1 :◆mTQtXPIEW. :2015/12/09(水) 18:55:34.03 :1zAYU3yko
モバP(以下P)「ただいまー」
P母「あら、早かったわね」
P「近所のおじさんに駅でたまたま会ってさ、車に乗せてくれたんだ」
P母「あら。それならあとでお礼言わなきゃね。っと、早く帰ってきたんなら手伝ってちょうだい」
P「帰ってきて早々手伝いかー」
P母「あんたには言ってなかったけど、母さんの妹の家族が来るのよ」
P「へえ。どうしてさ」
P母「ほら、あの子達おばあちゃんのお参りまだ出来てないでしょ? この年末の休みにやっと来れるようになったそうなの」
P「…あぁ、なるほどね」
P(じいちゃんを亡くして、うちの実家に住むようになったばあちゃんも、約一年前に死んでしまった。ばあちゃんの訃報は、かなりのばあちゃん子だった俺にはかなり効いた)
2 :◆mTQtXPIEW. :2015/12/09(水) 18:57:24.80 :1zAYU3yko
P「そういえば、母さんの妹…俺の叔母さんか。叔母さんってどんな人だっけ」
P母「あんた覚えてないの? …って、それもそうか。最後に会ったのも随分前だっからねぇ。あんたまだ小さかった気がするわ」
P「そりゃ記憶にないわな」
P母「とにかく、準備手伝いなさいな」
P「へいへい。と言っても、何すればいいんだ?」
P母「そうね、客間に布団を敷いてきてくれないかしら」
P「何枚?」
P母「えーっと、3枚お願い」
P「一人子供がいるのか」
P母「えぇ。つまりあんたの従兄弟ね」
P「俺に従兄弟がいるなんて初耳だぞ」
P母「歳が離れてるしね。会わなくなってから出来たのよ。たしか今、小六だったかしら」
P「たしかに離れてるな。どんな子?」
P母「サッカーが大好きだって妹は言ってたわよ」
P「へぇ」
P(男の子かな。仲良くなれそうだ)
P「それじゃ、布団敷いてくるよ」
P母「お願いね」
3 :◆mTQtXPIEW. :2015/12/09(水) 18:58:27.58 :1zAYU3yko
~近所の空き地~
P「サッカーねぇ。当分やってないやよっと」ポンッポンッ
P「おっ、案外体は覚えてるもんだな。いよっと…あら」トントン…
P「体は覚えていても、ついていけるかは別問題か」
P「たしか向こうに転がっていったよな……ん?」
「……あ、ボール」
P「おーい、悪いけどそのボール取ってくれないかー」
「…あぁ、あんたのか。いいぜ……っとと、はいよっ」トントン トンッ
P「!? …な、ナイスボール」
P(あの子、手を使わずにボールを浮かせて、綺麗にリフティングをしてそのままパスを…)
P「あ、ありがとう! 君、サッカー上手だね!」
「まあなー。おっと、それじゃ」
P「……いやあ、あんなに綺麗なプレー、久しぶりに見たなぁ」
P「しかし、ここらへんでは見かけない子だったけど……あ、もしかして」
P(とりあえず家に戻ろう)
4 :◆mTQtXPIEW. :2015/12/09(水) 19:00:20.52 :1zAYU3yko
~家~
P「ただいま」
P母「あっ。あんた、どこに行ってたのよ」
P「そこの空き地でこれを少しな」
P母「これって…サッカー? あんた、いい歳した男1人が空き地でサッカーなんてしてんじゃないわよ」
P「いいだろ別に。…あっ、靴が増えてる。やっぱりもう来てたか」
P母「あんたが遊んでる間にね。さあ、挨拶してきなさい。いま、客間で荷物の整理してるから」
P「わかってるよ」
5 :◆mTQtXPIEW. :2015/12/09(水) 19:01:53.19 :1zAYU3yko
P「失礼します」
叔母「あら、あらあらPくん! 大きくなったわね! まあまあまあ! 私のこと覚えてるかしら~」
P「あ、いえ、その…すみません」
叔母「あら残念。それにしても大きくなって」
叔父「じゃあ僕のことも覚えてないかな」
P「すみません」
叔父「いやいや、謝らなくていいんだ」
P「改めて、Pです。…あの、もう一人来てると伺っているのですが」
叔母「あー、あの子ね。さっきトイレに行ってくるって出ていったからそろそろ…ほら、来たわね」
「ふぅ……あっ、あんたはさっきの」
P「初めまして…というより、さっきぶりだね」
「ははっ、そうだな」
叔母「あら、晴、Pくんと会ったことあるの?」
晴「さっき、そこの空き地でちょっとな」
叔母「あら、じゃあ、あそこでサッカーやってたのってPくんだったのね。遠くからだと全然気づかなかったわ」
晴「へえ、Pって言うんだな。よろしくな! オレは晴だ!」
P「あぁ、よろしくな。どうやら俺達は従兄弟らしいな」
晴「オレ、ここに来る途中に聞いたんだぜ? 今まで知らなかったとかありえんのかよ」
P「ははっ、実は俺もさっきまで知らなかったんだ」
晴「うわまじか。どっちの両親も適当だな」
P「まったくだ」
叔母「ちょっとー」
叔父「はははは」
6 :◆mTQtXPIEW. :2015/12/09(水) 19:03:24.94 :1zAYU3yko
~食卓~
P「うわ、なんだこのご馳走」
P母「愛媛から来てくれたんだから、身内とはいえ歓迎しなくちゃね」
P「俺が帰省してもなんもしないくせに」
P母「うるさいわよ」
晴「うおーっ、なんだこのご馳走! スゲーッ! これ全部、おばさんが作ったのか?」
P母「ええそうよ。…線香あげてきたのね」
叔母「うん」
P(涙が…そりゃそうだよな…)
P母「それじゃ、食べましょ! さあ席について」
晴「オレの席は…」
P「晴、俺の隣にこいよ」
晴「わかった!」
P母「それでは」
「いただきまーす」
7 :◆mTQtXPIEW. :2015/12/09(水) 19:05:03.66 :1zAYU3yko
~食後~
晴「なあなあ、Pはサッカー好きなのか?」
P「好きっちゃあ好きだな。こんな何もない町で少年時代を過ごすには、球一つだけで大勢で楽しめるサッカーに限ってたしな」
晴「でもさっき見たけど、下手くそだったぞ」
P「ブランクだブランク。歳もあるが……あと少ししたら、翼Pちゃんって呼ばれてた頃の力も戻ってくるだろ」
晴「なんだよ翼Pちゃんって」
P「おっと、信じてないな? よし、明日一緒にやろうぜ。俺の真の実力を見せてやるよ」
晴「へへっ、望むところだ!」
P「そういえば、叔父さんとサッカーしたりするのか?」
晴「小さい頃に教わってからそれっきりだ。オヤジ、仕事が忙しくて、全然構ってくれないんだ」
P「そうなのか」
晴「ところで、Pは何の仕事をしてるんだ?」
P「えっ?」ギクッ
8 :◆mTQtXPIEW. :2015/12/09(水) 19:07:09.92 :1zAYU3yko
P(なぜ息子が帰宅してきて、実の母が息子の仕事の話を切り出さないのか)
P(久しぶりに社会人の親戚に会った時の常套句、「仕事はどう?」をなぜ叔母さんたちが聞いてこなかったのか)
P(なぜ、アイドルのプロデューサーという職業でありながら、俺はこんなに簡単に帰省できたのか)
P(あれは約一年前。ばあちゃんの訃報を聞いた俺は当分ショック状態に陥り、仕事でミスを連発し始めた)
P(そして半年前、俺の担当アイドルが他のプロダクションに引き抜かれてしまった。彼女も最近の俺に愛想が尽きていたらしく、快く引き抜きに同意したらしい)
P(うちのプロダクションのエースに近い存在であった彼女を失ったのは大きかった。それまでの業績がなんとか助けてくれて、俺はクビには至らず、当分の休養をいただいた。といってもすぐに復帰しなければ、本当にクビになってしまうのだが)
9 :◆mTQtXPIEW. :2015/12/09(水) 19:08:49.94 :1zAYU3yko
P(晴は俺のことをさっき知ったと言っていた。そりゃ叔母さんからこの事を聞いていなくても仕方ない)
P「……まあ、アイドルのプロデューサーみたいなのを」
晴「アイドル? なんか腑抜けた世界で生きてんのな」
P「何を言う! アイドルは希望だぞ! みんなを照らす、光り輝く存在だ」
晴「ふーん。オレにはよくわかんねえや」
P「そうか…」
10 :◆mTQtXPIEW. :2015/12/09(水) 19:10:36.03 :1zAYU3yko
晴「それじゃオレ、風呂入ってくるよ。ここの風呂って檜なんだろ? 楽しみにしてたんだよなー」
P「おっ、じゃあ一緒に入るか?」
晴「は、はあ!? なにふざけたこと言ってんだよ!」
P「ふざけてなんかいないが…ダメか?」
晴「だ、ダメだ! …おい、何ジロジロ見てんだよ。とにかく、オレは一人で入るからな!」
P「あ、あぁ…」
P(なんだよ、男同士の裸の付き合いぐらい良いじゃないか)
P(……しかしあいつ、まつ毛長いし、なんか歳の割に色気があるというか……アイドルいけるんじゃ…)
P(でも、本人はあんなこと言ってたしな。ダメか)
12 :◆mTQtXPIEW. :2015/12/09(水) 22:51:27.70 :1zAYU3yko
~翌朝~
P「晴ー、そろそろ行こうぜ」
晴「あぁ! それじゃ、いってきます」
P母「あら、もう2人は仲良くなったの?」
晴「同志だからな!」
P(男同士で気にすることもないしな)
P「昼飯前には帰ってくるよ」
P母「あんた、腰には気を付けなよ」
P「へいへい。それじゃあいくか」
晴「あぁ! そうだ、P、ボールくれよ」
P「おう。はいパス」
晴「サンキュ。…よしっ、行こうぜ。競争だ」
P「晴、まさかお前ドリブルで行く気か?」
晴「こんぐらいハンデないとな」
P「なんだと? よし、大人の本気を見せてやる!」
晴「へへっ、負けねえよ!」
13 :◆mTQtXPIEW. :2015/12/09(水) 22:56:32.95 :1zAYU3yko
~空き地~
晴「はぁ…はぁ…んっ、はぁ、よっしゃ! 勝った!」
P「ま、マジかよ……」
晴「じゃあ負けた方は罰ゲームなー」
P「おい、聞いてないぞ。…まあいいか。で、何がお望みで?」
晴「そうだな。今度なにか奢ってくれよ」
P「え、まあそれぐらいならいいけど」
晴「罰ゲームとか今思いついたからな、他に出てこねえんだよ」
P「じゃあ別に無しでよかったじゃないか」
晴「それだとなんか惜しい気がする」
P「……まあ、分からんでもない」
晴「それじゃ、最初は簡単にパスから始めようぜ」
P「あぁ。…っと、その前に、あと2分だけ休ませて」
晴「なんだよ、情けねーな」
P「うっせ」
14 :◆mTQtXPIEW. :2015/12/09(水) 23:05:49.92 :1zAYU3yko
P「……よし、そろそろ始めるか」
晴「3分だったぞ」
P「1分なんて些細な違いを気にしてちゃダメだぞ、晴」
晴「……はぁ、まあいいや。それで、今日はスゲエプレーを見せてくれんだよな?」
P「あぁ。そうだな、1時間、1時間あればいける」
晴「2時間の間違えじゃないのか?」
P「今度こそ合ってるさ。よし、こい、晴!」
晴「おう!」ボムッ
P「よっと……あら」ポテポテ…
晴「トラップもできねえじゃん」
P「いや待て待て。まだ始まったばかりだから」
晴「本当にいけんのかよー」
15 :◆mTQtXPIEW. :2015/12/09(水) 23:10:37.73 :1zAYU3yko
~30分後~
晴「へいP、パスッ」パシュッ
P「よっと…ほっほっほっ」トントントン
晴「おお、やるじゃん」
P「言ったろ? 昔はこればっかりやってきたんだ。それに、こんな田舎の町だからか、サッカー出来る奴はモテたからな」
晴「へえ、それじゃあPはモテてたのか?」
P「…おっとこの話はここまでだ。そろそろ俺の覚醒が見えてきたぞ。集中しよう」
晴「そうか、残念だったな」
P「う、うっせえ! 同い年にめちゃくちゃ上手いやつがいたんだよ! 言っとくけど、俺は2番目に上手かったんだからな!」
晴「さあて、Pの覚醒でも見てやるかー」
P「……おーい」
16 :◆mTQtXPIEW. :2015/12/09(水) 23:21:33.18 :1zAYU3yko
~更に30分後~
晴「そろそろあれから1時間だなー」
P「おう。やっぱり俺の予想は当たってたぞ。今なら出来る!」
晴「それじゃ、見せてくれよ。……パスッ」
P「よっと……いくぜ!」
晴「な、なんだよこれは!?」
晴(ボールがPを中心に飛び跳ねている。まるで、踊っているみたいだ)
P「名付けて、Pが咲かせるボールのダンス!」
晴「ださっ!」
P「えっ……」ポロッ…
晴「あっ、落としたな」
P「は、晴。今なんて…?」
晴「え? あぁ、名前がダサすぎる」
P「そ、そんな! 開発した当時一夜眠らずに考えた技名なのに……」
晴「で、でも、プレーはかっこよかったぞ! 見直した!」
P「ほ、ほんとか?」
晴「あぁ! すげえな、P!」
P「ま、まあな! なんせ俺は、この町で1番上手いからな!」
晴「2番じゃなかったっけ?」
P「……晴ー。ここは空気を読んでくれよー、このやろー!」ワシャワシャ
晴「うわっ、お、おいやめろよ! 髪がボサボサになるだろ!」
P「ええじゃないかええじゃないか! ……ん?」
P(なんだこいつ…すごいい匂いがする…汗も混じってるのに…すごく、好きだ、この匂い)
晴「お、おい! なにオレの髪を持って固まってんだよ!」
P「え? ……あ、あぁ! 晴の髪、サラサラだなって思ってさ!」
晴「そうか? あんま気にしたことねえや」
P「綺麗だから、大事にした方がいいぞ」
晴「綺麗、ほんとか? …わかった」ニカッ
44 :◆mTQtXPIEW. :2015/12/14(月) 00:30:28.93 :wfP1uJoTO
P「さて、そろそろ帰るか」
晴「ふいー、あっちい。冬なのに汗かいちったよ」
P「俺もだよ。ははっ、おっさんが年末の休みに何やってんだろうな」
晴「Pっておっさんって言うほどの歳なのか?」
P「まだ20代前半だが、体力はおっさんかもなあ」
晴「じゃあさ、オレがいる間は一緒に運動しようぜ! そしたら若返るかもしれないだろ!」
P「……ふむ、いいなそれ。よし、付き合ってくれ」
晴「任せろ!」
20 :◆mTQtXPIEW. :2015/12/09(水) 23:58:54.23 :1zAYU3yko
~家~
P・晴「ただいまー」
P母「おかえりなさい。お風呂湧いてるわよ。入ってきなさいな」
P「おお、ありがとう母さん! それじゃ晴、一緒に……」
P(そういえば昨晩、嫌だって言われたよな。もうあんな拒絶受けるのも嫌だしな)
P「晴、先入ってきていいぞ」
晴「なんだよP、一緒に入らないのかよ」
P「え、え? だって昨晩は…」
晴「ははっ、冗談だって。まだ早いっつの。それじゃお先にー」
P「なんなんだあいつは…?」
P母「ふふ」
21 :◆mTQtXPIEW. :2015/12/10(木) 00:04:39.58 :duuNSRTAo
~居間~
P「晴が上がるまでテレビでも見てるか」
P(やっぱりこの時期、特番しかしてないな……)
P「まあボーッと見てるだけだし、何でもいいか」チャンネルカエー
「はい、そうなんですよ!」
P「えっ……あ、あぁっ……」
司会「最近、人気急上昇中のアイドルとして、今年の振り返りはどうなの?」
アイドル「そうですね、やっぱり今年は私にとって契機になった良い年だと思いますねー」
司会「プロダクションが変わったんだっけ? そのおかげもあるのかな?」
アイドル「あはは、そうかもしれないですねー」
P「あ、あぁっ……ぐっ……」
22 :◆mTQtXPIEW. :2015/12/10(木) 00:13:58.15 :duuNSRTAo
晴「おーい、P。上がったぞー……っ! おい! どうしたんだよP!」
P「うぅぅ……は、晴か。どうした、上がるの早かったな」
晴「どうしたはこっちのセリフだっつの! ちょっと温まってきただけだからな、Pも早く温もりたいだろうし。それで、どうしたんだよ。……このテレビか?」
P「……」
晴「もしかして…今出てる、このアイドルか?」
P「……っ……」
晴「何があったんだよ。話してくれよ、P」
P「……だいぶ離れた年下の従兄弟に弱音なんか吐けるわけ…」
晴「P!」ギュッ
P「は、晴!? 何を急に…」
P(あぁ、またこの匂いだ。それも、さっきのより良い。大好きだ)
P(髪もまだ乾ききってない。当たり前か。短く感じてたが、意外と伸ばしてんだな。……やっぱり色気あるよな、こいつ)
晴「なあ……話してくれよ。そりゃオレなんか頼りにならないかもしれないけどさ、吐く言葉の受け皿にはなれるぜ…?」
P「……晴、ありがとう。落ち着いてきたよ。とにかく、晴は風邪をひく前に髪を乾かしてきな」
晴「…………」ギュッ
P「あとで話すから」
晴「絶対だぞ」
P「あぁ」
晴「…………」スタスタ
P「…………はぁ」
28 :◆mTQtXPIEW. :2015/12/10(木) 21:57:25.67 :duuNSRTAo
P「ーーとまあ、こんな感じだ」
晴「な、なんだよそれ。あのアイドル最低じゃねえか!」
P「いやいや、俺が不甲斐なかったんだから仕方ないだろ。彼女は賢明な判断をしたと思う」
晴「そ、それでもさ! Pはずっとあいつのことを世話してきたんだろ!? 恩ってもんがねえのかよ」
晴「……やっぱり違うじゃねえか。なにがアイドルは希望だよ。Pにこんな顔させてるやつが、希望なはずがーー」
P「いや、俺にとって彼女は今も希望だよ」
晴「は、はぁ? どうしてそんなこと…」
P「どこにいようと、今まで彼女が努力して培ってきたものが評価されているのなら、それだけで俺は満足だ。……まぁ、うちのプロダクションは許さねえかもだけどな、はは」
晴「……本当に、Pはそれでいいのかよ」
P「ああ」
晴「……じゃあ、さ。もうそんな顔するなよ。見てるこっちも、苦しくなんだよ。もう、見たくねえよ」
P「…わかった」
晴「……うん」
29 :◆mTQtXPIEW. :2015/12/10(木) 22:03:15.64 :duuNSRTAo
P「……んー、なんかスッキリしたわ」
晴「だろ? 悩んだ時は人に話すのが一番だって、よく親父が言ってるからな」
P「なるほど、叔父さんの受け売りか。いやでも、ほんとスッキリしたよ。このまま晴に甘えちゃおっかなー」
晴「な、何言ってんだよ! さっきまで歳の離れたオレなんかにとか言ってたくせに!」
P「まあまあ、いいじゃないか」ギュッ
晴「お、おい………くぅっ………」
P「あー、やっぱりだ。すげえ落ち着くよ。それに、ずっと思ってたんだが、お前っていい匂いするな」
晴「ば、バカ! 嗅ぐなよ!」
P「まあまあ。スキンシップだ」
晴「こんなスキンシップはまだ早いっての!」
P「ちえっ」スッ
晴「あっ……ふ、ふん。大人の威厳がまったくねーな、P」
P「晴の前ではそれでもいいと思えてきたんだよな」
晴「なっ……そ、そうなのか」
P「あぁ」
晴「……そっか。へへっ」
32 :◆mTQtXPIEW. :2015/12/13(日) 21:16:13.27 :973AgRLJO
叔母「なによなによ、2人ともすっごい仲良くなってるじゃない」
P「あ、叔母さん」
晴「い、いつからいたんだよ!」
叔母「ついさっきかしら。しかし、本当に仲良いわね。Pくん、晴を貰ってくれないかしら」
晴「は、はぁ!?」
P「それは難しいんじゃないですか」
P(性別的に)
叔母「世間的なことは、私たちは気にしないわよ。別に従兄弟同士なら結婚できるんだし、堂々としていればいいのよ」
P(そういう問題じゃ…)
晴「……それ、ホントなのか?」
叔母「あら、知らなかったの?」
晴「うん。……へへっ、まじかぁ」
叔母「あらあら、晴は乗り気かしら? さあ、あとはPくんだけよ。私の娘を貰っちゃって! Pくんになら安心できるのよねー」
晴「お、おい! オレはまだそんな…」
P「……へ?」
P(娘? 誰が? 叔母さんの子供は一人……晴? 晴が女の子?)
P(おいおい、俺は今まで晴に何をしてきた? ……やべぇ、完全にセ◯ハラじゃねえか)
晴「おい、P! Pもなんか言ってくれよ!」
P「……あ、ああ。そうだな」サッ
晴「えっ……」
41 :◆mTQtXPIEW. :2015/12/14(月) 00:15:18.57 :wfP1uJoTO
P「お気持ちは嬉しいですが、今は自分のこと…仕事の方が上手くいかないと、他のこと考えられないです…」
叔母「あっ…そ、そうよね。ごめんね」
P「いえ」
晴「……な、なあP。どうしたら、Pは仕事が上手くいくようになるんだよ。オレに出来ることなら何でも言ってくれよな! た、頼ってくれんだろ?」
P「あぁ。まあ、例の彼女の代わりを俺が連れてきたら、上の人も何も言ってこないだろうな。…でも、これは俺の問題だから」
晴「ど、どうしてだよ。頼ってくれよ!」ズイッ
P「っ」サッ
P「……そうだな、今度また失敗したら、慰めてくれ。それじゃ、俺も風呂入ってくるよ」
晴「お、おい……P……」
叔母「い、いってらっしゃい。……私、やっちゃったかしら」
晴「………うそつき」
40 :◆mTQtXPIEW. :2015/12/14(月) 00:14:36.24 :wfP1uJoTO
晴「ほい、お待たせ」
P「おう、ありがとう」
P(ご飯が茶碗に一杯に、味噌汁、卵焼きと大根の摩り下ろし)
P(うちの定番の朝メニューだな)
P「それじゃ、いただきます。……うん、やっぱり美味いな」
晴「そうか、よかった」
P「え、これって晴が作ったのか?」
晴「あぁ! Pの母さんに教わってな」
P「あぁ、だからか」
P「しかし、どうして急に」
晴「まあまあ、今はとにかく食ってくれよ! 今日もサッカーするんだからな!」
P「……あぁ、わかったよ。…うん、美味い」
晴「……へへっ」
42 :◆mTQtXPIEW. :2015/12/14(月) 00:19:34.02 :wfP1uJoTO
~空き地~
P「そういえば、叔母さんと叔父さんはどこ行ったんだ?」
晴「なんか年末セールをしてるっていうショッピングモールに行った。Pん家の車借りてな」
P「あぁ、だから無かったのか」
晴「ところで、Pの父さんは?」
P「今年は帰ってこれないらしい。前に休みとった分、休めるはずの年末に働かないといけないんだとよ」
晴「うわぁ、社会人って大変だな」
P「まったくだ」
43 :◆mTQtXPIEW. :2015/12/14(月) 00:24:50.88 :wfP1uJoTO
晴「よし、そろそろウォーミングアップは終わろうぜ」
P「何をするんだ?」
晴「そうだな、ボールの取り合いしようぜ。片方はドリブルで抜いて、もう片方はボールを取るんだ」
P「…いや、俺はこのままパスを続けてもいいんだがな。なんなら、また俺の技を見せてやってもいいぞ」
晴「えー、俺はこっちがしたいんだよ。……なんだよP、嫌なのか?」
P「い、いや別に嫌とかじゃなくてさ」
P(接触しちゃうだろうが)
晴「嫌じゃないならやろうぜ! ほら、オレの攻撃からだ!」
P「あ、く、くそぉ! 負けねえぞ!」
45 :◆mTQtXPIEW. :2015/12/14(月) 00:31:29.02 :wfP1uJoTO
~夜~
P「……あぁ、今日も疲れたぁ」
晴「やっぱり体力ねえな。まじでオレが付き合ってやるからさ、今後も続けようぜ」
P「そうは言っても、あと数日で別れるんだぞ」
晴「ま、まあな」
P母「はい、年越しそば!」
P「お、待ってました! やっぱり大晦日にはこれだよな! いただきます!」
晴「いただきます!」
46 :◆mTQtXPIEW. :2015/12/14(月) 00:37:57.40 :wfP1uJoTO
P「ふぅ、食った食った」
晴「姉妹なのに、なんかうちのとは味がちょっと違うんだよな。こっちの方が美味かったかも」
P「まぁ個人の好みも入ってくるだろうしな。つまり、晴が叔母さんから教わったものも、叔母さんの味じゃなくなるかもしれないってことだな」
晴「なるほどな。なあ、Pはオレが作ったやつ食べたいか?」
P「そうだな、今年はもう食ったし、来年頼むよ」
晴「あ、あぁ! 頼まれたぜ! 任せてくれ!」
晴「……そ、それで、他に俺に頼みたいことないか?」
P(……マジか。昨日のことはもう無かった事にしたんじゃないのかよ)
P「と、特にはないな」
晴「遠慮せずに言ってくれよ、な?」
P「うっ、と言われても……ん? すまん、電話だ」
晴「あ、あぁ」
P(たすかったー)ピッ
P「はい、もしもし」
『Pくん! 君はもう聞いたかい!?』
P「ど、どうしたんですか、上司さん」
47 :◆mTQtXPIEW. :2015/12/14(月) 00:48:52.03 :wfP1uJoTO
上司『その様子だとまだのようだね……いいか、落ち着いて聞いてくれ。彼女……君の元担当アイドルのあの子に、熱愛が発覚した』
P「ね、熱愛!?」
晴「へ? ね、熱愛?」
上司「あぁそうだ。街で男と歩いているのをファンに見られて、写真を撮られ、ネットに拡散されたらしい」
P「そ、そんな……彼女はこれからだと言うのに……」
上司「……あぁ、そうだな。それで、こういった件が大好きなあの記者が、すでに彼女に取材をしたらしい」
P「そ、それは本当ですか!? くそっ…」
上司「彼女はこう答えたらしい……噂されている男の人は、現在交際をしている彼氏だと」
P「………」
上司「それと、交際を始めたのはプロダクションを移籍してからだと。だから、前のプロダクションは全く関係がないと」
P「えっ…」
上司「……彼女なりの、恩義なのかもしれない。おかげで、こっちは問い合わせの対応に助かってるよ。やっぱり移籍前のプロダクションにも来るんだな」
P「わ、私も早くプロダクションに帰って手伝いを…」
上司「ダメだ。いま君は休むべきだ。……まあ、こんな事になってしまったが、君には才能があるんだ。頑張ってくれ」
P「……はい。連絡をくださり、ありがとうございました」
48 :◆mTQtXPIEW. :2015/12/14(月) 00:55:35.88 :wfP1uJoTO
P「……はぁ」
晴「ど、どうしたんだよ、P。熱愛がどうとか」
P「……あぁ、実はな、例の彼女が熱愛発覚したらしい。くそっ、彼女はこれからさらに輝いていくって時なのに……」
晴「熱愛って…彼氏がいたってことだよな? …ダメなのか、それ?」
P「あぁ。そりゃ祝ってくれるファンもいるが、大抵は『裏切られた』とか『最低女』ってキレられる。そしたら今までのようにアイドル活動なんて出来なくなる」
晴「……そう、なのか」
P(なんか晴もショックを受けているようだな。どうしてだろう)
P(もしかして、このまま俺に、頼ってくれラッシュが来るんじゃないだろうか。どうする…)
晴「……ちょっと、借りてる部屋に戻るわ」
P「え、あ、あぁ」
P(あれ……どうしたんだろ……)
49 :◆mTQtXPIEW. :2015/12/14(月) 01:02:30.51 :wfP1uJoTO
~年明け一時間前~
P(あれから晴は戻ってこない。そろそろ年が明けるというのに)
P(俺はなんとか持ち直すことが出来た。なんと、俺の携帯に一通のメールが来たのだ。例の彼女からだった)
『これは私の意思だから。今までお世話になりました』
P(もしかすると、彼女は元からアイドル活動をやめる気だったのではないだろうか。それなら、彼女が決めたことなら、それを尊重するべきだ)
P『礼を言うのが遅い。頑張れよ』
P(返事はなかったが、これでいいのだと俺は思った)
P「よし」
50 :◆mTQtXPIEW. :2015/12/14(月) 01:04:44.17 :wfP1uJoTO
P「おーい、晴。いるかー?」
晴「……なんだよ、P」
P「近所の神社に行こうぜ。初詣だ」
晴「……いや、いいよ、オレは」
P「まあまあ、一緒についてきてくれよ! ほら、行こうぜ!」グイッ
晴「あっ、手……お、おい、引っ張るなって!」
51 :◆mTQtXPIEW. :2015/12/14(月) 01:09:31.14 :wfP1uJoTO
~神社~
P「おお、既に結構集まってるな。いつも思うが、どこにこんなに人がいたんだか」
晴「たしかに、いっぱいだな」
P「はぐれないように手でも繋ぐか?」
晴「え? ば、バカッ……いいのか?」
P「ん?」
晴「やっぱりさ、P、オレのこと避けてたよな……いや、正しくはオレに触れないようにしてたよな。昨日から」
P「あ、あぁ……気づいてたか。すまん。気を悪くさせちまったな」
晴「…いや、いいんだ。今こうして、触れられているからな!」ギュッ
P「……ありがと、晴」
52 :◆mTQtXPIEW. :2015/12/14(月) 01:13:28.71 :wfP1uJoTO
晴「しかし、どうして急に避けるようになったんだよ」
P「えっ、そ、それは…」
P(男だと思ってたなんて言ったらダメだよな……でもイイ言い訳なんて思いつかないし……)
P「……晴を女として意識し始めちまったから、かな」
晴「……は? は、はぁ!? バカ! バカかよ、P! そ、そんなことお前、まっすぐ……あぁぁ…」
P(失敗だったか……?)
晴「……おい待てよ。ってことは、今はオレのこと女だと意識してないってことか!?」
P「いや、それはないぞ」
晴「……そ、そうか。へへっ」
P(どうやら大丈夫のようだ)
53 :◆mTQtXPIEW. :2015/12/14(月) 01:19:35.13 :wfP1uJoTO
P「お、甘酒売ってるじゃねえか。そうだ、例の罰ゲームのやつ、これにしとくか。買ってくるよ」
晴「あ、あぁ……」
晴(…手が、冷たい)
P「ほい、おまたせ! ん、なんだ? 自分の手をまじまじ見て。寒いんなら、これは最適だぞ。ほれ」
晴「あ、あぁ。サンキュ。……くそっ、違うっの!」ゴクッゴクッ
P「お、おい! そんなに急いで飲んだら火傷するぞ」
晴「………」ポケーッ
P「ほら見たこと……か? おーい、どうしたんだ晴ー」
晴「なあ、P」
P「ん、どうした? やっぱり火傷したか?」
晴「好きだ」
P「……………へ?」
54 :◆mTQtXPIEW. :2015/12/14(月) 01:22:47.62 :wfP1uJoTO
P「お、おい急にどうしたんだよ晴。……あれ、なんか顔が赤いし、心なしか顔が惚けてるな。なんだ、甘酒で酔ってんのかよ。ったく、仕方ないな晴は。酔ってそんな思いもしないことを口にして…」
晴「オレは本気だ!」
え? なにどうしたの? あの子じゃない?
P「お、おい晴……と、とりあえずここから離れるか。行くぞ」グイッ
晴「……………」
55 :◆mTQtXPIEW. :2015/12/14(月) 01:32:34.35 :wfP1uJoTO
~神社から少し離れた所~
P「ここなら人も少ないだろ」
晴「………手」
P「あ、あぁ悪い。急に掴んじまって」
晴「いや、嬉しい。離さないでくれ」
P「……わかった」
晴「…………オレ、急にPがオレを避け始めてからすげぇ悲しかった。その前から少し、この胸に違和感はあったんだが、その時確信した。オレは、Pのことが好きだ」
P「それは、兄弟愛とかじゃないのか?」
晴「……分かんねえ。こんな気持ち初めてだし……。すげえ苦しいんだ。でも、Pと話してると、いや一緒にいるだけでその苦しみが幸せに変わるんだ。ずっと一緒にいたいって、思えるんだ」
P「……そうか」
晴「でも、Pは今それどころじゃねえもんな。……なあ、オレ、アイドルになれねえかな?」
P「え?」
晴「オレなんかじゃ、やっぱり無理だよな」
P「そんなことはない!!」
晴「!?」
56 :◆mTQtXPIEW. :2015/12/14(月) 01:44:37.79 :wfP1uJoTO
P「晴はまず綺麗だ。長いまつ毛に少し伸びた髪の毛が色気を出している。たまに見せる無邪気な笑顔も、年相応で可愛い。それに、なんといっても、この性格だ。他人のために何とかしてやろうっていう姉御肌みたいな、心の強さも感じる。そんな晴がアイドルになれないだろうか、いや、なれる! それも、超人気アイドルだ!」
晴「……わ、わかった」
P「それにだなぁ!」
晴「わかったから! もうやめてくれ! ……恥ずかしい」
P「……すまん、取り乱したな」
晴「いや……ありがとうっ」
晴「……でも、アイドルは恋愛禁止なんだろ?」
P「……そうだな。絶対とは言わないが、ファンが許すかは分からないからな」
晴「……なあP。オレ、どうしたらいいんだよ。Pと恋仲になりたい、でもアイドルになってPを助けてやりたい。……両方はダメなんだよな」
P「……俺は、俺は晴と一緒に、今後も毎朝トレーニングがしたい。ここ数日やって分かったが、本当に体力が落ちてしまってるからな。……でも、この先少し続けて、体力が戻っても、また落ちるかもしれない。だから、この先ずっと、10年先も20年先も、50年先も付き合って欲しい」
晴「P!」
P「俺は今すぐ体力を取り戻したい。だから晴、俺と一緒に東京に来てくれないか。……もし、晴が大人になって、まだ俺を好いてくれているなら、俺が何とかする。だから、晴!」
晴「変わるもんか! オレは一生、Pの専属トレーナーでいるからな!」
P「晴ー! 好きだぁー!」ギュッ
晴「うわっ、お、おい、や、やめ……やめるな……続けてくれ……」ギュッ
57 :◆mTQtXPIEW. :2015/12/14(月) 01:53:28.72 :wfP1uJoTO
~再び 神社~
P「気づいたら年明けてたなんて、間抜けだよな」
晴「ま、まあPと一緒に年が明けれたのは確かなんだから、オレはイイんだけどなっ」
P「なんだよ、嬉しい事言ってくれるなー」ワシャワシャ
晴「へへっ」
P「さーて、今後の事を神様に頼んでおくか。ほれ、お金」
晴「おう、サンキュ。よっと……」パンパン
P・晴「…………」
P「よし、終わりっと」
晴「………………うしっ、オレも終わったぜ」
P「やけに長かかったな」
晴「まあ今年のことだけじゃなくて、今後ずっとのことを願ってたからな」
P「そんなことして、神様は叶えてくれんのか? ……これから2人で毎年行くんだから、今年だけのことでいいんだぞ」
晴「あっ。へへっ、そうだったな! それじゃ……」
晴(立派なアイドルに、Pを魅力できるアイドルになれますように……)
おわり
58 :◆mTQtXPIEW. :2015/12/14(月) 01:57:42.19 :wfP1uJoTO
訂正多々・最後駆け足すみませんした
読んでくださりありがとうございました
60 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/12/14(月) 07:24:53.84 :f3Hv1KcHo
おつ
デレデレ晴ちんかわいい
63 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/12/14(月) 19:25:12.28 :ocQmnvqAO
???「聞き届けたのでしてー」
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【SS速報VIP】モバP「君が俺の」 晴「従兄弟?」
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