1: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/01(火) 21:59:39.74 ID:YWX3IQVI0
アイドルマスターのキャラクター、四条貴音のSSです。
また、この物語はフィクションであり、登場する団体・人物などの名称はすべて架空のものです。
ご了承の上、お読みください。
4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/01(火) 22:01:50.42 ID:YWX3IQVI0
10月上旬/14:00/765プロ事務所
貴音(わたくしは、どうしてしまったのでしょう)
貴音(プロデューサーの顔を思い浮かべると、胸がしめつけられる様に痛みます……)
貴音(もしや……これが恋煩いというものでしょうか……?)
貴音(…………)
10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/01(火) 22:06:06.35 ID:YWX3IQVI0
真「あっ! 貴音! ちょっとこっち来てよ」
貴音「……はて? 皆で顔を寄せあって、何を……?」トテトテ
春香「実は、みんなで雑誌を読んでるんです~」
美希「貴音! これ見て? ここのケーキ、とっても美味しそうなの!」
響「まあまあ、貴音も座ってすわって」
貴音「は、はあ……」チョコン
真「やっぱり、こんなお店に行くなら……彼氏とだよねっ!」
春香「そうだね~。ま、実際はそんな男の人も、居ないんだけど……」ガクン
美希「ミキ的には、真くんとなら行ってもイイと思うなあ」
響「なら自分は、ハム蔵たちを連れて行ってみたいぞ!」
真「ね、猫カフェとかじゃないんだからさあ……」
14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/01(火) 22:09:49.79 ID:YWX3IQVI0
>>8 はい。書きました!
貴音「……ここは、喫茶店、なのですか?」ハテナ
真「そうだね。最近オープンしたらしくってさー」
春香「なんてゆーか、とってもオシャレで、大人なカンジだよね~」キラキラ
美希「ミキもハニーと行ってみたいの~」キラキラ
真「まあ、記事にも書いてあるけど、さっそくデートスポットとして注目浴びてるみたいだね」
貴音「でーと……つまり、男女が仲を深め合うために逢瀬を重ねるという……」
響「まあ要は、好きな人と出かけることだぞ」
美希「あーあ、ミキもハニーとデートしたいなあ」
19: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/01(火) 22:14:57.93 ID:YWX3IQVI0
真「あはは。プロデューサー、忙しそうだもんね~」
貴音(でーと……。なるほど、誘ってみるのも良いやもしれません)
春香「……貴音さん、どうかしたんですか……?」
貴音「い、いえ……。それでは、わたくしはこれで」タタタ
響「あ、行っちゃったぞ……」
美希「貴音、何か変だったよー?」
真「へ? そうかなあ。あ、見てよ春香! この服可愛いよ!」パアア
…………
……
23: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/01(火) 22:18:49.27 ID:YWX3IQVI0
>>18
真美「ほんとに美しいもの、見つけたよ」
やよい「でーと、してくれますか?」
美希「プラネタリウムで好きして!」 です。
24: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/01(火) 22:21:52.79 ID:YWX3IQVI0
貴音(果たして、でーととは、何をするものなのでしょう?)
貴音(まずは知識を得るべきでしょうか。今事務所に居る者で適任は……)
貴音「…………」トコトコ
貴音「あの……もし……?」
あずさ「あらあら貴音ちゃん。どうしたの?」
貴音「実は……三浦あずさを見込んで、話があるのですが」
あずさ「わたしに? いいわよ~。何でも言ってね?」
貴音「それでは……。三浦あずさは、『でーと』なるものを経験したことがあるのですか?」
あずさ「デート? う~ん、まあ……この歳にもなるとねえ」
貴音「そ、それは誠ですか? ならば、幾つか質問を……」
あずさ「ええ。どーんときなさい♪」
28: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/01(火) 22:26:06.49 ID:YWX3IQVI0
貴音「三浦あずさが『でーと』をするのなら、何処へ行きたいと考えますか……?」
あずさ「う~ん、そうねえ~」
あずさ「……わたしなら、『カラオケ』ね」ポンッ
貴音「からおけ……。皆で宴のように歌い踊り、すとれすを発散させるというアレですか……?」
あずさ「ちょっとそのイメージは違うと思うけど。そうね、男の子と行くなら、可愛い曲をいーっぱい歌いたいわ~」
貴音「なるほど……。女性らしい一面を見せることにより、相手を魅了する、という算段なのですね」
あずさ「算段というわけではないけれど……。やっぱり、女の子としては、『可愛い』って言って欲しいじゃない?」
貴音「たしかに、世の女性のほとんどが、そのように思っているやもしれません」
31: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/01(火) 22:29:37.59 ID:YWX3IQVI0
あずさ「ねえ、貴音ちゃん。どうしてこんな事聞くの?」ニコッ
貴音「……! そ、それは……とっぷしーくれっとです……」モジモジ
あずさ「うふふ。冗談よ♪ それじゃ、わたしはお仕事に行ってくるわね」
貴音「は、はあ……。それでは」ペコリ
扉「ガチャ」
あずさ(……ごめんね。貴音ちゃん)
あずさ(…………)
あずさ(わたし……21になってもデート、したことないのよね)ホロリ
…………
……
32: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/01(火) 22:34:47.63 ID:YWX3IQVI0
貴音(もう少し……下調べをするべきでしょうか……)
貴音(むむむ……)
雪歩「あれ? 四条さん、どうかしたんですか?」トコトコ
貴音「……! 萩原雪歩。丁度よいところに現れましたね」
雪歩「へ……? 何の話ですかあ?」
貴音「萩原雪歩。『でーと』なるものを、知っていますか?」
雪歩「で、デートですかあ? まあ、人並み程度には……」
36: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/01(火) 22:39:04.11 ID:YWX3IQVI0
貴音「それでは、雪歩は男性と『でーと』をするのなら、何処へ行きますか?」
雪歩「お、男の人とですかあ!? うう~、二人っきりでなんて考えられないです~」アセアセ
貴音「ふむ。それでは……真との『でーと』と仮定した場合……」
雪歩「ま、真ちゃんとデートですか!? それなら……」ポワン
雪歩「…………」
貴音「……雪歩?」ツンツン
雪歩「はっ! す、すみません四条さん。妄想の世界にトリップしてしまいましたあ……」
貴音「いいのです。それで、理想ではどのようなデートがしたいと思いますか?」
雪歩「そうですね~。やっぱり私は『映画』が良いと思います」キラキラ
37: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/01(火) 22:44:51.80 ID:YWX3IQVI0
貴音「映画、ですか……?」
雪歩「はいっ! 暗い空間の中で、真ちゃんと2人……。最高ですねっ」ギラリ
貴音「そ、そうなのですか……。はて、映画と言えども、幾つもあるでしょう? 萩原雪歩はどのようなものを選ぶのですか?」
雪歩「うーん……。ホラー系の映画で真ちゃんの腕に抱きつくのもイイし……。感動系のストーリーで一緒に泣くのもイイと思うけど……」
貴音「……?」
雪歩「やっぱり、恋愛ものかなあ? あ! 最近観たもので、オススメがありますよ~」ピラッ
貴音「ほう……これはラヴ・ストーリーですか。なるほど、男女の仲をより深めるには相応しいやもしれませんね」
38: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/01(火) 22:50:42.24 ID:YWX3IQVI0
雪歩「ロマンチックですよね~。ところで、四条さんはどうしてそんな事を聞くんですかあ?」キョトン
貴音「そ、それはとっぷしーくれっとです。故に、お話できません」カアア
雪歩「……四条さん? 顔赤いけど、大丈夫ですかあ?」
貴音「い、いえ……。わたくしはこれで……」タタタ
雪歩「あっ……。行っちゃった。なんだったんだろ?」
社長「ああ、萩原君。悪いんだがね。ちょっとお茶を持ってきてくれるかな?」
雪歩「あ、お疲れ様です。ちょっとだけ、待っててください。すぐに用意しますね」トテテ
社長「いつもすまんね。萩原君は『お茶汲み系アイドル』として売り出しても良いかもしれないなあ。はっはっは」
小鳥(社長……。新しいけど、それ、何か間違ってますよ……)
…………
……
39: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/01(火) 22:54:13.64 ID:YWX3IQVI0
貴音(さて……『でーと』については、ある程度の知識が得られました)
貴音(あとは……そうですね。『でーと』における、女性の嗜みを知っておかねばなりません)
貴音(はて……誰に聞くべきでしょうか)キョロキョロ
亜美「あれ? お姫ち~ん! どしたの? キョロキョロしちゃって」トコトコ
真美「あっ! 亜美ぃ、まだゲーム途中だよ~」
貴音「亜美に、真美も……。そうですね、今二人とも、空いていますか?」
亜美「んー? 暇でしょーがないカンジだよ? ね、真美」
真美「うん。そだね。ゲームも飽きて来ちゃったトコだしね」
貴音「それでは……」ゴニョゴニョ
40: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/01(火) 22:57:22.32 ID:YWX3IQVI0
亜美「……へ? デートしたことあるかって?」
真美「ほほー。お姫ちんもついに恋愛に興味を持ち始めたという事ですな?」ニヤリ
貴音「だ、断じてそのようなこと……」アセアセ
亜美「亜美たち、まだデートしたことないケド、マンガとかいっぱい読んでるから、けっこー知ってるよね、真美!」
真美「ま、真美は……、デートの経験あるよ?」
亜美「どーせ嘘っしょ→? 見栄はっちゃダメだよ真美ぃ」
真美「むむむ。まあ、ないケドね……」ズゥーン
44: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/01(火) 23:02:12.08 ID:YWX3IQVI0
貴音「……亜美、真美。わかる範囲で答えて欲しいのですが……」
貴音「『でーと』における、女性の嗜みとして、どのような事が挙げられますか?」
亜美「たしなみ~? 亜美、難しいことわかんないけど、とりあえず大人の魅力は大事っしょ→」
貴音「大人の……魅力?」ハテナ
真美「うんうん。お姫ちんみたいな、ぼん、きゅ、ぼんの人は……、キワドイ服来て、誘惑しちゃえばイチコロだよ→」
貴音「ぼん……きゅ? 誘惑、ですか?」
亜美「そだ! お姫ちん! デートするなら、可愛い服買わなきゃダメだよっ!」
真美「んっふっふ~。なんなら、エ○エ○な洋服を真美たちが選んじゃうよ~?」
貴音「なるほど……。少々不安ですが、わたくしよりは精通しているようですね……。頼みますよ、亜美、真美」
亜美「よーっし、んじゃ明日、お姫ちん改造計画、スタ→トだねっ!」
真美「なんだか、楽しくなってきたね! 亜美!」
…………
……
45: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/01(火) 23:06:11.80 ID:YWX3IQVI0
翌日/午後/女もの洋服店
貴音「それで……どういった衣装を選ぶべきでしょうか?」
亜美「まあまあ。ここは亜美と真美にどーんと任せて!」タタタ
真美「そだよ。お姫ちんは、そこのイスでゆっくりしてて!」ダダダ
貴音「は、はあ……」チョコン
―20分後―
亜美「お姫ちん! お待たせ」トテテ
真美「可愛くってサイコーのやつ、持ってきたからねっ!」
貴音「こ、こんなにたくさん……。試着が大変そうですね」
亜美「ねね、早く着てみてよ~」
真美「むふふ。楽しみですなあ」
46: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/01(火) 23:09:26.07 ID:YWX3IQVI0
ヌギヌギ……ヌギヌギ……。
貴音「ど、どうでしょうか……」モジモジ
亜美「お、おおお……ダァイナマァイトボデー」パチパチ
真美「ん~、お姫ちんの太ももはエ○エ○ですな」キラーン
貴音「こ、こんなに短いワンピースがあるのですね……」クルリ
貴音「む、胸元も……。こんなに……」
亜美「だいじょーぶだよお姫ちん。似合ってるよ→」
真美「もう秋だし、夜はすこーし冷えてくるから、薄手のカーディガンを羽織ればおっけーだねっ!」
47: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/01(火) 23:13:31.09 ID:YWX3IQVI0
貴音「そうでしょうか……。いえ、ありがとう。亜美、真美」
亜美「同じ事務所の仲間っしょ→? それに、亜美たちも楽しかったよね、真美?」
真美「うん! ところで、お姫ちん誰かとデートするの?」ワクワク
貴音「……!? いえ……、それは……」
亜美「へ? 違うの?」キョトン
貴音「……まだ、誘ってはいないのです」
真美「……? まあ、お姫ちんならだいじょーぶだよ!」ニパ
亜美「そおだよ! 自信持って、お姫ちん!」グッ
貴音「……そう、ですね……。何事も、挑戦です!」キリリ
…………
……
50: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/01(火) 23:17:34.28 ID:YWX3IQVI0
翌日/19:00/765プロ事務所
春香「あれー? 貴音さん、帰らないんですか?」
千早「春香。みんな先に行っちゃうわよ」
貴音「え、ええ。少し、プロデューサーにお話が……」
春香「そうなんですかあ。それじゃあ、お疲れ様ですっ!」ペコ
春香「千早ちゃーん、待ってえー」トテテ
貴音「……ふう。誰も、居ませんね」キョロキョロ
貴音「……意識すると、どうも緊張してしまいます。何か、気を紛らわす方法は……」
貴音「…………」トコトコ
貴音「…………」ヌギヌギ
貴音「…………」スポン
貴音「……ゲロゲロ」
55: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/01(火) 23:22:37.44 ID:YWX3IQVI0
扉「ガチャリ」
P「ただいまー。ってうわあっ!? か、カエルお化け!」
貴音「…………」クルリ
P「な、なんだ貴音か……。驚かすなよ……」ハアア
貴音「すみません……」ペコリ
P「……何、してるんだ? もうみんな帰っちゃっただろ?」
貴音「いえ……、あなた様を、待ち伏せしていたのです……」
P「待ち伏せ……?」
貴音「はい……。げろっぱ」
P「よく分からないが……。とりあえず話があるなら聞くから、まずはその着ぐるみをだな……」
貴音「……はい。着替えてきます……」トテテ
P「どうしたんだ……? 貴音のやつ」
…………
……
56: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/01(火) 23:25:40.81 ID:YWX3IQVI0
P「それで、何か悩み事か? なんでも聞くぞ」
貴音「あのう……その……」
P「……貴音?」
貴音「あ、明日の日曜なのですが……暇を持て余してはいませんか?」
P「ん? そうだなあ。とりあえず大きな仕事も一段落ついたし、特に予定は無いな」
貴音「そ、それは、誠ですか?」パアア
P「ああ。どうしてだ?」
貴音「実は……わたくしと……」カアア
P「……貴音と……?」
貴音「でーと、なるものを、して頂きたいのです」モジモジ
P「……えええ!?」
…………
……
59: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/01(火) 23:28:46.34 ID:YWX3IQVI0
当日/11:00/待ち合わせ場所駅前
貴音「やはり……丈が気になりますね……///」クルリ
貴音(会う前から、どうして落ち着いて居られないのでしょう)
貴音(でーとだと気負わずに、力を抜けば良いのです)スーハー←深呼吸
貴音「…………」
P「おーい! 貴音ー」
貴音「……! あ、あなた様」ドギマギ
P「悪いな。待たせちゃったみたいで……」
貴音「いえ……。待ち合わせの時刻より10分も早めに来てしまった、わたくしが悪いのです」
P「ごめんな。ところで、貴音……その服」
62: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/01(火) 23:32:19.61 ID:YWX3IQVI0
貴音「……や、やっぱり……派手、でしょうか」モジモジ
P(やばい……エ○過ぎる……)ドキドキ
貴音「…………」ウルウル
P「い、いや。良いと思う。可愛いよ、貴音」ニコッ
貴音「……っ。その……あまりじろじろと見ては……」
P「そ、そうだな……」
貴音「…………」
P「ところで、何処に行くか、決めてるのか?」
貴音「え、ええ。行きたい場所が幾つか……」
P「そっか。それじゃあ、行こうか」
貴音「……はい。あなた様」
…………
……
63: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/01(火) 23:36:17.03 ID:YWX3IQVI0
11:20/カラオケBOX
P「貴音が行きたいところって、カラオケだったのか」
貴音「実は……今まで縁が無かったもので……」
P「へえ~。それは珍しいなあ。じゃあ、2人だし、2時間くらいでいいか?」
貴音「はい。お手柔らかに、お願いします」
P「ははは。そんなに緊張しなくていいんだぞ」
P「それじゃ、2時間でお願いします。えっと会員証……ちょっと待ってください」ガサゴソ
P「よし、それじゃ行こう」
貴音「…………」コクッ
テクテク……テクテク……
64: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/01(火) 23:40:15.25 ID:YWX3IQVI0
P「205……ここだな」ギイイ
貴音「なるほど。このような個室は見たことがありません」キョロキョロ
P「最近のカラオケは凝ってるからなあ。ミラーボールとかもあるし」
貴音「なんとっ! ……あなた様、この端末は……?」
P「ああ。それで曲を探して、転送するんだよ」
貴音「まさに、人類の叡智を尽くした娯楽というわけなのですね……。また一つ、賢くなれたように思います」
P「そんなカラオケぐらいで大げさな…」
貴音「……あなた様、この“採点”機能とは……?」
P「文字通り、歌の採点が出来るんだ。なんなら勝負するか?」
貴音「それは良い考えですね……。互いに競い合うことで、何事も成長してゆくものです」
P「それじゃ、まずは貴音が歌っていいぞ」
貴音「よ、よろしいのですか?」
P「ああ。仕事以外で貴音の歌を聴くのは初めてだしな」
68: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/01(火) 23:43:15.55 ID:YWX3IQVI0
貴音「そうですね……それではまず……」
貴音「…………」ポチポチ
1:キラメキラリ
2:スキ
3:ふるふるフューチャー☆
4:ラブリ
5:My Best Friend
6:Do-Dai
7:ジェミー
8:何度も言えるよ
安価>>72
73: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/01(火) 23:50:18.07 ID:YWX3IQVI0
貴音『おかしいね涙が~♪ うっれしいのに~とまら~ない~よ~♪』
貴音『わたしね~。何度も言えるよ~♪』
貴音『だいすきっ、だっ、よ♪』パチン
採点中…………。
74: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/01(火) 23:53:11.45 ID:YWX3IQVI0
「97点」パンパカパーン
P「高っ! 点数高っ!」
貴音「これは……良い結果なのでしょうか?」ハテナ
P「100点満点だぞ? なかなか見れる点数じゃないよ。それにしても……」
貴音「…………」キョトン
P「貴音はかわいいなあ」
貴音「あ、あなた様……そのような事を面と向かって言われては……」///
P「普段のイメージと違って、可愛らしい曲も合うじゃないか」
貴音「……可愛かった、でしょうか?」
P「ああ。こんな貴音が見れただけでも、今日は来てよかったと思うよ」
貴音「~~~!!」バタバタ
P「貴音? 大丈夫かー?」
貴音「は、はい……。取り乱してしまいました……。それでは、次はあなた様の番ですね」
76: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/01(火) 23:56:23.04 ID:YWX3IQVI0
P「そうだなあ。何を歌おうかな……」
P「…………」ポチポチ
1:大スキ
2:バレンタイン・キッス
3:涙そうそう
4:星間飛行
5:ふたりのもじぴったん
6:ラムのラブソング
7:ウイスキー、お好きでしょ
8:津軽海峡・冬景色
安価>>80
81: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/02(水) 00:03:30.53 ID:PaafXWVw0
P『わあぁぁああああたしいいもむぉおおひとりぃぃぃ』
P『れんらぐぅううううううせええんに乗りいいいいぃぃ』
P『こんごえそおなかんもめ見つめなあんいていんましたっ』
P『あんあんあんああぁぁ~』
P『つんがるか~い~きょうを~、ふんゆげぇぇええしきぃぃぃ~』
採点中…………。
85: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/02(水) 00:06:23.72 ID:PaafXWVw0
「62点」パチパチパチ
P「」
貴音「なんと……。いえ、とても素晴らしき歌声でした、あなた様」
P「そ、そうかな……。もうちょい取れるかなと思ったんだけど」ハハハ
貴音「まだまだ、めげてはいけませんよ。闘いは始まったばかりなのです」
P「そうだな。よーっし、どんどん歌おう! 貴音!」グッ
貴音「はい。それでは四条貴音、2曲目、歌います」スクッ
…………
……
88: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/02(水) 00:09:27.99 ID:PaafXWVw0
13:20/カラオケBOX前
P「なんだかんだ、貴音には一度も勝てなかったなあ」
貴音「わたくしは運が良かっただけかと。それに、あなた様の歌声も良かったと思います」
P「ありがと、貴音。さてと、それじゃあ、どこかでお昼食べようか?」
貴音「そうですね。少し遅くなりましたが、実は行きたい店があるのです」
P「へえ。何処なんだ?」
92: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/02(水) 00:12:24.45 ID:PaafXWVw0
貴音「最近雑誌で取りあげられて、人気の喫茶店なのですが……」
P「なるほど、良さそうだな。よし行こう」クルッ
貴音「はい……。あ、あの……」
P「ん? どした? 貴音」
貴音(手を……おつなぎしてみたい……)
P「おーい、貴音ー?」
貴音(しかし……そのような事言えるはずがありませんっ!)///
P「たーかーねー?」
貴音「い、いえ……。それでは参りましょう」
…………
……
94: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/02(水) 00:15:36.51 ID:PaafXWVw0
13:40/喫茶MOON
P「中々洒落てるじゃないか」
貴音「噂通り、素敵なお店ですね」
P「なんか、隠れ家っぽいよな」
貴音「ええ。はて……めにゅーはどちらに……」
P「えーと、ああコレだ。おお、どれも美味そうだなあ」
貴音「わ、わたくしにも見せてください」ワクワク
P「ああ、悪いわるい。縦向きに置けば二人で見れるかな」
貴音「……!?」
95: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/02(水) 00:17:53.00 ID:PaafXWVw0
P「これは迷っちゃうなー」
貴音(お顔が……こんなにも近く……)
貴音(…………)カアア
P「貴音は何にするんだ?」
貴音「わ、わたくしは……あなた様と同じものを」
P「それでいいのか? じゃあ、このベーグルにしようかなあ」
貴音「なるほど。良き選択ですね、あなた様」
99: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/02(水) 00:20:44.05 ID:PaafXWVw0
P「貴音はベーグル、好きか?」
貴音「嫌いなものなど、わたくしにはありません」
貴音「食すということは、他の生命の犠牲により成り立つもの。好き、嫌いなど言ってはなりません」
P「貴音は真面目だな。でも、好きなものはあるよな。ラーメンとか」
貴音「らあめんはわたくしの“そうるふーど”なのです。その魅力は……やがて全宇宙にまで広がり……惑星間の……」
P「はいはい。ラーメン談義は後でゆっくり聞くから、先に注文しちゃおう」
貴音「そもそも麺の種類によって様々な楽しみ方が……」
…………
……
100: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/02(水) 00:23:47.77 ID:PaafXWVw0
P「いやあ、美味かったなあ。コーヒーもいい香り」
貴音「誠、料理人と食材に感謝しなければなりませんね」
P「ははは。それより、この後はどうする?」
貴音「そうですね……。実は午後4時10分より、ある映画が上映されるのです。あなた様がお嫌いでなければ、是非」
P「映画かあ。久しぶりだなー。貴音は、映画とかよく観るのか?」
貴音「いえ、あまり……」
P「そっか。じゃあ、楽しみだな」ニコッ
貴音「ええ。ありがとうございます。あなた様」
P「何だよいきなり。俺だって楽しいんだから、礼を言われる筋合いなんてないよ」
貴音「ですが……自然と、言葉が口をついて出てしまいました」テレ
P「はは。貴音は面白いなあ。それじゃ、そろそろ出ようか」
貴音「ええ。少しばかり時間があるようですし、街探訪などして、過ごしましょう」
102: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/02(水) 00:27:16.95 ID:PaafXWVw0
P「ああ。じゃ、会計してくるなー」ガタッ
貴音「あっ……それでは代金を……」ガサゴソ
P「いいって。飯くらい奢らせてくれよ。社会人だぞ?」
貴音「しかし……あなた様、特に金の貸し借りなどは、人の仲を悪しくする恐れがあり……」オロオロ
P「貴音は律儀だなあ。なら、今回だけ……な?」
貴音「……はい」コクッ
P「ありがとう。貴音」
貴音「……! そんな、むしろわたくしが礼を言うべきであり……」
P「こんな事でもさ、男って生き物は嬉しいもんなんだよ」
貴音「そうなのですか……?」
P「ああ。それじゃ、荷物まとめておいてな」タタタ
貴音「……………ぽっ」///
…………
……
104: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/02(水) 00:30:28.02 ID:PaafXWVw0
15:10/雑貨屋「AROMA」
貴音「はて……、これは一体……?」ハテナ
P「えーと、これはアロマだな。ほら、部屋とかに置くんだ。リラックス効果もあるらしい」
貴音「……特に、女性に人気と書いてありますね……」
女性店員「何かお探しですかあ?」トテテ
P「ああ。そうですね、このアロマって……」
女性店員「…………」ペラペラ
P「…………」ペラペラ
貴音(なにやら楽しそうに会話をしています)
貴音(……プロデューサーはあのような女性が好みなのでしょうか?)シュン
貴音(…………)
108: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/02(水) 00:33:32.90 ID:PaafXWVw0
P「……貴音、たかね」
貴音「……! は、はい」ビクッ
P「せっかくだから、貴音にプレゼントするよ」
貴音「この『あろま』を、ですか?」
P「ああ。店員さんに一通りの説明と、おすすめのオイル教えてもらった」
貴音「はて……おいる、とは……?」
P「えーと、この中にある、綿みたいな、ガーゼみたいなヤツに、これを染み込ませるんだ」サッ
貴音「…………?」キョトン
P「まず、この『ライム』を4滴、次に、『ユーカリ・グロブルス』を2滴。んで、最後に『リツエアクベバ』を2滴だ」
貴音「…………?」ハテナ
110: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/02(水) 00:36:51.29 ID:PaafXWVw0
P「……ちょっと待ってて。さっきの店員さんに手順を書いてもらってくる」タタタ
貴音「あ、あなた様……」
貴音(……いいのでしょうか。こんなに……)
貴音(とても、嬉しいことには相違ないのですが……)
貴音「…………」
貴音「きっと……良き香りを纏う女性になって欲しいとの、願いなのですね」キリッ
P「お待たせ。貴音、何か言った?」
貴音「い、いえ……何も」ドギマギ
P「そっか。それじゃ、映画館へ行こうか」
貴音「……ありがとうございます……あなた様っ」
カランカラン……。
…………
……
112: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/02(水) 00:40:02.59 ID:PaafXWVw0
15:40/映画館
P「それで、なんていう映画なんだ?」
貴音「これなのですが……」ピラッ
P「ん……『穴掘り少女と王子様』?」
貴音「実は、萩原雪歩の薦めでして……」
P「なるほど……雪歩らしいな……。ジャンルは?」
貴音「一応、ラヴロマンスだと聞いています」
P「へえ。とりあえず、チケット買っちゃおうか」
貴音「はい……それでは、わたくしは、ぽっぷこーんを買って来ます」トテテ
P「わかったー」
114: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/02(水) 00:43:11.94 ID:PaafXWVw0
―10分後―
貴音「お待たせいたしました……っ!?」ヨロッ
P「おっと。大丈夫か?」ガシッ
貴音「……! そ、その……すみません」カアア
P「はは。気をつけろよ? 春香じゃないんだから」
のワの「!?!?」ビクッ
貴音「そうですね……待たせてはいけないと、少しばかり焦ってしまいました」
P「まだ上映まで時間あるから平気だよ。えーと、ホール7は二階か……」キョロキョロ
貴音(肩を掴まれるだけで、こんなにも胸が高鳴るなんて……)ドギマギ
P「おーい、貴音。ボーっとするなよ~」
貴音「はっ! はい。それでは、中へ参りましょう」ドキドキ
…………
……
116: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/02(水) 00:46:53.12 ID:PaafXWVw0
16:10/映画館
『ひと昔前、フランスのある田舎町で、少女がお婆さんと暮らしていました……』
『その少女は、ただひたすらに、穴を掘る事が趣味なのでした』
『お婆さんと、貧乏ながらも幸せな日々を過ごしていた少女に、ある出来事が起こります……』
『王都から、王子『マコリーヌ』が訪れたのです……。そして、少女――ユキポーヌは、一目で恋に落ちてしまい……』
118: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/02(水) 00:49:51.61 ID:PaafXWVw0
―2時間後―
ユキポーヌ「本当に……わたしでよろしいのですか……?」
マコリーヌ「自分を卑下するような事、言わないでおくれよ。ボクは君が良い。白く輝く、花のような君が好きなんだ……」
ユキポーヌ「ああ……。い、いけません……マコリーヌ様……」
マコリーヌ「この部屋の中では、ボクと君はただの男と女だよ……」
P(こ、この映画……濡れ場があったとは……ッ!)
P(女の子と観るのは、少し気まずいなあ)
P(た、貴音はどんな顔で観てるんだろう……?)チラリ
貴音「…………」メカクシ
P(ひ、必死で見ないようにしてる……! 何だか可愛いなあ)
貴音(こ、このような……。いけません……。他人の情事など、見ては……見ては……)チラチラ
貴音……(互いに好き合った男性と女性は、こうして愛を確かめ合うのですね……///)
貴音(わたくしにも、いつか訪れるのでしょうか……)
…………
……
122: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/02(水) 00:53:20.35 ID:PaafXWVw0
18:40/映画館前
P「いやー、良い映画だったなあ」
貴音「まこと、涙なしでは語ることの出来ない傑作でありました……」
P「もう外も暗くなったなあ。まあ、秋だし仕方ないか」
貴音「そう、ですね……。まもなく、夜の帷が下りてきましょう……」
P「どうする? そろそろ帰るか?」
123: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/02(水) 00:56:23.11 ID:PaafXWVw0
貴音「……あの、あなた様……」
P「ん?」
貴音「でーとの最後に、見せたい場所があるのです……」
P「おお。構わないぞ。どこなんだ?」
貴音「わたくしの、心の依り処とでも、言うべきでしょうか」
P「そっか……んじゃ、行こ」
貴音「はい……。少しだけ、歩きますがよろしいですか?」
…………
……
124: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/02(水) 00:59:34.30 ID:PaafXWVw0
P「うって変わって、閑静なところだな」
貴音「ええ……。あと数分で着きますので……」
ブロロロロ……!!
女性の声「きゃあああっ!!!」ドカッ
貴音「……!?!?」ビクッ
P「……な、なんだ? 事故か!?」クルッ
貴音「いえ、あれは……ひったくりです!」キッ
P「あ、貴音! 待て!」
125: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/02(水) 01:03:17.52 ID:PaafXWVw0
女性のバッグを奪い取ったバイクの男は、速度を緩めようともせずに、わたくしの方へと向かって来ます。
前方20メートルほどの路肩では、女性が足首を押さえて、必死に何かを叫んでいるようでした。
つんざくようなバイクの咆哮を全身に浴びて、わたくしは思わず身震いをしてしまいます。
しかし、荒れ狂う猪がごとく猛進するバイクの進行を妨げようと、わたくしは道の真中に佇み、声を荒らげました。
貴音「待ちなさいっ! この不届き者!」バッ
P「た、貴音! 危ないッ!」
126: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/02(水) 01:06:50.30 ID:PaafXWVw0
瞬間、大きな手によって、わたくしは抱き締められていました。
バイクの男が、勝鬨をあげるがごとく、高らかに笑いながら遠ざかって行きます。
貴音「……わ、わたくしは……」
P「貴音……! この、馬鹿」
貴音「……っ!」
肩口から、呻くような、搾り出すようなプロデューサーの声が聞こえて、ようやくわたくしは、我にかえりました。
P「良かった……。貴音が無事で……本当に」
まるで子供のように、何ども繰り返すプロデューサーの様子に、わたくしはひどく狼狽しました。
もう少しで取り返しのつかない事になって居たと思うと、身が竦みます。
貴音「わ、わたくしは……わ、たくし……」
同時に、涙が溢れてきました。死ぬかもしれなかった恐怖よりも、自分をこんなにも心配してくれる身近な存在に、ただ申し訳なく思ったのです。
128: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/02(水) 01:09:45.35 ID:PaafXWVw0
P「頼むから……。もう、こんな無理しないでくれ……」
貴音「はい……、はいっ」
P「……あ、ご、ごめんな貴音」サッ
貴音「い、いえ……」ドキドキ
プロデューサーが、慌ててわたくしの背後から離れます。
ほのかに温もりが残っているようで、少し気恥ずかしく思いながら、わたくしは改めて頭を下げました。
貴音「もう二度と……このような事はいたしません」
P「ああ、約束だぞ。貴音は765プロの大事なアイドルなんだからな」
貴音「はいっ……あのう、あなた様?」
P「なんだ……?」
貴音「手を……握っていてもらえませんか?」
P「……ああ」ギュッ
貴音「ありがとう、ございます……」ポッ
…………
……
129: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/02(水) 01:13:57.65 ID:PaafXWVw0
19:10/秘密の公園
P「こう言っちゃなんだけど、あの人の怪我、大したこと無くて良かったな」
貴音「ええ。驚いて足首を捻っただけのようでした」
すっぽりとベールに覆われるように、暗くなった秋の夜。
この公園は今日も、月の光を受けて妖艶に輝いています。
P「被害届を出すように言っておいたけど……、犯人、捕まえるのは難しいだろうなあ」
貴音「……はい。顔は勿論の事、バイクのなんばーさえも、タオルか何かで隠しているようでした」
P「常習犯なのかもしれないな。まったく、物騒になったもんだよ」
貴音「まこと……。由々しきことです」
穏やかに髪をなびかせる風には、少々夏の名残を感じます。
辺りに人気は無く、わたくしたちの周りには、何種もの花が見守るように佇んでいました。
130: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/02(水) 01:17:14.32 ID:PaafXWVw0
P「なあ、貴音」
貴音「はい……」
P「 そういえば、前に警察で一日署長を任されたことあったよな」
貴音「……ええ。仕事と言えども、良き経験であったと記憶しています」
P「はは。貴音は人一倍、正義感が強いのかな。立派だよ」
貴音「いえ……けして、尊敬されるような事ではありません」
P「世の中って、二極的な側面があるよな。善と悪。どっちの人間も同じくらい居てさ」
貴音「わたくしは……、自分に正直に生きていたいと思っているだけなのです」
P「それでもさ。皆が貴音みたいな人だったら、犯罪なんて起きないんじゃないか?」
131: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/02(水) 01:20:00.80 ID:PaafXWVw0
貴音「……それでは、世界中の食糧がそのうちに底を突いてしまいます」
P「それもそうだなあ」ニヤッ
貴音「い、いまのは否定してくださいっ」ムム
P「ご、ごめんごめん。なあ、貴音」
貴音「はい……?」
P「どうして、いきなりデートがしたいなんて言ったんだ?」
貴音「……! そ、それは……」モジモジ
P「昨日はびっくりしたよ」
貴音「……あのう、今日は、楽しかったでしょうか?」
P「ああ。カラオケも、買い物も、映画も、全部が楽しかったよ」
貴音「それは……誘ったわたくしとしても、嬉しい限りです……」ドキドキ
P「そっか。なあ、この公園は貴音の何なんだ?」
133: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/02(水) 01:23:58.90 ID:PaafXWVw0
貴音「お話をしていませんでしたね。この公園は……」
貴音「わたくしの、心の安らぐ場所なのです」
P「心が……?」
貴音「はい。現代の人間は、多くのしがらみに縛られ、無理やりに生かされているような節があります」
P「まあ、俺が言うのもなんだが、日本人は働き過ぎだよなあ」
貴音「やはり、休息は不可欠。特に、心を休めることは、仕事の成果にも直結するほどに重要なのです」
P「なるほどな。つまり、疲れた時とかに来るのか」
貴音「はい。後は……一人で物想いに耽るときなどに……」
P「へえ。そういう時は、どんなこと考えているんだ?」
貴音「……!? そ、それは……」
言えるはずがないのです。仕事で付き合いがある以上、より親密な関係を築けば、支障をきたすことになります。
……欲望に負けてはなりません。
134: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/02(水) 01:26:56.57 ID:PaafXWVw0
P「……貴音? 何でも言ってくれて、いいんだぞ?」
貴音「あ、あなた様……」
どくん、どくんと心臓が脈打つの音が漏れてしまいそうで、わたくしは頬が上気するのを感じました。
それこそ、指の先まで真っ赤に染まるほどに、身体が熱く火照っていました。
それに、わたくしを見つめるプロデューサーの瞳に吸い寄せられるようで、立つことさえ堪りません。
P「貴音? だ、大丈夫か? どこか具合が……」
貴音「す、すみません……!」ダキッ
P「た、貴音!?」オロオロ
ああ、わたくしは一体何をしているのでしょう。
自ら男性の胸に飛び込むなどと、以前のわたくしが見れば、破廉恥な、と叱咤するやもしれません。
それでも良いと、今は思います。こうしてプロデューサーの胸に身体を預けている間だけは……。
恋焦がれる女性で居られるのですから。
貴音「……何も言わずに、聞いていただけますか?」
P「……うん」
135: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/02(水) 01:29:23.40 ID:PaafXWVw0
貴音「ずっと、あなた様のことを、お慕いしておりました」
貴音「気づかぬうちに、この気持ちは最早、わたくしの制御出来ぬものとなってしまいました」
貴音「この一時だけで良いのです。夢を……見させて下さい」
139: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/02(水) 01:32:13.17 ID:PaafXWVw0
P「……貴音」
P「俺も、嬉しかったんだ」
貴音「……?」
P「貴音とデート出来てさ、嬉しかった。なんていうか、気恥ずかしいけどさ。こういうの」
貴音「あ、あ、あなた様……」
P「俺も、貴音の事、好きだよ」
141: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/02(水) 01:35:16.85 ID:PaafXWVw0
貴音「~~~!!!」ポカポカ
P「な、なっ! い、痛いよ貴音!」
貴音「あ、あなた様は、卑怯ですっ!」ポカポカ
P「ど、どうして?」
貴音「そんな事……そんなことを言われてしまっては……」ウルウル
P「…………」
貴音「もう……許しません……」ググッ
少し、強く夜風が吹きました。
唇が触れ合った瞬間、なんとも形容しがたい、充足感、安堵感、寂寥感。
その他様々な感情が入り交じった何かが、胸の内で渦巻くようでした。
142: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/02(水) 01:37:56.50 ID:PaafXWVw0
貴音「……こうして手を取り合っていると……。まるで舞踏会に招かれたようですね……」
P「月のワルツに合わせて踊ってみる?」
貴音「それも、良いですが……」
P「……貴音?」
たくさんの花が咲き誇る、秘密の公園。
色とりどりの花たちに、わたくしは身を委ねました。
すうっと鼻腔をくすぐる、懐かしいような香りに包まれて、わたくしは言葉を紡ぎます。
貴音「今のわたくしは……フラワーガールですよ、あなた様」
…………
……
147: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/02(水) 02:00:05.47 ID:PaafXWVw0
20:00/らあめん屋「風花」
P「た、貴音……一体何杯食べるつもりだ……」
貴音「らあめんならば、幾らでも」ズルズル
P「ははは……。これじゃあ経費で落とせないな……」
貴音「なんとっ! 事務所のお金を遣うと言うのですか……。それならば、もう少しだけ……」
P「ちょ、ちょっと貴音~! 勘弁してくれ~!」
貴音『これが……恋煩いでしょうか……』―Flower Girl―
FIN
149: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/05/02(水) 02:02:57.70 ID:PaafXWVw0
真美、やよい、美希に続いて、貴音さんのSSでしたー。
最後まで読んで頂き、ありがとうございます。
貴音さんは口調がムズカシイですが、書いてて楽しかったです。
「次はこんなキャラの、こんなSSが読みたい」
などの意見をいただければ、検討します!
何か質問などありましたら、レスを下さい。