【速水奏SS】速水奏「行く末」

1 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/10(月) 23:05:25.71 ID:Lk5DxQKAO

ガタンゴトンと周期的な音が響き渡る

夕暮れに染まる電車

そのボックス席に男女が向かい合って座っていた

「起きてる?」

男が問い掛ける

『起きてるよ』

女が答えた

「そっか」

男の言葉を最後に、再び沈黙が広がる

夕陽の赤と電車の音だけに満たされ、穏やかな時が流れていった

2 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/10(月) 23:08:06.62 ID:Lk5DxQKAO


───
──────

「なぁ、奏」

『なぁに?』

「どうしてアイドルになったんだ?」

『Pさんがスカウトしたんでしょ。忘れちゃったの?』

「もちろん覚えてるよ。そうじゃなくて、理由を知りたいんだ」

『乙女は誰しもアイドルに憧れるものよ』

「憧れ…か」

『もっとも、それ以上に貴方に惹かれたから』

「俺に?」

『思えば、一目惚れだったのかも』

「後悔してる?」

『するわけないじゃない』

「良かった」

3 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/10(月) 23:10:02.37 ID:Lk5DxQKAO

『ねぇ、Pさん』

「どうした?」

『Pさんはどうしてプロデューサーになったの?』

「社長にスカウトされてな」

『Pさんが?』

「ああ。就職活動してる時に誘われてホイホイ着いてった」

『変なの』

「俺もそう思う」

『後悔してる?』

「するわけない」

『良かった』

「なんたって、奏に逢えたんだから」

『…ばか』

4 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/10(月) 23:10:59.34 ID:Lk5DxQKAO

「奏はさ」

『うん』

「アイドルやってて楽しかった?」

『もちろん』

「即答か」

『非日常の連続だもの』

「辛くなかった?」

『辛いときもあったけど、そのたびにPさんが助けてくれたじゃない』

「そうだっけ」

『そうよ。いつもPさんが側に居てくれたから楽しめたの』

「知らなかったな」

『鈍感ねぇ…』

5 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/10(月) 23:15:01.61 ID:Lk5DxQKAO

『Pさんは?』

「ん?」

『Pさんは楽しめた?』

「半々、かな」

『半々?』

「奏のファンが増えてくのは嬉しくもあり楽しかった。けど…」

『けど?』

「支えきれてないんじゃないかって。それが辛かった」

『そう…』

「だから、さっきの言葉は嬉しかったよ」

『ふふっ…何度でも言ってあげる』

6 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/10(月) 23:18:18.56 ID:Lk5DxQKAO

「嬉しい、と言えば」

『言えば?』

「最初のバレンタイン」

『懐かしいわね』

「チョコレート、嬉しかったよ」

『ちゃんと食べた?まだ取っといたりしてないでしょうね』

「食べたよ。甘くて美味しかった」

『なら良かった』

7 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/10(月) 23:20:08.79 ID:Lk5DxQKAO

「チョコが甘いのは、二人の関係が甘くなって欲しいから」

『よく覚えてるわね』

「俺達はどうだろう」

『少なくとも、甘くはないわ』

「ほろ苦い、かな」

『ほろ苦いのも嫌いじゃない』

「懐かしいな」

9 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/10(月) 23:21:37.41 ID:Lk5DxQKAO

『懐かしい、と言えば』

「言えば?」

『みんな、元気にしてる?』

「久しく連絡取ってない人もいるからね。どうだろう」

『消息の分からない人とか居るの?』

「のあさん」

『ああ、なるほど』

「あの人、結局見た目の年齢変わらなかったな」

『まだまだできそうだったのに』

11 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/10(月) 23:23:01.66 ID:Lk5DxQKAO

「それを言うなら、奏だって」

『私は、もう満足したから』

「そう」

『それに、アイドルよりなりたいものができたしね』

「そう」

『照れてる?』

「いや」

『赤いよ?』

「夕陽だ」

『そういうことにしといてあげる』

12 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/10(月) 23:26:03.46 ID:Lk5DxQKAO

「見てみなよ。あと少しで日が沈む」

『綺麗な夕陽』

「都会じゃ見れないな」

『田舎には田舎のいいところがあるのね』

「それは都会人から見たらだけど」

『でも、大切なもの』

「そうだな」

『大切なものって、いつの間にか見失っちゃうのよね』

「ああ。だから俺には、大切なものは一つでいい」

『そうね、一つでも大きすぎるくらいだもの』

13 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/10(月) 23:29:08.11 ID:Lk5DxQKAO

「すっかり日が暮れたな」

『夜になると、あの撮影を思い出すわ』

「ああ、あのウェディングドレスの」

『そう』

「あれは綺麗の一言に尽きるよ」

『ふふっ、ありがとっ』

「次に奏のウェディングドレスを見るのはいつになるかな」

『私は今すぐにでもいいんだけど…』

「引退後すぐはマスコミがうるさいから」

『分かってる。どうやら、未婚女性が着ると婚期が遅れるって噂、本当みたい』

「北条は?」

『例外ね』

14 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/10(月) 23:33:43.51 ID:Lk5DxQKAO

「あの二人は上手くやっているらしい」

『加蓮にご両親への挨拶の仕方、教わっとけば良かった』

「緊張してる?」

『私だって緊張ぐらいするわ』

「大丈夫だよ。うちは名家でも何でもないし、早く嫁もらえってうるさいぐらいだから」

『そうなの?』

「あ、そろそろ着くから降りる用意してくれ」

『えっ、いきなり?』

「すまん、ぼーっとしてた」

『もう、また緊張しちゃったじゃない』

「大丈夫だって。もし認められなかったら愛の逃避行だ」

『ふふっ、映画みたいね』

「あ、恋愛映画は嫌いだっけ?」

『Pさんとなら、恋愛映画も悪くないかな』

「緊張、ほぐれたみたいだな」

『えぇ、もう大丈夫。Pさんが支えてくれたから』

「じゃあ、行こっか」

15 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/10(月) 23:35:38.27 ID:Lk5DxQKAO

『星が、綺麗……』

「街灯が少ないからね」

『ねぇ、Pさん』

「ん?」

『私は、輝けてたかな』

「輝いてるよ」

『過去形じゃないんだ』

「アイドルとしての速水奏は終わってしまったけど、俺が見てる速水奏は変わらずに輝いてる」

16 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/10(月) 23:37:06.29 ID:Lk5DxQKAO

『そういえば、前に訊いたことがあったわね。アイドル速水奏か私、どちらを欲しいか』

「あの時ははぐらかしたけど、今なら言えるよ」

『今は言わないで。バレンタインの返事も貰ってないのよ』

「そろそろホワイトデーだったな」

『ふふっ…鈍感なPさんにしては、鋭いじゃない』

「何年も一緒にいるんだ。鍛えられるさ」

『これからも側に居てくれる?』

「もちろん」

17 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/10(月) 23:39:03.12 ID:Lk5DxQKAO


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──────

晴れ渡る空の下、二人が電車を待っていた

「これからどうしようか」

男が問い掛け

『そうねぇ…』

女がはっきりしない答えを返した

「奏はどうしたい?」

『……旅がしたいわ』

「旅?」

『一足早い新婚旅行よ』

「いいな、それ」

『気の向くままに世界中を。色んな世界を見て回る』

「何が待ってるかな」

『さぁ、分からないわ』

18 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/10(月) 23:40:26.82 ID:Lk5DxQKAO

「隣に君がいて」

『隣に貴方がいて』

「手を繋ぐ」

『それだけでいいの』

「幸せ、だな」

『そう、幸せ』

『私達の行く末は、幸せに違いないわ』

20 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/10(月) 23:44:01.90 ID:Lk5DxQKAO

以上になります

読み返したら、アイデンティティーのキス要素が無かったという

それでは
ここまでお付き合いいただきありがとうございました

22 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/10(月) 23:50:20.89 ID:itm/C/nqO

転載元
速水奏「行く末」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1394460325/

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