1: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/24(水) 20:00:59.51 ID:5O6IKAW+0
留美「(……今日の仕事場に向かっている途中に……スマフォを落としてしまったわ……)」
留美「(電車を降りたところでは持っているのを確認した……たぶん、この道すがらに落としてしまったんでしょう……)」
留美「(幸い、時間に余裕はある……少し探してみましょうか……)」
少年「ん……あの人は……」
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2: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/24(水) 20:02:50.47 ID:5O6IKAW+0
少年「もし……お姉さん、どうされました?」
留美「? 私の事?」クル
少年「……もしかして、アイドルの和久井留美さんですか?」
留美「え……ああ、そのとおりよ」
3: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/24(水) 20:04:20.12 ID:5O6IKAW+0
少年「おお、やはり……よく、テレビで拝見させてもらってます」ペコリ
留美「あ、ああ……これはどうも。知ってくれていて、私もうれしいよ」
少年「あの……不躾かもしれませんが……何か、お困りですか?」
留美「え、えーと、実はスマフォを落としてしまって……」
4: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/24(水) 20:05:01.88 ID:5O6IKAW+0
留美「(しまった……これは、いうべきことではなかったかしら……?)」
少年「どこで落としたのか、わかりますか?」
留美「ああ……たぶんだが、この近くだとは思うのだが……」
少年「……お時間は大丈夫ですか? よければ、探すのを手伝いますが……」
5: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/24(水) 20:06:06.00 ID:5O6IKAW+0
留美「い、いや! 時間に余裕はあるが……そんなことは……」
少年「俺も暇ですし……遠慮なさらず」
少年「そうですね……5分くらい探してみて見つからないようなら、少し離れた所に交番がありますから、そこに届を出しましょう」
留美「……そ、そこまで言うなら……お願いしようかしら……」
7: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/24(水) 20:06:49.22 ID:5O6IKAW+0
留美「(物おじせず、落ち着いた子ね……中学生くらいかと思ったけど、高校生かもしれないわ)」ゴソゴソ
留美「(それよりも、あの感じ……どこかで……)」
少年「あ……すみません、和久井さん! スマフォが落ちてたんですが……これ、そうですか?」
留美「あら……うん、機種も色も同じ…………私のもので間違いないわ」
少年「よかった……結構あっさり見つかりましたね。なによりです!」ニコ
留美「!」ドキッ
8: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/24(水) 20:07:28.46 ID:5O6IKAW+0
留美「(ちょ……わ、私なにこんな子供にトキめいているのよ……!)」
留美「(……というか……さっきの笑顔といい……どこか、既視感……)」
モバP「あれ……和久井さん? 何かあったんですか?」
留美「ぷぷぷぷプロデューサー君!? なんでここに……!?」
モバP「いや、和久井さんとは今日の仕事場で合流する事になってたでしょう? ここからは実質一本道なんですよ」
少年「あ、父さん」
留美「……え?」
留美「え?」
9: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/24(水) 20:08:44.62 ID:5O6IKAW+0
留美「えーと……確認するとその少年は……君の息子で……間違いないんだね?」
少年「改めて……はじめまして、●●と申します。いつも父がお世話になっております」ペコリ
モバP「まーたお前は、こまっしゃくれてくれちゃって」グリグリ
少年「や、やめてよ父さん!」
10: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/24(水) 20:09:50.30 ID:5O6IKAW+0
留美「ごめん、ちょっと聞きたいのだけど……プロデューサー君、キミ……何歳だったかしら?」
モバP「32……あ、今月末で33歳になりますね」
留美「ああ……そうだったわね、ありがとう(そうだった……見た目若いから忘れがちだけど、私よりも年上だったんのよね……)」
11: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/24(水) 20:11:03.60 ID:5O6IKAW+0
留美「(あれ? ということは……)」
留美「えーと、少年君、キミは……いくつなのかな?」
少年「はい、今年9歳になりました」
留美「まさかの一ケタ!?」
12: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/24(水) 20:11:51.79 ID:5O6IKAW+0
モバP「ははは……俺は背は低いんですけど、コイツは妻に似たのかでかいんですよね、年の割に」グリグリ
少年「だから、やめってってば父さん……」
モバP「なーに、お前はすぐに俺の背を追い抜くさ! これもすぐにできなくなる!」
留美「つ……妻ってことは……」
モバP「え、ああ! 間違いなく、血のつながった親子ですよ、俺ら」
少年「よく兄弟に間違えられるよね、俺ら」
留美「ふふ……ふ……さいですか……」
13: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/24(水) 20:15:43.05 ID:5O6IKAW+0
留美「(既視感があるわけね……あの子の態度とか笑顔とか……プロデューサー君そっくり……)」
留美「(これは……親子だというのも、納得だわ……)」
モバP「そういや、お前はなんでここにいるの?」
少年「ああ、友達と待ち合わせしてたんだけど早く来すぎちゃって……ぶらぶらしてたんだよ」
モバP「あー……いいな、学生は夏休みで……」
14: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/24(水) 20:21:10.06 ID:5O6IKAW+0
モバP「おっと、そろそろ時間だな……和久井さん、いきましょうか」
留美「え? ええ……そうね」
少年「それじゃあ、俺も行きますね。父さん、和久井さん、お仕事頑張ってくださいね」
モバP「ははは、いってくれるな! じゃ、お前も気を付けて行けよ?」
少年「和久井さん、それでは! 今日は友達にアイドルに会えたって自慢できますね」
留美「ええ……そうね……」
モバP「おいおい……」
少年「はは……別に父さんの職業をおおっぴらに話すことはしないよ。偶然出会って別れた、だけにしとくさ」
15: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/24(水) 20:24:11.96 ID:5O6IKAW+0
留美「全く知らなかったわ……プロデューサー君に息子がいるだなんて……」
モバP「あれ? 言った事ありませんでしたっけ? まあ、積極的に話題に出したことはないかな……」
留美「それに……結婚してるなら、指輪ぐらい付けておきなさいよ……」
モバP「あー……和久井さんに会う前は、付けてたんですけどね……」
留美「……え?」
16: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/24(水) 20:25:01.99 ID:5O6IKAW+0
留美「(え、ちょっと、どういうこと!? 私に会う前には指輪を付けていた→私に会うときはハズしていた→モバP「和久井さん、俺のココ空いてますよ?」ってアピールと言う事? そ、それって……)」
モバP「ちょっと思うところありましてね……」
留美「プ、プロデューサー君!? 流石に、その、それは息子くんも悲しむのでは……!?」
モバP「え? いや……そうかもしれませんがね……いつまでも妻の事を引きずるのもどうか、と思いまして……」
留美「(ええぇえええ!? 浮気じゃなくて本気!? 本気ってことなのプロデューサーくん!?)」
17: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/24(水) 20:29:17.29 ID:5O6IKAW+0
モバP「今から4年前……息子が5歳の時に妻が亡くなりまして、その時ですね、恥ずかしながら俺、ものすごく落ち込んでしまって……」
留美「え……あ……?」
モバP「何とか生活する、くらいの気力はあったんですが……あの頃の俺は、とても父親じゃなかった……」
留美「…………」
モバP「親類にも、叱咤されましてね……お前が息子に支えられてどうするんだって……」
留美「息子くんが……?」
18: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/24(水) 20:32:26.69 ID:5O6IKAW+0
モバP「親ばかかもしれませんが……息子は昔からかなりのしっかりものでね……」
モバP「俺が悲しみに暮れて、碌にあいつの事見てやれなくても、自分の事を自分でしちゃうんですよ」
モバP「そこに甘えてしまって……あいつを『しっかりものにするしかない』状況においこんじゃったんですよね」
留美「……」
19: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/24(水) 20:34:42.25 ID:5O6IKAW+0
モバP「だから……妻の思い出は、一時封印したんです。俺、気を持ってないと、思い出に甘えてしまうから……」
モバP「……って、なにいってんだって感じですよね、すみません、変な話して……」
留美「……」
20: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/24(水) 20:37:30.88 ID:5O6IKAW+0
留美「プロデューサーくん……私は、その方法、賛成しかねるわ……」
モバP「和久井さん……?」
留美「奥さんの事、愛していたんでしょう? それこそ、亡くした時にダメになるくらいに……」
留美「どうしても私には……無理やり忘れて、乗り越えてるように見えるの」
モバP「……」
21: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/24(水) 20:40:05.79 ID:5O6IKAW+0
留美「その……私がどうこう言うのは、おかしいのかもしれないけど……」
留美「無理やり思い出にするんじゃなくって……その、キミと息子君で、自然に思い出にすべきじゃないかしら」
モバP「自然に……」
留美「ごめんなさい……私、何言ってるのかしらね……」
22: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/24(水) 20:43:55.16 ID:5O6IKAW+0
モバP「いいえ……そんなことはありません」
モバP「和久井さんには、愚痴を吐きだしたみたいで申し訳ないんですけど……」
モバP「自分でも気付かない内に、誰かに聞いてほしかったのかもしれません……」
モバP「和久井さん、すみませんでした……それと、ありがとうございます」
留美「ふふ……いいのよ、ちゃんとコンディションを整えて、プロの仕事をしてもらわないとね」
モバP「う……肝に銘じておきます……」
24: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/07/24(水) 20:48:36.89 ID:5O6IKAW+0
――数日後
留美「プロデューサーくんの過去には驚いたわ。まさに人に歴史ありね……」
留美「……ん? ゼ○シィ? 仕事関係の資料かしら……?」
留美「……あら、婚姻届までついてるのね」
留美「…………」
留美「……」カキカキ
留美「……いや、何書いてるのよ私……」
留美「……プロデューサーくんも、自然に乗り越えられる日がくるわよね……?」
留美「……息子くんだって、しっかりしてるとは言っても、まだ母親は必要でしょうし……」
留美「…………」
留美「……一応、持っておきましょう、そうしましょう」
-終-