1:2013/09/05(木) 02:09:57.80 :Ygp85Hpgo
撮影スタジオ―――
「――よし、カット! 今日はここまで!」
加蓮「お疲れさまでしたーっ!」
加蓮「ふー……。疲れたぁ」
P「お疲れ、北条」
加蓮「あ……プロデューサー。お疲れさま、今日の私どうだった――」
P「さぁ、共演者に挨拶して帰るぞ」スタスタ
加蓮「……。うん……」
P「なんだ?」
加蓮「う、ううん。なんでもないよ」
P「そうか」
加蓮「…………」
加蓮(少しくらい……褒めてほしかったな……)
2:2013/09/05(木) 02:12:42.21 :Ygp85Hpgo
―――
――
―
事務所―――
P「……ということだ。なにか質問は?」
加蓮「ううん、大丈夫」
P「ならいい、次の撮影は明々後日だ。体調には気をつけておけ」
加蓮「うん、わかった」
P「じゃ、今日はこれで終わりにしよう」
加蓮「……ね、ねぇ」
P「ん? なんだ」
3:2013/09/05(木) 02:13:55.74 :Ygp85Hpgo
加蓮「今日の撮影、どうだったかな? 演技とか、その……」
P「演技? そうだな……」
加蓮「…………」
P「特に言うことはないな。レッスン通りだ」
加蓮「…………そっか」
P「なにか不満でもあるのか? それならトレーナーに伝えておくぞ」
加蓮「ううん、いい……大丈夫。気にしないで」
P「……? まぁいい、とにかく今日は終わりだ」
加蓮「ん……」コクン
4:2013/09/05(木) 02:16:32.30 :Ygp85Hpgo
P「明るいうちに帰れよ、最近は物騒だから」
加蓮「…………」
加蓮(せめて、もっと一緒に……)
加蓮(だって)
加蓮(だって、今日は――)
P「あぁ、そうだ」
加蓮「!」
P「ひとつだけ言いたいことがあった」
加蓮「う、うん。なに?」
5:2013/09/05(木) 02:18:04.56 :Ygp85Hpgo
P「いい加減、敬語くらい使え。一応こんなんでも俺は上司だぞ」
6:2013/09/05(木) 02:19:43.01 :Ygp85Hpgo
加蓮「ぁ……」
加蓮(……そう、だよね……)
加蓮「…………」
P「返事は?」
加蓮「……はい……ごめん、なさい。次から、気をつけます……」
P「それでいい。じゃあな、お疲れ北条」
がちゃ ばたん
加蓮「…………」
7:2013/09/05(木) 02:22:11.95 :Ygp85Hpgo
加蓮「…………」ポツン
加蓮「…………あはは」
加蓮「なに期待してんだろ……バカみたい」
加蓮「プロデューサーがお祝いしてくれるなんて……あるわけないじゃん」
加蓮「バカだなー、私」
加蓮「……ホント、なにしてんの」
8:2013/09/05(木) 02:23:37.79 :Ygp85Hpgo
加蓮「…………」
加蓮「……あーあ。なにやってんだ、私っ」フルフル
加蓮「ダメダメ、せっかくアイドルになったのにさ!」
加蓮「もっと前向きになんなきゃ」ジワッ
加蓮「もっと、もっと……楽しく、しなきゃ。夢叶った……のに」
加蓮「なのに…………なんで」ポロ
加蓮「なんでこんなに……」
加蓮「……寂しいの、かなぁ……っ」ポロポロ
9:2013/09/05(木) 02:25:22.56 :Ygp85Hpgo
加蓮「やだよ…………こんなの……っ」
加蓮「アイドルって……こんなに寂しいものだったのかな……?」
加蓮「全然、楽しくない…………楽しくないよぉ……!」ギュ
加蓮「ぐす、うぅぅ…………!」
加蓮「ねぇ、誰か……」
加蓮(私を助けて――)
10:2013/09/05(木) 02:27:57.47 :Ygp85Hpgo
―――
――ん
ねぇ、――ってば!
――加蓮!
加蓮「………………ん」パチッ
「あ、やっと起きた。大丈夫?」
加蓮「…………あ」
加蓮「……りい、な……?」
李衣菜「うん、私。なんだかうなされてたみたいだけど……加蓮、平気?」
11:2013/09/05(木) 02:29:50.22 :Ygp85Hpgo
加蓮「うなされてた……? 夢……だった、の?」
李衣菜「夢? ……うーん、ちょっとおでこ貸してね」ペタッ
加蓮「…………」
李衣菜「……うん、熱はないみたいだけど。どこか具合悪いところとか――」
加蓮「……っ」
ぎゅっ
12:2013/09/05(木) 02:31:34.38 :Ygp85Hpgo
李衣菜「ってうわあぁ!? ななな、なになになにっ?」
加蓮「李衣菜……りいなぁ……!」
李衣菜「ど、どしたの加蓮? そんなに嫌な夢だった?」
加蓮「……っ」ギュー
李衣菜「……うん、そっか。へーきへーき、私がついてるでしょー?」ナデナデ
加蓮「ん……うん、うん……!」
李衣菜「よしよし、大丈夫大丈夫……」
13:2013/09/05(木) 02:33:46.34 :Ygp85Hpgo
―――
李衣菜「どう? 落ち着いたかな」ポフ ポフ
加蓮「……ごめんね李衣菜、ありがと」ギュ…
李衣菜「いいよ、別に。へへ、加蓮に頼られるの、けっこう嬉しいし」
加蓮「ふふ……なんだかお姉ちゃんっぽいね」
李衣菜「えっへん」
加蓮「……あったかい」スリスリ
李衣菜「加蓮もあったかー。えへへ♪」
加蓮「ふふ♪」
14:2013/09/05(木) 02:35:50.01 :Ygp85Hpgo
がちゃ
泰葉「李衣菜。そろそろPさんが戻ってくる頃だから、加蓮を起こし、て……」
李衣菜「あ」ギュー
加蓮「あ、泰葉」ギュー
泰葉「…………」
泰葉「うん、大丈夫。前の事務所でもそういうのあったし私は別に気にしないよ」ニッコリ
李衣菜「待って泰葉、違うよ!?」
泰葉「ふふっ」ススス
李衣菜「いやふふっじゃなくて、後ずさりやめて! 泰葉ってば――!」
15:2013/09/05(木) 02:37:51.66 :Ygp85Hpgo
―――
――
―
加蓮「――ってわけで、ちょっと李衣菜に甘えてたの」
泰葉「そっか……そうだったんだね」
李衣菜「誤解が解けてなによりだよ……」
泰葉「てっきり李衣菜がロックに目覚めたのかと思ったけど」クスッ
李衣菜「てっきりて……それに私はもともとロックなんですぅー」ムスー
泰葉「はいはい、そうだね」
16:2013/09/05(木) 02:39:56.59 :Ygp85Hpgo
李衣菜「な、流された……!」
泰葉「ふふ……それで、加蓮」
加蓮「あ、うん……なぁに、泰葉」
泰葉「あんまり夢のこと……気にしないでね」
泰葉「私も李衣菜も一緒だから。独りじゃないでしょう?」
加蓮「……うん」
泰葉「大丈夫。もしまた、変な夢を見ても……」
泰葉「私たちがついてるから。心配しないで、加蓮」
泰葉「ねっ?」ニコッ
加蓮「……うんっ!」
17:2013/09/05(木) 02:41:50.53 :Ygp85Hpgo
李衣菜「あはは、言いたいこと全部泰葉に言われちゃった」
泰葉「ふふっ、私の勝ちかな」
李衣菜「えー。なんの勝負なの、もう……」
加蓮「えへへ……二人ともありがと。大好き」
李衣菜「うん。私も二人のこと大好きだからねっ」
泰葉「私だって大好き。親友だもの!」
18:2013/09/05(木) 02:44:13.48 :Ygp85Hpgo
加蓮「ふふ……親友、かぁ。なんだか嬉しいな」
泰葉「ちょっと恥ずかしいね……こういうこと言うのって」
李衣菜「泰葉は恥ずかしいんだ? じゃあ私の勝ちー」
泰葉「あ、ずるい李衣菜。さっきのは嘘、全然恥ずかしくないから」
李衣菜「ダメですー、そんなの認められませーん」
泰葉「認めなさい、先輩命令ですっ」
李衣菜「岡崎先輩こわーい、あははっ♪」
19:2013/09/05(木) 02:47:29.10 :Ygp85Hpgo
加蓮「ふふっ。二人とも、喧嘩してたらまた怒られちゃうよ?」
李衣菜「喧嘩じゃないよー、泰葉と遊ぶの楽しーなー♪」ナデー
泰葉「もう……じゃあ私は加蓮をっ」ワシャー
加蓮「きゃ……やったなーっ! それなら私は李衣菜っ!」ナデナデー
李衣菜「あはっ、くすぐったいよぉ!」
泰葉「ふふふっ♪」
加蓮「えいえいっ、なでなでーっ♪」
きゃいきゃい
あははは……
―――
――
―
20:2013/09/05(木) 02:49:09.76 :Ygp85Hpgo
―――
がちゃっ
P「ただいまー。悪い悪い、遅くなって」
李衣菜「あ、Pさんおかえりなさいっ」
泰葉「お疲れさまです」
加蓮「おかえりー」
P「お、三人揃ってるな。……なんでお前ら、髪の毛ボサボサなの?」
李衣菜「えへへー」
泰葉「ちょっと遊びすぎちゃって。ふふっ」
21:2013/09/05(木) 02:51:34.81 :Ygp85Hpgo
P「んー? よく分からないけど仲良しそうでなによりだ」
加蓮「でしょー? んふふー」
P「ん……?」
加蓮「? なに?」
P「…………。なんかいいことあったか、加蓮」
加蓮「え……? どうして?」
P「いつもより笑顔が三割増しだからさ。なにかあったのかと思って」
加蓮「……うん。あったよ、すごくいいこと。ふふ」
P「うん、そっか」ナデ
加蓮「えへ」
22:2013/09/05(木) 02:53:13.42 :Ygp85Hpgo
李衣菜「…………♪」
泰葉「…………」ニコニコ
加蓮「あ、なに笑ってんのー?」
李衣菜「別にー?」
泰葉「ふふ、なんでもないよ。ね?」
李衣菜「ねー?」
加蓮「むー、気になるなぁ」
P「……ふふ」
23:2013/09/05(木) 02:55:26.56 :Ygp85Hpgo
P「……李衣菜、泰葉」
李衣菜「へっ?」
泰葉「はい?」
P「ありがとな」ナデナデ
泰葉「え、お、お礼を言われることなんてなにも……!」
李衣菜「そっ、そうですよ! なんですかいきなりっ」
P「んー……なんとなくだ、なんとなく」ナーデナーデ
加蓮「二人とも顔赤いなー、なんでかなぁ?」ニヤニヤ
だりやす「あ、赤くないっ!」
P「ははは……」
24:2013/09/05(木) 02:57:21.01 :Ygp85Hpgo
―――
――
―
P「さて、そろそろ出かけるかー」
泰葉「そうですね。もう日も落ちましたし」
李衣菜「私たちは準備ばっちりですよっ」
加蓮「あれ、どこか行くの? お仕事あったかな……」
李衣菜「あ、そっか。加蓮にはまだ言ってなかったっけ」
加蓮「んー? なんのこと?」
泰葉「ふふ……Pさんから伝えてあげてください」
P「え、俺? あー……そうだな。なぁ、加蓮」
加蓮「う、うん。なに?」
25:2013/09/05(木) 02:59:03.32 :Ygp85Hpgo
P「……ハッピーバースデー。誕生日おめでとう、加蓮」
26:2013/09/05(木) 03:01:53.09 :Ygp85Hpgo
加蓮「ぁ……」
李衣菜「へへ。加蓮、おめでと!」
泰葉「おめでとう。ふふ、また同い年だね」
加蓮「う、うん……! ありがと……」
P「それで、プレゼントなんだけど……」
P「少し前に、『いつか豪華な食事がしたい!』って言ってたろ?」
加蓮「あ……言った、かも?」
27:2013/09/05(木) 03:03:34.77 :Ygp85Hpgo
李衣菜「Pさんがね、私たち三人連れてってくれるって!」
泰葉「綺麗な夜景も観られる、って。奮発したんですよね?」
P「お、おう。満足してくれるかは分からないけど……」
加蓮「嬉しい……えへへ」
P「形に残るものの方が良かったかもしれないけど、そっちは二人に任せたよ」
加蓮「そっち、って?」
28:2013/09/05(木) 03:07:29.64 :Ygp85Hpgo
李衣菜「ふふ。私と泰葉で、プレゼント用意したんだよ」
泰葉「きっと気に入ってくれると思うな」
加蓮「本当? じゃあ楽しみにしてるね」
李衣菜「ま、そのお楽しみは豪華ディナーのあとってことで! ね、Pさんっ」
P「あ、あんまりハードル上げないでくれよ」
泰葉「いいえ、期待してます。これは先行投資ですよ?」
P「うっ……」
29:2013/09/05(木) 03:09:21.19 :Ygp85Hpgo
李衣菜「楽しみだね泰葉!」
泰葉「うんっ、李衣菜!」
だりやす「いぇいっ♪」ハイターッチ
P「はぁ……あはは」
加蓮「…………」
加蓮(……ふふ)
加蓮(やっぱり楽しいな。アイドルになれて……ここにいられて、よかった……)
加蓮(もう大丈夫。……独りじゃないもんね!)
30:2013/09/05(木) 03:11:59.76 :Ygp85Hpgo
泰葉「ほら、加蓮もっ」
李衣菜「はいたーっちっ!」
加蓮「うんっ!」
ぱしーんっ
だりやすかれん「いぇーいっ♪」
加蓮(これからも、ずーっと楽しい日々が続きますように!)
31:2013/09/05(木) 03:13:03.30 :Ygp85Hpgo
加蓮「ねぇっ、泰葉、李衣菜! ……Pさんっ!」
泰葉「どうしたの?」
李衣菜「なーにっ?」
P「なんだ、加蓮?」
加蓮「本当に……どうもありがとうっ!」
加蓮(私、もう寂しくないよ!)
おわり
33:2013/09/05(木) 03:14:39.37 :Ygp85Hpgo
というお話だったのさ
新ジャンル「だりやすかれん」を書きたかったんだ、好きなんだすまない
加蓮、誕生日おめでとう!
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