1 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/11/22(日) 21:10:32.17 :17diNaTAo
モバP「…………え、なっ……ど、どうした、加蓮」
加蓮「……」
P「加蓮……?」
加蓮「ごめんね、Pさん」
P「……」
加蓮「私、また病気に、なっちゃったみたい」
P「……っ!」
加蓮「本当に、ごめんね」
2 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/11/22(日) 21:14:10.51 :17diNaTAo
P「じょ、冗談はよしてくれ」
加蓮「……」
P「よしてくれよ、なぁ」
加蓮「冗談だったら良かったのにね」
P「……嘘だろ」
加蓮「……嘘だったら良かったのにね」
P「……」
加蓮「……」
P「どんな病気、なんだ……?」
加蓮「……分かんないんだ」
P「分からない……って。それは、そんな」
加蓮「……」
P「……何でだよ。何でだ」
3 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/11/22(日) 21:18:26.16 :17diNaTAo
加蓮「たぶん、心臓の病気」
P「心、臓……?」
加蓮「いつからかな。急に胸が痛むようになったんだ」
P「……」
加蓮「何だろう。変だな、おかしいなって。気付いた時にはもう手遅れでさ」
P「……」
加蓮「私、思わず笑っちゃったよ。お医者さんでも分からない病気って。宝くじでも買ったら当たるかな」
P「……やめろ」
加蓮「あーあ。これで私も、不治の病に冒された薄幸の美少女に逆戻りかぁ、なんて」
P「やめろ」
加蓮「……ごめん」
P「……すまん、言い過ぎた」
加蓮「……ううん。ごめんね」
P「すまない」
4 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/11/22(日) 21:24:09.37 :17diNaTAo
『――なるほど。詳しくお聞かせ願えますか?』
『……ふむ』
『個別の事例について、もう少し細かくお願いします』
『……なるほど。その時あなたの体調は――』
『――申し訳ありません。私の手には、負えません』
『おそらく名の知れた病院でも、海外の名医にも難しいでしょう』
『医学にも限界はあります。残念ながら、それはどうかご承知頂きたい』
『ですが、希望を捨てないでください』
『結局の所、貴女がどうなるのかは……』
『……これは、医学の徒として吐いてはいけない言葉なのは重々承知の上ですが……』
『最後まで、神のみぞ知る事なのです』
7 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/11/22(日) 21:29:09.87 :17diNaTAo
加蓮「私は……もう神様のくれた時間なんて……」
P「……」
加蓮「……とまぁ、こんな感じ。いわゆる匙を投げた、ってやつかな」
P「……加蓮」
加蓮「何? Pさん」
P「教えてくれ」
加蓮「……何を?」
P「どんな風に辛いんだ」
加蓮「……Pさんに話した所でどうにもならないよ」
P「そんなもん分からないだろう」
加蓮「楽しい話じゃないよ?」
P「それでも俺は知らなきゃならない」
加蓮「どうして」
P「俺は、加蓮のプロデューサーだからだ」
9 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/11/22(日) 21:33:56.43 :17diNaTAo
加蓮「……」
P「俺じゃなくたっていい。凛でも奈緒でもちひろさんでも」
加蓮「……」
P「肩を支えるぐらい出来なくて、何が仲間だ」
加蓮「……」
P「……」
加蓮「……ありがとう、Pさん」
P「ああ」
加蓮「ありがとう」
P「ああ」
13 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/11/22(日) 21:46:19.17 :17diNaTAo
加蓮「最初の最初は、たぶん去年のライブの後」
P「そんな前から、か」
加蓮「あの時に、ちゃんと言えてたら……」
P「……」
加蓮「……ごめん、話を戻すね」
P「……ああ」
加蓮「大成功で興奮したまま家に帰って、凛とかPさんとメールしたよね」
P「ああ。夜遅くまでやり取りしてたな」
加蓮「どうしてかね、ちょっと胸が痛んだの」
P「……」
加蓮「ライブでちょっとはしゃぎ過ぎたかなって。その時はそう思ってた」
P「……」
加蓮「きっと、その時がはじまりだったんだ」
22 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/11/22(日) 22:32:19.43 :17diNaTAo
P「続けてくれ」
加蓮「それからは段々頻度が増えてきて。最近は、しょっちゅう」
P「……加蓮」
加蓮「…………今も、本当は少しだけ……ううん。けっこう、痛い」
P「……」
加蓮「……続けるよ」
P「ああ」
25 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/11/22(日) 22:55:52.99 :17diNaTAo
加蓮「運動が原因かなって思ったんだ」
P「なるほど」
加蓮「レッスンとかするし、やっぱり私も無理をしてるのかなって」
P「確かにそれなら説明は付くな」
加蓮「でも、違った」
P「……」
加蓮「こうやって奈緒やPさんと雑談してる時。メールの返信を考えてる時」
P「……」
加蓮「お仕事終わりに車で送ってもらう時。お風呂で一日の出来事を振り返ってる時」
P「……」
加蓮「痛むの。ここの、奥が」
P「……加蓮」
加蓮「息が詰まって、ドキドキして……きゅうっと、なってくるしく、てっ」
P「加蓮っ!」
30 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/11/22(日) 23:18:26.35 :17diNaTAo
加蓮「きゃっ……! Pさんっ!?」
P「……」
加蓮「は、離してってば……!」
P「イヤだ」
加蓮「……苦しいよ、Pさん」
P「そうか」
加蓮「……もっと、そっと抱き締めてよ」
P「すまん」
加蓮「……」
P「治るのか、治らないのかも俺には分からない」
加蓮「……うん」
P「でも、辛い事や苦しい事を一緒に悩む事なら出来る」
加蓮「……うん」
34 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/11/22(日) 23:32:47.09 :17diNaTAo
P「まだシンデレラにだってなれちゃいないんだ」
加蓮「……うん」
P「そんな、訳の分からない病気なんかに加蓮を渡して堪るか」
加蓮「うん」
P「加蓮。俺を、みんなを信じてくれ」
加蓮「うんっ」
P「加蓮。絶対お前を離したりしないからな」
加蓮「……うんっ!」
35 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/11/22(日) 23:46:39.95 :17diNaTAo
P「……っておい、加蓮」
加蓮「え?」
P「顔真っ赤じゃないか! まさか……!」
加蓮「……い、いやいやいや! 大丈夫だよっ!」
P「何が大丈夫なもんか! 待ってろすぐに……!」
加蓮「こっ、これは本当に違うからっ……!」
P「これはって何だ! 他にも病気を隠して――」
加蓮「……~~っ! もうっ!」
凛「プロデューサー。私も何だか胸が苦しいんだけど」
奈緒「ただの胸焼けだろアタシもだよコンチクショウ」
38 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/11/23(月) 00:10:34.74 :1Gto1qrwo
― = ― ≡ ― = ―
「綺麗……」
「今まで色んな夜景を見てきたが、ここは特別凄いな……」
「ね。宝石箱をひっくり返したみたい」
「気に入ってくれたか?」
「うん。ありがとうね、あなた」
「まぁ、五年目の記念日だしこれくらいはな」
「……くしゅんっ!」
「大丈夫か? 山の上にこの格好じゃ少し寒かったか」
「ううん、大丈夫」
「そうか?」
「あなたが居るでしょ? あっためてよ」
「…………ほら」
「……ふふっ。あったかーい♪」
39 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/11/23(月) 00:22:25.78 :1Gto1qrwo
「……最近は、どうだ?」
「ん?」
「いや、その、例の……病気の方は。辛くないか?」
「ううん、心配しないで。だいぶ良くなってきたよ」
「そうか、良かった……」
「でもまだ油断出来ないかな。完治はしてないみたいだから」
「そうなのか?」
「うん。今でも気を抜くと、すぐ胸がドキドキし始めちゃうの」
「なかなか治らないな……」
「ひょっとしたら、本当に不治の病かも」
「加蓮……」
「でも、大丈夫だよ」
「……そうか?」
「うん。だって――」
「お、おい、加蓮――」
「…………んっ」
「……っむ」
40 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/11/23(月) 00:23:26.99 :1Gto1qrwo
「――ずっと、あなたが隣に居てくれるから…………ね?」
「…………」
「Pさん?」
「…………お、おう」
「大丈夫?」
「大丈夫。心配無いさ」
「本当に?」
「ああ。少し…………ドキッとしただけだ」
41 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/11/23(月) 00:23:58.04 :1Gto1qrwo
おしまい。