春香「悲しみの向こうへ」【天海春香SS】

1: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/26(土) 16:44:16.73 ID:DrL8hrf70
School Daysとのクロスです
途中までは以前VIPで投下したんですが落ちちゃったので
以前は春香「永遠に」というスレタイでしたが、今回は分岐をいれたので変えました

2: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/26(土) 16:45:50.16 ID:DrL8hrf70
十二月に入ってから、街は唐突に慌ただしくなった。

十一月の、ぼんやりとした年末への待ち遠しさが充満した空気は消え去り、誰もが焦り出している。

既に一ヶ月を切ったクリスマスのために、若い人達が恋人探しにやっきになっているからだろうか。

アイドルである私も例外では無い。

恋人と過ごす聖夜に憧れない女の子はいないのだ。

私の場合は、恋人候補は一人きりだけど。

私は学校が終わって事務所に行く途中だった。

冬のこの時間では日は沈みきっていて真っ暗だ。

それでも、私の気分は晴れやかで清々しい。

思わず、スキップしたくなるほどに。

私は、またカバンの中に入った紙袋を確認してしまった。

手芸屋で買った毛糸と編み棒が入っている。

4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/26(土) 16:48:04.46 ID:DrL8hrf70
プロデューサーさんのためにマフラーを編んであげるつもりだった。

プロデューサーさんへのクリスマスプレゼントだ。

今年に入ってまだプロデューサーさんがマフラーをしているのを見ていない。

渡した時の喜んだ顔が浮かび、また嬉しくなる。

自然と笑みがこぼれる。

きっと、ありがとうって言いながら私の頭を撫でてくれるだろう。

最近のプロデューサーさんは忙しく、ほとんど事務所にいない。

私の仕事についてきてくれることも前より少なくなった。

事務所にいる時は、山のような書類を片付けている時なので、話しかけられないのだ。

5: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/26(土) 16:51:40.65 ID:DrL8hrf70
ドアを開けて事務所に入る。

挨拶をしようと思って口を開いた時、ある光景が目に飛び込んだ。

雪歩「プロデューサーお茶ですぅ」

P「ん?雪歩か……ありがとう。そこに置いておいてくれ」

雪歩「ダメですよプロデューサー」

雪歩「ずっと働きっぱなしなんですから、そろそろ休みましょう?」

P「分かったよ、雪歩。ありがとうな」

雪歩「えへへ」

この光景を見るのも久しぶりだ。

プロデューサーさんが雪歩の頭を撫でている。

以前ならなんでも無い光景だ。

6: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/26(土) 16:56:24.32 ID:DrL8hrf70
しかし、頭を撫でられている雪歩の嬉しそうな顔と、プロデューサーさんの優しい笑顔を見てもやもやした気持ちになる。

春香「……おはようございます」

P「おお春香か、おはよう」

雪歩「あっ、春香ちゃん、おはようございます」

事務所には雪歩しかいないようだ。

みんなトップアイドルになってからは、事務所で他のアイドルに会うことのほうが珍しくなった。

それでも、プロデューサーさんほどじゃない。

プロデューサーさんにあったのは19日ぶりだ。

今日も机の上には書類が溢れかえっている。

また、話をしてもらえないと思い、気分が一気に落ち込んだ。

P「春香、ちょっといいか?」

春香「は、はいっ。なんですかプロデューサーさん?」

8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/26(土) 17:00:08.61 ID:DrL8hrf70
P「ちょっと話がある。こっちに来てくれ」

プロデューサーさんの机の前まで行く。

春香「なんですか?」

私が尋ねると、プロデューサーは少し悩んだ様子で言った。

P「社長も帰ったし、社長室でいいか……」

P「春香、一緒に社長室に来てくれ」

春香「はぁ、分かりました」

プロデューサーさんと一緒に社長室に入る。

プロデューサーさんは応接用のソファに腰を下ろすと早々に切り出した。

P「俺が最近忙しいのは気付いているな?」

春香「ええ、事務所にもほとんどいませんし……」

P「……実はな、俺765プロを辞めるんだ」

10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/26(土) 17:05:04.94 ID:DrL8hrf70
春香「……え?」

頭が真っ白になる。

プロデューサーさんが辞める?

春香「それ本当なんですか!?なんで、なんで辞めちゃうんですか!?」

P「落ち着け、声を抑えろ。雪歩に聞こえるだろ」

P「辞めるというか、新しくプロダクションを作ることになった」

春香「それって、独立するってことですか?」

P「形式上はな。でも、実質765プロの別部門みたいなものだ。

P「でも、アイドル事務所じゃない。アーティストの事務所だ」

春香「アーティスト……?」

P「ああ」

11: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/26(土) 17:09:45.36 ID:DrL8hrf70
P「アイドルのプロデューサーとして手に入れたコネクションを使って、今度はアーティストっていうか、ミュージシャンのプロデューサーをやることになった」

P「前からやりたかったんだが、社長がOKくれてな。だから、今忙しいんだ」

春香「それって……ですか?」

P「ごめん春香。聞こえなかった」

春香「私も連れていってくれるんですよね……?」

P「……春香のプロデュースは律子に引き継ぐことにした」

春香「そんな……どうして……」

P「さっきも説明した通りだ。春香はアイドルで売り続けていく。だから、765プロのほうがいい」

春香「……誰を連れていくんですか?」

プロデューサーさんに尋ねながらも、私は既に答えが分かっていた。

P「千早は新しいプロダクションに連れていく」

12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/26(土) 17:13:40.78 ID:DrL8hrf70
P「千早は本格的に歌手として売ることになった」

春香「……」

私は何も言えなかった。

本当はやめて欲しいと言ってもいいのかもしれない。

でも、プロデューサーの疲れきった顔の中で、目だけは輝いていたから言えなかった。

社長がみんなにプロデューサーさんのことを発表してもあまり騒ぎにはならなかった。

勘のいい数人は既に気づいていたようだし、新しいプロダクションに移籍と言っても実質765プロであることが理由だった。

13: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/26(土) 17:17:25.04 ID:DrL8hrf70
>>12
ミス
プロデューサーさん

14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/26(土) 17:21:14.63 ID:DrL8hrf70
社長の発表の翌日に、プロデューサーさんの私物は新しい事務所に運ばれて行った。

そして、それと入れ替わるように、新しいマネージャーが三人増えた。

三人とも若い女性だ。

社長がスカウトして来たらしい。

小鳥さんは、年が近い女性が増えて嬉しそうだった。

春香「もうこんな時間……」

マフラーを編んでいるといつの間にか時間が立っている。

時計を見たら、既に午前4時だ。

明日、というか今日は朝からバラエティの収録があるのに。

早く寝なくちゃ、と思うのに手が止まらない。

布団に入った時には既に5時近かった。

17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/26(土) 17:30:18.26 ID:DrL8hrf70
頭が重い。

胃がむかついて、気持ち悪い。

無理やり目を瞑る。

私は何時の間にか眠りに落ちていた。

春香「お疲れ様でした…………ふぅ」

バラエティ番組の収録が終わった。

律子「お疲れ様、春香」

律子さんが労いの言葉をかけてくれる。

私はそれに答えようとするけど、口がうまく動かなかった。

律子「春香、大丈夫?春香!?」

視界から色が消えていき、灰色の世界に変わっていく。

本当に辛い時は体が自分のものじゃないみたいに感じられる。

そんなことを思っている内に意識は途切れた。

18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/26(土) 17:36:32.76 ID:DrL8hrf70
頭の上で誰かが話している。

この声は律子さんとプロデューサーさん?

P「医者はなんて?」

律子「寝不足とストレスだろう、って言ってました」

P「そうか……」

律子「すみません。私の注意不足でした」

P「いや、律子のせいじゃない」

P「春香は……春香だけはギリギリまで俺が見るよ」

律子「ご迷惑をおかけします……」

P「だから、律子のせいじゃないって」

覚醒しかけた意識は再び落ちていく。

19: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/26(土) 17:43:37.40 ID:DrL8hrf70
再び意識が戻った時、まず目に入ったのは、プロデューサーさんの顔だった。

P「お、春香。気づいたか?」

春香「プロデューサーさん……?」

P「なんでここにいるか分かるか?」

ここって……病院だろうか。

春香「分かりません」

P「バラエティ番組が終わってすぐ倒れたそうだ」

そうだ。

終わったら、頭がフラフラして……

春香「律子さんは……?」

P「律子は帰った。点滴して貰ったから明日には退院できるだろう」

20: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/26(土) 17:53:11.55 ID:DrL8hrf70
P「あと、お前はやっぱり俺が担当するからな。安心しろ」

P「だから、もう一度眠れ」

春香「分かりました……」

春香「あ、あのプロデューサーさん?」

P「なんだ?」

春香「手、握って貰ってもいいですか?」

P「ずっと握っててやるよ」

春香「ありがとうございます」

目を瞑る。

プロデューサーさんの手の温かさを感じる。

私はまた眠りへ落ちていった。

21: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/26(土) 18:01:55.85 ID:DrL8hrf70
朝日が眩しい。

カーテンの隙間から日差しが差し込んでいる。

私の左手を握ったまま、プロデューサーさんが椅子を並べて寝ていた。

安らかな寝息を立てている。

プロデューサーさんの顔をじっくり眺めると、疲れた顔をしている。

何日も寝ていなかったのだろう。

このままでは、プロデューサーさんが壊れてしまう。

それもこれも全部……

P「んぅ……はあぁ……ん?春香、起きてるのか?」

春香「はい、プロデューサーさん」

P「体調はどうだ?」

春香「昨日よりは全然いいです」

23: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/26(土) 18:08:49.65 ID:DrL8hrf70
P「そうか……」

春香「あのお父さんとお母さんは……」

P「昨日春香が寝ている間にご両親がお見えになったんだがな」

春香「そうなんですか?」

P「ああ」

P「病院に泊まるとおっしゃられたが、俺の責任だから、俺に面倒を見させてくれるよう頼んだんだ」

春香「そんな、プロデューサーさんのせいじゃないです!」

春香「私が夜更かししたから……」

P「あまり気にするな」

P「朝食を食べて、診察を受けて問題なければ退院だ」

P「ところで……」

春香「はい?何ですか?」

24: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/26(土) 18:12:58.07 ID:DrL8hrf70
P「手を離してもいいか?」

春香「は、はい。あの、ありがとうございました」

病院の朝食は思っていたのよりも美味しかった。

昨日の朝から何も食べていなかったのもあるかもしれない。

お母さんが届けてくれた私服に着替えて、病院を後にした。

25: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/26(土) 18:15:36.68 ID:DrL8hrf70
春香「千早ちゃん。一つ聞いていい?」

千早「何かしら?」

春香「千早ちゃんはプロデューサーさんのことどう思ってるの?」

事務所で偶然千早ちゃんに会った時に尋ねた。

千早「……どうって、尊敬してるけど……」

春香「……そういう意味じゃないって分かってるでしょ?」

27: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/26(土) 18:22:21.16 ID:DrL8hrf70
千早「そうね、恋愛感情はないわ」

千早「今は一番大切な時期だから、スキャンダルは困るもの」

春香「ふーん、そうなんだ」

春香「なんだか、プロデューサーさんが千早ちゃんだけを大切にしてるから……」

千早「そんなことないわよ、春香」

千早「プロデューサーが一番大切にしているのは春香よ」

千早「その証拠に倒れてからの一週間はずっと春香と一緒でしょ?」

千早「それは春香のことを気遣ってるからじゃないかしら?」

千早「それに言動に春香への好意が見え隠れしてるし」

春香「えへへ、千早ちゃんもそう思う?」

千早「ええ。春香はプロデューサーに告白しないのかしら?」

28: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/26(土) 18:28:00.83 ID:DrL8hrf70
春香「えっ?」

春香「も、もうすぐクリスマスだから、その時にしようかな」

千早「ふふふ、がんばってね」

千早「プロデューサーならきっと受けいれてくれるわ」

春香「そ、そうかな」

春香「うん、そうかも。ありがとっ、千早ちゃん!」

春香「プロデューサーさんっ!クレープですよ!クレープ!」

P「春香、クレープを食べるには寒くないか?」

私が倒れてから、仕事がある日は毎日プロデューサーが付き添ってくれるようになった。

だから、帰りはちょっとしたデート気分だ。

春香「じゃあ、暖房が効いたプロデューサーさんの部屋でたべましょうよ!」

30: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/26(土) 18:36:09.37 ID:DrL8hrf70
P「全く、仕方が無いな」

プロデューサーさんは優しい。

私にだけ優しいのだ。

P「はい、どうぞ」

春香「お邪魔しまーす!」

春香「プロデューサーさんの部屋、結構片付いてますね」

春香「私、もっと汚いかと思ってました」

P「ははは、元々物が少ないからな」

P「その分、片付いて見えるんじゃないか?」

春香「それじゃクレープを食べましょう!」

P「今、紅茶をいれるから少し待っててくれ」

32: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/26(土) 18:44:23.05 ID:DrL8hrf70
テーブルにつきながら、ベッドの下にいかがわしい本とか無いか調べる。

P「ん?見られてやましい物は無いぞ」

P「それとも春香はそういうのが見たかったのか?」

春香「もう、プロデューサーさんったら!」

P「はは、悪い悪い。はい、紅茶」

春香「ありがとうございます」

春香「いただきまーす。あ、これすごく美味しいですよ!」

P「お、そうかそうか」

春香「プロデューサーさんは何にしたんですか?」

P「俺は、抹茶だな」

春香「あーん」

P「どうした?雛みたいに口を開けて」

34: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/26(土) 18:49:51.97 ID:DrL8hrf70
春香「もう、わかってるくせに。一口下さいよー」

P「はい、どうぞ」

春香「そうじゃなくて、食べさせて下さい!」

P「分かった。分かったから睨むなよ」

春香「あーん」

P「はい、あーん」

春香「あ、抹茶も美味しいですね!」

P「そうなのか?」

春香「プロデューサーも私の食べて下さい!」

P「え、なんか恥ずかしいな」

P「しかも、間接キス……」

春香「いいから、口開けて下さい」

P「分かったよ……あーん」

35: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/26(土) 18:54:17.28 ID:DrL8hrf70
春香「はい、あーん」

春香「どうですか?」

P「どちらも甲乙つけがたいな」

春香「本当そうですよね」

P「甘いのはあまり好きじゃないが、これは程よく甘くておいしいな」

春香「また、一緒に食べましょうね!プロデューサーさん!」

P「ああ、そうだな」

36: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/26(土) 18:57:36.96 ID:DrL8hrf70
ため息をつく。

不安と期待で胸が高鳴っている。

明日は遂にクリスマスイブ。

マフラーはすでに編み終えている。

プロデューサーさんに似合うように青いマフラーだ。

明日は午前が雑誌のインタビューで、午後はバラエティ番組の収録。

プロデューサーさんとはバラエティ番組の収録が終わったら、デートする約束をしている。

38: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/26(土) 19:03:36.72 ID:DrL8hrf70
千早ちゃんに言ったように、私は明日プロデューサーさんに告白する。

もう、この気持ちは抑えきれない。

他の何を引き換えにしても、私の思いを伝えたい。

アイドルであることでさえ……

チャンスはもうほとんど残されていない。

今はまだ、プロデューサーさんは私の側にいてくれる。

でも、この状況が永遠に続く筈はない。

本当に忙しくなったら、プロデューサーさんは私を見捨ててしまうかもしれない。

私がどんなに愛していても、プロデューサーさんにとっては担当アイドルの1人にすぎない。

そう、ただの仕事の道具。

これはなるべく、考えないようにしていることだった。

プロデューサーさんが私を好きじゃない可能性もあるということだ。

40: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/26(土) 19:10:49.02 ID:DrL8hrf70
765プロはアイドル事務所だ。

プロデューサーさんの周りには可愛い女の子で溢れている。

例えば、千早ちゃん。

他のアイドルでは太刀打ちできない歌唱力を持っている。

私とは比べ物にならないぐらい才能がある。

確かに、千早ちゃんは私を応援すると言ってくれた。

それでも、プロデューサーさんは分からない。

態度に出さないだけで、本当は千早ちゃんが好きなのかもしれない。

それに、千早ちゃんだけ新しいプロダクションに連れていくのも怪しい。

私じゃなく、千早ちゃんを連れていくなんて……

私が一番プロデューサーを愛してるのに。

41: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/26(土) 19:15:58.79 ID:DrL8hrf70
他のアイドルの中でなら美希が一番可能性が高い。

あのルックスは人の目を引く。

髪も含めてとにかく派手だ。

個性のない私とは違う。

多少問題なのは性格だけど、プロデューサーさんはなんだかんだ言いながらも美希と関わるのが嫌いじゃないようだ。

美希のほうはプロデューサーさんをハニーって呼んだりして、あからさまにアピールしている。

プロデューサーさんはおそらく気づいてないフリをしているだけだ。

他のアイドルたちも、みんなプロデューサーさんが好きなのはバレバレだ。

43: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/26(土) 19:22:42.76 ID:DrL8hrf70
私は勝てるんだろうか。

私が他の人に勝ってることってなんだろう?

……何も思いつかない。

アイドルとしてだって、はっきり言って微妙だ。

個性がないことを正統派という言葉で誤魔化してるだけだ。

こんな私をプロデューサーさんは選んでくれるだろうか。

胸が締め付けられる。

涙が頬を伝って落ちた。

もう、こんな悲しい思いをし続けたくない。

だから、私はマフラーを編んだ。

会えなくなる前に、せめて気持ちだけでも伝えるために。

44: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/26(土) 19:26:50.41 ID:DrL8hrf70
明日も早いから。

不安を無理やり抑えつける。

プロデューサーさんはきっと受け入れてくれる。

そう自分に言い聞かせ部屋の電気を消した。

しかし、布団に入って目を閉じても、睡魔はなかなか訪れなかった

45: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/26(土) 19:27:20.68 ID:DrL8hrf70
飯食ってくる

51: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/26(土) 19:49:31.15 ID:DrL8hrf70
春香「プロデューサーさん!どうでしたか?今日の私!」

P「ああ、いつもより気合入ってたな。ディレクターもほめてたぞ?」

春香「ありがとうございます!だって、これから……///」

P「……分かったから、早く着替えておいで」

春香「はい!ちゃんと待ってて下さいね?」

P「分かった、分かった」

私は楽屋に向かって走る。

一分でも一秒でも早くプロデューサーさんとイブを過ごしたい。

外れにくい衣装のファスナーがもどかしい。

焦って、手が震える。

53: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/26(土) 19:56:03.66 ID:DrL8hrf70
ようやく、着替え終えると急いでプロデューサーのところに行く。

しかし、プロデューサーは話をしていた。

千早ちゃんと。

思わず立ちつくしてしまう。

頭の中を駆け巡るのはどうしてばかり。

どうして?

どうして千早ちゃんがここに?

どうしてプロデューサーさんと話してるの?

どうしてそんなに楽しそうなの?

どうしてプロデューサーさんは嬉しそうなの?

どうしてプロデューサーさんは私以外の女の子に笑いかけてるの?

どうして?

56: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/26(土) 20:02:40.47 ID:DrL8hrf70
千早「あ、春香」

千早ちゃんが私に気づいた。

千早「それじゃ、プロデューサー、私はこれで」

P「ああ、頑張れよ」

千早ちゃんが私のほうに歩いてくる。

すれ違う時に声をかけてくる。

千早「頑張ってね。春香」

春香「……ありがと」

私も小声で返す。

千早ちゃんは私を裏切らない。

千早ちゃんは私を応援してくれている。

そうに決まってる。

だって、千早ちゃんは私の友達だから。

P「春香、行こうか」

春香「……はい!プロデューサーさん!」

57: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/26(土) 20:09:58.32 ID:DrL8hrf70
P「と、言っても予約してないからなー」

P「終わる時間も分からなかったし」

春香「……実は私、行きたいところがあるんです」

P「ん?どこだ?行ける範囲なら行ってやるぞ?」

胸がドキドキする。

春香「……プロデューサーさんの部屋……です」

P「…………分かった」

私とプロデューサーさんは途中でチキンとケーキを買った。

少しでも、クリスマス気分を味わうために。

58: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/26(土) 20:14:22.31 ID:DrL8hrf70
P「……どうぞ」

春香「お邪魔します!」

プロデューサーさんの部屋に入るのは二度目だ。

春香「プロデューサーさん!早く食べましょう!」

P「落ち着けって……」

P「……なぁ、春香……」

春香「なんですか?」

P「今なら、まだ戻れる」

P「家に帰るなら送っていくぞ……?」

60: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/26(土) 20:20:08.42 ID:DrL8hrf70
春香「……プロデューサーさんが何言ってるのか分かりませんけど?」

私はニコニコしながら答えた。

P「……そうか……いや、なんでもない」

春香「じゃあ、早く食べましょうよ!」

食事の準備を整える。

普通の芸能人なら有名なレストランに行ったりするのだろう。

ここは高級レストランでも夜景が綺麗なレストランでもない。

普通のマンションの一部屋でのクリスマスイブ。

でも、私にとって重要なのはプロデューサーさんと一緒にいること。

それだけだ。

61: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/26(土) 20:25:52.39 ID:DrL8hrf70
食事が終わったら、プロデューサーさんの部屋にあったアイドルのライブDVDを見て過ごした。

P「……すぅ……すぅ」

いつの間にプロデューサーさんは眠ってしまっていた。

私は、そっとプロデューサーさんのメガネを外す。

両手で顔を挟んで、顔をじっくり眺める。

プロデューサーさんにキスする。

プロデューサーさんにあげちゃった……

私のファーストキス。

62: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/26(土) 20:31:03.38 ID:DrL8hrf70
眠っているプロデューサーさんの顔を見ていると、いたずらしたくなった。

プロデューサーの唇を弄ぶ。

上唇を挟んで吸ったり、下唇を舌先で舐めてみたり。

始めはすぐ起きると思って、冗談のつもりだったがだんだん興奮して来た。

春香「はぁ……はぁプロデューサーさん……」

もう、抑えきれない。

私は、唇を思い切り押し付けて吸った。

P「むぐっ!?……ぷはぁっ……は、春香!何して?わっぷっ……!?」

プロデューサーさんの唇を塞ぐ。

手で顔を挟んで押さえつけたままキスする。

そして、唇でプロデューサーさんの口をこじ開けて、舌を入れる。

63: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/26(土) 20:36:29.82 ID:DrL8hrf70
口を離すとプロデューサーは驚いた顔をしていた。

春香「もう……だめっ。我慢できない!」

春香「私の気持ち聞いてください!」

春香「プロデューサーさん!好きです!大好き!愛してます!」

春香「他の誰よりもあなたのことを愛してます!」

言った。

言ってしまった。

春香「……プロデューサーさんは私の事、嫌いですか?」

P「……嫌いだったら、家にあげたりしない」

P「……それに、俺はわざわざ嫌いな奴の面倒を見る、なんて言い出せるほどできた人間じゃない」

春香「プロデューサーさん……」

P「でも……」

P「でも、プロデューサーが手を出すわけには……」

66: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/26(土) 20:46:31.63 ID:DrL8hrf70
P「でも、春香のことを放っておけないんだ。守ってやりたい」

春香「私より雪歩とかのほうが守ってあげたくなるんじゃないですか?」

P「春香は明るくて気丈に振舞ってるけど女の子らしい部分もある」

P「時折見せるその部分に惹かれたんだ」

P「俺も春香が好きだ。愛してる」

私は、プロデューサーさんに思い切り抱きついて、押し倒した。

P「お、おい!春香?」

春香「良かったです。断られたら、どうしようかと思って……」

P「流石に断れない。俺だって好きな女性から告白されたら嬉しいからな」

P「自分から言い出すことは無かっただろうが」

春香「なんか、ヘタレっぽくありませんか?それ」

68: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/26(土) 20:52:05.35 ID:DrL8hrf70
P「ヘタレって……でも、アイドルとプロデューサーが付き合うなんてファンに対する裏切りだからな」

P「それなりの覚悟が必要だ」

私はまたキスする。

春香「えへへ、だったら二人だけの秘密ですね」

P「ああ、そうだな。二人の秘密だ」

春香「じゃあ、今度はプロデューサーさんからキスして下さい」

P「分かったよ」

目を閉じる。

静かな部屋には時計が時を刻む音と、二人の息遣いだけが響いている。

私の唇に優しくプロデューサーさんの唇が触れた。

少しずつ、プロデューサーさんの舌が私の口に入ってくる。

69: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/26(土) 20:57:51.56 ID:DrL8hrf70
あまりのくすぐったさに全身を掻き毟りたくなった。

私は、プロデューサーさんの首に手を回して抱きしめる。

少し息遣いが荒くなった。

春香「はぁ……ふぅ……あのプロデューサーさん?」

P「なんだ?」

春香「あの、シャワー浴びて来てもいいですか?ちょっと汗かいちゃったんで」

P「俺は好きだぞ、春香の匂い」

春香「もう、デリカシー無いですよ!」

春香「それじゃ、シャワー浴びて来ます!」

71: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/26(土) 21:04:30.73 ID:DrL8hrf70
全身を隈なく洗う。

プロデューサーさんに見られても大丈夫なように。

見られるどころか、あんなことやこんなことを……

春香「プロデューサーさん上がりましたよ!」

P「分かった、すぐ上がるから待っててな」

P「バスタオルだけじゃ寒いだろうから、風邪をひかないようあったかくするんだぞ」

春香「大丈夫です!プロデューサーさんのお布団に入ってます!」

72: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/26(土) 21:10:25.64 ID:DrL8hrf70
プロデューサーさんはシャワーを浴びに行ってしまった。

今のうちに電気を消す。

グラビアで水着は何度も見られてるが、それでも裸を見られるのは恥ずかしい。

バスタオルで身体をよく拭く。

カーペットが濡れるといけないので、バスタオルは椅子に掛けた。

春香「失礼します……」

何も着ないでプロデューサーさんの布団に入る。

エアコンで布団が温められている。

首まで布団をかぶると、私はプロデューサーさんの匂いで包まれた。

布団に鼻を押し当て、匂いを吸い込む。

どうしてプロデューサーさんの匂いはこんなに安心できるのだろう。

73: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/26(土) 21:16:31.42 ID:DrL8hrf70
胸の奥がじんわりと温かくなってくる。

P「春香、上がったぞ……」

春香「あ、はい……」

プロデューサーさんがいる事に気づかなかった。

P「電気つけてもいいか?」

春香「だ、だめです!……恥ずかしいから……」

P「……分かった」

プロデューサーさんが近づいてくる。

期待と緊張で胸がドキドキする。

P「春香、めくるぞ?」

春香「は、はい……」

私は恥ずかしいのを我慢して頷く。

プロデューサーさんはそっと布団をめくる。

75: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/26(土) 21:21:21.72 ID:DrL8hrf70
私の身体が部屋の空気とプロデューサーさんの目に晒されて鳥肌がたった。

P「……春香、綺麗だ」

春香「は、恥ずかしいです……」

プロデューサーさんは、バスタオルを取ると裸になり、私に抱きついてくる。

また、抱き合ってキスする。

プロデューサーさんの体温を直接肌で感じる。

シャワーを浴びてきたばかりだから、私よりも体温が高い。

春香「……ちゅ……んっ……はぁ……あ!」

プロデューサーさんが私の胸に手を伸ばす。

触れるか触れないかぐらいの撫で方。

それがすごい気持ちいい。

春香「はぁ……はぁ……プロデューサーさん……気持ちいいです……」

76: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/26(土) 21:22:24.29 ID:DrL8hrf70
「ふふっ。春香、目がトロンとしてるぞ?そんなに気持ちいいのか?」

「はい……だって、男の人に胸触られるのなんて初めてで……」

「……春香は処女なのか?」

「はい。だから、私の初めての人になってください」

プロデューサーさんは返事をせず、そのまま黙ってキスをした。

77: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/26(土) 21:23:48.46 ID:DrL8hrf70
ミスった

P「ふふっ。春香、目がトロンとしてるぞ?そんなに気持ちいいのか?」

春香「はい……だって、男の人に胸触られるのなんて初めてで……」

P「……春香は処女なのか?」

春香「はい。だから、私の初めての人になってください」

プロデューサーさんは返事をせず、そのまま黙ってキスをした。

78: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/26(土) 21:26:30.86 ID:DrL8hrf70
P「気持ちよかったか?春香」

春香「最初はちょっと痛かったですけど……最後のほうは……」

春香「なんていうか、今すごい幸せな気分です」

春香「やっぱり、好きな人と一緒にいられるって幸せです!」

P「そうか。俺もだよ」

春香「えへへ。あ、そうだ!」

80: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/26(土) 21:31:43.99 ID:DrL8hrf70
カバンの中からラッピングしたプレゼントを出す。

P「これは?」

春香「プレゼントです!マフラーを編んだんですよ!」

春香「プロデューサーさんのために!」

P「ありがとうな、春香。大変だっただろ?体調も良くなかったし」

春香「プロデューサーさんのためならへっちゃらです!」

P「ありがとう。でも……ごめんな、俺プレゼント用意するの忘れてた」

春香「良いんですよ。プロデューサーさん」

春香「私の欲しいプレゼントはものじゃないですから」

春香「私に……私にプロデューサーさんの側にいる権利を下さい!」

第一話「告白」終

83: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/26(土) 21:42:42.54 ID:DrL8hrf70
濡れ場?
そんなものは生まれてから一度も見たことがない

前回はもうちょい先まで投下したが
今回はここでクズなPのバージョンに分岐
まあ、コロコロしちゃうシーンだけなんで短いですけど

84: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/26(土) 21:46:22.70 ID:DrL8hrf70
生きることって、どうしてこんなに辛いのだろう。

シャワーから出ているお湯と一緒に私の涙は流れていく。

抑えきれない嗚咽も、シャワーがバスルームの床に当たる音でかき消された。

プロデューサーさんは私のことなんて好きじゃなかった。

本当は誰でも良かったんだ。

私が好意を抱いていたから、プロデューサーさんにとっては都合が良かった。

結局、身体が目当てだったんだ。

きっと、そうに決まっている。

そうでなければ、こうも簡単に私のことを売らなかっただろう。

仮に身体に飽きたとしても、好きだったならAVに売り飛ばすような真似をするはずがない。

87: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/26(土) 21:52:25.09 ID:DrL8hrf70
プロデューサーさんはお金に困っていた。

新しいプロダクションを設立するためには資金がいる。

しかし、プロデューサーさんはなかなか融資してくれるところを見つけられなかった。

多少、社長の援助があるにしても、それだけではどうにもならない。

だから、プロデューサーさんは私と肉体関係を結んだ。

身体で縛って、私を離れられなくするために。

もしくは、プロデューサーさんの情けだったのかもしれない。

せめて初めては好きな人とさせてやろう、というプロデューサーさんの優しさだったのかもしれない。

プロデューサーさんと一夜を過ごした次の日、私はAVに売られた。

P「頼む!春香!俺を助けると思って!」

春香「そんなの嫌です!」

90: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/26(土) 21:57:20.64 ID:DrL8hrf70
P「どうしてだ!?俺のことが好きじゃないのか!」

春香「……好きです」

P「じゃあ、出てくれるな?」

春香「いや!絶対嫌です!」

P「昨日、俺とやったようなことをやればいいだけなんだ。簡単だろ?」

春香「プロデューサーさん以外とはあんなことしたくありません!」

P「俺のなんて小さいし、男優みたいなテクもない」

春香「そういうことじゃないんです!」

P「気持ちよくなれるんだぞ?」

93: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/26(土) 22:02:25.67 ID:DrL8hrf70
春香「嫌です!私はアイドルなんですよ?」

P「AVアイドルとしてやっていけばいい」

春香「そんなの、社長が許すはずがありません」

P「この件は社長も了承済みだ」

春香「そんな……!」

P「役に立たないアイドルをおいておくより、移籍させて金に変えたほうがいいなんて常識だよ」

春香「お願いします!プロデューサーさん!AV以外ならなんでもしますから!」

P「お前なんかに他の稼ぎ方なんてあるわけないだろ?」

春香「今まで通り、アイドルとして売ればいいんじゃないですか?」

P「……せめて、千早ぐらい歌唱力があればな。CDも売れただろうが」

94: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/26(土) 22:06:54.67 ID:DrL8hrf70
春香「それは……」

P「ルックスもスタイルも平凡で、歌は下手くそ。こんなアイドルなんてどこに需要があるんだ?」

春香「わ、私にもファンはいます!」

P「少なすぎる。そんな数じゃ金になるわけがない」

春香「…………」

P「それに、俺は別に恋人をやめるなんて言ってないぞ?」

春香「え……?」

P「俺は春香がAVに出てくれるなら、引退したら結婚するつもりだ」

春香「本当ですか!?」

P「もちろん責任は取る。女の子に俺の都合でこんなことさせるんだからな」

春香「……結婚……」

P「ああ。俺の恋人は春香ただ一人だからな」

春香「……恋人……」

95: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/26(土) 22:10:06.07 ID:DrL8hrf70
P「俺は春香のことが嫌いになったわけじゃないんだ。これは仕方がないことなんだ」

春香「…………」

P「俺は他の誰よりも春香を愛してる」

春香「…………」

P「春香ならわかってくれるだろう?だって、俺の恋人なんだから」

春香「…………」

P「やってくれるな?春香」

春香「………………わかりました」

P「そうか!やってくれるか!」

春香「……はい」

P「ありがとう!春香!」

春香「その代わり、ちゃんと責任取って下さいね?」

P「ああ!もちろんだ!」

98: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/26(土) 22:15:14.18 ID:DrL8hrf70
プロデューサーさんは私に微笑んだ。

あの時の私はどうしてあんなに愚かだったのだろうか。

それはおそらく、恋をしていたせいだ。

きっと、プロデューサーさんに恋をしていたからだ。

せっかく、結ばれた恋人のことを疑うなんて出来なかった。

シャワーを止める。

先週でAVの撮影は終わった。

もう私は汚れてしまった。

自分が汚物にでもなったような気分だ。

私は、その辛さから逃れるためにプロデューサーさんの家に来た。

99: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/26(土) 22:20:05.52 ID:DrL8hrf70
知らない男達に抱かれた身体をプロデューサーさんに慰めてもらうために。

春香「プロデューサーさん……」

バスタオルを体に巻きつける。

私が居間に行くと、プロデューサーさんはテレビを眺めていた。

その画面には男女の痴態が映っている。

男達に嬲られている私だった。

男の上で腰を振る私。

両手に男のモノを握らされてる私。

口の中に突っ込まれたまま腰を振られる私。

そして、酷いことをされてるのに嬌声をあげている私だった。

100: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/26(土) 22:25:55.74 ID:DrL8hrf70
プロデューサーさんは無表情だ。

その顔にはなんの感情も浮かんでいない。

その時、ようやくプロデューサーさんは口を開いた。

P「……春香……おいで」

春香「はい……」

私はプロデューサーさんの隣に立った。

P「……目を閉じて……」

私は黙って目を閉じる。

聞こえるのは二人の息遣いだけだ。

プロデューサーさんは私のリボンを取る。

たくさんの男たちに犯されても、プロデューサーさんはまだ私のことを愛してくれている。

私はそう自分に言い聞かせた。

しかし、次の瞬間、強烈な痛みが私を襲った。

102: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/26(土) 22:30:57.70 ID:DrL8hrf70
春香「……かはっ!?」

私が期待していた優しいキスではなかった

お腹をプロデューサーさんに殴られたと気づくまでに時間がかかった。

あまりの痛みで涙が溢れる。

春香「………ど………どう………て」

うまく喋れない。

P「はあ?どうして?」

P「まさか、俺がキスすると思った?」

P「残念!腹パンでした!」

P「考えてもみろよ?」

P「他の男のチ○コしゃぶった口だぜ?」

P「そんなのとキスできるはずがないだろ?」

P「公衆便所で小便できても舐めるなんて無理に決まってるだろうが」

104: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/26(土) 22:35:51.99 ID:DrL8hrf70
P「まさか、こんなことも分からないなんて」

P「やっぱ、ガキか」

春香「や、約束したのに……」

再びプロデューサーさんは私のお腹を殴る。

春香「うっ……!」

P「あんな口約束なんて守るわけないだろ?」

P「本当に、頭の中がお花畑なんだな」

P「まあ、そのルックスでアイドルになりたいとか思っちゃう時点で頭おかしいと思ってたけど」

春香「う、嘘つきっ!私、もうやめます!」

P「どうぞ御自由に」

P「こっちはもう移籍金たんまりもらったからな」

P「社長に半分以上持っていかれたけど、それでも1億ありゃなんとかなる」

P「春香のおかげだよ」

P「春香のおかげでプロダクション設立できたんだよ」

106: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/26(土) 22:41:00.01 ID:DrL8hrf70
プロデューサーは高笑いしながら私の両手両足を私のリボンで縛った。

春香「も……もう、やめますか……らね」

P「やめたら、お前が違約金を払うだけさ」

P「一生かけてな」

春香「あなたのこと、訴えます!」

P「何の罪で?俺はお前に何も強要してないぞ?」

P「お前が勝手にAVに出て、俺に貢いでくれただけだ」

P「俺は何も悪くない」

頭ではプロデューサーさんが言ってることが正しいことは分かる。

全部私が馬鹿だっただけだ。

それでも、それを認めたら私は壊れてしまう。

涙が溢れて止まらない。

P「お、来たな?」ピンポーン

109: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/26(土) 22:44:58.31 ID:DrL8hrf70
プロデューサーさんは私を放置してドアを開けに行ってしまう。

誰が来たんだろう。

このままじゃ、私の裸が見られてしまう。

私は今更何を考えているのだろう。

私は思わず笑ってしまった。

これから、私の裸は公開されてしまうのだった。

裸どころか性行為しているところまで。

そう考えると何もかもがどうでも良くなった。

足音が近づいてくる。

やってきた客は千早ちゃんだった。

千早「…………」

千早ちゃんは私を蛆虫でも見るような目で眺めている。

画面に映っている映像を一瞥すると、鼻で笑った。

114: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/26(土) 22:52:21.69 ID:DrL8hrf70
千早「無様ね、春香」

千早「あと、プロデューサーさんに対して恋愛感情が無いって嘘だから」

私にだけ聞こえるように言った。

そして、戻ってきたプロデューサーさんに甘えた声で言った。

千早「もうっ!また、こんな女に手を出して!……私だけを見て下さい」

P「ははは、まさか。俺は便器とヤる趣味はないよ」

千早「あれ?もう、まわされた後なんですか?」

ワザとらしく千早ちゃんが言った。

P「ほら、今映ってるのがデビュー作だ」

千早「ふふふ。とってもかわいく撮れてるわね!春香!」

馬鹿にした口調で千早ちゃんが言った。

千早「これで、あなたも個性的なアイドルになれたわね?」

千早「現役アイドルなのにAVに出ちゃうなんて他の人には真似出来ないもの」

116: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/26(土) 22:56:17.02 ID:DrL8hrf70
P「ああ、そうだな。おかげで金も入ったし」

千早「あ、そうそう。プロデューサーさんは春香から私に乗り換えるんですって」

千早「今日来てもらったのはそれを伝えるためだから」

千早「私からプロデューサーに頼んだの。春香に私たちの行為を見せてあげたいって」

春香「なんでそんなこと!」

千早「だって、私の初めてがプロデューサーに奪われるところを春香に見て欲しかったの」

千早「そうすれば、あなたにもわかるでしょ?」

千早「汚れた春香よりも新品の私のほうがプロデューサーさんに相応しいって」

春香「殺してやるっ!殺してやる!殺してやる!殺してやる!」

私は叫んだ。

千早「酷いわね」

千早「私は春香のこと好きよ?」

117: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/26(土) 22:59:59.10 ID:DrL8hrf70
千早「あなたのおかげでプロデューサーさんと新しいプロダクションを作れたんだもの」

千早「あなたに感謝してるわ」

春香「…………ううっ……うう」

千早「プロデューサー、こんなゴミは放っておいて早くしましょ?」

P「千早、おいで」

プロデューサーと千早ちゃんは抱きあってキスする。

私は縛られているから、身動きがとれない。

二人とも貪るようにキスしている。

P「愛してるぞ。千早」

私は気を失った。

119: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/26(土) 23:03:45.74 ID:DrL8hrf70
再び気づいたときは、部屋は真っ暗だった。

千早ちゃんもプロデューサーさんも眠っているようだ。

ベッドの上には裸の二人がいた。

私は体を動かす。

プロデューサーさんに殴られたお腹が痛んだ。

手を激しく動かす。

プロデューサーさんはちゃんと縛らなかったのか、手のリボンが解けた。

春香「……ダメだなぁ、プロデューサーさん……ちゃんと結ばなきゃ……」

私は、足のリボンを解くと台所にむかった。

二人を起こさないように気をつける。

私はそっと引き出しを開けた。

目当てのものは一発で見つかった。

料理をあまりしないプロデューサーさんでも、包丁ぐらいは持ってるようだ。

121: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/26(土) 23:07:34.59 ID:DrL8hrf70
包丁を持ってベッドの脇に立つ。

二人とも幸せそうに眠っている。

その幸せが私の犠牲の上に成り立っていることを忘れて。

殺す。

そう覚悟してしまえば、あとは簡単だった。

包丁を思いっきり振り上げる。

そのまま、千早ちゃんの首を切り裂いた。

千早「きゃああああああああ」

千早ちゃんの首から血が噴水のように噴き出す。

天井まで吹き上がった血は私にも降りかかる。

P「……んっ……?」

P「どうした……千早?」

プロデューサーさんはまだ何が起きたのか分かってないようだ。

122: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/26(土) 23:10:05.01 ID:DrL8hrf70
P「千早!?おい、なんだこれ!?」

P「なんだよ……なんなんだよ……」

P「なんなんだよっ!?これ!!」

春香「…………くっ……くくくっ」

私は笑いが抑えられない。

春香「くくくくっ……はははっ」

春香「あははっ!あははははははははははは!!!」

最終話 鮮血の結末

127: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/26(土) 23:17:13.17 ID:DrL8hrf70
実にクズですね
誠レベルのクズさを出せたような気がします
みんなキャラ崩壊しましたけど

それじゃ春香バッドエンドも終わったので
次はお待ちかねの春香天国エンドで

128: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/26(土) 23:19:12.77 ID:DrL8hrf70
5/11

薄暗い部屋に時計の秒針の音だけが響く。

いつからこうしているのか思い出せない。

最近は物忘れが増えた気がする。

でも、この生活が始まった頃の事は忘れようにも忘れられない。

そう、プロデューサーさんが事故にあった頃の事だ。

あの頃のプロデューサーさんは働きづめだった。

新しいプロダクションを設立するために、日夜駆け回っていた。

しかし、私のわがままを聞いてプロデュースは続けてくれていた。

そんな生活は誰が考えても無理がある。

そして、プロデューサーさんも例外ではなかった。

130: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/26(土) 23:24:29.39 ID:DrL8hrf70
朝の出勤中に居眠り運転でガードレールに激突した。

幸いだったのは巻き込まれた人がいなかったことだ。

しかし、運悪くガソリンタンクに引火し、車は炎上した。

激突のショックで気絶したプロデューサーさんは全身に大やけどを負ってしまった。

その知らせを聞いた時、誰もが助かるとは思わなかった。

それでも、私は病院に駆けつけたが、集中治療室に入れられたプロデューサーさんには会えなかった。

私はプロデューサーさんと1秒でも離れたくなかった。

生きている限り諦めたくなかった。

病院に泊めてくれるよう頼んだらなぜかあっさりと承諾してくれた。

お医者さんは私を同情するような目で見ていた。

その日は集中治療室に近い病室に泊まった。

次の日、病院まで来てくれたのは伊織だけだった。

他の人は誰も来ない。

134: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/26(土) 23:28:12.01 ID:DrL8hrf70
プロデューサーさんが死んじゃいそうだというのに。

その事を泣きながら伊織に訴えると、心底気の毒そうに伊織は言った。

伊織「……辛いわね……仲間だったのに」

伊織「……このぬいぐるみ、あんたにあげようと思って持ってきたの」

伊織「……プロデューサーさんと会えなくなって寂しいだろうから……」

そう言って、大きめなクマのぬいぐるみを取り出した。

ちょうど私が抱きしめられるくらいの大きさだった。

メガネを掛けたインテリな感じのクマのぬいぐるみだ。

伊織「早くよくなるように祈ってるわ」

そう言って、伊織は帰っていった。

135: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/26(土) 23:33:03.44 ID:DrL8hrf70
奇跡が起きた。

私の祈りが通じたのか、プロデューサーさんは一命を取り留めた。

あんなに嬉しかった事は人生で初めてだ。

プロデューサーさんが私を受け入れてくれた時よりも。

だが、無傷というわけにはいかなかった。

事故のせいでプロデューサーさんは四肢と視力を失った。

それでも、生きているだけで私は嬉しかった。

しかし、問題はその後だった。

プロデューサーさんの事故によって様々な問題が浮上した。

1つ目は新しいプロダクションの問題だ。

新しいプロダクションのためにプロデューサーさんは多大な融資を受けていた。

しかし、プロデューサーは事故にあってしまった。

そのために、返済する見込みが立たなくなってしまったのだ。

136: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/26(土) 23:37:12.69 ID:DrL8hrf70
プロデューサーさんがいなければ、新しいプロダクションは回らない。

傷が治っても、プロデューサーさんの復帰はもう絶望的だ。

新しい事務所でプロデューサーさんと一緒にやれると思っていた千早ちゃんは泣いていた。

この問題は結局、プロデューサーさんが自己破産する事で決着がついた。

2つ目は、私とプロデューサーさんの関係が週刊誌に取り上げられたことだ。

プロデューサーさんの事故について嗅ぎ回っていたマスコミに関係を知られてしまった。

当然のごとく、私のファンたちは離れていった。

ブログは炎上し、事務所は抗議の電話が殺到し、小鳥さんが倒れた。

ネット上には私を中傷する言葉で溢れかえった。

アイドルを続けていくのはもはや不可能だった。

社長は私を首にせざるをえなかった。

それなのに、社長は事務員として採用すると言ってくれた。

しかし、事務所にたくさん迷惑をかけたのにこれ以上甘えられなかった。

138: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/26(土) 23:40:35.63 ID:DrL8hrf70
こうなると、問題になるのはお金だった。

私はプロデューサーさんの治療費を稼がなくてはいけない。

プロデューサーさんの両親はすでになくなっていた。

プロデューサーさんには私以外に頼れる人がいなかった。

伊織と社長は援助を申し出てくれた。

しかし、私は断った。

私はプロデューサーと生きていくと決めたから。

私がプロデューサーを養いたかったのだ。

しかし、高卒の私には良い仕事はなかった。

この時、プロデューサーさんは鬱病も併発していた。

お医者さんからは静かなところの病院への転院を進められていた。

そのためには、お金が必要だった。

困った私は体を売る事にした。

145: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/26(土) 23:54:11.76 ID:DrL8hrf70
こんな生活をしていると時間の感覚もおかしくなっていく。

「じゃあ、春香ちゃん。胸見せて」

「はい、分かりました!」

「失礼します」

声をかけて病室に入る。

プロデューサーさんの部屋は個室だ。

南向きの良い部屋で、今の季節は春の柔らかな日差しが差し込んでいる。

この病院の面会時間は、9時ぐらいから始まるので嬉しい。

プロデューサーさんはまだ眠っているようだ。

ベッドは東側の壁にくっついている。

私は、ベッドを迂回して窓から外を眺めた。

148: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/27(日) 00:04:05.26 ID:LM+UdYpq0
その時、ノックの音がした。

春香「どーぞ!」

千早「失礼します」

入ってきたのは千早ちゃんだった。

春香「千早ちゃん!久しぶり!」

千早「ええ、久しぶりね。春香は元気だった?」

春香「うん。元気だったよ」

春香「でも、ごめんね。プロデューサーさんはまだ寝てるんだ……」

千早「……そう」

千早ちゃんはベッドの上のプロデューサーさんを見ると、悲しそうな顔をした。

プロデューサーさんのお見舞いにきてくれるのは、千早ちゃんだけだ。

他の人は1人も来ない。

みんな忘れてしまったのだろう。

149: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/27(日) 00:06:43.88 ID:LM+UdYpq0
千早ちゃんは持ってきた果物を机の上に静かに置いた。

椅子に座ってベッドの上のプロデューサーさんに目を向けながら、私に聞いた。

千早「それで……経過はどうなの?」

春香「お医者さんはまだ難しいって……」

春香「でもコミュニケーションが上手く取れないけど、だんだん快方に向かってるって」

千早「……そうなのね……」

春香「プロデューサーさん、私が話しかけても返事してくれないけど、私は気長に待つよ」

春香「それに、私はプロデューサーさんが生きていてくれるだけで嬉しいから」

春香「ずっとそばにいるって約束したし」

千早「……春香。一つ聞いていいかしら?」

春香「なに?千早ちゃん?」

千早「あなたは、いま幸せなの?」

150: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/27(日) 00:09:11.66 ID:LM+UdYpq0
春香「幸せだよ。アイドルじゃなくなったけど、私の幸せはプロデューサーさんと一緒にいる事だから」

千早「……そう、そうなのね」

千早「ふふ。二人の時間邪魔してごめんなさい。私そろそろ帰るから」

春香「もっといていいんだよ。千早ちゃんは」

千早「ごめんなさい。この後仕事があるの」

春香「ううん。こっちこそごめんね。わざわざ来てもらって」

千早「良いのよ。私と春香の中じゃない」

春香「えへへ、ありがとう」

春香「今度はいつ来れるかな?」

千早「そうね……一ヶ月後ぐらいになるかしら」

春香「うん、分かった。また来てね」

千早「ええ、また来るから、それじゃ」

そう言って、千早ちゃんは帰っていった。

152: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/27(日) 00:12:09.12 ID:LM+UdYpq0
外はかなり良い天気だ。

プロデューサーさんも起きたみたいだから、散歩に連れて行ってあげよう。

看護師さんを呼んで頼みごとをする。

春香「すみません。車椅子を貸して貰えますか?」

看護師「車椅子?」

春香「はい。プロデューサーさんを散歩に連れて行ってあげたいんです」

看護師「ちょっと待ってね。先生に聞いてくるから」

看護師さんは車椅子を押しながら、直ぐに戻ってきた。

看護師「先生から許可が出たから良いわよ」

春香「ありがとうございます!」

私はプロデューサーさんを車椅子に乗せる。

冷えないようにプロデューサーさんに膝かけをかける。

看護師「春香ちゃん、その格好じゃまだ寒いからカーディガン着て行きなさい」

153: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/27(日) 00:15:35.04 ID:LM+UdYpq0
看護師さんが私にカーディガンを着せてくれる。

看護師「あんまり遠いところや危ないところに行っちゃだめよ?」

看護師「それと、一時間ぐらいで戻ってきなさい」

春香「分かりました。いってきます!」

看護師「はい、いってらっしゃい」

プロデューサーさんの車椅子を押してゆっくりと桜の木の下を歩く。

春香「プロデューサーさん!桜ですよ!桜!」

P「……」

すごい綺麗ですね。

P「……」

春香「みんなと一緒に花見したいなー」

P「……」

春香「今は千早ちゃんぐらいしかいませんけど」

P「……」

春香「でも、次に千早ちゃんが来る時には散っちゃってますね」

154: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/27(日) 00:18:53.50 ID:LM+UdYpq0
P「……」

プロデューサーさんは私の言葉に答えてくれない。

でも、私は幸せだ。

プロデューサーさんと一緒にいるだけで満ち足りた気分になるのだ。

春香「ただいまー」

私は自分の家に帰ってきた。

夕食は外で済ませてきたから、今日はもう寝るだけだ。

お風呂から上がって、パジャマを来て寝ようと思ったとき、唐突に思い出した。

伊織がくれたぬいぐるみ。

そういえば、最近あれを見てなかった。

どこにやってしまったのだろうか。

あれから、数時間探したが見つからなかった。

諦めて今日はもう寝る事にした。

今度、時間がある時にゆっくり探そう。

155: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/27(日) 00:20:57.10 ID:LM+UdYpq0
5/12

今日もプロデューサーさんのところにお見舞いに来た。

空いていたカーテンを閉める。

部屋の電気もつけていないため、薄暗い。

プロデューサーさんはまた眠っていた。

プロデューサーさんの頭に近い方の椅子に腰掛ける。そして、頭を撫でる。

さらさらした毛が気持ちいい。

窓から入ってくる風が気持ちいい。

そうして、ぼんやりと時間を過ごしているとドアをノックされた。

春香「どうぞ」

千早「春香また来たわ」

春香「千早ちゃん!」

157: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/27(日) 00:24:29.57 ID:LM+UdYpq0
千早ちゃんは一瞬複雑そうな顔をした。

春香「プロデューサーさんはまだ寝てるよ」

千早「……そう……」

千早ちゃんは私の向かいに座った。

千早「春香、何だか暗くない?」

春香「そうかな……?」

千早「カーテンを開けてもいいかしら?」

春香「だめ」

千早「え?」

春香「だめだよ。カーテンは開けちゃだめ。どうしてそんなこと言うの?」

千早「ご、ごめんなさい」

千早「じゃあ電気をつけてもいい?」

158: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/27(日) 00:27:21.40 ID:LM+UdYpq0
だめ。

だめ。

だめ。

カーテンを開けること。

電気を着けること。

この二つのことが不快に感じる。

理由は分からないけど、何かが終わってしまう恐怖感で体が震える。

春香「お願いします。カーテンを開けないで!電気もつけないで!」

千早ちゃんは驚いている。

私が大きな声を出したからだろう。

でも、これは大切なことだ。

これを守らなければ、世界が滅んでしまう。

私は守らなければ。

守らなければいけない。

何を?

162: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/27(日) 00:50:38.07 ID:jkF5ns+Xi
私は何を守ろうとしているのだろう?

目の前に座った千早ちゃんに目を向ける。

千早ちゃん?

千早ちゃんって誰だっけ?

目の前に座ってるこの人は誰?

その時、大きく風が吹いた。

私は窓を開けたままだったことを思い出す。

致命的なミスだ。

なぜ窓を開けていたことがミスなのだろう?

風がカーテンを揺らす。

大きな隙間ができたことで、あさの日差しが差し込んでくる。

差し込んできた光はちょうど千早ちゃんの顔に当たる。

164: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/27(日) 00:59:58.78 ID:jkF5ns+Xi
一瞬その光を千早ちゃんの目が反射した。

「千早ちゃん、泣いているの?」

「えっ?」

眩しそうに目を細めている。

そうだ。

泣いていなくちゃおかしい。

泣いているんだ。

めになみだがたまっていたからはんしゃしたんだ。

そうに違いない。

しかし、私は別の可能性を思いついた


そう
そうだ

165: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/27(日) 01:02:01.15 ID:jkF5ns+Xi
そう
そうだ
そうなんだ

それがそうなんだ

私の私は

わたしでわたしのわたしでわたしにわたし

わたしのもの

ちが

しんだ

しんでない

こわれた

こわれてな い

ただしいのはわたし

166: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/27(日) 01:12:03.61 ID:jkF5ns+Xi
何もかもが絶対的であるはずがない
そう世界とはすなわち言葉
言葉が、せかいをうむとどうじに世界が言葉を生み出す
それ、は、相互に、ささえあうと同時に齟齬を生じさせるが故に、世界には誤謬が氾濫し
絶対的な真理の深淵への到達をふかのうにしているが故に我々はすなわち不自由を強いられると同時に不明瞭かつ不鮮明な虚構の霧一瞬その光を千早ちゃんの目が反射した。

「千早ちゃん、泣いているの?」

「えっ?」

そうだ

私はそうだ私は、私がそうだ私のそうだ

そうだ

世界とは言葉で

認識することが

167: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/27(日) 01:14:38.41 ID:jkF5ns+Xi
「千早ちゃん、泣いているの?」

「えっ?」

「千早ちゃん、泣いているの?」

「えっ?」

「千早ちゃん、泣いているの?」

「えっ?」

「千早ちゃん、泣いているの?」

「えっ?」

「千早ちゃん、泣いているの?」

「えっ?」

168: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/27(日) 01:15:15.84 ID:jkF5ns+Xi
「千早ちゃん、泣いているの?」

「えっ?」

「千早ちゃん、泣いているの?」

「えっ?」

「千早ちゃん、泣いているの?」

「えっ?」

「千早ちゃん、泣いているの?」

「えっ?」

「千早ちゃん、泣いているの?」

「えっ?」

「千早ちゃん、泣いているの?」

「えっ?」

「千早ちゃん、泣いているの?」

「えっ?」

169: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/27(日) 01:16:41.66 ID:jkF5ns+Xi
「千早ちゃん、泣いているの?」

「えっ?」

「千早ちゃん、泣いているの?」

「えっ?」

「千早ちゃん、泣いているの?」

「えっ?」

「千早ちゃん、泣いているの?」

「えっ?」

「千早ちゃん、泣いているの?」

「えっ?」

「千早ちゃん、泣いているの?」

「えっ?」

「千早ちゃん、泣いているの?」

「えっ?」

171: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/27(日) 01:17:45.10 ID:jkF5ns+Xi
「千早ちゃん、泣いているの?」

「えっ?」

「千早ちゃん、泣いているの?」

「えっ?」

「千早ちゃん、泣いているの?」

「えっ?」

「千早ちゃん、泣いているの?」

「えっ?」

「千早ちゃん、泣いているの?」

「えっ?」

「千早ちゃん、泣いているの?」

「えっ?」

「千早ちゃん、泣いているの?」

「えっ?」

172: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/27(日) 01:19:44.75 ID:jkF5ns+Xi
テディベ

D



さく

しご と
ひげ

173: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/27(日) 01:21:41.23 ID:jkF5ns+Xi
しかし、私は別の可能性を思いついた


そう
そうだ

私はそうだ私は、私がそうだ私のそうだ

そうだ

世界とは言葉で

認識することが

つまり、


葉がそう

ぜったいてきでないすなわち

それがことば
それがせかい

174: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/27(日) 01:24:24.61 ID:jkF5ns+Xi
をつくって
いる
せかいはことばによって
しる
ことができ

私は認識する

はるか
私は

ぷろでゆーさーさん
ちはやちやん
ちはやちやん
ぷろでゆーさーさん
かんごしさん
Dさん
せんせい

わたしは
私は
私はそのまま意識を失った。

175: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/27(日) 01:26:24.61 ID:jkF5ns+Xi
5/13

風が気持ちいい。

柔らかな風がフェンスの前に立った私の体に当たる。

疲れた体を癒してくれる。

ここまでくるのに、結構時間がかかった。

何しろ、私の部屋の窓が誰かに細工されていたから。

誰なんだろう。

私の部屋の窓に鉄格子をつけたのは。

取り外すのにとても時間がかかった。

取り外してしまえば、後は楽だつた。

181: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/27(日) 01:35:51.64 ID:LM+UdYpq0
まだ五月とはいえ、午後2時を回った今は汗ばむ程だ。

この長い石畳を登るのは、何年も運動していない身には辛い。

そして、俺は今水の入った桶を持ってるから、なおさら辛い。

息を切らしながら、一段一段登っていく。

今日であれから10年だ。

春香がクマのぬいぐるみと一緒に、俺の目の前で落ちていってから10年だ。

まるで、昨日のことのように思い出せるのに。

10年という時の短さに愕然とする

182: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/27(日) 01:37:14.69 ID:LM+UdYpq0
春香は耐えられなかった。

俺へ精神的に依存し過ぎていたために。

新しいプロダクションを設立してからは会えない日が続いた。

俺はなんとか時間を作って限界ギリギリまで春香のそばにいるようにした。

それでもダメだった。

春香はおかしくなった。

現実と妄想の区別がつかなくなった。

日常生活に支障をきたす程に。

こうなっては、アイドルどころじゃない。

春香は北のほうの空気が綺麗な病院で療養することになった。

しかし、それも無駄だった。

春香は自ら命を絶ってしまった。

183: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/27(日) 01:38:53.92 ID:LM+UdYpq0
長い石畳を登り終えてようやく着いた。

高い場所にある分、見晴らしがいい。

寺の門のところに立っている桜がよく見える。

春香の墓を訪れる人は少ない。

両親も思い出したくないようで、法事も行われない。

春香の友人たちも、来にくいのだろう。

昔は何人か来ていたこともあったが。

十年という時間はあまりに短いが故人を忘却の彼方に送るには十分だ。

もうみんな忘れてしまったのだろう。

それを責めることはできない。

覚えておくにはあまりに辛い記憶だ。

それでも、俺が忘れるわけにはいかなかった。

184: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/27(日) 01:41:25.37 ID:LM+UdYpq0
掃除を終えると線香に火をつけて手を合わせる。

一人で春香の冥福を祈る。

その時、後ろから声をかけられた。

千早「プロデ……社長」

俺は思わず振り返ってしまった。

俺の後ろに立っていたのは千早だった。

千早「どうかしましたか?」

俺の顔に走った動揺を察して千早は訝しんでいる。

P「なんでもない、手を合わせてやってくれ」

千早「はい」

千早は社長になった俺のことを今でも間違ってプロデューサーと呼ぶ。

185: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/27(日) 01:43:40.63 ID:LM+UdYpq0
そして、必ず言い直す。

プロデュースも続けているからプロデューサーでもいいんだが。

千早「プロデ……ここで社長と会うのは5年ぶりですね」

P「プロデューサーでいいぞ……俺は毎年来てたがな」

千早「私は、5年前から来ていませんでした」

P「忘れたかったんだろ?仕方ないさ」

千早「でも、今年は、今年で10年ですから」

P「そうだな……」

千早はどこに出しても恥ずかしくない歌手に成長した。

俺は千早をはじめとして音楽プロデュースでそこそこ名が売た。

10年前には想像もつかなかったところにいるのだ。

187: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/27(日) 01:47:02.46 ID:LM+UdYpq0
P「少し、春香の話を聞いてくれないか?」

千早「……ええ」

P「……春香は自殺する前の日に倒れたんだ」

千早「……ええ、聞いてます」

P「医者もあの時はなんで倒れたか分からなかった」

P「でも、俺は最近になって分かったんだ」

千早「なんでだったんですか?」

P「メガネさ。倒れる寸前に風でカーテンがめくれたんだ」

千早「それとメガネが……?」

P「春香の病室は南向きだったから朝日が差し込んでメガネと反射したんだ」

P「俺のことを千早と認識していたが、その認識が揺らいだ」

P「だから、春香の中の真実に矛盾が生じた」

P「俺といえば眼鏡っていうイメージを抱いていたんだろう」

188: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/27(日) 01:51:25.94 ID:LM+UdYpq0
P「部屋を明るくするのを拒んだのも感覚で矛盾に気づいてしまうと分かってたからかもしれない」

千早「はあ……確かにプロデューサーはメガネのイメージがありますからね」

P「春香が、俺だと思い込んでいたクマもメガネかけてたしな」

P「医者は春香の心に負担がかかったから倒れたと言っていた」

P「でも、原因がよく分からなかった。俺が思うに、春香はあの時気づきかけたんだと思う」

千早「……最後の時はどうだったんですか?気づいていたんですか?」

最後の時。

目の前で落ちていく春香は笑っていた。

幸せそうにクマのぬいぐるみを抱えて。

「いや、気づいていなかったと思う」

でも春香にとってはそれで良かったはずだ。

191: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/27(日) 01:52:29.94 ID:LM+UdYpq0
愛する人間と思っていたものと死んでいった。

自分の望むように死んでいった。

きっと、幸せだっただろう。

千早と二人で黙り込む。

千早も未だに春香のことを引きずっている。

俺と同じように。

192: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/27(日) 01:56:11.10 ID:jkF5ns+Xi
耳鳴りがする。

あ、来たな、と思った。

『プロ……デ……ューサーさン……でスよ!……!』

『私のド……ジモ屋……上カら落ちテシま……ウほどダ……トは思イマセん……デしタ!』

『ね……ェネぇ、プ……ロデューサーさ……ン!』

『どうシて返事シてくレナいンでスカ?』

千早「プロデューサー、どうしたんですか?」

一瞬で悪くなった俺の顔色を見て千早が言った。

P「千早……」

千早「なんですか?」

P「俺の……後ろに……誰かいる?」

千早は俺の後ろに目を凝らす。

193: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/27(日) 02:00:25.58 ID:jkF5ns+Xi
千早は俺の後ろに目を凝らす。

千早「誰もいませんけど?」

P「そうか……」

幻聴はいつも後ろから聞こえてくる。

これが前から聞こえるようになったら、姿も見えるようになるのだろうか。

ポケットからタバコを取り出しながら、千早から少し離れる。

歌手である千早に煙を吸わせるわけにはいかない。

千早のほうに煙がいかないように背を向けて火を着ける。

千早「あれ、プロデューサーってタバコ吸いましたっけ?」

P「千早に話してなかったか……」

吸い込んだ煙を吐き出す。

背を向けながら話し始める。

194: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/27(日) 02:02:20.00 ID:LM+UdYpq0
P「春香が死んでから一ヶ月ぐらいしてから幻聴が聞こえるようになったんだ」

P「ショックでおかしくなっちまったんだ」

P「春香が俺に話しかけて来るのが聞こえるようになった」

千早「……」

P「春香が死んだ頃って、プロダクション作ったばかりだったろ?」

P「人手もないから俺が車を運転することも多かった。だから、薬を飲むわけにはいかなかったんだ」

P「医者に相談して暗示で抑え込むことにしたんだ」

P「幻聴が聞こえたら、タバコを吸う。すると、幻聴が収まる、って感じで」

P「でも、そろそろだめみたいだな」

P「最近、春香が落ちていく光景が頻繁にフラッシュバックするんだ」

P「もう、十年になるのにな」

P「俺もそろそろ引退だな」

195: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/27(日) 02:03:44.04 ID:LM+UdYpq0
千早「……」

後ろにいる千早は何も言わない。

俺はタバコを燻らせる。

タバコの先から出ている煙は空へ登っていく。

俺は空を見上げた。

青い空には白い雲がいくつか浮かんでいる。

登っていく煙を見て思い出すのは、春香が焼かれてしまったときのことだ。

あのときも、空に登っていく煙を見ていた。

登っていく煙がまるで春香の魂のように思えたことをはっきり覚えている。

196: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/27(日) 02:06:20.30 ID:LM+UdYpq0
いつも考えていることがある。

こうして登っていく煙はどうなるのだろうか。

空へ登って雲になるのか。

それとも霧散してなくなってしまうのか。

そのどちらかであっても、煙は煙のままではいられないのだ。

それと同じように、もう春香はどこにもいない。

幽霊なんていないから、俺が見るもの聞くものはすべて偽物だ。

タバコを携帯灰皿に入れて後ろを振り返る。

いつの間にか千早はいなくなっていた。

風が吹き抜けていく。

日はすでに傾き始めていた。

197: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/27(日) 02:07:53.90 ID:LM+UdYpq0
思い返してみれば、おかしいところはあった。

千早は手ぶらだった。

俺がいる事を見越していたとしても、千早の性格なら花ぐらい持ってくるんじゃないだろうか。

俺はため息をついた。

もう、どうでもいい。

たとえ、千早が幻覚だったとしても。

この世界はあまりに疑わしいことをこの10年で学んだ。

ヒゲの哲学者が言っていたように信じられるのは自分くらいなものだ。

俺の心は荒みきっている。

それでも、まだたった一つだけ信じていることがある。

春香の最後の言葉だ。

『私はプロデューサーさんの事を永遠に愛しますから、永遠に一緒にいて下さいね?』

あの言葉は間違いなく、春香の本心だ。

春香は俺と一緒にいる事だけを望んでいた。

198: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/27(日) 02:09:04.45 ID:LM+UdYpq0
だから、俺は春香の願いを叶えてやりたい。

心の中で春香に語りかける。

あと少しで一緒にいられるようになるから。

それまで、もう少しだけ待っていてれ。

多分、永遠に比べたら短いだろうから。

最終話 永遠に 終

203: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/27(日) 02:12:43.89 ID:LM+UdYpq0
スクイズのクロスに見せかけてさよならを教えてと沙耶の歌へのオマージュでしたね
スクイズから持ってきたのは死に方と墓参りすることぐらいでしょうか
俺は天国エンドはバッドだと思ってません
この終わり方は沙耶の歌へのオマージュですが
あのエンドは病院エンドの次に好きです

206: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/27(日) 02:15:42.58 ID:LM+UdYpq0
>>202
結局全部春香の妄想ですね
プロデューサーさんがゴミになったら
私だけを愛してくれるだろうってこと

209: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/27(日) 02:20:34.21 ID:LM+UdYpq0
結局絶対的なものなんてどこにもないってことです
最後は春香の妄想オチですが、もしかするとPが植物状態で見ている夢かも

というわけで、このSSの評価も絶対的ではないのでボロ○ソに言われても全く一ミリも気にしません、はい
どうせ、コメント欄とかでボロ○ソに言われるだろうし
では寝ます

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