佐久間まゆ「GPSを仕込んだことがバレました」【佐久間まゆSS】

〜佐久間家〜

P「申し上げにくいのですが、まゆさんが私の鞄にGPS発信機を仕込んでいたことが発覚しました」

P「悪気はなかったようですが……キャンプなどの際に安全のために使うのであればともかく」

P「日常ですとプライバシーなどの問題もあり……いえ、私としては追跡されて困ることもありませんが」

P「常習化して他の子達にも仕込んでしまうと、やはり年頃の女の子達ですから……」

P「今後このようなことがないように、ご両親からきつく注意していただければと思います」

まゆ父「まゆ、本当かい?」

まゆ「……はい、本当です」

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まゆ父「ふむ……もう少し詳しく話を聞いていいでしょうか」

P「はい、もちろん」

まゆ父「プロデューサーさんの鞄に、ということですが具体的には?」

P「鞄の内ポケットに入っていました」

まゆ父「では何かの拍子に内ポケットが膨らんでいるのに気付いて、といったところでしょうか?」

P「ええ、そうです」

まゆ父「その発信機は今どこに?」

P「電源を切って私が持っています」

まゆ父「見せていただけますか?」

P「はい。こちらです」

まゆ父「ああ、なるほど……」

まゆ父「仕込んでからプロデューサーさんが気づくまで何日くらいだった?」

まゆ「えっと……1週間くらいです」

まゆ父「その間に、プロデューサーさんがおかしな行動をとったことは?」

まゆ「ありません」

P「あの……それは別にどうでもいいんじゃないですかね?」

まゆ父「そうでしたね、つい。では、まゆ」

まゆ「は、はい」

まゆ父「内ポケットではすぐ気づかれることくらい分かるだろう」

まゆ父「プロデューサーさんだったからまだ良かったものの」

まゆ父「せめて上げ底に加工してそこに仕込むとか」

P(……ん?)

まゆ「時間がなくて……それにパパ、そういうことまで教えてくれなかったでしょう?」

まゆ父「ン……だったら仕込む前に相談してくれれば――」

P「あの、ちょっと」

まゆ父「はい?」

P「えーっと……私の勘違いだったら申し訳ないんですが」

P「佐久間さんが、まゆさんにGPSを仕込むよう指示したんですか?」

まゆ父「指示なんてしてませんよ」

P「ですよねー」

まゆ父「使い方は教えましたけど」

P「なぜ!?」

まゆ父「職業柄、そういった機械の扱いには慣れてるものですから」

P「……佐久間さんのご職業はスパイですか?」

まゆ父「いえいえ、ただの私立探偵です。浮気調査などで結構使うんですよ」

P(本職の探偵かぁ、都を会わせたら喜びそうだな……じゃなくて)

P「『なぜ教えられるのか』じゃなくて『なぜ教えたのか』を聞きたいんですが」

まゆ父「それはまぁ、親心というやつで……」

まゆ父「悪い男にだまされて悲しむ姿を見たくないですからね」

まゆ「分かってると思いますけど、まゆはプロデューサーさんのことが大好きです」

まゆ「大好きだから、些細な事でも知っておきたいんです」

まゆ「今どこで何をしているのか……」

まゆ「事務所にいるからデスクワークかな、とか、移動速度が速いから運転中かな、とか……」

まゆ「居場所が分かるだけでいろんなことが想像できて、とっても楽しくて、満たされた気持ちになるんです」

まゆ父「いやぁ、恋人の行動に疑問を抱いたら使いなさい、と教えたんですが」

まゆ父「こんなにピュアな理由で使うとは思いませんでしたよ」

まゆ父「しょっちゅう浮気調査なんてやってると疑り深くなって駄目ですねぇ」

P「それだけ?」

まゆ「はい。もちろん、プロデューサーさんが行方不明など非常時にも役立つでしょうけど」

まゆ「幸いそういったことはありませんでしたからね」

P「俺の行動を逐一監視しようとか考えたことない?」

まゆ「監視してほしいんですかぁ?」

P「そういうわけじゃないけど!」

まゆ父「あっ、そうそう。注意してほしいということでしたが」

まゆ父「お聞きのとおり、まゆが発信機を仕込むのはプロデューサーさんだけと思います。だよね?」

まゆ「ええ、お友達の持ち物に仕込んだりなんてしませんよぉ」

まゆ父「親馬鹿かもしれませんが、まゆは純粋でとても一途な子です」

まゆ父「プロデューサーさんさえ良ければ、このまま発信機を持ち続けていただけないでしょうか」

P「えっ!?」

まゆ「パパ……!」

まゆ父「本当に都合の悪いときは電源を切って頂いて構いません」

まゆ父「ですが、傍にいないときに居場所が分かる。それだけでまゆは満足すると思うんです」

まゆ父「すなわちアイドル活動のモチベーションにもつながるかと……」

まゆ「パパ、そんな言い方卑怯でしょう……」

まゆ父「まゆは、たとえそう思ってもなかなか口に出せないだろう?」

まゆ父「だからパパが代わりに言うんだ。どうかお願いします」

まゆ「プロデューサーさん……」

まゆ母「ただいまぁ〜」

まゆ母「あっ、プロデューサーさん。遅くなってしまってごめんなさい」

P「いえ……」

まゆ母「それで、お話ってなんだったんでしょうか」

まゆ父「かくかくしかじか……」

まゆ父「というわけで、このまま持ち続けてもらえないかお願いしてるんだ」

まゆ母「そうねぇ、それはぜひ持っていて欲しいわ」

まゆ母「まゆちゃんはそのほうが嬉しいんでしょう?」

まゆ「ええ」

まゆ母「じゃあ、プロデューサーさん。これからもお願いします」

P「いや、しかしですね……」

まゆ母「居場所が分かることが、そんなに嫌なんですかぁ?」

P「そういうわけではありませんが……盗聴などと同じようにプライバシーが――」

まゆ母「プロデューサーさんの許可を得て使うわけですから、なにも問題無いですよねぇ?」

まゆ母「それとも……なにかやましいことでも?」

P「えっと、その……」

まゆ母「どうなんですかぁ?」

まゆ母「まゆちゃんはプロデューサーさんのことが好きなだけなんです」

まゆ母「大好きなプロデューサーさんに会えない寂しさを、居場所を知ることで少しでも紛らわせる……」

まゆ母「それすらも許してもらえないんですかぁ?」

P「そんなことは……ありません」

まゆ母「じゃあ、ずっと持っててもらえますよねぇ?」

まゆ母「なにも問題無いですよねぇ? ねぇ?」

P「…………はい」

まゆ母「……うふっ。だそうよ、良かったわね、まゆちゃん」

まゆ「うんっ」

まゆ母「そうだわ、プロデューサーさん。せっかくですから一緒に夕食はいかがですか?」

P「久しぶりに家族が揃ったのにお邪魔では?」

まゆ母「そんなことないですよ、プロデューサーさんなら大歓迎です」

まゆ母「それにいずれはプロデューサーさんも家族になるんじゃないですか?」

まゆ「も、もうっ、ママったら!」///

まゆ母「それじゃあすぐ準備しますからね」

まゆ「待って、ママ。私も一緒に作りたいな」

まゆ母「あら、せっかく帰ってきたんだからゆっくりしてて良いのよ?」

まゆ「プロデューサーさんに手料理食べて欲しいの」

まゆ「それに、久しぶりにママと一緒にお料理もしたいから」

まゆ母「そう? じゃあパパ、プロデューサーさんの話し相手お願いね」

まゆ父「ああ」

まゆ父「……改めて、快諾いただいてありがとうございます」

P(快諾ってなんだっけ)

P「あ、ははは……まあ、あそこまで言われると否定しようがないですよ」

P(うっかり『明日休みです』なんて口を滑らせてしまったために、泊まることになってしまった)

P(しかもまゆの部屋に……)

P(ご両親の中ではすでに婚約してるんじゃないだろうか)

まゆ「プロデューサーさん……起きてますか?」

P「あ、うん」

まゆ「ご迷惑じゃなかったですか? ママ、結構押しが強いから……」

P「まゆを思ってのことだろ。良いお母さんじゃないか」

まゆ「はい」

まゆ「本当に……発信器持ち続けてくれますか?」

P「……まゆを信じるよ」

まゆ「ありがとうございます」

まゆ「やっぱり呼び捨てにされたほうが嬉しいです」

P「ご両親の前で呼び捨ては、ちょっとね」

まゆ(気にしなくていいのに。早く家族みたいに接してほしいな……)

まゆ「まゆもプロデューサーさんを信じて……佐久間家の秘密を一つ教えちゃいます」

P「秘密?」

まゆ「佐久間家の女は、失恋したことがないそうです」

P「へぇ、そりゃすごいな」

まゆ「その秘訣は、『振り向いてくれるまで諦めない。そして振り向いてくれたら決してよそ見させない』……だそうです」

まゆ「よそ見……しないでくださいね?」

まゆ「いえ、決して……させませんから。うふふっ」

おわり

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