貴音「響。歩いて帰りませんか?」【四条貴音SS】

1: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/03/28(水) 23:33:30.68 ID:BjrI9ZWj0
今日の仕事は午前中で終了

事務所に戻ると、響を見つけたので

散歩がてら、一緒に帰りませんかと誘いました

「いいぞー。自分も仕事終わったし、退屈してたところだったんだ」

浅葱色の瞳をきらきらと輝かせ

元気な返事を頂きました

2: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/03/28(水) 23:38:34.57 ID:BjrI9ZWj0
「ふふっ、そうですか。では支度ができたら参りましょう」

「うんっ! じゃあ、ちょっと待っててね」

そう言うやいなや、脱兎のごとく駆け出す響

「転ばないように気をつけるのですよ」

「なんくるないさー!」

3: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/03/28(水) 23:42:14.24 ID:BjrI9ZWj0
響は元気いっぱいですね

では、そふぁに座って待つとしましょうか

それにしても、今日の事務所は静かですね

ほわいとぼーどに目を向けると

びっしりとはいきませんが、かなりの予定が書かれています

4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/03/28(水) 23:46:54.32 ID:BjrI9ZWj0
ここ最近は皆、忙しいようで、なかなか会う機会がありません

少し前には考えられなかったことでしょう

これもプロデューサーと、皆の頑張りの成果

今では、あの方を中心に765プロが動いていると言っても過言ではありません

その周りには、笑顔の皆がいる

この忙しさを楽しむように、皆が良い顔をしています

8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/03/28(水) 23:50:35.19 ID:BjrI9ZWj0
「おーい、貴音。お待たせ!」

おや、待ち人が来たようですね

「そんなに待っておりませんよ」

少し息が乱れています

それほど急いでくれたということでしょうか

10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/03/28(水) 23:54:29.66 ID:BjrI9ZWj0
「では参りましょう、響」

「しゅっぱつだー! あ、ピヨコお疲れ様」

ふりふりと手を振る響を真似て、私も手を振ってみました

お先に失礼致します、小鳥嬢

「で、どうするの?」

「今日は良い天気ですし、公園でひなたぼっこでもしてみましょうか」

11: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/03/28(水) 23:58:58.51 ID:BjrI9ZWj0
最近、ようやく暖かさを感じることができますので

さぞ気持ち良いことでしょう

「よし、光合成してやるぞー」

「ふふっ、では私もしてみましょう」

頑張れば、何とかなるかもしれません

12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/03/29(木) 00:02:34.64 ID:PCyFfDC50
「ええっ! 貴音、そこはツッコミしないと」

「人間は、未知の部分がたくさんあると聞きます。もしや……」

無理なのかどうか、やってみなければ

挑戦する気持ちが大事なのです

「そこで真剣な顔をしないでよ……」

呆れられてしまいました

13: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/03/29(木) 00:06:09.87 ID:PCyFfDC50
「ふふ、冗談ですよ。……半分は」

「どういうこと!?」

こうしてからかうのも、実に面白い

心を許した相手との、何気ない会話

とても楽しく、とても大切なもの

14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/03/29(木) 00:12:21.28 ID:PCyFfDC50
「最近の調子は如何ですか?」

ぽにぃてぇるを、ひょこひょこと揺らす響に尋ねます

「良い感じかな。それに、最近は仕事が面白いよ」

それは良きことです

喜ばしいことですが、すこし寂しい

悲しいかな、葛藤する自分がいます

15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/03/29(木) 00:16:27.54 ID:PCyFfDC50
「響は頂点に向かって、頑張っているのですね」

「うん! 目指せトップアイドルだからねっ」

私たちの最終目標でもある、アイドルの頂点

数多のアイドルたちを押しのけて

一番に輝くために、皆が努力し、涙し、それでも前に進む

18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/03/29(木) 00:20:34.76 ID:PCyFfDC50
アイドルという花の命は短いものです

ですが、頂点にはそれほどの価値がある

「そうですね、いつかは頂点の座に……」

私は少し事情が違いますが

目指すことに違いはありません

19: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/03/29(木) 00:24:31.92 ID:PCyFfDC50
「話してたら、あっという間だったね」

いつの間にか、公園に到着していました

時間というものは、一定ではないような気がします

だって、楽しい時間は一瞬に感じてしまうから

「ええ、存分にひなたぼっこを楽しみましょう」

「おー!」

22: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/03/29(木) 00:28:53.49 ID:PCyFfDC50
公園を見渡すと、走り回る子供たち

べんちで休んでいるご老人

なんとも平和な風景が広がっています

「この辺りで良いでしょうか?」

「うん、そうだね」

23: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/03/29(木) 00:32:39.67 ID:PCyFfDC50
>>21
お、そうです
鋭いですね

24: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/03/29(木) 00:34:02.74 ID:PCyFfDC50
近くのべんちに腰を下ろし、ひなたぼっこ開始です

「暖かいですね。響、春はお好きですか?」

本当に日差しが暖かく、気持ちが良い

植物たちが光合成できる理由が、少し分かったような気がします

「好きだよ。暖かいし、なんか元気がでるさー」

「そうですね。私もそう思います」

25: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/03/29(木) 00:38:40.10 ID:PCyFfDC50
冬の寒さを寂しさと表現するのなら

春の暖かさは優しさでしょうか

この優しさは植物、動物を分け隔てなく

元気にしてくれる。そう思います

「でしょでしょ! さすが貴音」

そう言って、にこりと笑う響

29: >>26 違うかも 投稿日:2012/03/29(木) 00:43:58.33 ID:PCyFfDC50
「ふふっ、ありがとうございます」

私も貴方に元気を頂いているのですよ

まるで、私の太陽のようです

「ところでさ、さっきから甘い匂いが気になるんだけど」

言われてみると、確かに甘く香ばしい匂いが漂っています

30: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/03/29(木) 00:47:31.84 ID:PCyFfDC50
「うーん、こっちの辺りから甘い匂いが……」

鼻をひくつかせつつ、席を立った響を追うと

案外、簡単に匂いの原因を見つけることができました

「あ! 大判焼き屋さんだ。貴音、食べようよ」

昼食は頂きましたが、甘いものは別腹です

「そうですね。頂きましょうか」

34: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/03/29(木) 00:52:30.89 ID:PCyFfDC50
店の前に立つと、先ほどより強く、甘い香りが漂っています

強面の主人がこちらを見た瞬間

突然、びくりとしたのは驚きました

面妖な……

「粒あんとカスタードかぁ。じゃあ自分、粒あんで」

「では、私はかすたぁどを頂きましょう」

35: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/03/29(木) 00:57:15.98 ID:PCyFfDC50
ちょうど焼き上がりのようで、焼きたてが購入でき

何故か、おまけを二つも頂いてしまいました

はて……?

「おっちゃん、ありがとー!」

「ご主人、ありがとうございます」

深くお辞儀をすると

少し赤面された主人が笑っておりました

36: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/03/29(木) 01:04:30.61 ID:PCyFfDC50
「へへー、ラッキーだったね」

「そうですね。感謝して、頂きましょう」

思いのほか重い紙袋を手に、先ほどのべんちへ

「あつあつだー。いっただきまーす」

ほかほかと湯気をあげる大判焼き

ふふっ、火傷に気をつけるのですよ

37: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/03/29(木) 01:05:25.38 ID:PCyFfDC50
ちょっと席外します

42: 戻ります 投稿日:2012/03/29(木) 01:22:20.17 ID:PCyFfDC50
「では、頂きます」

ああ、甘味は真に美味ですね

柔らかい甘みが、体に染みていくようです

「美味しいねー」

「ええ、そうですね」

響も喜んでくれているようで、なによりです

43: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/03/29(木) 01:28:28.50 ID:PCyFfDC50
しかし、ずいぶん美味しそうに頬張りますね

にこにことしている響を見ていると

こちらまで笑顔になってしまいます

「響。動かないでくださいね」

急いで食べすぎですよ

口元に餡が付いているのに、気づいていない様子

44: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/03/29(木) 01:34:37.94 ID:PCyFfDC50
「えっ? う、うん」

響の唇へ手を伸ばし

餡をすくって、自分の口へ

「この粒あんも美味ですね」

甘さ控えめで、美味です

「ありがとう貴音。でも、ちょっと恥ずかしい」

「ふふっ、それは失礼しました」

47: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/03/29(木) 01:41:12.75 ID:PCyFfDC50
この子は本当に可愛いですね

活発なのに、繊細で

守ってあげたくなるような

そう、まるで妹のように感じてしまいます

「あーっ! なにがそんなに面白いの!?」

どうやら、顔が緩んでしまっていたようです

「なんでもありませんよ。ただ、響は可愛いなと思っていただけです」

49: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/03/29(木) 01:46:55.58 ID:PCyFfDC50
「なっ! からかうのは止めてほしいぞ」

ふふっ、顔を真っ赤にして、照れてしまったのでしょうか

本当に色々な一面を見せてくれます

「もぅ……」

私は悪くありません

響がそのような反応をしてくれるから

ついつい……ね?

50: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/03/29(木) 01:52:24.82 ID:PCyFfDC50
その時、がさりと背後の草むらがざわつきました

「なにやつっ!」

瞬間的に体が反応して

後ろを振り向くと

……にゃあ

可愛い襲撃者がおりました

52: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/03/29(木) 01:59:12.51 ID:PCyFfDC50
「貴音? あっ! 子猫だ」

にゃあ、と鳴く可愛い襲撃者は、響にひょいと抱きかかえられ

頬ずりをされています

「可愛いなー、お前はどこの子かな」

その手つきは慣れたもので

子猫も気持ちよさそうです

53: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/03/29(木) 02:06:46.37 ID:PCyFfDC50
「そっか、お前は野良猫なんだね」

にゃあにゃあ

「んー、お母さんとはぐれちゃったのか」

にゃあにゃあ

「響。意思疎通ができるのですか?」

響は唇に人差し指を添えて

「それは、トップシークレットです」

と、うぃんくをしました

55: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/03/29(木) 02:13:16.65 ID:PCyFfDC50
「ふふっ、これは一本とられましたね」

「あははっ! ごめんごめん」

逆にからかわれてしまうとは

精進せねばいけません

「貴音も抱っこしてみる? ふかふかで気持ち良いよ」

響からの提案

「私にできるでしょうか」

56: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/03/29(木) 02:18:11.48 ID:PCyFfDC50
こんなにも小さい命

落としてしまったら、等と嫌な考えをしてしまいます

「大丈夫、優しくしてあげればさ。ほら」

なかば強引に子猫を渡されました

まだ心の準備が……

「……ふかふかですね」

柔らかく、さらさらとした毛並み

それに暖かくて、お日様の匂いがします

58: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/03/29(木) 02:23:58.55 ID:PCyFfDC50
「でしょ! こいつも気持ちよさそうだよ」

子猫と目が会うと

にゃあ、と一声

ふふっ、貴方の抱き心地はとても気持ちいいですよ

にゃあにゃあ

貴方も、私の胸の居心地が良いのですね

「存分にくつろいでくださいね」

59: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/03/29(木) 02:27:48.07 ID:PCyFfDC50
にゃあごにゃあご

おや、違う猫の声も聞こえます

子猫の耳にも聞こえたのでしょうか

私の手をすり抜けて、そちらの方へ行ってしまいました

「あ……待ってください」

名残惜しさに手を伸ばす

60: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/03/29(木) 02:31:36.22 ID:PCyFfDC50
けれど、もう一匹の猫を見て

ぴたりと手を止めた

「お母さんみたいだね」

「ええ、そうみたいですね」

親子の再会に、水を差すなんて野暮はできません

「今度ははぐれぬよう、気をつけるのですよ」

62: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/03/29(木) 02:36:26.29 ID:PCyFfDC50
もう姿は見えないけれど

にゃあ、と聞こえた気がしました

「可愛かったねー」

「はい。また出会えたら良いですね」

次は、お母さんも抱っこしてみたいものです

楽しみにしておきましょう

63: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/03/29(木) 02:40:21.25 ID:PCyFfDC50
「ねぇねぇ、貴音。あれ見て」

響が声を上げます

何か見つけたのでしょうか

「どうしたのですか?」

「あれって桜かな?」

響が指差す方には枝についた、赤みが強い桃色の花

64: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/03/29(木) 02:44:16.80 ID:PCyFfDC50
「違いますよ。あれは梅の花です」

よく間違われるので仕方ありませんが

「なんだ、桜じゃないのか」

梅も綺麗なのですよ

「はい。でも私は梅の花も好きですよ」

いち早く、春の訪れを知らせてくれる梅の花

65: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/03/29(木) 02:49:31.11 ID:PCyFfDC50
桜のように目立つわけでもない

けれど、堂々と咲く可憐な姿

言葉にできない色気がある

「言われてみれば……うん、綺麗だね」

「はい、桜の頃には散ってしまいますが、また来年、美しい花を咲かせるのです」

ああ……来年もこのように

響と共にいられたら良いのに

68: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/03/29(木) 02:55:33.42 ID:PCyFfDC50
「貴音? どうしたの、寂しそうな顔をして」

はっと、我にかえる

「あ……なんでもありませんよ?」

おっと、いけません

感傷にひたってしまうとは

「私、飲み物を買ってきます」

「……うん、わかった」

69: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/03/29(木) 02:59:33.07 ID:PCyFfDC50
このような素晴らしい時を

そして、響の笑顔を

台無しにしてしまのは避けなければ

逃げるように、その場を離れてしまいましたが

情けない顔を見られるのよりはずっといい

さて、早く飲み物を買って響のもとへ戻りましょう

70: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/03/29(木) 03:04:12.47 ID:PCyFfDC50
「お茶で大丈夫でしょうか」

冷たいか暖かいか、悩むところですが……

ここは暖かい方にしましょう

私も同じお茶を購入して響のもとへ

「響。お待たせしまし……」

慌てて口を閉ざします

71: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/03/29(木) 03:09:20.92 ID:PCyFfDC50
聞こえるのは、響の寝息

暖かい日差しは眠気を誘います

忙しい毎日を送り、疲れが取れないのでしょう

こんな小さな体で、頑張っているのですから

「……少し、失礼します」

良き事を思いつきました

73: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/03/29(木) 03:14:04.82 ID:PCyFfDC50
響を起こさないように、ゆっくりと

自分の太ももに、響の頭をそっと乗せる

こちらの方が寝やすいでしょう

「ふふっ、よく寝ていますね」

可愛い寝顔

時折、身じろいでは髪がさらりと靡く

ももに擦れて、少しこそばゆい

75: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/03/29(木) 03:18:58.10 ID:PCyFfDC50
私の膝枕はいかがですか?

気持ち良いのでしょうか?

ねぇ、響

頬を軽くつつく

柔らかな弾力が、指を押し返してくる

この感触は癖になりそうです

76: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/03/29(木) 03:22:30.37 ID:PCyFfDC50
ふふっ、ごめんなさい

あまり意地悪をすると、嫌われてしまいますね

「おやすみなさい、響」

今は、ゆっくりと寝てください

今だけは忙しさを忘れて

良き、夢を……

おしまい

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