【的場梨沙SS】的場梨沙「その本、何語?」 二宮飛鳥「ドイツ語」

2: ◆C2VTzcV58A 2015/12/16(水) 03:36:30.17 ID:sAkpspqa0
梨沙「へー、ドイツ語なんだ。アタシは全然読めないわ」

飛鳥「そう」ペラ

梨沙「ねね、ドイツ語ちょっと教えてよ。簡単なやつでいいから」

飛鳥「そうだね……」パタン

飛鳥「グーテンモルゲン」

梨沙「グーテンモルゲン……意味は?」

飛鳥「朝の挨拶さ。日本語で言うなら『おはようございます』だ」

梨沙「そういえば、『グッモーニン』にちょっと似てるかも」

飛鳥「元は同じ言語から別の進化を遂げた者同士、らしいからね」

3: ◆C2VTzcV58A 2015/12/16(水) 03:38:34.08 ID:sAkpspqa0
梨沙「他には?」

飛鳥「グーテンターク。こんにちは、だね」

梨沙「グーテンターク!」

梨沙「あいさつ以外にはなんかないの?」

飛鳥「………」

飛鳥「………」

梨沙「……もしかして、それしか知らないってわけじゃないでしょうね」ジトー

4: ◆C2VTzcV58A 2015/12/16(水) 03:39:23.22 ID:sAkpspqa0
飛鳥「いや……あといくつかは知っているさ。何を紹介すべきか思案していただけで」

梨沙「アンタ今『いくつか』って言ったわよね。ドイツ語の本読んでたんじゃなかったの?」

飛鳥「読めなくても感じられるモノはあるだろう」

飛鳥「この本の翻訳されたモノはすでに読んでいるけれど、原文だからこそ理解(わか)ることもあるだろうしね」

梨沙「それ、ただのカッコつけだったりしないわけ?」

飛鳥「そう判断するかどうかはキミの自由だ。ボクはただ、この本から何かを得ようとしているだけ……そこに他者からの評価は必要ない」

梨沙「ゴーイングマイウェイねー。外国語の本を読んでる姿が似合ってるのが、なーんかムカつくけど」

梨沙「ま、今回は許してあげる!」

飛鳥「許しをもらう必要はないけどね」

梨沙「なによー、いいからありがたく受け取っときなさいよ」

飛鳥「はいはい」

5: ◆C2VTzcV58A 2015/12/16(水) 03:40:38.62 ID:sAkpspqa0
心「くーげるしゅらいばー☆」にゅっ

梨沙「うわっ、びっくりした! ハートさんいたの?」

心「ちょっと前からいたぞ♪」

飛鳥「クーゲルシュライバー……聞いたことがあるな。なんという意味だったか……」

梨沙「なんかカッコいい響きよね。強そう」

心「おう、メチャクチャ強いぞ☆巷では剣より強いと言われてるからね♪」

梨沙「そうなんだ。じゃあ爆弾とか?」

心「さあさあ、当ててみな☆」

梨沙「うーん……魔法の杖!」

心「ぶっぶー!」

梨沙「違うか……うーん」

飛鳥「(剣より強い、で思い出したけど、黙っておくべきか……)」

6: ◆C2VTzcV58A 2015/12/16(水) 03:43:59.95 ID:sAkpspqa0
翌朝

飛鳥「おはよう」

梨沙「おはようございまーす。あー、毎日寒いわね」

梨沙「まだ夏みたいに暑いほうがマシよ」

P「半年前は『冬みたいに寒いほうがマシ』と言ってなかったか?」

梨沙「それはアレね、半年前のアタシが間違ってる」

飛鳥「今の自分が間違っているとは考えないのかい」

梨沙「何言ってんの。昔のアタシと今のアタシなら、今のアタシが正しいに決まってるじゃない」

飛鳥「その自信は羨望すら感じさせるよ」

梨沙「センボーって?」

P「うらやましいって意味だよ」

梨沙「へえ。ということは……ようやく飛鳥も、アタシのすごさがわかってきたってことね♪」

7: ◆C2VTzcV58A 2015/12/16(水) 03:44:42.76 ID:sAkpspqa0
P「ははは……にしても二人とも、この時期にしてはずいぶん薄着だな」

飛鳥「事務所に入る前はきちんと上着を羽織っていたさ」

P「それにしたって、肩出しの服は結構すごいと思うぞ」

梨沙「女の子のオシャレには我慢が必要なのよ。アイドルのプロデューサーなら、そのくらいわかってるでしょ?」

P「まあ、そうなんだけどな。理解と納得はまた違うってやつだ」

梨沙「飛鳥みたいなこと言うのね」

飛鳥「歓迎しよう、同類」

P「うれしそうな顔してるな……目が若干輝いてないか?」

8: ◆C2VTzcV58A 2015/12/16(水) 03:48:10.01 ID:sAkpspqa0
梨沙「とにかく、オシャレは女の子の命!」

梨沙「ハートさんだって同じこと言うはずだわ」

飛鳥「彼女も、ファッションにはこだわるタイプだからね」

P「ああ……その心さんなら」

心「おはようございまーっす。はー、あったまる」ズズズ

P「見ての通り、どてら羽織って日本茶を味わっているところだ」

梨沙「全然オシャレじゃないじゃない!」

心「梨沙ちゃんにはわかんないかなぁ♪どてらもなかなかいいファッションなんだぜ☆」

心「寒い冬には欠かせない! 実家から持ち込んだ、小学校の頃からのはぁとの相棒だぞ☆」

飛鳥「こたつに日本茶にどてら……母方の実家の祖母を思いだ」

心「ん? なぁに、飛鳥ちゃん? なんか言った?」ニッコリ

飛鳥「なんでもない」

12: ◆C2VTzcV58A 2015/12/16(水) 11:20:48.44 ID:sAkpspqa0
心「あ~、気持ちいい♪」

梨沙「ふふん、どうよアタシの肩もみテクは。パパのために鍛えたんだから」モミモミ

心「うん、いいよいいよー、すごくいい♪あ、もうちょっと左」

梨沙「ここ?」

心「あんっ♪そう、そこそこ☆」

飛鳥「気持ちよさそうだね」

心「やっぱり人に肩揉んでもらうといいわ~☆」

梨沙「飛鳥、アンタもあとで揉んであげてもいいわよ? 今日のアタシは機嫌がいいから」

飛鳥「……遠慮しておくよ。そこまで肩は凝っていない」

梨沙「えいっ」モミモミ

飛鳥「んひゃっ!」

梨沙「あははっ、『んひゃっ』だって!」

飛鳥「まったく……」

しかし、こういうのも案外悪くないと思う飛鳥であった――

飛鳥「勝手にボクの内心を補完しないでくれ」ジトー

心「ごめんごめん☆」テヘペロ

13: ◆C2VTzcV58A 2015/12/16(水) 11:43:53.79 ID:sAkpspqa0
心「ふぃー、だいぶ肩が楽になったわ♪ありがとね、梨沙ちゃん☆」

梨沙「さすがアタシ、肩もみも一流ね」

飛鳥「結局無理やりマッサージされたけど……想定以上によかった」

心「なんかお返ししてあげよっか?」

梨沙「お返し? そうね……じゃあ足でも」

心「足のマッサージ?」

梨沙「足でも舐めてもらおうかしら」

飛鳥「急に要求のレベルが上がったな」

梨沙「なんかこういうのが流行ってるらしいから」

心「それが流行ってんのは昔も今も一部の世界だけだよ……」

16: ◆C2VTzcV58A 2015/12/16(水) 12:31:41.96 ID:sAkpspqa0
梨沙「ほらほら、いいから早く舐めなさいよー。さっきのお返しなんでしょ?」ニヤニヤ

飛鳥「………」

心「………」

梨沙「な、なによ二人でうなずき合って……っ!?」

コチョコチョコチョ

梨沙「ひゃんっ!」

心「足を突き出されたら自然とこうしたくなっちゃうんだよね♪」コチョコチョ

梨沙「ふふっ、ちょ、やめっ……ていうか飛鳥! アンタもなに一緒になってんのよっ」

飛鳥「さあ、なぜだろう。自然にこうしたくなった」

飛鳥「これが魂の赴くままに、というヤツなのかもしれないな……」

梨沙「カッコつけながらこちょこちょするなー!」

P「あれだけ騒いでたら、寒さも感じなくなるだろうなあ」ズズズ

P「うん、やはり冬はあったかいお茶に限る」

17: ◆C2VTzcV58A 2015/12/16(水) 12:42:52.93 ID:sAkpspqa0
その日の午後

飛鳥「人間が空を飛びたいと願うのは、その背中に翼を持たないからだろう」

飛鳥「もし翼があるなら、最初から飛べるのだからそんなことは願わない」

飛鳥「翼がないからこそ、空への憧れを知る。そして求める」

飛鳥「その想いは儚いけれど、同時に力強いモノでもある」

心「………」

心「ボーマンダみたいな?」

飛鳥「そのたとえは……まあいいか」

※ボーマンダ ドラゴンポケモン
つばさが ほしいと つよく おもい つづけてきた けっか からだの さいぼうが とつぜんへんいを おこし みごとな つばさが はえてきたと いう

18: ◆C2VTzcV58A 2015/12/16(水) 12:51:52.48 ID:sAkpspqa0
梨沙「へー。飛鳥は次のライブ、悪魔の衣装着るんだ」

飛鳥「信仰はしないけれど、悪魔に対して興味はある」

心「天使ならはぁととお揃いだったのになぁ」

飛鳥「ボクには天使より悪魔のほうが適任だと思うけれどね」

心「そんなことないって♪真っ白な羽つけて、頭にわっか乗せてー」

梨沙「……なんか、飛鳥が着るとゲームのボスみたいになりそう」

飛鳥「人間と敵対するポジションの天使か」

梨沙「そうそう。後ろでパイプオルガンの音楽が流れてて」

心「えー? そんなんじゃなくて、絶対もっとかわいいのになるって!」

梨沙「それはそれで面白そうだけど」

19: ◆C2VTzcV58A 2015/12/16(水) 12:53:43.17 ID:sAkpspqa0
飛鳥「ふむ………」

梨沙「で、アンタはさっきから難しい顔してなに考えてるの?」

飛鳥「いや……衣装は見せてもらったんだが、もうひとつ何かが足りないような、そんな気がして」

心「飛鳥ちゃんの中のイメージを表現するには、まだ何かが必要ってこと?」

飛鳥「そうなるかな……」

梨沙「悩んでるわねぇ」

心「ふーん……」

心「自分のイメージをちゃんと出したいなら、自分で作ればいいんじゃない?」

飛鳥「えっ?」

心「つまり、自分で衣装に手を加えるってこと♪一から作るのは手間も時間もかかるけど、それくらいならできるでしょ?」

梨沙「そういえば、ハートさんは自分で作った衣装で踊ったことあったわよね」

心「おう♪最後の方はパーツが取れかかってたけどな☆」

飛鳥「自分で手を加える、か……」

飛鳥「たとえば、この黒のタイツを裂くというのは」

心「そのくらいなら全然オッケーでしょ! プロデューサーに相談してみれば?」

梨沙「あ、なんかやり方が見えてきた感じ?」

飛鳥「そうだね……助かったよ」

20: ◆C2VTzcV58A 2015/12/16(水) 13:57:26.84 ID:sAkpspqa0
そして――

心「もっと思いっきり切れ込みいれた方がいいんじゃない?」

飛鳥「いや、そこまで裂くとカオスが強すぎる。悪魔はある種秩序に基づいた存在だ」

梨沙「じゃあ、こっちをこうするのは?」

飛鳥「ふむ……少し違う」

梨沙「……アンタ、さっきの似たような切り方は良いって言ってなかった?」

飛鳥「さっきのとそれとはまた違うだろう」

梨沙「アタシには同じに見えるんだけど」

飛鳥「ボクの世界観的には違う」

梨沙「わかんないわよっ」

心「人のイメージを理解するのは難しいなぁ……特に飛鳥ちゃんのは」

心「まあ、逆にやりがいがあるってことか☆」フフフ

21: ◆C2VTzcV58A 2015/12/16(水) 14:03:38.20 ID:sAkpspqa0
P「………」

P「あれは一種の、セカイの共有というものか……」

P「……最近、飛鳥の口調が少しずつ移ってきているな」

梨沙「プロデューサー! アンタからも飛鳥に言ってやってよね!」

P「はいはい、どうかしたのか?」

梨沙「飛鳥ったらね――」

飛鳥「だからそれはさっきからこうだと――」

心「それよりここはやっぱりこうしたほうが――」

P「一度にしゃべられても困るって。順番に、落ち着いて――」

おしまい

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