1:2013/05/22(水) 00:05:08.19 :HIr0Xc540
――事務所
比奈「はよーッス……と、ソファに誰かがいまスね」
文香「……」ペラ
比奈(見たこと無い人……ああ、そういえばこの前プロデューサーさんが新しい子が入ったって言ってたような気がするっスね)
文香「……」ペラ
比奈(うーん、アタシ的には自分から声かけるの苦手なんスけど…もう先輩だし、やるしかないっスね)テクテク
文香「……」ペラ
比奈(って、本に集中しててアタシの事気付いてないみたいっス…どれだけ好きなんスか)
文香「……」ペラ
比奈(……、よし、頑張れアタシ)グッ
2:2013/05/22(水) 00:07:59.10 :HIr0Xc54o
比奈「…本、好きなんでスか?」
文香「っ!」バタッ
比奈「うわっとと! …大丈夫スか?」
文香「…、あ、すみません。本に夢中で」
比奈「いやいや、アタシもよくあるんで大丈夫っスよ。えと、最近入った人でスよね?」
文香「…はい、鷺沢文香です……よろしくお願いします」
比奈(何だか前髪で目が隠れてるし静かだしでアタシの似たような空気を感じるっス……)
比奈「文香さんっスか……えと、アタシは荒木比奈と言いまス。一応先輩スけど、何かそういう上下関係とか苦手なんであんまり気にしないで下さい」ハハ
文香「…ありがとうございます、荒木…先輩」ペコリ
比奈(む、むず痒いっス……!!)
3:2013/05/22(水) 00:09:02.39 :HIr0Xc54o
比奈「先輩呼びもしなくていいっスよ、比奈でいいっス。事務所のみんなも仲良いでスから」
文香「…すみません……そういうの、まだよくわからなくて」
比奈「アタシも似たようなモンでしたからいいっスよ。…それより、よかったらアタシとお話とかどうっスかね?」
文香「…そうですね。お願いします」
比奈(よし、誘いは成功っス…頑張れアタシ)
4:2013/05/22(水) 00:09:28.63 :HIr0Xc54o
比奈「アタシが入った時も本に集中してたけど、何読んでたんスか?」
文香「これは小説です。本を読むのが好きなので…」
比奈「わ、なんか難しそうっスね……。アタシの読むのとは大違いっス」タラリ
文香「…比奈さんも本は読むのですか?」
比奈(読むけど、同じ本と区別するのは文香さんに失礼なような…)
比奈「本というか…漫画っスね、アタシは。すみません、ジャンル違いで」ハハ
文香「…いえ。形式は違えど、同じ仲間ですから……。絵も、描かれているんですね」
比奈「へ?」
比奈(何でわかったんスか…!?)
5:2013/05/22(水) 00:09:55.77 :HIr0Xc54o
文香「…その、比奈さんの手、見ているとそんな気がしまして…」ペコ
比奈「ひえ、目がいいんスねー……羨ましいっス」
文香「仕事柄…よく人の手を見ることも多い…ですから」
比奈「仕事…って、文香さんは社会人なんスか?」
比奈(確かに目は隠れてるけど…アタシよりも背は高いし落ち着いてるし…年上なんスかね、文香さん)
文香「いえ…19歳です。大学生で…叔父の書店を手伝ってました」
比奈「19歳っスか!?」
文香「…どうかしましたか?」
比奈「いや、すみません……アタシは20で、一個上なんだなーってびっくりしちゃっただけっス」
比奈(ひえぇ、まさかの年下っス、何だかアタシよりもすんごく大人っぽいっス…)
6:2013/05/22(水) 00:10:31.84 :HIr0Xc54o
文香「…比奈さんの方が大人ですよ。自分の知らない世界を……たくさん、知ってますから」
比奈「あはは…いや、ありがとうっス。そう言ってもらえると嬉しいでス」
比奈(言動も大人だし、ますますアタシの肩身が狭いっスね、これは…)
文香「…それに、自分みたいな人間がアイドルだなんて…自信がありませんし」
比奈(…いや、でも)
比奈「大丈夫ッすよ。文香さんならできまス」
文香「…え?」ピク
7:2013/05/22(水) 00:11:15.13 :HIr0Xc54o
比奈「アタシも入った頃は文香さんみたいに…いや、それよりも酷かったっスから。『なんでアタシみたいな暗い人間をアイドルにするんだ、見る目ないだろ』って思ってましたね、最初は」
文香「…すごいですね…全然、そうには見えません」
比奈「いや、今でも漫画は描いてますし、プライベートだと昔のスタイルによく戻りまスけどね。…それでも、こうして別世界を見ることが出来るのはプロデューサーさんのおかげっスから。感謝してまスね」ハハ
文香「…出来るでしょうか?」
比奈「出来まスよ。変わろうと思えば、プロデューサーさんも、事務所のみんなも…アタシも、文香さんを応援するっス!」グッ
文香「……ありがとう、ございます。比奈さんがいると、心強いです」
比奈(あ、何かこれ先輩っぽいっス)
8:2013/05/22(水) 00:12:20.92 :HIr0Xc54o
比奈「じゃんじゃん頼ってくれていいっスからね。こう言っちゃ何でスが、なんだか境遇が似ているような気がしまスし。文香さんもプロデューサーさんにスカウトされたんスよね?」
文香「はい…叔父の書店の手伝いをしている所を、いきなり……」
比奈「あはは、プロデューサーさんは今も変わらないんっスね!」
文香「比奈さんも同じような……形…だったんですか?」
比奈「そりゃあもう! 聞いて下さいよ、アタシの時なんかはっスね――」
9:2013/05/22(水) 00:12:46.94 :HIr0Xc54o
――数十分後
P「みんなおはよう……と、ん?」ガチャ
文香「ふふ…そんなイベントもあるんですね……」
比奈「そーっスよ! アイドルになった今でも命かけてまスから!」
P(比奈と…文香か。仲良さげだな…比奈が話しかけたのか?)
P「おーい。二人とも、時間は大丈夫か?」
比奈「わ、プロデューサーさん、おはようッス」
文香「…おはようございます。レッスンなら、まだ……大丈夫です」
13:2013/05/22(水) 00:16:09.71 :HIr0Xc54o
P「そうか、ならいいか……比奈は?」
比奈「うわ、もうすぐ仕事に行かないといけないっス! 支度しまス!」ダッ
P「話するのは楽しいが気をつけてくれよー?」
比奈「ハイっス!」ドタドタ
文香「……あの」
P「何だか嬉しそうな顔してるな……ん、文香?」
文香「…人前、抵抗があって、人と話すのも苦手で……自信もないですが…。その、よろしくお願いします」
P(……なんだか会った当初よりも少しだけ顔つきが変わってるな。比奈のおかげか?)
P「任せとけ。絶対に、文香を世界に知らしめてやるからな!」グッ
文香「…はい。頑張ります」
P「よし、じゃあ少し早いが文香もレッスン場に行こうか。準備は出来てるか?」
文香「出来てます…お願いします」
11:2013/05/22(水) 00:14:29.50 :HIr0Xc54o
まだ…不安です。
未知の世界で…俯瞰にはなれなくて……、目の前にふりかかる物すら、今の自分では
振り払うこともできなくて……。
…それでも、頑張ってみたい。
新しい世界が知りたい…新しい自分を、見てみたいです。
比奈さんや皆さんみたいに、なりたいです。
プロデューサーさん、比奈さん、事務所の皆さん。
これから頑張っていきますから……どうか、よろしく……お願いします。
12:2013/05/22(水) 00:15:41.95 :HIr0Xc54o
そんなこんなで降って湧いた比奈と文香のお話でした。
夏らしく短くしめましょう。ひんやり。
元スレ
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