【二宮飛鳥SS】二宮飛鳥「話をしよう」 結城晴「いきなりだな」 

1 :◆C2VTzcV58A :2016/07/17(日) 22:49:15.88 :USyAfwrsO

晴「急にどうしたんだよ」

飛鳥「今、この部屋にはボクとキミしかいない。暇を持て余すついでに、会話を楽しむのも一興……そう考えるのは不自然じゃないだろう」

晴「でも、飛鳥の方からオレに話しかけてくるって結構珍しいからな……まあ、いいか。暇なのは事実だし」

飛鳥「では、決まりだ。キミとボクとで紡ぎ出そう、新たな詩篇の一ページを」

晴「よくわかんないけど、すげー大げさに言ってることだけはわかるぞ」

2 :◆C2VTzcV58A :2016/07/17(日) 22:50:20.45 :USyAfwrsO

飛鳥「さて、何の話をしたものか」

晴「いきなりかよ。アンタから振ったんだぞ」

飛鳥「あぁ、そうなんだが……うん、なら」

飛鳥「サッカーのやり方を教えてもらおう。学校の球技大会で割り当てられたんだ」

晴「へー」

飛鳥「普段からボールと慣れ親しんでいるキミに、実技をご教授願いたい」

晴「教えるのはいいぜ。オレもサッカーできるヤツが増えるのはうれしいし」

晴「でも」

ざーざーざー

晴「今、急に雨が降り出した」

飛鳥「………」

飛鳥「フッ……天の悪戯といったところかな。いいさ、ひとつの試練と受け取ろう」

晴「だからいちいち大げさだっての」

3 :◆C2VTzcV58A :2016/07/17(日) 22:51:06.38 :USyAfwrsO

晴「はー、喉渇いたな。なんかジュース残ってたっけ」

飛鳥「冷蔵庫にいくつかあったはずだ」

晴「サンキュ。飲むかー」スタスタ

飛鳥「確か、今しがたダンスレッスンを終えたところだったか」

晴「そうそう。終わってすぐ水分補給したんだけど、また渇いてきた」

飛鳥「そう」

飛鳥「……疲れた?」

晴「そりゃ疲れるには疲れるって。けど、ちゃんと最後までついていったぜ!」ニカッ

晴「アイドル始めたばかりの頃は、後半バテて休まされちまったからな。ああいう悔しい思いをするのは、もうゴメンだ」

飛鳥「負けず嫌いなんだね、晴は」

晴「勝ち負けの問題じゃない気もするけどな。飛鳥は違うのか?」

飛鳥「ボクは……そうだな。確かに、自身が成す術もない状況は好きじゃない」

飛鳥「けど」

晴「けど?」

飛鳥「適度に休息は欲しい」ハア

晴「すげー遠い目してるぞ……大丈夫か?」

飛鳥「最近、少々ハードなレッスンを経験してね……ありすにでも聞いてくれ」

4 :◆C2VTzcV58A :2016/07/17(日) 22:52:06.05 :USyAfwrsO

ザーザーザー

飛鳥「しかし、この時期は天気が変わりやすいね。さっきまで晴れていたのに」

晴「雷とか、落ちなきゃいいんだけどな」

飛鳥「怖いの?」

晴「オレはそうでもないけど。怖がるヤツ、結構いるだろ。この事務所」

飛鳥「あぁ、そういうことか」

飛鳥「優しいね」

晴「べ、べつにそんなんじゃねーし」

飛鳥「ふふ」

晴「なんだよ」

飛鳥「素直じゃないと思ってね」

晴「飛鳥にだけは言われたくねーぞ……」

晴「いや、飛鳥にだけじゃないな。梨沙とかにも言われたくない」

飛鳥「結構多そうだね」

晴「だな。ここ、いろんなヤツがいるし」

5 :◆C2VTzcV58A :2016/07/17(日) 22:53:16.17 :USyAfwrsO

晴「ホント、個性の塊だよな。うちの事務所」

晴「オレなんて、サッカーが好きな一般人って感じだ」

飛鳥「彼女らと共に偶像世界を往く時点で、キミもまた特別な人間さ」

飛鳥「そこに貴賎はない。きっとね」

晴「偶像世界……アイドルってことか?」

飛鳥「イグザクトリィ」

晴「オーストラリアでも、そんなこと言ってたもんな。思い出した」

晴「あの時と比べると……飛鳥、結構変わったよな」

飛鳥「変わった? どんなふうに」

晴「うーん。なんていうか」

晴「……アレだ。かっこよくなった」

飛鳥「かっこよく?」

晴「そうそう。うまく言えないけど……うん、かっこよくなった」

飛鳥「ファンレターでは、かわいらしくなったという声が多いんだけど」

晴「そうなのか? まあ、確かにそれもわかるけど」

晴「でもやっぱり、オレは『かっこよくなった』と思うぜ」

飛鳥「そうか……なんにせよ、どちらの声も喜ばしい」

7 :◆C2VTzcV58A :2016/07/17(日) 22:53:59.75 :USyAfwrsO

晴「オレはどう? オーストラリアの頃と比べて、何か変わったか?」

飛鳥「晴のほうは、最初からずっと、同じ方向へまっすぐ進んでいるイメージがある」

飛鳥「正統進化を続けている。そんな感じだ」

晴「正統進化か……へへっ、なんかかっこよさそうだな、それ!」

晴「アイドルもサッカーも、頑張ってやったぶん力がついてきてる気はするんだ。だからオレは、これからもどんどん強くなっていくぜ」

飛鳥「かっこいいね」

晴「へへっ」

晴「けど、なぜかかわいい系の衣装もやたらと着せられるんだよなぁ」

飛鳥「需要というヤツさ。Pもいろいろと考えているんだろう」

晴「けどなあ。ただかわいいだけとか、スカート履くだけとかならまだいいんだけどさ」

晴「バニーとか、ウェディングドレスとか。極端なんだよなあ。何かを感じるぜ」

飛鳥「ははっ」

晴「笑い事じゃないんだぞ。飛鳥もそういう仕事回されたらわかるだろうけど」

飛鳥「………」

飛鳥「確かに、ウェディングはともかくバニーは……回されたらPに一言つけるところから始まるだろうね」

晴「ウェディングはいいのか」

飛鳥「………」

飛鳥「まあ、ね」エクステイジイジ

8 :◆C2VTzcV58A :2016/07/17(日) 22:55:17.23 :USyAfwrsO

晴「まあ……ちょっと文句も言ったけど。Pには感謝だな」

晴「いろんな楽しいこと、オレに教えてくれたから。ヘンタイだし、すぐ調子に乗るけど……いいヤツだし。オレのこと、よくわかってるし」

晴「みんなの前で歌うのがこんなに好きになるなんて、ちょっと前までは想像もしなかったからな」

晴「……な、なんか改めて言うと照れくさいな」ヘヘ

飛鳥「いいじゃないか。嘘じゃないんだろう」

晴「ああ。本当に思ってることだよ」

晴「Pのおかげで、夢がどんどん膨らんでいくし」

晴「あいつの夢も、叶えてやりたいって思うよな」

飛鳥「トップアイドルを育てあげる、か」

晴「どうせなら、みんなでなってやろうぜ」

晴「Pが幸せすぎてぶっ倒れるくらいに」ニカッ

飛鳥「……あぁ。それはきっと、愉快だろうな」

9 :◆C2VTzcV58A :2016/07/17(日) 22:57:01.75 :USyAfwrsO

晴「それでさ、話は変わるんだけど」

飛鳥「………」

晴「飛鳥?」

飛鳥「どうやら、成功らしい」

晴「は? 成功?」

飛鳥「ついてきてくれ」スタスタ

晴「あ、おい! いったいなんだよ急に!」

飛鳥「この部屋だ」

晴「ったく、連れてくる前にちゃんと説明を――」ガチャ

パーン! パーン! パーン!

『晴(ちゃん)、お誕生日おめでとー!!』

晴「……え」

飛鳥「7月17日。キミの誕生日」

飛鳥「少し部屋の準備に手間取っていてね。キミをあの場に留めておくために、ボクが時間稼ぎをさせてもらった」

飛鳥「指名理由は、梨沙いわく『話が長いから』だそうだ」

飛鳥「まあ、このサプライズはある程度予想がついていたかもしれないけれど……」

晴「」ポカン

飛鳥「どうやら、完全に不意打ちだったらしい」

10 :◆C2VTzcV58A :2016/07/17(日) 22:58:04.04 :USyAfwrsO

P「サプライズパーティー、大成功だな」

晴「P……なんだよ。先に言ってくれよな! こんな、部屋に飾りつけまでして」

梨沙「バカね、先に言ったらサプライズにならないでしょ!」

裕子「お仕事の都合で、あんまりたくさんの人は集められませんでしたけど」

ネネ「そのぶん、気持ちはこもっていますから。ほら、ケーキもありますよ」

飛鳥「まあ、そういうことだ」

晴「どういうことだよっ!」

晴「ったく、みんな本当に……わざわざこんなことしなくても、毎日会ってるんだから普通に祝ってくれれば……」

梨沙「とか言いつつ、顔がにやけてるんじゃない?」ニヤニヤ

晴「ばっ! なっ……に、にやけてなんかねーし!!」

梨沙「にやにや」

P「にやにや」

裕子「にやにや!」

ネネ「にやにや?」

飛鳥「………にやにや」

晴「あーもう! なんだよその連帯感!?」カアァ

飛鳥「異国の地で、幾度の夜を共に越えた仲だからね」

11 :◆C2VTzcV58A :2016/07/17(日) 22:59:09.32 :USyAfwrsO

晴「ったく! 本当に、まったく!」

晴「………」

晴「……ありがとな、みんな」

飛鳥「ふふっ」

P「どういたしまして、だな」

梨沙「素直じゃないんだから」

晴「梨沙には言われたくないっ!」

12 :◆C2VTzcV58A :2016/07/17(日) 22:59:57.94 :USyAfwrsO

P「さ、じゃあケーキにロウソク立てるか」

ネネ「ライター、持ってきますね」

晴「そういえば。飛鳥がオレの相手をしてたっていうのはわかったんだけど……どうやってパーティーの準備が終わったことを知ったんだ?」

飛鳥「あぁ。それは」

裕子「もちろん、エスパーユッコのサイキックミラクルテレパシーで」

飛鳥「インカムを使って、無線で連絡を取っていたんだ。準備ができたら伝えてもらうようにしていた」

裕子「飛鳥ちゃーん、ちょっとくらい私にかっこつけさせてくださいよー」ブーブー

飛鳥「あぁ、すまない」

梨沙「でも、ユッコのアドバイスほとんど役に立ってなかったじゃない。雨なのにサッカーの提案するし」

裕子「あれはタイミングの問題です。急に降り始めるんだから」

晴「もしかして、オレと飛鳥の会話も聞こえてたのか」

飛鳥「あぁ。双方向だ」

晴「そうか」

13 :◆C2VTzcV58A :2016/07/17(日) 23:02:03.04 :USyAfwrsO

晴「………」

晴「………いや、ちょっと待て」

晴「じゃあ、じゃあ……オレがPのこと、感謝してるとかどうとか言ってたのも」

飛鳥「………」チラ

P「……あー、その」

P「……どう、いたしまして?」

ネネ「よかったですね、Pさん♪」

晴「………」

晴「わ、忘れろーっ!」カアァ

P「うわっ、追いかけてきた!」

晴「待て、逃げんな!!」

裕子「仲良きことは美しきかな、ですね!」

梨沙「そうなの? アレ」

裕子「そうですよ。間違いありません!」

梨沙「……ま、確かにそうなのかも」

おしまい

14 :◆C2VTzcV58A :2016/07/17(日) 23:03:48.58 :USyAfwrsO

おわりです。お付き合いいただきありがとうございます。そして晴ちゃん誕生日おめでとう
オーストラリア組が好きなんです

過去作もよろしければどうぞ
渋谷凛「七夕」大石泉「短冊」橘ありす「織姫」佐城雪美「……彦星」
二宮飛鳥「十年目の孤独と葛藤と」
モバP「なっちゃんと梅雨」

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