1: ◆rInFq1jZnk 2013/08/10(土) 17:32:18.42 ID:9FaNZrHSo
P「……千枝?」
千枝「……あ、ごめんなさい、起こしちゃいましたか?」
P「いや、元々起きてたよ。なかなか寝付けなくてね」
千枝「そうでしたか……あの……」
P「……丁度いい。少し、話でもしようか」
千枝「……はい」
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2: ◆rInFq1jZnk 2013/08/10(土) 17:33:05.23 ID:9FaNZrHSo
P「ん、その手に持ってるのって」
千枝「はい。誕生日にもらった、あのヘアピンです」
P「……大事にしてくれてるのか。嬉しいな」
千枝「当たり前じゃないですか。とっても……とっても、大切なものなんですから」
P「そういえば、あげてしばらくは、事務所に来るとき必ず付けてたよな」
千枝「あ、あれは、その……」
P「それで俺が『今日も付けてくれてるんだな』なんて声をかけたら、にこーっと笑ってさ」
千枝「わ、忘れて下さいっ」
4: ◆rInFq1jZnk 2013/08/10(土) 17:33:54.52 ID:9FaNZrHSo
千枝「そういえば、凄くびっくりしたんですよ?」
P「……あー、うん。当時は知らなかったんだよなぁ、俺」
千枝「お家に帰って調べてみたら……毎日付けてたのは、単純に嬉しかったっていうだけじゃなかったんですからね?」
P「……『辛抱強い愛』。6月7日、千枝の誕生石の石言葉、か」
千枝「しばらくたっても何もないから、もしかしてと思ったら。ふふっ、あの時のきょとんとした顔、可愛かったですよ?」
P「……一回り上のおっさんに可愛いはやめてくれ。というか、そういう意味で取った千枝もかなりのおませさんだったじゃないか」
千枝「女の子は、男の人が思ってるよりもずっと早くオトナになるんですよ?」
5: ◆rInFq1jZnk 2013/08/10(土) 17:34:24.43 ID:9FaNZrHSo
P「……11年か。まったく、千枝の辛抱強さにはびっくりさせられるよ」
千枝「せめて大学は卒業してから、って。そこだけは絶対に譲らないんですもん」
P「ただでさえ一回りも下の女の子を嫁に貰うってのに、現役の学生とかシャレにならんっつーの。しかも元ジュニアアイドル」
千枝「……辛抱強いのは、一緒じゃないですか。そうやって、ずっと待っててくれたんでしょう?」
P「……まぁ、その。一度約束した事をうやむやにするのは、大人としてどうかと、というか」
千枝「11歳……じゃないや、12歳の女の子との結婚の約束なんて、本人だって忘れちゃうかもしれないのに?」
P「その時は別だよ。向こうが憶えてる限りは、のつもりだった」
千枝「ふふっ、まさかきちんと紙に書いて取ってあるなんて思いもしませんでしたか?」
P「……いかにも子供の約束、って感じだったけどな。その分、何と言うか、本気だったんだなってのが分かったから」
千枝「……でも、流石に16歳の誕生日にいきなり、っていうのは……うぅ、思いだすとまだ恥ずかしいです……」
6: ◆rInFq1jZnk 2013/08/10(土) 17:34:52.73 ID:9FaNZrHSo
P「改めて、お互い本気で約束してからさらに6年。流石に離れていくだろうと思ってたんだがな」
千枝「むっ。千枝のことそんな風に見てたんですか?」
P「だって、大学入る頃には30過ぎたおっさんだぞ?嫌われることこそないとは思ってたが、そういう目では見れなくなるだろうと考えるのが普通だろう」
千枝「関係ないです。アイドルのお仕事を始めたころから、千枝にはPさんしかいなかったんですから」
P「……初恋は良い結果で終わらないってジンクス、知ってるか?」
千枝「知ったことじゃないです。千枝は、これからもずっと、Pさんのことが大好きでいられます」
P「……まっすぐ目を見て言うんだもんなぁ。積極性がついたのは良かったんだが、思い返すと複雑だわ、デビリッシュゴシック」
7: ◆rInFq1jZnk 2013/08/10(土) 17:35:20.64 ID:9FaNZrHSo
千枝「……やっと、ひとつになれたんですよね」
P「……もう一度だけ聞かせてくれ。本当に、俺で良かったのか?」
千枝「……Pさんだから、良いんです。色んな大切な事を、私に教えてくれた人だから。この人と一緒なら、どこまでだって行けるって、幼心にそう感じた人だから」
P「……わかった。もう聞かない。……もう、離してやらないからな?」
千枝「こっちこそ。絶対に離れてあげませんからねっ」
千枝「……大好きです、プロデューサーさん……ううん、『あなた』……」