好きな、春香の顔だから」

57: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2013/04/12(金) 13:39:20.52 ID:jcr0BPge0
 
春香「……あの、律子さん。私、時々思うんですけど……」

律子「なに?」

春香「律子さんってもしかして、プロデューサーさんのこ──

P「おーい、春香ー!」

春香「!」

律子「あら、お疲れ様です、プロデューサー」

P「あれ、律子? 来てたのか」

春香「あのっ、律子さん!」

律子「春香」

春香「……っ」

律子「……頑張りなさい」

春香「……」

春香「……はいっ」

61: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2013/04/12(金) 13:56:07.88 ID:jcr0BPge0
 
───
──

ワァァ……!

春香『……会場に集まってくれた皆さん。
   次の歌が、本当の本当に、最後の曲です』

春香『……さよならは、お別れの言葉じゃない』

春香『またいつか、笑顔で会うための言葉なんです』

春香『同じ歌を歌えば──同じ気持ちでさえいれば、きっと未来はつながる』

春香『そんな気持ちを込めて──……』

春香『……「さよならをありがとう」』
 

63: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2013/04/12(金) 14:07:25.27 ID:jcr0BPge0
 

「いつもありがとう」「大好きよ」

        照れた顔が浮かんだ──……♪

律子「……っ」

P「……律子?」

涙で目の前 霞んでいく でも幸せ──……♪

P「どうしたんだ、泣いて──」

律子「……春香が」

律子「本当に、大きくなったなって思って……」

律子(そして、あの子を、ここまで成長させたのは……)

律子(いつも春香と一緒に歩いて、いつも春香を見守ってきた、
   プロデューサーで……)

64: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2013/04/12(金) 14:13:57.35 ID:jcr0BPge0
 

「さよなら」

    そう言ってそっと優しく手を振る──……♪

律子「……」テクテク

P「……最後まで見ていかないのか? もうすぐ終わりだし、春香に顔くらい見せてやっても……」

律子「私は私で、このあとまた仕事がありますし……
   それに、これ以上ここにいたら、お邪魔虫になっちゃいますからね」

P「お邪魔虫?」

律子「ええ。ふふっ、すぐに意味はわかると思いますよ」

なぜかな あなたを想うと満たされるから

    頑張ろう 今を────……

律子「それじゃあ──……」

律子「……さよなら」

66: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2013/04/12(金) 14:22:36.74 ID:jcr0BPge0
 

ピピピ

律子「……あら? 春香から、メール……」

ピッ

律子「……ふふっ」

律子(そのメールには、文章は何も書かれていなくて……、
   たったひとつだけ、絵文字が置いてあった)

伊織「何よ、携帯見てニヤニヤしちゃって。気持ち悪いわね」

律子「うるさい。ほら、行くわよ」

律子(──それは、ハートマーク)

律子(ったく、春香ったら、浮かれちゃって……)

69: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2013/04/12(金) 14:34:03.49 ID:jcr0BPge0
律子「……あーあ。私も、男に生まれればよかったかしら」

伊織「はぁ? 何それ」

律子「だってそうすれば、舐められなくて済むじゃない。
   女プロデューサーってのもね、色々と苦労してるのよ」

伊織「ふーん……」

律子「それに──……」

律子(……こんな気持ちに、ならなくて済んだし)

伊織「それに?」

律子「……担当アイドルが可愛すぎて仕事に集中出来ないっていう気持ちも、
   味わえたかもしれないしね」

伊織「……担当アイドル? 律子の担当は、私だから……」

伊織「……」

伊織「ちょ、ちょっと! 急にそんな、何言ってんのよ!」カァァ

律子「どういう思考回路してんのよ……」

72: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2013/04/12(金) 14:51:37.81 ID:jcr0BPge0
 
律子(──私はアイドルを辞めて、プロデューサーになった)

律子(それは、私の夢だったから。譲れなかったから……)

律子(でも……あなたと夢を語ったあの日々は、今でも私の宝物。
   きっと、ずっとずっと……)

律子「さぁ、私達も春香に負けてらんないわよー。
   今日から新ユニット活動開始なんだから、気合いを入れていきましょう!」

伊織「わかってるわよ、もう……えっと、
   新メンバーは、亜美とあずさ、だったかしら?」

律子「そうそう。それで、ユニット名は──……」

律子(みんな、不安抱えながら進み続ける)

律子(……さよならは、お別れの言葉じゃない。またいつか、笑顔で会うための言葉だから)

律子(だから、今だけは……さようなら。私の、たったひとりの──)

律子(元、プロデューサー殿)

おわり

83: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2013/04/12(金) 15:05:49.62 ID:jcr0BPge0
>>75
嬉しい 保存しました

79: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2013/04/12(金) 15:02:23.44 ID:jcr0BPge0
このあと律っちゃんは俺と出会って恋に落ちることになります
読んでくれた方、ありがとうございました

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする